ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第10話 オカルトマニアと幽霊屋敷・3

「ヤミラミ! シャドーボール!」

「ヤ〜ミッ!」

 

 ヤミラミは両手を組みあわせ、シャドーボールを放つ。シャドーボールは窓に命中するも、窓には傷ひとつつかなかった。

 

「やっぱり超常的な力よ。私たちを閉じ込めているのは……」

「どうするんですか? このままここに閉じ込められたままというわけにも……」

「それもありかもしれないわ……」

「え」

「オカルトに生き、オカルトに死ぬ……。それもオカルトマニアとしての人生の醍醐味だと思うわ」

「そんな……僕は嫌ですよ! こんなところで……!」

「もしかしたら幽霊の仲間入りをできるかもしれないわね……」

 

 ヒトミは恍惚とした表情を浮かべた。

 

「うーん、オカルトに対する一直線な姿勢だけは評価してあげたいけどなぁ、この人……」

 

 ミナトは考え込む。

 その時だった。ガシャン、ガシャンと音が聞こえ、遊戯室の隅に置かれていた騎士の鎧がふたつ、こちらに向かって動き始めた。

 

「わっ! つ、ついに本物の幽霊が!」

 

 ミナトは叫ぶ。

 

「ブラ……」

 

 ブラッキーは前へと進み出た。

 騎士の鎧ふたりは腰から刀を抜いた。

 

「幽霊……?」

 

 ヒトミはその鎧を観察して言う。

 

「ううん、違うわ。その鎧……中身は空っぽよ」

「え?」

「ヤミラミ、シャドーボール!」

 

 ヤミラミはシャドーボールを放つ。鎧は破壊され、床に転がった。その中身は、ヒトミの言った通りがらんどうだった。

 

「ほんとだ……」

「わかってきたわ……。これは幽霊の仕業じゃない。ゴーストポケモンの仕業よ……」

 

 *

 

 クチートはサクヤに抱えられて、洋館の庭にいた。庭から見ると、ミナトとブラッキー、そしてもうひとり女の人とヤミラミが部屋の中で何かをしているのがよく見える。

 

「あいつら……部屋の中で何をしているんだ?」

「クチ!」

 

 その時、クチートが何かに気がついた様子で鳴いた。

 

「んん? どうしたクチート……って、あれは!」

 

 サクヤも気がつく。ミナトたちのいる部屋のすぐ外に、一匹のポケモンが宙に浮いていた。

 

「あのポケモンは……」

 

 サクヤはポケモン図鑑をかざした。

 

「ムウマ。よなきポケモン。人間の驚かせ、その恐怖心をエネルギーとして活動するポケモン。恐怖心は、首の宝石に蓄えている」

「なるほど……ムウマか」

「クチ!」

 

 クチートが地面に飛び降りた。

 

「行くのか? クチート。あ、もしかしてお前……相手がポケモンだとわかった途端に怖くなくなったんだろ」

「クチ〜!」

 

 クチートはムウマの方に向かって駆けていく。

 

「ム〜マ」

 

 ムウマもそれに気がつき、クチートに向き直った。

 

「クチ〜!」

 

 クチートは大顎を銀色に発光させると、ムウマに向かって振り下ろした。

 しかしムウマはそれをかわし、そこから極彩色の光線、サイケこうせんを放った。クチートは後方に飛び退いてサイケこうせんをかわす。

 

 *

 

 その頃、ミナトは窓に触れ、外に脱しようと揺さぶっていた。すると次の瞬間、なんの前触れもなく、窓が開いた。

 

「うわっ」

 

 ミナトは外に向かってつんのめる。

 

「ブラッ」

 

 ブラッキーは鳴いた。

 

「ヒトミさん! 窓、開きましたよ!」

 

 ミナトは言った。

 

「そうみたいね。でもどうして……」

 

 その時、ミナトの目に、庭でクチートとムウマが睨み合っているの光景が飛び込んできた。そこにはサクヤの姿がある。

 

