ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第11話 ラルースシティからの招待状! ガラルの剣と盾・4

「プクリン! のしかかりよ!」

 

 プクリンの縦回転が止まり、両腕両脚を広げ、キルリアの頭上に飛び込んできた。

 

「キルリア! サイコキネシスだ!」

 

 キルリアの両眼が輝いた。プクリンの動きは空中で止まり、そして後方へと投げ出される。

 

「プク……リン!」

 

 後ろ向きに倒れたプクリンに向かって、キルリアは飛びかかった。

 

「キルリア! トリプルアクセル!」

 

 キルリアは飛び上がったまま、空中で回転を始める。その足が氷をまとい始め、プクリンに連続で蹴りを浴びせた。

 

「プク……!」

 

 プクリンはふたたび後方に飛ばされる。そしてその目が渦巻き模様へと変わった。

 

「プクリン! 戦闘不能! スイート選手、リタイアです!」

「頑張ったわね、プクリン」

 

 スイートはプクリンをモンスターボールに戻した。

 キルリアとマサトは、クチートとゲンガーの戦いに目を向けた。

 

「キルリア、僕たちもクチートに加勢しよう!」

「ゲンンッ!」

「ゲンガー! アシッドボムよ!」

 

 ゲンガーは口から紫色をした液体の塊を発射した。

 

「クチート! よけて!」

 

 ミナトが指示し、クチートは後方に飛び退く。

 

「ミナトくん、それで避けたつもり?」

「え?」

 

 アシッドボムが地面に命中し、その飛沫が空中に飛び上がる。飛沫の何滴かがクチートの大顎に付着した。

 

「クチ……」

 

 クチートは地面に片手をつく。

 

「ただ単に避けるだけじゃ、相手の技を防ぎきれないことだってあるわ。それにアシッドボムはどくタイプの技。フェアリータイプを持っているクチートにはキツイんじゃないかしら」

 

 それからナツメはゲンガーに命じる。

 

「ゲンガー! ナイトヘッド!」

 

 ゲンガーは両眼から漆黒の闇を発射してきた。

 

「キルッ!」

 

 キルリアがクチートを庇うようにして前に立つ。

 

「キルリア……サイケこうせん!」

 

 キルリアは両手から極彩色の光線を放つ。しかしエスパータイプの攻撃はゴーストタイプの攻撃に飲み込まれ、キルリアとクチートは漆黒の闇に消えた。

 やがて闇が晴れると、両眼を渦巻き模様にして地面に倒れているキルリアとクチートの姿があった。

 

「キルリア! クチート! 共に戦闘不能! よって勝者はナツメ選手とスイート選手のペアとなりました!」

 

 ミナトとマサトは自身のポケモンの元へと向かう。

 そしてお互いに顔を見合せてからポケモンを抱き上げた。

 

「いい勝負ができてよかったよ、ミナト」

 

 マサトは言った。

 

「うん、こっちこそだよ。こういう場に立てて……」

「ミナトくんにマサトくん」

 

 ナツメが声をかけてきた。

 

「タッグバトルにおいて、バトル以上に大事なこと……それはタッグ同士がお互いを尊重することよ。それはポケモンも人間も同じだわ。ミナトくんもマサトくんも……それにクチートもキルリアも……それができていた。勝負自体は負けてしまったけど……でも、バトルとしては合格点だったわ。マサトくんは……カントーリーグ制覇、頑張ってね。せっかく私がバッジをあげたんだから」

「はい、頑張ります」

 

 マサトは頷いた。

 

「でも……ほんとにどうしてナツメさんがラルースシティに?」

 

 ミナトは言う。

 

「招待を受けたのよ。ヤマブキシティのジムリーダーとして、ある程度名前が知られていたからかしらね」

 

 とナツメは答える。

 

「なんだ、じゃあ僕たちと同じってわけですか。まぁ僕たちは知り合いのよしみみたいなものでしたけど……」

 

 バトルを終えると、ミナトたちの姿はネオ・バトルタワーに隣接する図書館にあった。

 そこにはナツメ、そしてさっきナツメとタッグを組んでいたスイートの姿があった。

 

「初めまして、私はスイート。今はホウエン地方のリーグ制覇を目指して、バッジを集めている最中なのよ」

 

 スイートは言った。

 

「この図書館には、世界各地のポケモンの資料が集まっているんだよ」

 

 トオイが本棚を見ながら説明した。

 

「僕も……ポケモンの研究者を目指してるから、ここには色々とお世話になってるんだけど……」

「へぇ……」

 

 ミナトが何気なく手に取ってみたのは、カロス地方の若き発明家が記したとされる本だった。

 

「シトロニックギアかぁ……科学の力って凄いなぁ」

「クチ?」

 

 クチートが首を傾げた。

 

「ねぇ、ミナトくん」

 

