ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第12話 盗まれた秘宝! 怪盗姉妹登場・4

 別の場所で、避難誘導をしていたのはスイートだった。だがそんなスイート目掛けて街に燃え広がった炎が襲いかかってくる。

 スイートはモンスターボールを取り出して、投げた。

 

「クスクス、頼んだわよ!」

 

 クスクスという名前のカメックスが飛び出し、甲羅のハイドロキャノンから水流を放つ。クスクスは周囲の炎を消火していった。

 

「スイートさん!」

 

 向こうから走ってきたのはマサトとキルリア、そしてツキホだった。

 

「あなたたちは……」

「避難誘導、私たちも手伝います!」

 

 ツキホは言う。

 

「でも一体何が……」

「わからないわ。あれはポケモン……なの?」

 

 スイートが見上げた先、ビルの屋上に立っていたのは、その身体を漆黒に染めたザシアンだった。

 

「ザシアン……でもどうしてあんなことに……」

 

 マサトは言った。

 

 *

 

「マサト! ツキホ!」

 

 炎に包まれたラルースシティの中で、トオイはプラスル、マイナンを肩に乗せて叫んでいた。傍にはミナトとクチートの姿もある。

 

「ツキホ! マサト!」

 

 ミナトも叫んだ。

 

「クチーッ!」

 

 クチートも鳴く。

 その時だった。炎の中をかき分けて、漆黒に染まったザマゼンタが現れた。

 

「ザマゼンタ……? じゃあ、これはザシアンとザマゼンタの……」

 

 そこまで言ったところで、ミナトの脳裏にかつての記憶が蘇ってきた。アラモスタウンに突如現れた伝説のポケモン、ディアルガとパルキア。その戦いに巻き込まれた街、そして行方不明となった両親の姿……。

 

「あ……あぁっ!」

 

 ミナトは額を抑えた。

 

「クチ……」

 

 クチートが心配そうに鳴く。

 その時、ザマゼンタの額からはかいこうせんが放たれた。

 

「危ない!」

 

 トオイがミナトを突き飛ばし、庇う。

 はかいこうせんはトオイの背中のすぐ上を通過し、アスファルトを破壊した。

 ザマゼンタはふたりの上を飛び越え、炎の中を駆け抜けていく。

 

 *

 

 ザンナーとリオンは、燃え残っているビルの屋上から街の惨状を見ていた。

 

「どうしてこうなったのかはわからないけど……」

 

 とザンナーは言う。

 

「お宝は諦めた方が良さそうね」

「でも……この力、上手く利用すれば……」

 

 とリオンは反発する。

 

「無理よ、人間に扱える力じゃないわ。こんな街からは……とっとと退散するわよ」

 

 ザンナーはビルの上から飛び降りた。

 

「姉さん……」

 

 リオンはまだ迷っているという表情を浮かべていたが、姉に続き、ビルを飛び降りた。

 

 *

 

「ミナト……さっきは」

 

 とミナトの身体を支えながら歩いていたトオイは言った。トオイはミナトを、まだ火が燃え移っていないビルの入口にある階段に座らせた。

 

「思い出したんだ……」

 

 ミナトは言う。

 

「クチ……」

 

 クチートが鳴いた。

 

「昔のこと……。クチートや、ポケモンサービスの仲間たちと出会って、忘れようとしていたのに、やっぱり……駄目だった。僕自身が……僕自身の過去に、ちゃんと向き合ってこれなかったから……。僕の生まれ故郷は、アラモスタウン。昔、そこで伝説のポケモンたちが戦ったことがあって……僕はそれに巻き込まれて……」

「それでも……好きでしょ、ポケモンのこと」

 

 トオイは言った。

 

「え……?」

「見てればわかるよ、君とクチートのこと、昼間のバトルの仕方」

 

 それからトオイは続けた。

 

「好きな気持ちがあれば、どんなに時間がかかっても、トラウマは克服できるものなんだ」

「好きな……気持ち……」

 

