以前、何かの二次小説で、関係ないオリジナルをだらだらやったら読者はうんざりすると見たことがあって、そのとおりだと作者は思いました。
しかし、十年間をキンクリするのはそれはそれでどうなんでしょう...少し心配になりながら書きました。
『梁山泊』
深い山々と大きな河に囲まれた集落に住む傭兵集団。その存在は決して表舞台には現れず、あらゆる歴史の裏で暗躍されてきたとされる。現在の総数は百八名。全員がかの『水滸伝』に登場する「百八星」の称号を受け継いでいる豪傑ばかり。中でも特に腕に優れた者達は「
その「天罡星三十六星」の中でも最強とされる者が継承する星名・「
2009 5/2 中国の何処か 梁山泊の集落
「破亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜ッ!」
「乎羅亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜ッ!」
梁山泊の集落にある闘技場。そこでは今、二人の男女が試合をしていた。
男は刀身が三尺以上の太刀を、女は己の拳を、互いの”武”をぶつけ合っていた。
「也ァッ!」
先に仕掛けたのは女の方だ。女は拳を男の胴体部を狙って打つ。不思議なことに、女の拳には”炎”が纏ってあり、直撃すれば男の方はただでは済まないだろう。だが、
「扶ッ!」
男の方もそう簡単にはやられない。足を一気に沈め、拳を避ける。地面にへばりつくほど柔軟な体がなせる技であった。そして男は、体を沈めた勢いを殺さず、体のバネを使って反撃にでる。相手の逆風をめがけて太刀をふるう。
「ッ! 汰ァ!」
女はその一太刀を空中に飛んで回避する。三尺もある太刀の攻撃をよけるほど跳躍した身体能力は、見事の一言につきる。高く上空に逃れた女は、そのまま両拳に”炎”を纏わせ上空から襲い掛かる。
頭上という絶対の死角をとられた男になす術なし、と思われたその時。
「吻ッ!」
男は地面に得物である太刀を突き刺した。そして、
「覇ァ!」
「ッ!?」
地面に刺した太刀を踏み台にして跳躍した。男は一気に女のいる地点にまで到達し、そのまま太刀を女にむけて放つ。跳躍勢いがつき、鋭さをました一撃に女は辛くも防御する。しかし、男は空中だというのに器用に動き、いつのまにか男の方が女より上にいた。上下が逆転し、頭上の有利を得た男はすかさず鍛えられた健脚を女にむけて放つ。
「愚...!?」
”炎”による防御のおかげでダメージは少なかったものの、地面へ叩き付けるような威力の蹴りはガードした女の腕に僅かな痺れを残した。地面に到達する直前に受け身をとり、態勢を整える女。上空にはまだ男が浮遊しており、女の方に落下していた。
女は再び上空へ跳躍、なんてことはせず、呼吸を整え再び”炎”を纏う。先程よりも燃え盛る”炎”を拳に宿し、迎え撃つ準備をする女。
その様子を見た男は、体を回転させ、空中で屈伸する態勢をとる。
「扶ッ!」
男は屈伸の態勢から思いっきり”空気”を”足”で蹴る。パァンッ!と空気が破裂する音とともに男は一気に加速する。俗に言う「空中疾走」という技をやってのけたのだ。
男は加速し勢いを増して女にむかう。それをまち構える女。両者の得物が再びぶつかり合う。
そのぶつかり合いが勝負を決する一撃となった。勝者は雄々と立ち、敗者は悔しげに膝をついていた。
勝者は....
