美少女たちが金を払えば耳かきをしてくれる。しかも好感度が高い   作:三重知貴

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【番外編】親友・田中健太の「親友、またの名を外堀」

世界が平和であるためには、均衡(バランス)が必要だ。光があれば影がある。勇者がいれば村人がいる。そして、ハーレム主人公がいれば、その横で胃を痛める親友がいる。

 

 俺、田中健太は、今まさに世界の不条理を噛み締めていた。場所は放課後の教室。窓際の後ろから二番目の席――いわゆる「主人公席」では、俺の親友であるあいつが、机に突っ伏して幸せそうな寝息を立てていた。

 

 昨晩、またどこぞのヒロイン(おそらく1年のアイドルか、隣の家のラスボス)に精気を吸い取られたのだろう。あいつの寝顔は、無防備で、アホっぽくて、そして少しだけ艶っぽかった。耳がツヤツヤしているのが腹立たしい。

 

「……いいご身分だな、おい」

 

 俺はため息をつき、鞄を手に取った。あいつを起こしてゲーセンに誘うのも野暮だ。今日は一人で帰って、溜まったアニメの消化でもしよう。そう思った矢先だった。

 

 俺の視界が、不自然に遮られた。教室の入り口に、人影。それも一人ではない。圧倒的なオーラ(覇気)を纏った、学園の頂点に君臨するヒロインたちが、獲物を狙う猛獣のような目で、こちらを見ていたのだ。

 

 俺は背筋が凍るのを感じた。あいつは寝ている。つまり、彼女たちの視線の先にいるのは――起きている俺だ。

 

 これが、長い長い「田中の災難」の幕開けだった。

 

 ◆

 

Round 1:管理と肉体 ~生徒会長&陸上部エース~

 

「田中くん。少し時間をいただけるかしら?」

 

 最初に声をかけてきたのは、生徒会長の白鷺天音だった。完璧な着こなし、知的な眼鏡、そして有無を言わせぬプレッシャー。俺は直立不動で「はいっ!」と裏返った返事をした。

 

「い、命だけは助けてください。あいつが授業中に寝てるのは俺のせいじゃありません」

 

「ふふ、違うわ。……彼のことで、少し協力してほしいの」

 

 会長は優雅に微笑み、手帳を取り出した。そこには、びっしりとスケジュールが書き込まれている。

 

「彼、最近忙しそうでしょう? あちこちの『場所』に行ったり来たりして。……私としては、彼のスケジュール管理(マネジメント)を徹底したいのだけれど、私の目が届かない時間があるの」

 

 会長の目が光った。

 

「田中くん。彼と一番長く一緒にいるあなたなら、わかるはずよ。……彼が、来週の火曜日の放課後、空いているかどうか」

 

「えっ、あ、えっと……」

 

「火曜日だけじゃないわ。木曜日の昼休み、土曜日の午前中……。彼の『空き時間(スロット)』を、私に教えてくれないかしら? 効率よく、私の生徒会室へ誘導するために」

 

 怖い。完全に秘書かマネージャーの顔だ。あいつの自由時間をすべて「生徒会室での耳かきタイム」で埋め尽くそうとしている。

 

「おい会長! 抜け駆けはズルいだろ!」

 

 そこに割って入ってきたのは、女子陸上部のエース、早瀬理緒だった。ジャージ姿でタオルを首にかけ、健康的な太ももを惜しげもなく晒している。

 

「田中! あんたも男ならハッキリしなさいよ!」

 

「え、俺!? 俺は何も……」

 

「あいつさぁ、最近ちゃんとメシ食ってる? なんか痩せた気がするんだけど」

 

 早瀬さんは腕を組み、心配そうに寝ているあいつを見た。

 

「耳かきばっかされて栄養失調とか、笑えないから。……あいつの好物とか、最近ハマってる食べ物とかないわけ? あんたなら知ってるでしょ?」

 

「好物……焼きそばパンとか?」

 

「そんなんじゃなくて! もっとこう、デート……じゃなくて、食事に誘う時に釣れそうなやつ!」

 

 早瀬さんが顔を赤くして詰め寄ってくる。物理的な距離が近い。汗とシーブリーズの匂いがする。俺はパニックになった。

 

