ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第10話 オカルトマニアと幽霊屋敷・2

 ミナトとヒトミは幽霊屋敷の鉄門の前に立っていた。

 

「なるほど……立入禁止……ですか」

 

 ミナトは門に下がっている札を読み上げた。

 

「一応、管理している業者はいるみたいね……」

 

 ヒトミは言う。

 

「どうしますか? 引き返しますか?」

「いいえ、ここで引き返したらオカルトマニアの名折れよ……。もちろん、このまま先へ進むわ……」

 

 ヒトミは門に手をかけた。門はぎいいっと鈍い音を立てながら開く。

 

「思ったより簡単に開きましたね」

 

 ミナトは言った。

 

「きっと、大勢の人が肝試しに訪れているからよ……。あるいは……」

 

 とヒトミはにんまりと笑った。

 

「私たちは何者かの見えざる手によってこの幽霊屋敷に招かれているのかもしれないわね……」

「えぇ……うわっ!」

 

 ミナトは何かにつまづいて転びそうになる。

 

「気をつけた方がいいわ。地面にはしゃれこうべが落ちているかも……」

「そんなんじゃなかったです……」

 

 ミナトは足元の草むらを見て言う。

 

「区画用のコーンバーが何故か落ちていました……」

「そう。ヘタなものを壊して呪われないように気をつけるのよ……」

 

 ヒトミは庭を進んでいく。

 

「でも夜に来ると雰囲気あるなぁ」

 

 ミナトは周囲を見回しながら言った。

 庭には草が生い茂り、所々にあるフライゴンやボーマンダを象った石像にはコケが生えていた。

 

「建物の方に向かうわよ……」

 

 ヒトミはミロカロスを象った噴水を通り過ぎると、洋館の入口の前へと立った。

 

「感じるわ……禍々しい怨念の力が……。この屋敷に巣食う怨霊たちの恨みの心が……!」

「えぇっ、わかるんですか!?」

「雰囲気作りよ」

「ズコォッ!」

 

 ミナトはその場に崩れた。

 

「と、とにかく入ってみましょう。そうしないと何も始まりませんし……」

 

 ミナトは扉に手をかけた。洋館の扉は簡単に開いた。

 

「やっぱり、肝試しに訪れる人が多いからでしょうか。簡単に開きましたね」

「でも真っ暗で何も見えないわ……」

 

 ヒトミは目をこらす。

 そしてモンスターボールを取り出した。

 

「ヤミラミ! フラッシュよ!」

「ヤミィ」

 

 ヤミラミが出てきて、両目を光らせ、建物の内部を照らした。

 

「よし、僕も! 行け、ブラッキー!」

 

 ミナトもモンスターボールを投げ、ブラッキーを出す。

 

「ブラッキーも、フラッシュだ!」

 

 ブラッキーの額にある黄色いリング型の模様から光が放射された。

 屋敷の中は、壁が剥がれ落ち、家具類の上には埃が積もっている。

 一歩踏み出すごとに、床がきしんだ。

 

「ふふふ……どこから調べようかしら?」

 

 ヒトミの目がきらりと輝いた。

 

「ヤミィ?」

 

 ヤミラミは周囲を見回す。

 

「一階から……順番に調べていきましょう」

 

 ミナトは言った。

 

「そうね……。でもこの廃墟独特のゾクゾクする雰囲気……たまらないわ」

「ブラッ」

 

 ブラッキーは廊下を歩き、部屋の前で曲がった。

 ミナトとヒトミ、そしてヤミラミはそれに続く。

 

「ここは……」

 

 とミナトは目を凝らしながら言った。

 調理台、そして使われていない冷蔵庫やレンジ等が並んでいる。

 

「キッチンだった場所みたいですね。きっと人が住んでいた頃は使用人とかがいっぱいいたんだろうなぁ」

「ム〜……」

 

 その時、廊下をなにかの影が横切ったように見えた。

 

「今のは!?」

 

 ミナトは振り返る。

 しかし、その時には廊下を横切った影は消えていた。

 

「今、なにか通り過ぎましたよね……」

 

 ミナトは言う。

 

「えぇ……きっと浮かばれない魂よ。この家の前の持ち主は非業の死を遂げたに違いないわ」

 

 ヒトミはヤミラミと共に廊下へと出た。しかしさっきの影らしきものの姿はなくなっていた。

 

「でもこのお屋敷の持ち主は持っていた会社が倒産して、屋敷を手放すことになったって……」

「いつ、調べたの?」

「ここに来る前に……ネットで……」

「なにか事件と関連付けた方が話としては面白くなるわ……」

「それはそうかもしれませんけど……」

「次の部屋に行きましょう……」

 

 ヒトミはヤミラミと共に先を急ぐ、次に入ったのは、ビリヤード卓のある部屋だった。

 

「ここは……遊戯室……といったところかしら……?」

 

 ヒトミは部屋の様子を見回して言う。

 

「ミナトくん、あれを……」

 

 ヒトミが指さした先に、ひとりの男の肖像画がかかっていた。髭を蓄えた威厳たっぷりの男だった。ヒトミはカメラを取り出し、写真を撮る。

 

「ここに来たという証拠写真……撮っておかないとね……」

 

 その時だった。バタンと音がして、ミナトたちの入ってきた扉が閉じられた。

 

「ブラ」

 

 ブラッキーは耳を立てる。

 

「扉が勝手に……!」

 

 ミナトは言った。

 

「えぇ……わかってるわ……」

 

 ヒトミは扉に向かう。そしてノブに手をかけ、押したり引いたりしてみる。だが、扉は動かない。

 

「だめだわ。閉じ込められたみたいね……」

「閉じ込められた……って!」

 

 ミナトは扉に向かって突撃した。しかし扉はビクとも動かない。

 

「そんな……!」

 

 ミナトは少し焦り始める。

 

「このまま僕たち……ここで取り殺されるんじゃ……!」

「ブラッ!」

 

 ブラッキーが前に進み出た。

 

「大丈夫……僕が落ち着かないと……」

 

 ミナトは呼吸を整えた。

 

「よし、ブラッキー、あくのはどうで扉を破壊するんだ!」

「ブラッ」

 

 ブラッキーは額から黒い結晶体を発射した。結晶体は扉に命中するも、扉は壊れない。

 

「私たちを閉じ込めているのは物理的な力じゃないわ。もっと超自然的なものよ……」

 

 ヒトミは言う。

 

「でも、ここから脱出しないと……」

 

 ミナトは周囲を見回した。そして扉と反対側の壁には等間隔に窓が並んでいるのを見つけた。窓からは雑草の生い茂る庭がよく見渡せる。

 

「窓がある。あの窓を割れば……!」

 

 ミナトは近くの暖炉から火かき棒を拾い上げると、窓に向かって投げた。しかし窓は火かき棒を弾いてしまう。

 

「窓が……割れない!」

 

 ミナトは目を見開いた。

 

 *

 

 その頃、クチートはサクヤの部屋で窓から空を見上げていた。

 

「クチート、夕飯……食べないのか?」

 

 サクヤは言う。

 彼のそばで、ジグザグマとサンダース、エリキテル、そしてイーブイ所長はポケモンフーズを食べていた。

 

「クチ」

 

 クチートは部屋の扉に向かっていった。

 

「なんだよ。やっぱり心配なのか? ミナトをひとりにして」

「クチ!」

 

 クチートは頷いた。

 

「わかったよ。じゃあ行こうぜ、あいつらの様子……こっそりと伺いにな」

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