その男、目指すは最強の剛剣。   作:volcano

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自分の反省点は、自分を追い込むためと投稿日を前もって予言しとくくせに、遅れてしまうことだ。反省しなくては....

大真面目に反省します。





再会 2

 

 

それはまさに、言葉通り『嵐』のようだった。後に二人の闘いを観戦していた門下生はそう答えた。

ぶつかり合う剣閃は暴風を彷彿させ、刀がぶつかるたびに轟く太刀音は雷鳴を連想させる。実際の災害である嵐に誰も近づけないのと同じく、”二人”が巻き起こす”剣の嵐”を止められるものはいない。門下生達は、歓喜や焦燥、感銘、さまざまな気持ちを胸に、この嵐を静観していた。

 

遅れて道場にやってきた由紀江、沙也佳、も同じだった。沙也佳にいたっては顎が外れるのではないかと心配しそうになるほど口を大きく開けている。無理もない。何せ今、彼女達の父であり、師である大成が”真剣を用いて闘っているのだから。

『剣聖』と名高い剣客の真剣勝負。それは滅多に見られるものではなく、娘である彼女達もそうだ。

そして、父に剣をとらせるほどの相手。間違いなく超一級の実力者である挑戦者。かつて、この道場で剣を学んだという青年。黒色のサングラスに隠れたその双眸は、幼いころから変わらない。ギラギラと光らせながら、雪代烈は剣を振るう。

 

 

「破亜亜ッ!」

 

 

道場を揺らすかのような咆哮とともに、鉄をも寸断できるだろう威力がこめられた銀光が大成を襲う。受け止めることはできない。受け止めでもすれば、刀ごと一閃されるだろう。

一秒にも満たない刹那の思考で、大成は最適かつ最善の防御策をとる。襲いくる剣の力の向きを読み取り、巧みな剣さばきによって受け流す。斬鉄の威力を持った一閃は予定していた軌道から外れ、それは烈に大きな隙を生み出す。すかさず、大成はそこを狙う。

だが、

 

 

「扶ッ!」

「!」

 

 

烈は先程の一撃に使った勢いをうまく利用し、そのまま一回転。突かれる隙を消し、逆に次の一撃につなげた。

しかし、この程度で『剣聖』は揺るがない。回転の勢いも加わった追撃に臆することなく、研磨された技をもって難なく対応する。

そして再び起こる剣嵐。両者とも戦況は完全に拮抗していた。

 

 

 

 

「(まさかこれほどまでとは...)」

 

 

闘いの最中、剣に集中する思考とは別の頭の片隅で、大成は烈の成長に驚きながらも、心から喜んでいた。

まだ幼かったころ、体がボロボロになるまでイジメてまで強さを欲した少年。その少年が今、こうして自分と互角以上に剣を交わえるまでに成長したのだ。短かったとはいえ、彼を鍛えた師の一人として、その成長は嬉しかった。

 

 

「(よほど良い師に...いや、違うな。これは烈の”執念の力”が成したもの。単に教えた人物が、才能が優れていたからで終われるものではない。)」

 

 

誰よりも早く稽古し、誰よりも遅く稽古を終え、誰よりも進んで厳しい鍛錬をし、誰よりもねばり強かった。

一心に、『夢』へと突き進む思いがあったからこそ、烈はここまで強くなれたのだ。彼の努力を、教えた人物が良かったで終わらせてはいけない。

 

 

「(これに応えるには...) 私の本気をぶつけねばなッ!」

「ッ!」

 

 

大成から放たれた強烈な”剣気”に、烈は大きく間合いをとり集中力を高めた。少しでも意識をそらせば、即敗北につながると直感したからだ。

そして、大成が発した剣気を感じ取ったのは烈だけではない。知覚できるような派手さはない。されど空気が震え上がるほどの威圧は、道場全体にまで届いており、静観していた門下生達や、由紀江達もそれを感じ取った。

 

 

「お、お父さんが本気!?」

「は、初めて見るかもしれません...!」

 

「おぉう、あのダンヒゲ(ダンディなヒゲの略)、すっごいねぇ。師範たちクラスじゃないかな。」

「うむ、私達では太刀打ちできないだろう。」

「でも、今闘ってんのは、ウチの規則外野郎だ。どっちが勝つか、分かんねぇぞ。」

 

 

二人の娘は父の本気(マジ)に驚き、三人の幼馴染は友の勝利を祈る。

 

そして、剣気を真っ向からあびせられる烈は、『剣聖』の本気の剣を前に、口元が緩んでいた。

 

 

「ハハハ...師匠が俺に本気を出してくれるか。嬉しいな...嬉しいな!」

 

 

最強の剣客の一角である大成が自分を「本気を出すべき相手」と認めてくれたことに、烈は感動した。超一流の武人に腕を認めてもらえる。これほど武人冥利につきることはない。