「えっと、あいつ最近、金欠だから……ガッツリした肉とか食わせればホイホイついていくと思います……」

 

「肉ね! よし、焼肉連れて行くか! サンキュー田中!」

 

 早瀬さんはバシッと俺の背中を叩いた。痛い。すると会長が静かに眼鏡を押し上げた。

 

「肉……なるほど。では私は最高級のステーキハウスを予約しましょうか。財力でねじ伏せるのも教育の一環ね」

 

「はぁ!? 会長、それ反則じゃないですか!?」

 

「勝負に反則も何もないわ。……田中くん、ありがとう。後で生徒会予算からジュース代くらい出してあげるわね」

 

 二人は火花を散らしながら去っていった。残された俺は、ジンジンする背中をさすりながら呆然とする。……俺は、あいつの個人情報を売ってしまったのか?いや、これは命を守るための正当防衛だ。あいつには悪いが、焼肉とステーキが食えるんだから感謝してほしい。

 

 ◆

 

Round 2:情報と分析 ~図書委員&隠れ美少女~

 

 教室を出て、廊下を歩いていると、背後からスッと気配が近づいてきた。忍び寄る影。俺は反射的に振り返った。

 

「……田中くん」

 

 そこにいたのは、図書委員の月見里静先輩だった。無表情。黒髪ボブ。そして、手には分厚いハードカバーの本。

 

「ひっ、せ、先輩! 俺は延滞してません!」

 

「……違う。君じゃない」

 

 先輩は一歩、また一歩と距離を詰めてくる。壁際に追い詰められる俺。壁ドンだ。ただし、美少女によるそれではなく、ホラー映画のワンシーン的なやつだ。

 

「……あの子。最近、何読んでる?」

 

「え? あいつですか? マンガ雑誌くらいしか……」

 

「……ふうん。活字、足りてない」

 

 先輩は不満げに目を細めた。

 

「……あの子の脳みそ、もっと耕さないと。私の言葉(愛)が染み込むように」

 

 発想が洗脳のそれなんですよ先輩。先輩は懐からメモ用紙を取り出し、俺の胸ポケットにねじ込んだ。

 

「……これ。あの子が好きそうなジャンルの傾向と対策。……あと、あの子が暇そうにしてる授業の時間割。……全部書いて、図書室のポストに入れといて」

 

「ええっ!? 俺スパイですか!?」

 

「……やらなきゃ、君の貸出カード、ブラックリストに入れる」

 

「理不尽!」

 

 先輩は音もなく去っていった。俺は胸ポケットのメモを震える手で握りしめた。授業中にあいつが何してるかなんて、寝てるか早弁してるかしかないんだが。それを報告しろと?

 

「大変だねぇ、田中っち」

 

 不意に横から声をかけられた。クラスメイトの鳴海ゆずだ。ボサボサ頭に黒縁メガネ、エンジ色のジャージ。一見すると地味なオタク女子だが、俺は知ってしまった。このメガネの下に、国宝級の美少女フェイスが隠されていることを。

 

「な、鳴海……。見てたのか?」

 

「丸見え。月見里先輩、相変わらず重いねぇ」

 

 ゆずはニヤニヤしながら携帯ゲーム機をいじっている。俺は縋るように言った。

 

「なぁ、お前ならあいつのこと詳しいだろ? なんとかしてくれよ」

 

「は? 私が助ける義理ないし。……むしろ、私も田中に用があるんだけど」

 

 ゆずがゲーム機を下げ、メガネの奥から鋭い視線を向けてきた。

 

「あんたさ。……あいつが『推し』の話してる時、どんな顔してるか教えてくんない?」

 

「推し?」

 

「とぼけんな。……私(・・)のことだよ」

 

 ゆずの頬がわずかに赤らむ。そういえば、あいつは鳴海の「素顔」を知ってから、やたらと現視研の部室に通っている。あいつにとって、今の鳴海は「推し」らしい。

 

「あー……。なんか、ニヤニヤしてるよ。『俺だけが知ってるレアキャラ』みたいな顔して」

 

「……っ! キッモ! ……でも、そっか。ニヤニヤしてんだ」

 

