ザンナーとリオンの立体映像が消えると、アリアドスは人波を強引にかき分けてバトルフィールドの隅へと向かった。そして角からソーラービームを放ち、観客席を破壊する。そこに生じた穴に、アリアドスは飛び込んでいった。
「怪盗……」
とツキホは言った。
「許せないわ。正義のために……捕まえなきゃ!」
そしてツキホはモンスターボールを取り出す。
「また始まった……」
肩にエリキテルを乗せ、両腕にイーブイ所長を抱えたサクヤはため息をついた。
「行くのよ! スピアー! あのアリアドスを追いかけて!」
「スピ!」
スピアーはモンスターボールから出てくると、アリアドスが開けた穴に向かって飛び込んだ。
「ミナト、サクヤ! 私たちも追いかけるわよ!」
ツキホは駆け出す。
「えっ、僕たちも!?」
「当たり前でしょ! 泥棒を捕まえてこの街のジュンサー様に引き渡す……それが市民の義務なんだから!」
「う、うん!」
ミナトはクチートを抱え上げると走り出した。
「お、おい、待てって!」
サクヤもそれを追いかける。
「なんか……すごい人たちだね」
トオイは言った。
「プラッ」
「マイィ」
プラスルとマイナンも同意する。
「うん、昔の……色んな冒険を思い出すよ」
マサトも言った。
*
アリアドスが逃げ込んだ穴の中には配管類が伸びていた。照明は無く、真っ暗だった。
ミナトはモンスターボールを取り出すと、投げる。
「ブラッキー、フラッシュ!」
ブラッキーが出てきて、額の黄色い輪っかから光を放射した。
ブラッキーの先導で、三人は太い配管の上を慎重に進んでいく。
しばらく進んでいくと、ツキホはスピアーの姿を見つけた。スピアーはアリアドスの糸で、壁に拘束されていた。
「スピアー!」
ツキホはスピアーに駆け寄った。
「ス……スピ……」
スピアーは申し訳なさそうに鳴いた。
「今、助けるわ」
ツキホは両手を使って、スピアーを拘束していたアリアドスの糸を引き剥がし始める。
*
バトルタワーに隣接する研究所に、ロンド博士、ユウコ、そしてカズキとドガースが集まっていた。
「博士、ジュンサーさんへの連絡、終わりました。もうすぐ到着するものと思われます」
携帯電話を下ろして、ユウコは言った。
「ご苦労だった。しかし怪盗は……どこからどうやって『剣と盾』を盗み出し、そして今はどこに……」
その時、部屋の自動扉が開き、紫色の髪にピンク色のメッシュが入った男が現れた。
「レイ博士」
とロンド博士は言う。
「件の剣と盾には、私が独断でGPSを取り付けておきました。居場所は……わかっております」
「なんと……」
レイ博士はタブレット型の端末を取り出して続ける。
「GPSによると……まだラルースの市街地を移動していないようですね。今から追いかければ間に合う距離にあります」
「そうか……」
とロンド博士は言う。
「では、追跡を任せて構わないか?」
「はい」
レイ博士はそう言うと、部屋を出ていった。
廊下に出ると、そこにはプラスルとマイナンを肩に乗せたトオイが立っていた。
「君は……確か、トオイくんといったね」
レイ博士はトオイに話しかけた。
「はい。たまたま会話が……聞こえてきたので……」
とトオイは言う。
「追いかけるんですか。怪盗姉妹を」
「あぁ、そのつもりだ。安心したまえ、すぐに剣と盾は取り戻し、あのふたりは捕まえてみせる」
「あの……僕も一緒に行って……いいでしょうか。いえ、正確には『僕たち』と言った方がいいかもしれませんけど……」
「君が……?」
レイ博士はさっき出てきた扉の方に目を向けた。
「君に何かあったら、ロンド博士に……」
「大丈夫です。僕にはプラスルとマイナンがついてますから」
「プラッ」
「マイッ」
「わかった。ついてきたまえ」
レイ博士は言った。
研究所の建物の外で、ミナト、クチート、マサト、キルリア、ツキホ、サクヤ、イーブイ所長、エリキテルは待っていた。
「こんなにいるのか……」
レイ博士は言った。
「イ〜ブイ」
所長が鳴いた。
「え、所長は待ってるんですか?」
サクヤが言う。
「ブイ」
「じゃあ……俺も待ってます。ミナト、ツキホ、後は頼んだぜ」
「うん」
ミナトは頷いた。
「あそこに止まっているのが私の車だ。急ごう」
レイ博士は駆け出し、車に乗り込んだ。トオイはプラスル、マイナンと共にその助手席に乗る。
ミナトはクチートを抱え上げると後部座席に乗った。マサトも同じようにキルリアを抱え、後部座席に乗る。そこにツキホが続いた。
「剣と盾は……ラルース市街地の外へ向かっているようだ。奴らがラルースから出ないうちに間に合えばいいのだが……」
レイ博士がアクセルを踏み、車は発進した。
それと並走するように、空中をキューブ型のメカが飛んでくる。
「あれは……」
ミナトが言う。
「ラルースシティのガードロボットだよ」
トオイが説明した。
「街の警備を担当しているんだ」
「でも……ってことは、ガードロボットもザンナーとリオンを追いかけてるってこと? レイ博士のGPSを知ってたって……」
「私がさっき呼んでおいた」
マサトの言葉に、レイ博士は答えた。
「我々は地上から、そしてガードロボットたちには空中から怪盗姉妹たちを追跡してもらう」
見ると、ガードロボットは二機ほど、車の周囲を飛んでいた。
やがて、ラルース市街地を走る幹線道路へと出ると、前方に紫色に輝くスポーツカーが見えてきた。その後部座席には幌をかけられた大きな物体が乗っている。
「あれだな……」
レイ博士は言った。
*
「追ってきてるわ……」
車を運転する、銀髪の女、リオンは言った。
「普通の車じゃ、追いつけっこないのに」
助手席に乗っていた金髪の女、ザンナーが言う。
すると、追っ手の車に並走するように飛んでいたキューブ型のロボットがこちらへと向かってきた。
「止マリナサイ、止マリナサイ」
「邪魔ね……。エーフィ!」
ザンナーは黒くリペイントしたモンスターボールを投げた。
エーフィが飛び出し、トランクの上に着地をする。
「エーフィ、サイケこうせんよ!」
「エ〜フィッ!」
エーフィの額の宝石から極彩色の光線が放たれる。光線はロボットに命中した。ロボットは煙を上げ、その場でクルクルと回転を始める。そしてお互いにぶつかり合い、路傍に落下した。
*
「ガードロボットがやられた!」
レイ博士が叫んだ。
「だったら……」
ツキホはモンスターボールを取り出す。
「空からなら、ポケモンだって!」
そして窓を開け、モンスターボールを外に投げる。
「行くのよ! スピアー!」
ミナトもそれを見て、モンスターボールを取り出した。
「だったら僕も……。行け! ムウマ!」
「スピ!」
「ム〜マッ!」
スピアーとムウマが空中に飛び出した。