師が自分を強者と認めてくれた。ならば、自分はどう応えるべきか。この感謝を、どうあらわすべきか。答えは、決まっている。烈は得物である太刀を回し、峯側を肩に乗せた構えをとる。

 

 

「いくぞ...師匠ッ! こっちも、本気(マジ)でいく!」

「あぁ、こい。」

 

 

『剣聖』黛大成、『梁山泊最強』雪代烈。超一級の剣客同士の真剣(マジ)本気(マジ)のぶつかり合いの火ぶたが、今降ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決着は十分にも満たない僅かな時間の内についた。

勝者は剣を相手の首筋にあて、敗者は膝をつき剣を落としていた。公平に言って、両者の実力に大して差はなかった。今回はこのような結果になったが、次回も同じかは分からない。今回勝ったのは...

 

 

 

 

 

 

「....見事。強くなった...本当に。」

 

谢谢,老师。(ありがとうございます、師匠)

 

 

二人は握手を交わし、この闘いの幕は閉じられた。その様は師と弟子というより、剣客同士が良きライバルと巡り会えた様のように見えた。

 

 

 

「お、お父さんに勝っちゃった...」

 

 

沙也佳は信じられなかった。確かに全盛期ではないが、父はあの『剣聖』。剣を扱う武人の中では間違いなくトップクラスの強さを誇る。実際、沙也佳は今まで父が負けた姿など一度も見たことはない。

ゆえに、父が負けたなどとても信じられなかった。それは今の闘いを観ていた門下生達も同じ意見だった。もっとも彼等は沙也佳とは違い、雪代烈を知っているからこその驚きであったが。

 

豆鉄砲でもくらった鳩のような表情をする妹の隣では、同じく目を丸くしている姉・由紀江がいた。しかし、彼女は別に父が負けたことに驚いているわけではなかった。彼女は驚愕しているというより、陶酔しているといったほうが正しいだろう。彼女は今の闘いを見て、正確には闘っていた「雪代烈」を見ていて、胸が高鳴っていたのを確かに感じていた。

 

 

「(この気持ちは...あぁ、思い出しました。幼いころ、初めて道場で”あの人”の剣をふるっている姿を見たときに感じた気持ち...あれに似ている。)」

 

 

由紀江は今でも鮮明に覚えている。まだ剣の道に入るのに抵抗があった幼いころ。そんな自分の背中を押してくれたのは他でもない”彼”。”彼”の剣をふるっている姿はとてもかっこよく、とても美しく感じた。

あの時も今のように胸を高鳴らせていたのを思い出した。

 

 

「(この高鳴りは、一体なんなのでしょう? 同じ剣を扱う者としての尊崇の気持ちなのでしょうか...それとも、全く違う別の”なにか”...?)」

 

 

純情で現世間とあまり馴染みのない少女は、その感情が何なのか分からずじまいだった。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。黛家では黛家族と烈、梁山泊の三人とでちょっとしたパーティーが設けられた。昼の大成と烈の対決でかすんでしまったが、十年ぶりに元弟子が帰ってきたのだ。ささやかだが祝おうと大成が提案したのだった。

 

 

「さぁさ! 烈君の好きな生姜焼きよ。たくさんあるから、遠慮なく食べてね。」

「ありがとう、おばさん。久しぶりだなぁ、日本の料理は。」

 

 

懐かしい故郷の味に舌鼓し、烈は久しぶりに会った師の家族達と会話を楽しんだ。この十数年やってきた修行のこと。梁山泊との出会いのこと。そこで出来たかけがえのない友人達のこと。語りたい事は山ほどあった。

そして楽しい団欒を過ごしている時、烈は”ある事”を思い出した。

 

 

「そうだ、忘れていた。由紀江、お前確か今年から高一だったよな?」

「え? は、はい。」

 

「それって、武士学校か?」

「は、はい。そうですけど...?」

 

 

いきなり話をふられて慌てながらも由紀江は肯定した。

 

 

「ん? 一体何の話だい、烈?」

「師匠。実は俺が、正確には俺達がこの国に来たのは、単に帰郷や観光が目的じゃあないんですよ。」

 

 

手に持っていた箸を置いて、烈は来国の理由を告げた。

 

 

「俺達は、梁山泊の師範達の命で日本の武士学校へ転入することになったんですよ。」

「ほ、本当ですか!?」

 

 

この話題に一番くいついたのは由紀江だった。烈の言葉に、満面の笑みを浮かべていた。

ちなみに一番しかめっ面になっていたのは林冲であった。

 

 

「あぁ、三年生として、転入することになったんだ。此処に来たのは、師匠達に会うのも理由の一つだけど、そのことを報告しておこうと思って来たんだ。」

「じゃ、じゃあ! 同じ学校に通えるんですか!?」

 

「そういう事になるな。」

 