 ミナトはトオイに支えられ、立ち上がった。

 

「うん、わかったよ……やってみる。僕は……止めてみせるよ。ザシアンとザマゼンタを」

 

 *

 

 炎の中、黒化したザシアンとザマゼンタは歩いていた。

 そんな二匹の前に、ミナトが現れた。ミナトの隣について歩いているのは、クチートだ。

 トオイはプラスル、マイナンと共にそんなミナトの姿を見守っている。

 ミナトはザシアンとザマゼンタの前で両腕を広げた。

 

「もうやめようよ、こんなこと」

 

 ミナトは言った。

 

「グルルルル……」

 

 ザシアンとザマゼンタは唸り声をあげる。

 

「君たちは確かに力だけの存在かもしれない。でも……ガラルの人々を守った伝説のポケモンであることに間違いはない。そうでしょ? だから、僕みたいな思いをする人を……作らないで欲しいんだ。だって……本当は好きなものを、好きと言えなくなることは……とっても悲しいことだから」

「ガルルッ!」

 

 ザシアンが地面を蹴った。そしてミナトに飛びかかってくる。

 

「クチ!」

 

 クチートがミナトを庇って、前に進み出ようとする。だが、ミナトは言った。

 

「クチート、いいんだ。僕は……」

 

 そしてミナトは飛びかかってくるザシアンを見据え、それから抱きしめた。

 

「君がどうしてこんなに黒くなったのかはわからない……でも、本当の姿は違うはずだ。だって君たちは……勇者だから」

 

 そしてザシアンを強く、ぎゅっと抱いた。

 

「グル……グルルル……」

 

 その瞬間、ザシアンの色はゆっくりと元に戻っていった。ザマゼンタも同様だった。

 本来のけんのおう、たてのおうの姿へと戻り、やがて金色の粒子となり、天へと昇っていく。

 

「やった……ミナト!」

 

 トオイはうんと頷いた。

 

 焼け残ったビルの陰から、その様子をじっと見つめる何者かがいた。

 

 *

 

 翌日、ミナトたちの姿はラルースシティのヘリポートにあった。

 ミナト、クチート、マサト、キルリア、ツキホ、サクヤ、エリキテル、イーブイ所長はラルースシティのロンド博士、ユウコ、トオイ、プラスル、マイナン、カズキ、ドガース、そしてレイ博士らと向かい合っていた。

 

「それじゃあ、僕たちはもう行くよ」

 

 マサトは言った。

 

「うん、久しぶりに会えて……楽しかったよ。今回もいろいろあったけどね」

 

 トオイは言う。

 

「しかしガラルの剣と盾……取り戻すことはできたが、興味深い研究対象だ。先人たちは何を思い、伝説のポケモンの力をあそこに閉じ込めたのか……」

 

 とロンド博士は言った。

 

「ヤマブキシティに帰るのか」

 

 レイ博士は言う。

 

「はい」

 

 ミナトは頷いた。

 

「私も普段はかの街のシルフカンパニーで研究者として働いている。もしかしたら……また会う機会があるかもしれないな」

「ミナト」

 

 トオイはミナトの方を見て言った。

 

「今回は……初めましてだったけど……でも、一緒にちょっとした冒険ができて……その……こう言うのも変かもしれないけど、楽しかったよ。だから今度は、僕がヤマブキシティに遊びに行くね。機会があったらさ」

 

 そしてトオイはミナトに右手を差し出した。

 

「うん、待ってるよ」

 

 ミナトはその手を握り返す。

 

 やがて、ミナトたちを乗せたヘリコプターはヘリポートを発った。

 トオイたちはそんなヘリコプターに向かい、手を振り続けていた。




【次回予告】

ミナト「僕たち、ポケモンサービスに新聞社からの取材がやって来た! これまでの活動内容を、語り始めた僕たちだけど……うーん、でもなんだか怪しいんだよなぁ、この新聞記者さんたち。次回『進め! ポケモンサービス』をお楽しみに!」
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