 ゆずは口元を緩め、嬉しそうに体をくねらせた。ギャップ萌えの破壊力がすごい。さっきまでの気怠げなオタク女子はどこへ行った。完全に恋する乙女じゃないか。

 

「情報、サンキュ。……これ、あげる」

 

 ゆずはポケットから飴玉を一つ投げ渡してきた。報酬が安い。

 

「あとさ。もしあいつが他の女の話してたら、即座に私にLINEして。……秒で特定して、拡散するから。」

 

「ネット工作はやめろ!」

 

 ゆずはヒラヒラと手を振りながら去っていった。俺は飴玉の包み紙を剥きながら、天井を仰いだ。リアルの監視と、ネットの監視。あいつの包囲網、完璧すぎないか?

 

 ◆

 

Round 3:毒と大人 ~アイドル&化学教師~

 

 下駄箱へ向かう途中、今度は正面から最強の敵が現れた。1年生のアイドル、久留米ましろ。ふわふわの髪に、完璧な笑顔。周囲の男子生徒が「あ、ましろちゃんだ!」「可愛い!」とざわめく中、彼女は一直線に俺の元へやってきた。

 

「田中センパイっ! こんにちはぁ~♡」

 

 甘い声。上目遣い。俺の腕にギュッと抱きついてくるボディタッチ。普通の男子ならイチコロだ。だが、俺は知っている。あいつから聞かされている。この天使の皮を被った生き物が、どれほど恐ろしい小悪魔(モンスター)であるかを。

 

「く、久留米さん……。あいつなら教室で寝てるよ」

 

「チッ。知ってますよそんなこと」

 

 一瞬で声が低くなった。ましろちゃんは俺の腕を離し、壁際に追い詰めてドンと手をついた。壁ドン(二回目)。

 

「私が用があるのはセンパイ、あなたです。……あのバカセンパイの親友なら、知ってますよね? 『弱み』」

 

「よ、弱み?」

 

「はい。あいつが一番嫌がること。一番恥ずかしがること。……一番、私に『屈服』しそうなネタ」

 

 目が笑っていない。あいつを社会的に抹殺するか、精神的に隷属させるための材料を探している。

 

「えっと……くすぐりに弱いとか?」

 

「物理じゃなくて精神的なやつです! ……はぁ、使えないですね」

 

 ましろちゃんは舌打ちをした。そして、ニッコリと悪魔の笑顔を作った。

 

「センパイ。もし良いネタ思い出したら、私のファンクラブのポストに入れてくださいね? ……もし協力してくれないなら、センパイが『女子の更衣室を覗こうとしてた』って噂、流しちゃおうかなぁ~♡」

 

「冤罪!! やめて! 俺の平穏な学園生活が終わる!」

 

「うふふ♡ 期待してますよ?」

 

 ましろちゃんはスキップしながら去っていった。俺は膝から崩れ落ちそうになった。あいつのせいで、俺まで社会的な死の淵に立たされている。どうなってんだこの連鎖。

 

「あらあら。可哀想に、へたり込んじゃって」

 

 頭上から気怠げな声が降ってきた。見上げると、白衣を着た化学教師、蓮見響子先生が立っていた。手には缶コーヒー。目の下にはクマ。あいつが「共犯者」と呼ぶ、残念な美人教師だ。

 

「は、蓮見先生……! 助けてください、女子生徒に脅迫されて……」

 

「んー? 面倒くさいからパス。……それより田中、あんたにお願いがあるんだけど」

 

 先生もしゃがみ込み、俺の目線に合わせてきた。薬品と、甘いコーヒーの匂いがする。

 

「あいつさぁ。最近、財布の紐が緩すぎない? 私のとこにもジャブジャブ金落としていくんだけど」

 

「先生が止めてくださいよ! 搾取しないでください!」

 

「いや、私は別にいいんだけどさ。……あいつ、金なくなると『身体』で払おうとするのよね」

 

「はい!? 身体!?」

 

「あ、変な意味じゃないわよ? 『金がないなら掃除でもなんでもします! だから膝枕させてください!』って、必死な顔で言ってくるの」

 

 先生は呆れたように、でもどこか楽しそうに笑った。

 