 

烈の話に由紀江はとても喜んだ。

ここだけの話。彼女には友人と呼べる人物は一人もいなかった。学校でも道場でも、『剣聖』の娘という銘柄は彼女を疎遠にした。妹と違い内気で非社交的な彼女は、新天地での生活に密かに不安を感じていたのだ。

そんな中、自分をよく知る知人が共に新天地に来てくれると聞けば、彼女が心躍るのも頷ける理由だ。

 

ちなみに、由紀江が喜び烈と会話している様子をあまりよく思わない人物がいた。誰かは当人のプライバシー保護のためふせさていただく。

 

 

「けど、やっぱり由紀江は武士学校に通うんですね。此処からだいぶ遠くにあるから、普通の学校に行くのかもと思ってましたが。」

「先方の学長殿からの推薦でね。しかし、知己もいない地に一人でいくのは何かと心配だったんだ。烈がいるというなら安心だ。」

 

 

「あ、烈さんはいつごろから向こうに行かれるんですか!?」

「あぁ、実は明日には向こうに行かなくちゃあならないんだ。向こうの館長さんに挨拶しないといけないから。」

 

「そうなんですか、じゃあ明日もう帰ってしまわれるんですね。」

 

 

由紀江は少しガッカリした。折角十数年ぶりに再会したのだ。語りたい事は一夜では足りない。

しかし、これから同じ学び舎で学校生活を共に遅れるのだ。時間はたっぷりある。焦ることはない。そう思った彼女だったが、烈の言葉にひっかかるものがあった。

 

 

「あれ? 明日って東行きの新幹線ってありましたっけ?」

「ん? 東? いや、西だろ。福岡県って九州だから。」

 

「.....え?」

「.....え?」

 

 

二人の会話にわずかなズレが生じた。小さな、それでいて重大なズレが。まさか、と思いながら、由紀江は烈に尋ねた。

 

 

 

 

「....あの、烈さん達が行かれるのって「川神学園」ですよね?」

 

「いや、「天神館」だけど...」

 

 

数秒の沈黙がおとずれ、それを壊したのは由紀江の絶叫だった。

その後、由紀江が珍しく声を上げて激怒したり、それを必死になだめようと烈が奮闘したり、どうやら恋敵(?)は新天地にはいないようでほっとした林冲を他の二人が生暖かい眼でみていたり、その日黛家では夜が明けるまで様々なイベントがあったのだが、それは割愛させていただくとしよう。

 

 

 

 

 

翌日

烈達四人は九州行きの新幹線に乗るため朝早くに身支度し、黛家を後にしようと玄関先で挨拶をしていた。

 

 

「それでは師匠、おばさん、由紀江、沙也佳ちゃん。お世話になりました。」

「ました~。」

 

「飯うまかったぜぇ。」

「...ありがとうございました。」

 

「いつでも遊びに来なさい。負けっぱなしというのは、私も嫌だからね。今度来た時は、負けないよ。」

「......」

 

「由紀江、そろそろ機嫌を直しなさい。お別れにしかめっ面は駄目よ。」

 

 

そう母がなだめるものの、彼女の怒りはそうそう収まらないだろう。期待させるだけさせて裏切られてはしかめっ面にもなる。一応、一日一回電話するという約束で事は収めたのだが。

 

 

「悪かったって、由紀江。まさか武士学校が二つあるなんて思わなかったんだよ。俺が昔日本にいた時は一つだけだったし。」

「その頃からあったのは「川神学園」のほうですけど。」

 

「ぐ...」

「まぁ、こればっかりは烈が悪いからな。」

 

 

師からも言われては烈は何も言えなかった。まぁ、大成の言うようにこればっかりは烈が悪い。

余談だが、由紀江と烈が同じ学校に行かなかったことを喜んでいる者もいたが、くどいようだが本人のプライバシー保護のためふせさせていただく。

 

 

「宋江。そろそろ時間が...」

「あぁ...それじゃあ皆。時間だから、もう行くな。」

「うん。西にも力のある若人が多くいると聞く。いい経験をえるだろう。頑張っておいで。」

 

 

別れの挨拶をすませ、四人は黛家を後にした。お互い、顔が見えなくなるまで手を振って。

 

 

梁山泊から来た四人が向かうは、西の武士が集う「天神館」。曲者ぞろいのその場所で、はたしてどんな出会いが待っているのだろうか。

 

烈は、まだ見ぬ強者達を思いはせながら、西の地を目指す。

 

 

 





次回から「天神館編」が始まります。
主人公を天神館に行かせたのは、川神学園だと原作主人公組とどうしてもからむまなくちゃいけないし、多分烈の性格上大和とは相容れないだろうなぁと思ったからです。

さて、あの曲者集団とどうからませるか。また投稿スピードが落ちるかもですけど、がんばります。


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