「....私の、負けだな。」
「あぁ、俺の勝ちだ。」
太刀を肩にかけ、笑みを浮かべた男が勝利宣言を言う。女は悔しそうに、しかし何処かすっきりとした顔を男にむける。
「これで私の黒星は十個。勝ち数はお前の方が多くなったな。」
「勝ち数は関係ないだろう。今の勝負、俺が負けて『武松』が勝っていてもおかしくなかった。」
二人は互いを讃える。その様子から、二人の仲が良好的で常日頃互いに切磋琢磨しあっているのが分かる。
「....次は負けないぞ、『宋江』。」
「おぅ、またやろうぜ『武松』。」
互いの健闘を讃えながら、男『
「いやぁ、すっかり負けなしになっちまったなぁ、宋江の奴。」
「今日の試合で連続百勝記録達成だしね~。さすがは「呼保義」ってとこだねぇ~。」
「此処に来た時は一番弱かったのになぁ。」
試合の様子を見ていた女性二人が、男・宋江を褒める。
髪を二つに束ね、滔々と話す方の名を『
「二人とも、お疲れ様。ほら、タオルだ。これで汗をふくといい。」
「あぁ、すまないな『林冲』。」
「わざわざありがとう。」
「試合で疲れただろ? そ、その...は、はちみつ漬けを作ってみたんだが、宋江....味見、してくれないか?」
「あぁ、ありがとう。......うん、美味いなこれ。」
「ほ、ほんとうか!? よかった.....あ、武松も食べてくれ!」
「.....あいつも変わったなぁ。十年前とはえらい違いだ...」
「ありゃもう”新妻”だね。さぞやいいパンツの匂いがするに違いない。」
「お前は相変わらず変態だな。」
宋江にかけよりタッパーに入ったはちみつ漬けをうれしそうに渡す女性。彼女の名は『林冲』。史進と楊志と同じく、宋江達とは親しい仲である。彼女は自作したはちみつ漬けが宋江に好評だったことが嬉しいのか、とても朗らかな笑みを浮かべていた。
「おぉい、みんな~。」
談笑していた彼等のもとに小柄な少女が声をかける。まだ年端もいかない少女のような外見だが、彼女の名は『
「どうした? ”入雲竜”。」
「ヒゲが何か話があるからみんなをつれてこいって。」
「雲雕
公孫勝は気怠そうに要件を伝えた。試合をしていた二人と観戦していた三人は互いに首をかしげる。
「何だろな、話って?」
「楊志、お前何かやったんじゃあないのか?」
「失敬な...私は最近林冲のパンツしか盗ってないよ。」
「わ、私の下着を盗んだ犯人はお前かッ!?」
「しかし珍しいな。宋江だけではなく、我等全員に用とは...」
「そうだな....ときに公孫勝。」
「ん? なに?」
宋江の言葉に公孫勝が応える。
「個人の主義主張は勝手だが......俺の師匠のことをヒゲと呼ぶとはどういう了見だ? (ニッコリ)」
「ひぃ!? ごごごめんなさい! つい口がすべって..!」
「口がすべった? ということは、お前は今だけじゃあなく、常日頃から師のことをヒゲと呼んでいるわけだな?」
「あッ!? いいいや、ちがっ..!」
「......後で、じっくり話を聞こうじゃあないか? (ニッコリ)」
「ぴぃぃい! たすけて武松! 宋江がこわいよぉ!」
目が一切笑ってない笑みに恐怖し、公孫勝は武松に泣きついた。プルプル震える公孫勝をよしよしと武松は頭をなでてあやす。
その様子から公孫勝と宋江の間には明確な上下関係があるようだ。
「....まぁ、今は師匠のもとへ行こう。」
宋江の言葉で全員が移動を始める。要件があるという師のもとへ...
「天罡星三十六星が宋江、公孫勝、林冲、武松、楊志、史進。只今推参つかまつりました。」
「うむ、顔を上げい。」
「「「「「「 はッ! 」」」」」」
深く頭を下げた六人に野太い声がかかる。六人が顔を上げると、二m近い大柄な体系をした壮年の男がどっしりと座っていた。男の名は『雲雕』。梁山泊で師範を務める凄腕の武人であり、宋江がじきじき剣を習った師匠でもある。
「宋江、最近調子が良いみたいだな。”梁山泊最強の星”を継ぐに相応しい見事な活躍だ。」
「もったいなきお言葉。全ては師が私に剣を師事してくださったからこそ。これからも精進したします。」
「その意気だ。お前達も精進を怠るなよ。」
「「「「 はッ! 」」」」
「(うぇぇ、めんどくさ~い..)」
内心かったるそうにぼやいているのは、もちろん公孫勝である。
「師よ。我等全員に要件とは、いったいどのような?」
「うむ、それについてなのだが.....お前達。」