「クチート!? それにあのポケモンは……ムウマ!」

「わかったわ」

 

 ヒトミがミナトの傍に立って言う。

 

「私たちを閉じ込めていたのは、ムウマのねんりきだったのよ。でもあのクチートがムウマにバトルをしかけたことで、ムウマの集中力は削がれてねんりきは解かれた。そういうことね……」

「とにかく、外に出ましょう、ヒトミさん」

 

 ミナトは窓枠を乗り越える。ブラッキーもそれに続いた。

 ヒトミはヤミラミを抱えあげると、窓枠を越えた。

 ミナトとブラッキーはサクヤの方に向かった。

 

「サクヤ! 助けに来てくれたんだね!」

「クチートのやつ……やっぱりミナトについていきたそうにしてたからな」

 

 ヒトミとヤミラミもふたりの傍にやって来た。

 

「マァ……」

 

 ムウマは口元にシャドーボールを生成した。そしてクチートに向かって放つ。

 

「クチート、アイアンヘッドで弾き返すんだ!」

「クチ!」

 

 クチートは大顎を銀色に光らせ、シャドーボールを弾いた。

 

「ムゥ……!」

 

 ムウマはそのシャドーボールをかわす。

 

「ム〜マ〜!」

 

 ムウマは両目を光らせる。すると、庭に生えていた植物の蔓がスルスルと伸び、ミナトとサクヤ、ヒトミ、そしてクチート、ブラッキー、ヤミラミを縛り、宙に持ち上げて拘束した。

 

「ム〜マッ!」

 

 ムウマはそんなミナトたちに向かい、口から星型の光、スピードスターを放つ。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 ミナトたちは悲鳴をあげる。

 

「サクヤ……! ムウマってこんな攻撃的なポケモンなの!?」

「いや……確かにイタズラ好きではあるけど、ここまで攻撃的だとは図鑑に書いてなかった……!」

「多分……なにか理由が……」

 

 ミナトは言う。

 

「こ、こうなったら……」

 

 ヒトミは蔓に縛られながらもモンスターボールを取り出して投げた。

 現れたのはジュペッタだった。

 

「ジュペッタ……私たちに向かって10まんボルトよ!」

「ジュペッタッ!」

 

 ジュペッタは全身から電撃を放つ。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

「しびれびれぇぇぇっ!」

 

 ミナトたちは電撃を浴びるが、それと同時に蔓が焼き切られる。ミナトたちは地面に落下した。

 ミナトは落ちてくるクチートを両腕で抱き止めた。

 その時だった。庭を横切ってひとりの男が走ってくる。

 

「こらーっ! お前たち、何をやっている!」

 

 その男は、工事現場の作業着にヘルメットという出で立ちだった。

 

「な、何をって……」

 

 サクヤが言う。

 

「大方肝試しだろう。そういうの、困るんだよ、こっちとしては」

 

 男は腕を組んだ。

 

「最近になって、幽霊の噂がどこからか立って、肝試しに訪れる人たちが相次ぐようになって……」

「あの……あなたは?」

 

 ミナトは尋ねた。

 

「この屋敷の解体工事責任者だよ。お前たちみたいな肝試しでやって来る若者対策のため、今夜はこの近くで張り込みをしていたんだ」

「解体工事……」

 

 ミナトは思い出す。そういえば、この屋敷に入る時に、コーンバーが置いてあったけど、あれって……。

 

「この屋敷はもうすぐ解体されて、住宅街になるんだ」

 

 工事責任者は言った。

 その時だった。

 

「ム〜マッ!」

 

 ムウマが首元の赤い宝石から赤い光線を発射してきた。パワージェムだ。光線は工事責任者に向かっていく。

 

「危ない!」

 

 ミナトは工事責任者を突き飛ばして庇う。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 ミナトの背中にパワージェムが直撃した。

 

「クチ!」

 

 クチートが鳴いた。

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