「で、結局私が折れて、タダで膝貸してやるんだけど……。あんた、親友なら少しは管理してあげなさいよ。あいつが野垂れ死んだら、私の『クッション』がなくなって困るから」

 

 先生は飲みかけの缶コーヒーを俺に押し付け、あくびをしながら職員室へ戻っていった。俺の手には、温かい微糖コーヒー。……結局、先生があいつを甘やかしてるだけじゃないか。「管理してあげなさいよ」って、それは先生の役目だろうが。

 

 ◆

 

Round 4:餌付けと癒やし ~家庭科部ギャル~

 

 疲労困憊で昇降口を出ようとした時、甘い香りが漂ってきた。バニラエッセンスの香り。条件反射で胃袋が鳴る。

 

「あ! 田中っちじゃん! おつー!」

 

 家庭科部のギャル、逢坂りな先輩だった。派手な金髪に、盛り盛りのネイル。でも、その手には可愛らしいラッピング袋が握られている。

 

「先輩……。お疲れ様です……」

 

「どしたの? 顔色悪いよ? ゾンビみたいじゃん」

 

 先輩は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。優しい。今日出会ったヒロインたちの中で、唯一純粋な優しさを感じる。あいつが「実家のような安心感」と言うのもわかる気がする。

 

「これ、食う? 新作のマドレーヌ」

 

 先輩は袋を一つ、俺に手渡してくれた。

 

「え、いいんですか?」

 

「いーよいーよ! 毒見……じゃなくて、試食! 感想聞かせてよ」

 

 俺はありがたくマドレーヌを頬張った。美味い。バターの風味が濃厚で、疲れた脳に糖分が染み渡る。

 

「うま! これ店出せますよ!」

 

「マジ? アガるわー! ……あ、そうだ。これさ、あの子にも食わせたいんだけど、あいつ甘さ控えめと激甘、どっちが好きかな?」

 

 先輩が小首を傾げる。なるほど、俺はリサーチ対象だったか。でも、マドレーヌが美味いから許す。

 

「あいつは……甘党ですね。疲れてる時は特に、脳が溶けるくらい甘いのが好きみたいです」

 

「りょ! んじゃ、砂糖マシマシで作ってくるわ! サンキュー田中っち!」

 

 先輩はキラキラした笑顔で手を振り、家庭科室へと戻っていった。……あいつ、愛されてるなぁ。俺も一万円払ったら、あんな風に甘やかしてもらえるんだろうか。いや、俺にはあいつみたいな「捨て犬オーラ」がないから無理だ。

 

 ◆

 

Round 5:ラスボスとの対話 ~幼馴染~

 

 校門を出て、通学路を歩く。夕日が長い影を落とす。俺は心身ともにボロボロだった。たかが友人の恋愛事情(?)に、なぜ俺がここまで振り回されなきゃならないんだ。

 

 「田中くん」

 

 背後から、柔らかい声がした。振り返ると、そこには買い物袋を持った如月紗英ちゃんが立っていた。栗色の髪が風になびき、夕日を浴びて神々しいまでに美しい。あいつの幼馴染にして、最強の「正妻」。

 

「あ、如月さん。……買い物?」

 

「ええ。今日はあの子、ハンバーグが食べたいって言ってたから」

 

 紗英ちゃんはふんわりと微笑んだ。その笑顔には、一点の曇りもない。あいつが今日、誰と何をしていようが、最後には自分の元へ帰ってくるという絶対的な自信。

 それはそれとしていつもハンバーグだなあいつ。

 

「……あのさ、如月さん」

 

 俺は思わず聞いてしまった。

 

「あいつのこと、心配じゃないの? なんか最近、いろんな女子と関わってるみたいだけど……」

 

 俺の言葉に、紗英ちゃんは少しだけ首を傾げた。

 

「心配? うーん……そうねぇ」

 

 彼女は俺の横に並び、ゆっくりと歩き出した。

 

「男の子だもの。寄り道くらいするわよ。……でもね、田中くん」

 

 彼女は俺の方を見ずに、空を見上げて言った。

 

「あの子の『耳』を一番よく知っているのは、私よ。……あの子が本当に安心して眠れる場所がどこか、あの子自身が一番わかっているはずだもの」

 

