美少女たちが金を払えば耳かきをしてくれる。しかも好感度が高い   作:三重知貴

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アイドル・久留米ましろ。耳かきパート

 完璧超人の生徒会長に包まれ、野生の陸上部エースに揉みしだかれ、氷の図書委員に管理された。

 普通なら、ここで「上がり」だ。これ以上の贅沢を望めばバチが当たる。神様に後ろからドロップキックをされても文句は言えない。

 

 だが。男の業というのは、ブラックホールよりも深く、底がない。

 

 「聖母」「戦友」「管理者」。これだけ属性を揃えても、まだ埋まらないピースがある。そう、脳髄を直接揺さぶるような、甘ったるくて、痺れるような刺激。理性を溶かし、思考を奪い、ただ快楽の奴隷へと堕としてくれるような、「毒」のある耳かき。

 

 砂糖菓子でコーティングされた劇薬。あざとさと計算高さのミルフィーユ。そんな危険な遊戯に興じたい。

 

 僕はふらふらと校舎を彷徨い、1年生の教室が並ぶ西棟へと足を向けた。放課後の教室からは、キャピキャピとした黄色い声が聞こえてくる。その中でも、ひときわ高い人気を誇る「天使」がいる場所。

 

 久留米ましろ(くるめ ましろ)。

 

 1年生にして学園のアイドル的存在。ミルクティー色のふわふわとした髪、庇護欲をそそる小柄な体躯、そして誰に対しても愛想よく振る舞う完璧な「妹キャラ」。男子生徒の半分は彼女のファンクラブに入っているという噂さえある。

 

 だが、僕は知っている。天使の羽の裏側に、小さなコウモリの羽が隠されていることを。彼女の笑顔が、高度に計算されたマーケティング戦略であることを。そして何より――彼女のニーソックス絶対領域が、恐るべき破壊力を秘めた「底なし沼」であることを。

 

 僕が求めているのは、表の顔である「天使のましろちゃん」による癒やしではない。その裏にある、僕だけに向けられる嗜虐心と独占欲に満ちた「小悪魔ましろ様」による蹂躙だ。

 

 人気のない特別教室棟の渡り廊下。僕はそこで、スマホをいじっている彼女を見つけた。周囲に誰もいないことを確認した彼女は、いつものキラキラしたオーラを消し、ダルそうに壁に寄りかかっている。そのギャップこそが至高。僕は音もなく近づき、彼女の視界に入り込んだ。

 

「……あ、センパイだぁ~♡ やっほ~! こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ♪」

 

 瞬時にスイッチが入る。声のトーンが2オクターブ上がり、表情筋が完璧な「後輩スマイル」を形成する。プロフェッショナルだ。だが、その瞳の奥は笑っていない。「チッ、見つかったか」という舌打ちが聞こえてきそうだ。僕はその演技を堪能しつつ、懐から財布を取り出した。

 

 今回は、六千円だ。天音先輩(0円)、理緒(4000円)、静(5000円)ときて、さらにレートを上げた。このインフレこそが、僕の欲望の深さの証明。僕は千円札を六枚、扇のように広げて彼女の鼻先に突き出した。

 

「……は?」

 

 ましろの動きが止まった。キラキラしていた瞳から、スッとハイライトが消える。素が出た。ご褒美である。

 

 僕は自分の耳を指差し、次に彼女の膝元を指差す。そして、周囲を見回して「誰もいない今だからこそ」というジェスチャーを加える。言葉はいらない。金で「天使」を買う。その背徳的な取引を持ちかけているのだ。

 

「……ぷっ。あはは! センパイ、何やってるんですか? バカなんですか? それとも頭沸いちゃったんですか?」

 

 遠慮のない罵倒。だが、その声色は先程の「作り物」よりも、ずっと楽しそうだ。ましろは僕の手から六千円をひったくるように受け取ると、ペラペラとめくって確認し、つまらなそうに突き返してきた。

 

「いりませんよ、こんな端金。……センパイの全財産なら考えてあげてもいいですけど?」

 

 小悪魔の要求は厳しい。だが、拒絶ではない。彼女はニヤリと唇の端を吊り上げ、空き教室の一つ――視聴覚室のドアを顎でしゃくった。

 

「……タダでしてあげますよ。その代わり、私の暇つぶしになってくださいね? おもちゃ。」

 

 「おもちゃ」認定いただきました。ありがとうございます。僕は尻尾を振る幻影を背負いながら、彼女の後について視聴覚室へと入った。

 

 防音設備の整った室内は、外界の音を遮断し、奇妙な閉塞感を生み出している。ましろは教卓の上にひらりと飛び乗った。スカートがふわりと揺れ、健康的でありながらどこかあざとい太ももが露わになる。彼女は自分の太ももをパンパンと叩いた。

 

「ほら、どうぞ? センパイの大好きな膝枕ですよぉ~♡」

 

 声は甘い。けれど、その目は獲物を狙う蛇のように鋭い。僕は躊躇なく、その甘い罠へと頭をダイブさせた。

 

 ――甘い。とにかく甘い匂いがする。バニラ? ベリー? 女子力の結晶のような香りが、僕の脳を直接殴打する。そして、太ももの感触。理緒の弾力とも、静の儚さとも違う。柔らかく、もちもちとしていて、それでいて肌に吸い付くような湿り気を帯びている。一度沈み込んだら二度と抜け出せない、底なしの柔肌。

 

「んふふ、センパイ、顔緩みすぎですよ? キモいです♡」

 

 耳元で囁かれる罵倒。ASMRか。これは生ASMRなのか。視聴覚室の静寂も相まって、彼女の吐息が鼓膜を震わせる。

 

 ましろは僕の耳かき棒を取り上げると、わざとらしく僕の顔の前で弄んだ。

 