一呼吸の間をおいて、雲雕は六人に言った。
「日本に留学する気はないか...?」
「「「「「「.... はい? 」」」」」」
六人の声が綺麗に重なった。
「す、師傅? それはいったいどういう?」
「うむ、順に説明してやる。」
戸惑う六人に雲雕は説明する。先日行われた師範同士の会合の話を。
「最近、お前達が他の弟子達と試合をしていないことが問題になっていてな。まぁ、理由は分かる。他の者達では相手にならんからだろう。」
「それは...」
「隠す必要はない。お前達の腕はそれだけ飛びぬけている。仕方のないことなのだろう。」
六人は言いづらそうだったが、否定はしなかった。ここ最近、宋江達は六人でローテーションを組んで試合していて、他の梁山泊の弟子達とは一切手合せしていなかった。
と、いうのもこの六人。他の弟子達と比べて才能が飛びぬけて高いのだ。数年前まではそこまで差はなかったのだが、今では天と地ほどの差があった。それゆえ、六人は最近自分達以外と試合をしていないのだった。
「だが、同じ相手と何度も戦っているだけでは、伸びるものも伸びん。お前達はまだまだ”伸びしろ”がある。そこで我等師範は、”武”の盛んな日本の武士学校にお前達を留学させ、見聞を広めてもらおうと思ってな。どうだ?」
雲雕の説明を聞き、理由に納得する。確かに、日本には武士四天王や、西方十勇士といった名のある武人達が多くいる。彼等との戦いは自分達をさらに高めてくれるだろう。
しかし、そこに待ったをかける者が。
「はんた~いッ! 私留学なんてぜっっったいいや~!」
面倒くさがりの公孫勝であった。
「え~? 公孫勝、日本のアニメとか好きなんじゃなかったっけ?」
「ジャパニメーションは別! 学校なんて拘束しかないところなんて行きたくないぃ! 勉強なんてしたくない! 友達作りとかしたくな~い!」
完全に私情で拒否する公孫勝。そんな彼女をジト目で睨む宋江。
「公孫勝...」
「ひぃ!? そ、宋江あいてでも、いやなものはいや~!」
「...はぁ。師匠、こんなこと言ってますけど。」
「ふぅむ、公孫勝は嫌か...」
顎に手をあて意見をまとめる雲雕。まぁ、師範命令なのだから嫌でも行かなくてはならないだろうけど、と公孫勝以外が思っていると...
「...では公孫勝は此処に残るものとする。他の者は?」
「やっほ~~い!」
「!? し、師よ!? よろしいのですか!?」
たまらず抗議にでる宋江。てっきり有無をいわせず全員留学するものだとばかり思っていた。それは他の四人も一緒だった。
宋江の質問に雲雕は答える。
「まぁ、反対意見は出るだろうと思っていたからな。我々も強制してまで行ってもらいたいとは思わん。お主等が自分で決めよ。己をより高めたいと思うなら、留学することを儂は進めるが...」
確かに。見聞を広めるための留学だというのに、本人にヤル気がないのであれば意味がない。もしかしたら、師範達は公孫勝が留学を拒否するのを分かっていたのかもしれない。
「武松、お前はどうだ?」
「わ、私は...」
「じぃぃ...」
雲雕に問われ、返答しようとする武松に公孫勝がじぃっと視線を向けている。うるうると迷子の子供のような目で見つめられる武松は...
「....私も、残ります。公孫勝が一人だけ残ることになるのは、可哀想なので。」
「きゃっほ~い! 武松だいすき~!」
公孫勝は武松に抱きつく。この様子からわかるとおり、武松は公孫勝に甘い。武松が面倒見の良い性格であることも理由の一つだが、公孫勝の見た目が小さい子供のようなこともあり、甘え上手である公孫勝の性格も相まって、「甘える末っ子の言うことをホイホイ聞いちゃう姉」のような感じになっていた。
「公孫勝と武松は残る、か。他の者はどうする?」
まだ答えていない四人に雲雕が尋ねる。
すると、先程抗議した宋江が、我先にと答える。
「師よ...私は、日本に行きたいと思います。」
「ほぅ...」
その答えに、やはりかと雲雕は笑みを浮かべる。
「お前はそう言うと思っておった。やはり、”祖国”は気になるか?」
「はい。それに日本には、”世界最強”と呼ばれる者...「武神」の異名を持つ者がいると聞いています。」
いわく、その拳は全てを砕き、その足は全てを蹴散らす。特出した才であらゆる技を使いこなす、”最強”を背負う武人。