 ナツメがミナトの背後から声をかけてきた。

 

「式典まで……まだ時間があるから……この図書館で時間を潰すのもいいけど……」

 

 とナツメは何故かミナトから少し視線を逸らしながら言った。

 

「ちょっと……外に出てみない? 外の空気が吸いたい気分なのよ」

「えっ、いいですけど……」

 

 ミナトはクチートを抱き上げた。

 

 空は少し夕焼けに染まりかけていた。

 ミナトとクチート、そしてナツメは芝生の上を歩く。

 

「この前、約束したわよね」

 

 ナツメは言った。

 

「あなたのニューラを探した借りは……いつか返してもらうって」

「はい……言いました。……って僕、何かされちゃうんですか!? ま、まさかまた変な服を……」

「それは振り? 着たいの?」

「あっ、や、そういうわけじゃ……」

 

 ミナトは慌てて否定をする。ナツメはくすりと笑った。

 

「こういう借りの返し方はどうかなと思って……」

「どういう返し方ですか?」

「うーんと、その前に……ひとつだけ確かめたいことがあるわ」

「なんですか?」

「ミナトくんって……好きな人、いる?」

「えっ」

「クチ!?」

 

 クチートも顔を上げた。

 

「いや、そんなこと……考えたこともなかったというか……って、うわ、何!? クチート!」

「クチーッ!」

 

 クチートが両手でミナトの脚をポカポカと叩いた。

 

「そう……やっぱり……そうなのね」

 

 ナツメは視線を落とした。

 

「えっ、何納得してるんですか? ナツメさん」

「クチー!」

「いだだだだだだ」

 

 クチートをあやそうと伸ばした右手に、クチートが大顎で思い切り噛み付いた。

 

「で、ナツメさん……借りの返し方って……」

 

 クチートからようやく解放されたミナトは訊く。

 

「うーん、やっぱりこの場じゃ言い難いわね……」

 

 ナツメは考え込む。

 

「またいつか、言い渡すことにするわ。さっ、式典に遅れないように……準備しないと」

 

 ナツメは建物の方に戻っていった。

 

「言い渡すことって……僕、どんな恐ろしいことをされるんだろう……」

「クチ……」

 

 クチートは腕を組み、ナツメの後ろ姿を見送った。

 

 そして、夜になった。

 ネオ・バトルタワーのバトルフィールドには、来賓として招かれた客たちが即席で置かれたテーブルに並んだ料理を食べたり、互いに談笑したりしながら思い思いに過ごしている。

 そしてバトルフィールドの中央には、幌のかけられた大きなオブジェが置いてあった。

 

「あれ……なんだろう」

 

 ミナトは言う。

 

「僕の父さん、ロンド博士がガラル地方から運んできたものなんだ。この場を借りてお披露目をするみたいだけど……」

 

 トオイが言う。

 そこでトオイに似た青みがかった白髪の男が、オブジェの前に進み出た。そしてマイクを持って話し始める。

 

「皆様、今宵はネオ・バトルタワー完成式典にお集まりいただきありがとうございます。タワーの完成を祝い、ここに私が新たに研究しているガラル地方の剣と盾を皆さんの前にお披露目したいと思います。それでは……!」

 

 研究員のカズキがドガースを伴って歩いてきた。その反対側からはロンド博士の助手、ユウコが歩いてくる。そしてふたりは幌に手をかけ、それを勢いよく取り払った。

 そして一同は息を飲んだ。そこから飛び出してきたのは一匹のアリアドスだった。

 

「アリィ!」

 

 アリアドスはバトルフィールドに着地をする。

 

「な、何がどうなっている!」

 

 ロンド博士は狼狽して言った。

 

「わかりません!」

 

 カズキも言う。

 アリアドスの背中には銀色の装置が取り付けられていた。

 

「アリッ!」

 

 アリアドスは口からどくばりを発射する。どくばりは即席のテーブルを打ち砕いた。

 来賓客たちは悲鳴をあげて後ずさる。

 

「く……一体何が……」

 

 ミナトは歯を食いしばって言った。

 と、そこでアリアドスの背中に取り付けられていた装置から立体映像が浮かび上がる。ふたりの女の姿だった。

 

「私たちは怪盗姉妹、ザンナーとリオン。『ガラルの剣と盾』はいただいたわ。何もしないで退散……という手もあったけど……今日は式典でしょう? 祝砲のひとつでもくれてやらないと。アリアドス、パーティ会場を破壊してから退散するのよ」




【次回予告】

ミナト「盗まれてしまった『ガラルの剣と盾』。そして僕たちの前に立ちはだかる怪盗姉妹、ザンナーとリオン。剣と盾はみんなのものなのに……それを盗むだなんて! ……って、剣と盾から現れたのは、ポケモン!? 次回『盗まれた秘宝! 怪盗姉妹登場』をお楽しみに!」
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