水色がかった白い髪の少年がいた。彼は熱帯地方を再現した温室で、天井からぶら下がっている植木鉢に、水をあげていた。彼の肩にはプラスルとマイナンが乗っている。
「プラスル、マイナン。そろそろ……みんなが到着する頃かな」
少年は言った。その時だった。下草を掻き分けて、一匹のエーフィが現れた。
「エーフィ?」
少年は首を傾げる。エーフィの頭には、小型のカメラが取り付けられていた。
「エフィッ」
エーフィは少年の前を駆け抜けていく。
「マイッ!」
マイナンはその姿を見て飛び出していく。
「あっ、ちょっとマイナン! どこへ行くの!」
少年はマイナンを追って駆け出した。
*
ヘリコプターはラルースシティにあるヘリポートにゆっくりと降りていった。
「わぁ……!」
ミナトはヘリコプターの窓の外を見て目を輝かせる。近未来的なデザインのビルが立ち並ぶ都市だった。ビルの間を縫うようにモノレールの路線が伸びている。街を囲む川沿いには無数の風力発電が並んでいた。
「皆さん」
とカズキは言った。そしてインスタントカメラ型のアイテムを取り出すと、それをミナトたちに向けた。
「ラルースシティでは来訪者のためにパスポートを発行しております。シティでは買い物も、公共機関の利用もパスポートを使うことになっているんです」
そしてミナトたちを順番に撮影していく。撮影が終わると、カメラの下部から顔写真付きのカードが飛び出してきた。
「これが……パスポート……」
ツキホはそれを手に取って言った。
やがてヘリコプターはヘリポートへと降り立った。
カズキが先頭に立ち、その後にマサトとキルリア、ミナトとクチート、ツキホ、そしてサクヤとイーブイ所長とエリキテルが降りる。
「おかしいですね……」
とカズキは言った。
「本来なら『彼』が迎えに来てくれると思ったんですけど……」
「彼……ですか?」
ミナトが訊く。
「僕に招待状を送ってきてくれた人だよ」
マサトは言った。
*
「マーイッ?」
マイナンはラルースシティにある公園の遊歩道で周囲をキョロキョロと見回していた。あのエーフィを見失ってしまった。
「マイナーン!」
プラスルを肩に乗せた少年がマイナンを探して現れる。
「マイ! マイマイ!」
マイナンは少年に飛びついて訴えるように鳴いた。
「どうしたの? 確かに僕もあのエーフィ……ちょっと気になったけど……」
「マイッ」
マイナンは鳴いた。
「でもすっかり予定の時間、過ぎちゃったなぁ。マサトたちのこと、迎えに行かなきゃいけなかったのに」
少年は腕時計を見て、そう言った。
*
そこから少し離れた場所にある陸橋の下に、一台の紫色をしたスポーツカーが停まっていた。その座席に、ふたりの若い女が座っていた。運転席に座る女は銀色の髪を、助手席に座る女は金色の髪をしている。
と、そこへあのエーフィが飛び込んできた。
「エーフィ、情報収集はしっかりとしてくれたかしら?」
金髪の女が言う。女はエーフィから小型カメラを取り外すと黒くカラーリングされたモンスターボールに、エーフィを戻した。
女は小型カメラからメモリーチップを取り出し、カーナビに差し込む。エーフィが撮影した映像が映し出された。
「姉さん、決行は……」
と銀髪の女は言う。
金髪の女は答えた。
「今夜ね。記念式典でみんなが浮かれている間に私たちは『剣と盾』を手に入れる……。今回もきっと上手くいくわ」
*
ミナトたちはラルースシティのヘリポートから市街地へと移動する。
ミナトはハイテクなその街並みに目を見張った。
「凄い……未来の街みたいだ!」
ミナトは駆け出す。すると、突然彼の足元の地面がゆっくりと移動を始めた。
「えっ、わっ、な、何!?」
ミナトは驚いてじたばたと両腕を動かす。
「クチ!」
クチートもミナトのすぐ側へとやって来た。
「動く歩道だよ!」
マサトがミナトに追いついてきて言う。キルリアもそれに続いた。
「動く歩道……?」
見ると、道の真ん中に、ベルトコンベアのようなレーンが伸びていた。反対側にはこちらとは逆向きに進む歩道がある。
「ブイブイッ!」
「エリキッ!」
サクヤの肩から、動く歩道に向かってイーブイ所長とエリキテルが飛び降りた。
「あっ、所長。あんまりはしゃぎすぎると怪我しますよ」
サクヤが言う。
「いいんじゃないの? たまにはハメをはずしてもさ」
ツキホはそう言って動く歩道へと足を踏み出した。
「式典までまだ時間がありそうだし」
とマサトはポケナビver.2.0を取り出し、時間を確認して言う。
「僕がラルースシティを案内してあげるよ。『彼』が今どうしているのかは気になるところだけどさ」
ミナトは感心したように周囲を見回す。
「へぇ……よく見ると人もポケモンも賑わってるなぁ。見て、クチート。プクリンがいるよ、かわいいなぁ」
路傍で、女性トレーナーと一緒にいるプクリンを見て、ミナトは言った。
クチートはプクリンとミナトの顔を見ると、やがて不機嫌そうに鳴いた。
そして飛び出していくと、大顎を突き出し、プクリンを威嚇する。しかしそこでクチートは反対側の動く歩道の上に飛び降りてしまった。
「クチート!?」
「クチ……!」
クチートも自らの状況に気がついたようで、目を見開く。だがクチートは動く歩道に乗せられてミナトの元から離れていく。
「クチート!」
ミナトは動く歩道を逆走して追いかけ始めた。
「あっ、ちょっと、ミナト!?」
ツキホが言う。
「ごめん! でも……クチートを追いかけないと!」
ミナトは動く歩道に乗っていた人の山を掻き分けてクチートを追った。
「クチートと同じレーンに乗ればいいだけの話じゃないの」
ツキホはため息混じりに言った。
*
「おーい、クチート!」
ミナトは動く歩道を降り、芝生の上をキョロキョロと見回しながらクチートを探す。
「おかしいなぁ、クチート、どこに行っちゃったんだろ……」
その時だった。
「ねぇ、君」
とミナトは背後から声をかけられる。振り返ると、そこにはクチートを抱えた少年が立っていた。年齢はミナトと同じくらいだが、背の高さは若干低い。髪色は水色がかった白色をしていた。肩には二匹のポケモン、プラスルとマイナンが乗っている。
「このクチート。もしかして……君のポケモン?」
少年は言う。
「う、うん。ありがとう!」
「クチ!」
クチートは少年の腕から飛び降りると、ミナトの方へと駆け寄ってきた。
「あっ、えっと……僕はミナト。ヤマブキシティから今日、このラルースに来たばっかりなんだけど……」
「そっか。僕はトオイっていうんだ」
少年は言った。