「...俺は、挑んでみたいです。俺の力が、剣が、どこまで”世界最強”に通用するのかを。俺の夢のため...祖父の夢のため...! 俺は”最強”に挑んでみたいです!」
「うむ。そうか...今のお前なら、届くかもしれんな。」
雲雕は宋江が幼いころから指導してきた。ゆえに、宋江が日本にいる「武神」に興味をもつだろうことは予想していた。
雲雕は思う。宋江の強さはまぎれもなく”本物”。もしかすると、この愛弟子は、”最強”に届きうるかもしれない。そう思えてならなかった。
「他の三人はどうする。残るか? 行くか?」
「わ、私も宋江とともに行きます!」
真っ先に答えたのは林冲であった。彼女は宋江に”特別な感情”を抱いている。宋江が行くと言えばついて行くだろうし、残ると言えば残っただろう。
「う~ん、林冲も行くなら私も行こうかなぁ。コピーできそうな技がたくさんありそうだし。」
「楊志も行くのか...ならわっちも行こうかな。日本ておもしろそうだし!」
「うむ。行くのは宋江、林冲、楊志、史進。残るのは公孫勝、武松でよいな?」
「はい。」
「は、はいッ!」
「は~い。」
「うぃっす。」
「はい...」
「は~いッ!」
それぞれが各々の理由をのべ、日本に旅立つ者、此処に残る者は決まった。
そして、時はすぎ、四人の旅立ちの日が訪れた。四人は空港にやってき、時刻表を見ながら自分達が乗る便を確認する。
見目麗しい四人は周囲の一般人達からもの凄く見られていたが、そんなことは気にしなかった。
「...しかし、寂しいもんだな。」
「? 何がだ宋江。」
「暫く会えないっていうのに、見送りは一人もいないんだな。俺が中国に行く時は、道場の兄弟子達や師匠の家族達が見送りに来てくれたもんだが...」
「へぇ、そうだったんだ。まぁ、ウチ等は割とドライなとこあるし、見送りのためにわざわざ空港まで来たがる奴なんていねぇか。」
「何か寂しいなぁ、それ。」
宋江は十年以上中国にいるが、今だに文化の違いというものに慣れないでいた。
「それにしても、やっぱりお前達三人は目立つな。さっきから一般男衆がお前達をずっと見ている。」
「それ言うなら宋江もだよ。女の子み~んな見てる。」
「? やはり”白髪”は珍しいかな? ”サングラス”しているのも、威圧的に捉えられてるのかな?」
「「「 そこじゃない。 」」」
「?」
宋江は自分も空港にいる多くの女性に見られているのに気付かない。また、その理由が宋江の容姿によるものだということにも。
「あ、そうだ。日本に着いたら、寄りたいところがあるんだけど、いいか?」
「それは構わないが。何処に寄るんだ?」
「あ、もしかして女のところか~?」
「こら、史進。そんなわけないだろう。」
「ははは、違うよ。昔通ってた道場に行きたくてさ。そこで世話になった師匠に、挨拶したくてな。」
宋江は思い返す。十数年前、たった一年だけの間だったが自分を鍛えてくれた、雲雕とは違い常に笑みを浮かべる優しげな印象の師を。
「学校に転入するまで、一ヶ月近く余裕があるからな。多少の寄り道は大丈夫だろう。」
「悪いな、我儘言って.....っと、飛行機もうそろそろだな。行くか。」
「あぁ。」
「日本かぁ~。おもしろそうなのいっかなぁ。なぁ、楊志。」
「日本の大和撫子のパンツはどんなのだろう...ウェヒヒヒ..!」
「少しは自重しろ、変態。」
「(元気かな、師匠。道場のみんな。そして.....大きくなっているだろうな、”由紀江”。)」
それぞれの思いを胸に、天罡星三十六星を継ぐ四人は日本へと旅立った。
今世の天罡星三十六星、最強の星を継ぐ者・『宋江』
彼は長い歴史のある梁山泊の中でも、異例の存在だった。
彼は、梁山泊に在籍しているが、元は国外・日本からわたってきた者であった。当然、最初は衝突があった。しかし、彼は負けなかった。血のにじむ修行のすえ、ついには梁山泊最強の座を手に入れた。その強さに、いつしか梁山泊の修行者達も彼を認めていった。
長年梁山泊で鍛えた”剣”を携えて、宋江の名を受け継ぐ彼は、再び生まれた国へ帰郷する。
彼の真名は、『雪代烈』。
何? 時間が一気に十年近く飛んだ?
逆に考えるんだ。「だらだらしていなくていい」と。
↑すいません。ネタです。本音を言えば、梁山泊での修業内容を文にするのと、原作キャラ達とどういった邂逅をしたのかとか、書くのすごい大変だとおもったからです。
次回、由紀江をどうしようか模索中です....