美少女たちが金を払えば耳かきをしてくれる。しかも好感度が高い 作:三重知貴
――あの人は、最初からちょっとだけ変だった。
私、白鷺天音は生徒会長である。
誰もが憧れる清廉潔白の象徴であり、学園の秩序を守る盾であり、そして何より、生徒たちの目標として立ち続ける存在だ。
それが天音に与えられた役割。
誰よりも正しく、誰よりも冷静で、誰よりも完璧であれ。
でも。
その役目を誰よりも近くで、少し不器用に支えてくれたのが――彼だった。
忘れもしない、生徒会選挙のあの時。
ポスターの掲示場所を巡って一部の生徒と衝突しそうになったとき、誰より先に動いたのは彼だった。
1年生でいきなり生徒会選挙に出るのは調子に乗っているという言い掛かり、味方のいなかった私を助けてくれた。
「誰が悪いとかじゃないです。ただ、天音さんの掲示が一番綺麗だったから、それが一番目立つ場所にある方がいいと思っただけです。」
そう言って、彼は笑った。
損得も見返りも求めない、ただの優しさだった。
なんとか相手の生徒をなだめてくれた後、そんなセリフを出せるなんてかっこつけた人だと思った。
でも何気なく、確かに彼はそこにいて、困っている誰かを助けようとしていた。本心からそうしていた。
まるで――
「ヒーローみたい、だったのよね……」
天音は小さく呟いた。メガネの奥で、彼女の瞳がほのかに揺れた。
でも彼は、そういうことを自分の価値だなんて思っていない。
誰かを助けることも、誰かに尽くすことも、彼にとっては『当たり前』でしかない。
だからこそ危なっかしいし、だからこそ……放っておけない。
彼の周りには、いつも誰かがいる。
笑顔で手を振るクラスの女子。
一緒にプリントを運ぶ後輩。
購買で並んでると、さりげなくお菓子を差し入れてくる女の子。
天音はそんな光景を目にするたび、胸の奥にちくりと棘が刺さる。
選ばれたわけじゃない。
告白されたわけでもない。
ただ、彼の隣にいたいだけなのに。
彼は気づいていない。
誰にでも平等に優しく、誰にでも差をつけない。
それがどれほど罪なのか、たぶん知らない。
――だから。
せめて、他の誰にもできないことで、彼との時間を手に入れたかった。
そして、チャンスは耳かきという形でやってきた。
◆
「ほら、おいで」
天音はソファーの上、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
柔らかく微笑みながらも、心臓はひどくうるさい。メガネを軽く押し上げ、彼女は少し緊張を隠すように視線を整えた。
こんなにも近くで、彼を感じるのは久しぶりだった。
――いいえ、はじめて、かもしれない。
彼の頭がそっと腿に乗る。
制服越しに伝わるぬくもりに、思わず息を飲んだ。
こうして触れていると、夢を見ているような気がする。
いつもの彼とは違う。
ふにゃ、と力が抜けた顔。
まるで犬みたいに撫でられるのを待っていて……。
ああもう、本当に……
「かわいい……」
口から漏れた声に、自分でびっくりした。
すぐに彼の耳元を確認したけど、どうやら寝たふりをしているだけらしい。
天音は、そっと耳かき棒を手に取る。
最初は、耳のふちをゆっくりとなぞる。
彼の身体がぴくっと反応する。
くすぐったい? それとも緊張してるの?
「ふふ……」
耳の奥、鼓膜に触れないように慎重に、でも確かに届くように。
カリ……カリ……と微かな音。
静かな部屋に、心音と、その音だけが響く。
――好き。
この瞬間が、すごく好き。
誰にも邪魔されない、彼との時間。
だから、生徒会室のカギは開けておいた。
誰かに見られて、勘違いされてもいい。
むしろ、そうなってくれた方が都合がいい。
彼が誰かに取られるくらいなら、先に既成事実を作ってしまえばいい。
それほどの覚悟を持って、彼の隣にいる。
「気持ちいい? ……よかった」
彼の表情が緩むたび、胸があたたかくなる。
どんなに完璧にふるまっても、こんな時間をつくれるのは、彼しかいない。
無防備な顔を見せてくれるのは、自分だけであってほしい。
わがままかな?
でも。
「……他の人にも、こんなふうに甘えたり、してないよね?」
問いかけは冗談のふりをして、でも目は真剣だった。メガネの奥で、彼女の視線は揺れながらも彼をしっかりと捉えていた。
もし、他の誰かがこの膝に頭を乗せていたら。
もし、他の誰かがこの表情を見ていたら。
その光景を想像するだけで、胸がざわつく。
彼が何も言わずとも、甘えるのが『自分であってほしい』と、心から思う。
「……別に、疑ってるわけじゃないの。ただ、私が一番でいたいだけ」
耳かきは続く。
淡々と、でも確かなぬくもりを込めて。
耳の奥に触れるたび、彼との距離が縮まっていくような気がする。
「……もう、かわいくて仕方ないんだから」
囁いた声は、届かないようで、届いていてほしい。
やがて、彼が目を開ける。
終わりの時間が近づいている。
「はい、お終いよ」
ほんの少し、寂しさを滲ませながらそう言った。
彼が頭を持ち上げる。
あたたかかった重みが消えてしまって、ちょっとだけ物足りない。
でも、次もある。
次も、甘えてもらえばいい。
耳かきでも、なんでも。
――私だけに。
「ふふ、また来てくれる?」
問いかけには、答えはいらなかった。
彼の表情を見れば、それだけで十分だった。
この気持ちは、まだ秘密。
でも、もう少しだけ近づいたら……きっと伝わる。
だから今は、耳かきという“魔法”で、そっと心を繋げておこう。
世界で一番大切な、たった一人のヒーローと。
私だけの犬と――
自分で書いてて思う、落差よ。
そのうちハーレム耳かきも書くし、修羅場耳かきも書く。
ここから先の展開について、どういう方向性が見たいかのアンケートです。参考程度なので確定ではないです。
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このままヒロインを増やし続ける
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主人公取り合いルート(親友視点)
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主人公取り合いルート(ヒロイン視点)
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各ヒロインルート書く