 ゾクリとした。言葉は優しいのに、そこに含まれる意味の重さが違う。これは「信頼」なんて生ぬるいものじゃない。「支配」だ。愛という名の、逃げ場のない包囲網。

 

「それに、田中くんがいるから安心してるのよ」

 

「え、俺?」

 

 紗英ちゃんは俺を見て、にっこりと笑った。

 

「田中くんがそばにいて、あの子のことを見ていてくれるから。……あの子が道を踏み外しそうになったら、止めてくれるでしょう?」

 

 ……買い被りだ。俺にはあいつを止める力なんてない。むしろ、各ヒロインたちの板挟みになって、すり潰されそうになっている。

 

「でも、もしあの子が本当に悪いことをしたら……教えてね? 私が責任を持って、お仕置きするから」

 

 その「お仕置き」が何を指すのか、俺は想像したくなかった。膝枕禁止令か?それとも、一生家から出られないようにする監禁コースか?

 

「……は、はい。善処します」

 

「ふふ。ありがとう。……じゃあ、私、先に行くわね。あの子、もうすぐ帰ってくる頃だから」

 

 紗英ちゃんは軽やかに歩き去っていった。その背中には、「勝利」の二文字が見えるようだった。

 

 ◆

 

 翌日の昼休み。俺は食堂で、あいつと向かい合っていた。あいつは能天気な顔で、俺が奢ったパンを齧っている。

 

「いやー、昨日はよく寝たわ。やっぱ紗英の膝は最高だな」

 

「……そうかよ」

 

 俺は死んだ目で野菜ジュースを啜った。

 

「田中、どうした? 顔色が悪いぞ。……もしかして、耳垢が溜まってるんじゃないか?」

 

 あいつが真剣な顔で俺の耳を覗き込もうとする。

 

「やめろ! 俺の耳はお前の管轄外だ!」

 

 俺は叫んだ。お前のせいで、俺がどれだけ苦労したか。生徒会長にスケジュールを握られ、陸上部に胃袋を管理され、図書委員に思想を監視され、アイドルに弱みを探られ、教師に愚痴られ、ギャルに餌付けされ、幼馴染に外堀を埋められた。

 

 俺はもう、あいつの親友というより、「ハーレム連合国の駐日大使」みたいなポジションになっている。

 

「なぁ、田中。今度の休みにさ、みんなでどこか行かないか?」

 

 あいつがとんでもない提案をしてきた。

 

「みんなって、誰だよ」

 

「え? 会長とか、理緒とか、静先輩とか……」

 

「やめろおおおお!! 第三次世界大戦を起こす気か! 血の雨が降るぞ!」

 

 俺は全力で止めた。そんなイベントが発生したら、間違いなく俺が最初の犠牲者(巻き添え)になる。

 

「チェッ。せっかく、田中にも良い出会いがあるかと思ったのに」

 

「俺の出会いとかどうでもいい! お前はまず、自分の生存戦略を考えろ!」

 

 あいつは不思議そうに首を傾げた。その耳は、今日も無垢に、そして罪深く輝いている。

 

 ……はぁ。結局、俺はこれからもこいつの世話を焼き続けるんだろう。モブにはモブの意地がある。この鈍感な主人公が、いつか誰か一人を選ぶその日まで(あるいは全員に刺されるその日まで)、俺は特等席でツッコミを入れ続けてやる。

 

 とりあえず、今日の放課後は速攻で帰ろう。これ以上、ヒロインたちに捕まってたまるか。

 

 そう決意した俺のスマホが震えた。通知を見る。『LINE:久留米ましろ』『センパイ♡ 放課後、ちょっとお話があります♡ 逃げたら……わかりますよね?』

 

 ……俺の災難は、まだまだ続きそうだ。誰か、俺の耳も癒やしてくれ。切実に。




豆知識・みんなと仲良し田中くん

ここから先の展開について、どういう方向性が見たいかのアンケートです。参考程度なので確定ではないです。

  • このままヒロインを増やし続ける
  • 主人公取り合いルート(親友視点)
  • 主人公取り合いルート(ヒロイン視点)
  • 各ヒロインルート書く
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