とある研究施設、そこに、幌をかけられた大きな荷物が手押し車に乗せられて運ばれていた。手押し車を押しているのはひとりの痩せ型の研究員だった。眼鏡をかけたその研究員は、傍にドガースを従えている。
「ロンド博士」
と研究員は同じ部屋にいた男に声をかけた。
「ドガ〜ス」
ドガースも鳴く。
「ご指示通り、運んできましたが……」
「うん、ご苦労だった」
水色がかった白い髪の男は言う。
「では、幌を退けてくれ」
「はい」
研究員は幌を剥がした。
「これは……」
白い髪の男の隣に立っていた女は息を飲む。
そこにあったのは、半ば岩に埋まった、古い金属製の剣と盾だった。
「ガラル地方に伝わる剣と盾だ。ここにはあるポケモンの力が秘められているといわれている」
「あるポケモンの力……」
その時、部屋の扉が開き、また新たな男が姿を現した。白衣を着たその男は、紫色の髪に薄桃色のメッシュが入っている。
「かつて厄災に見舞われた街があった」
と男は言った。
「その街は二匹の英雄と呼ばれしポケモンによって救われた。その名は剣、そして盾。二匹の英雄はふたたび厄災がこの世に生じた時のために、自らの力をこの遺物に閉じ込めたと言われている」
「その遺物が……ここに」
黒髪の女は言った。
「でも……力が宿っているって……どういうことなんでしょう」
研究員は息を飲みながらも尋ねる。
「ドガ〜ス」
ドガースが鳴いた。
「それを突き止めるのが……」
と白い髪の男は言った。
「我々の仕事だ」
それから彼は付け加えた。
「ネオ・バトルタワーの完成式典の場を借りて、研究成果を発表したい。それまでに謎が解明できればいいのだが……」
*
マサトはヤマブキシティにある五階建ての小さなビルを見上げていた。その傍にはキルリアが立ち、同じようにビルを見上げている。
「確か……ここのはず……だったけど……」
「あれっ、マサト? どうしたの?」
そこで彼に声をかける者があった。
クチートを連れたミナトだった。
「ミナト! 来てくれて助かったよ。いやー、ポケモンサービスの事務所って確かここだよなーとは思ったんだけど、でも、なかなか入る決心がつかなくって……」
「どうしたの? あっ、何か依頼?」
「そういうわけじゃないんだけど……えっと、ポケモンサービスのメンバーって、ミナトも含めて全部で三人って話だったよね」
「うん、そうだけど……」
「ならちょうどよかった」
「何の話?」
「うん……色々と……ね」
「あっ、上がってってよ。みんなのこと、紹介したいしさ」
ミナトは言った。
ミナトはマサトをポケモンサービスの事務所に迎えた。
「ん? どうしたの? ミナト、新しい依頼人?」
ツキホが床に両脚を広げながら尋ねる。
「いや、そんなんじゃなくって……というか、どうしたの? そんな柔軟体操みたいな……」
「あぁ、これ?」
とツキホは立ち上がりながら言った。
「ジュンサー様みたいに悪人を捕まえるのに、やっぱり身体の柔らかさを鍛えておかないと……と思って、チャーレムを参考に色々やってたんだけど……」
「こいつの身体はいわタイプみたいにカッチカチだぜ」
サクヤが過去の依頼の記録が入っているファイルをパラパラとめくりながら言う。
「マサト、紹介するよ。ツキホにサクヤ、ポケモンサービスの仲間で……」
「ブイ」
イーブイが所長用デスクの上に飛び乗った。
「それからこのイーブイがうちの所長で……」
「イーブイなのに、所長なの!?」
マサトは言う。
「うん、イーブイ所長が所長になったのには、深ーいわけが」
「エリキ?」
マサトの足元に、エリキテルが歩いてきた。
「それから、この子はエリキテル。新しい持ち主が見つかるまで、僕たちが預かっているポケモンなんだ」
「で、依頼人じゃないとするとなんなんだ? えーっと……」
サクヤはファイルを棚に戻して言った。
「マサトだよ。相棒のキルリアと一緒にカントーリーグ制覇を狙って旅をしているんだ」
ミナトは紹介する。
「キルッ」
キルリアが鳴いた。
「よろしくね」
マサトは言う。
「実は……これ」
とマサトは三枚のハガキを取り出した。
「これは?」
ミナトはハガキを受け取って尋ねる。ツキホとサクヤもハガキを手に取った。
「ラルースシティ、ネオ・バトルタワー完成記念式典招待状……そう書いてあるけど」
とサクヤが言う。
「僕のところに、これが四枚届いて……本当は、僕がポケモントレーナーになる前、三年前に一緒に旅をしていた人たちのところに届くはずのものだったんだ。でも、お姉ちゃんはトップコーディネーターとして、雑誌やテレビ局の取材で忙しいし、他のふたりも、ポケモンドクターとしての仕事で予定が埋まっちゃってたり、はたまた世界チャンピオンになってもまだ、世界中を旅している最中だったりで……」
「それで、三枚が必然的に余っちゃったから、私たちのところへ持ってきたってわけなのね」
ツキホは言う。
「いいの? 私たちみたいな……」
「うん、ミナトにはこの前キルリアを助けてくれた恩もあるわけだしさ」
「まぁでも……俺たちがそのラルースシティって街に行くとして……どうやって行くんだよ。遠いんだろ? その街」
「ホウエン地方だよ」
とマサトは答える。
「でも、移動手段については問題ないって、その招待状に書いてあるよ」
「なになに……」
とツキホは招待状を読み込む。
「ヘリコプターで迎えに来る……っと」
「ヘリコプター!? 凄い……要人扱いだね!」
「クチ!」
ミナトとクチートは言う。
「うん、三日後に……ヤマブキシティのシルフカンパニーが所有しているヘリポートに、ラルースからのヘリが飛んでくるってさ」
マサトは言った。
三日後、ミナト、マサト、ツキホ、サクヤ、クチート、キルリア、そしてイーブイ所長とエリキテルの姿はシルフカンパニー本社ビルの屋上にあるヘリポートにあった。
「エリキテルも連れていくの?」
ミナトが尋ねる。
「当たり前だろ」
エリキテルとイーブイ所長を抱えたサクヤは言った。
「俺たちがいない間、誰がエリキテルの世話をするんだよ」
「そっか……」
しばらくして、黒いヘリコプターが降下してきた。
「来た……あれだ!」
マサトがヘリコプターを指さす。
「キルッ」
キルリアも鳴いた。
ヘリコプターはゆっくりと降下してきて、ヘリポートへと降り立った。
ヘリコプターから、ひとりの白衣姿の男が降りてくる。眼鏡をかけた、痩せ型の男だ。傍らにはドガースを連れていた。
「マサトさんとその御一行ですね。お迎えに上がりました。私はロンド博士の助手を務めております、カズキと申します。ささっ、どうぞ、ヘリコプターへ」