「動かないでくださいね? もし動いたら……鼓膜突き破って、脳みそかき回して、私のことしか考えられないようにしちゃいますから♡」

 

 静と同じことを言っているはずなのに、ニュアンスが違う。静が「物理的な排除」なら、ましろは「精神的な侵略」だ。彼女はニタニタと笑いながら、耳かき棒を僕の耳へと挿入した。

 

 ゾワワッ!背筋に電流が走る。ましろの手つきは、焦らすように遅く、そしてねちっこい。壁面を優しく撫でたかと思えば、急に奥を突く。快感と恐怖のギリギリのラインを反復横飛びするような、ジェットコースター・耳かき。

 

「あ、ここ弱いんだ。……ふーん。ここですね? ここがいーんじゃん、センパイ。」

 

 言葉遣いが崩れている。天使の仮面が剥がれ落ち、小悪魔の本性が耳の奥を蹂躙する。彼女は僕の反応を楽しんでいる。ビクッと体が跳ねるたびに、彼女の太ももが嬉しそうに震えるのが伝わってくる。

 

「……ん? あれぇ?」

 

 不意に、耳かきの手が止まった。ましろが鼻をひくつかせ、僕の頭をクンクンと嗅ぎ回る。やめてください、犬じゃないんです。いや、犬でもいいんですけど。

 

「センパイ……なんか、いろんな女の匂いがしますねぇ?」

 

 空気が凍った。視聴覚室の温度が急激に下がった気がする。ましろの声から「♡」が消え、絶対零度の低音が響く。

 

「この上品ぶった匂いは……生徒会長? こっちの汗臭いのは……あの脳筋陸上部? あと、なんかカビ臭い……図書委員?」

 

 全問正解。カビ臭いは失礼だと思うが(古書の香りだ)、彼女の嗅覚は警察犬並みだ。アイドルとして「敵」の匂いには敏感なのかもしれない。

 

 ましろの指が、僕の喉元に食い込む。苦しい。でも、その爪の痛みすらも快感に変わる。

 

「へぇ……。センパイ、とんだヤリチン野郎だったんですね。私という天使がいながら、あんな有象無象に鼻の下伸ばしてたんですか?」

 

 有象無象呼ばわりである。先輩たちだぞ。僕は必死に首を横に振ろうとしたが(耳かき中は危険だが)、太ももで頭を挟まれて動けない。アイアンクローならぬ、太ももクロー。

 

「……ムカつく。」

 

 ボソリと呟いた彼女の声には、本気の苛立ちが混じっていた。

 

「私の前で、他の女の匂いさせるなんて……万死に値しますよ。ギルティです。死刑です。」

 

 ましろは耳かき棒を反対側に持ち替えた。ふわふわの梵天がついている方だ。

 

「……消毒、しなきゃいけませんね。」

 

 彼女は梵天を耳の穴に突っ込み、猛烈な勢いで回転させた。

 

 ふああっ!?くすぐったい! そして音がすごい!ゴォォォォという轟音が脳内に響き渡る。

 

「上書き保存してあげますよ。私の匂いで。私の音で。……センパイの汚い脳みそ、全部ましろ色に染めてあげます。」

 

 「ましろ色」とは何色なのか。おそらく、純白ではなく、どす黒いピンク色だろう。彼女は執拗に、これでもかというほど梵天攻めを続ける。時折、耳の穴に直接息を吹きかけられる。熱い吐息と、甘い香り。感覚が麻痺し、意識が遠のいていく。

 

「ほら、もっと鳴いてくださいよ。気持ちいいんでしょ? 他の女じゃ満足できなかったから、私のところに来たんでしょ?」

 

 図星である。彼女は僕の欲望を完全に見透かしている。その支配的な態度が、たまらなく心地いい。

 

 こうして、視聴覚室での「お仕置き」という名の天国は続いた。天使の皮を被った悪魔による、甘くて残酷な洗浄儀式。僕はもう、彼女の許しがなければ呼吸さえできないような気さえしてくる。

 

 ◇

 

「……はい、おしまいです。ちっ、結局イっちゃってるし。単純な男。」

 

 耳かき棒を引き抜き、ましろは冷めた目で見下ろしてきた。僕はふらふらと起き上がる。耳の中は、彼女の残り香で満たされていた。物理的には掃除されたはずなのに、精神的には何かがねっとりとこびりついている感覚。これが「マーキング」というやつか。

 

 僕は改めて、六千円を差し出した。精神的慰謝料も含めて、払うべきだと思ったからだ。

 

 だが、ましろは僕の手をパシッとはたき落とした。お札が床に散らばる。

 

「……だから、いらないって言ったじゃないですか。センパイの耳、悪いんですか? 掃除したのに?」

 

 彼女は教卓から飛び降り、僕の胸ぐらを掴んで引き寄せた。上目遣い。至近距離での睨みつけ。その瞳には、暗い炎が揺らめいている。

 

「お金なんていりません。……その代わり。」

 

 彼女はニヤリと笑った。最高に邪悪で、最高に可愛い笑顔で。

 

「これから毎日、私に貢いでくださいね? ジュースでもパンでも、私が欲しいって言ったもの、全部。」

 

 パシリ契約の成立である。

 

「あと……私のファンクラブ、強制入会ですから。会員番号は……特別に『0番』にしてあげます。」

 

 0番。それはプロトタイプか、それとも生贄か。どちらにせよ、僕に拒否権はない。僕は力強く頷いた。

 

「よし、いい子です♡ わんわん♡」

 

 ましろは僕の頭を雑に撫で回し、散らばったお札を拾うこともせず(「片付けといてくださいね」という視線を残し)、視聴覚室を出て行った。スキップしながら去っていくその後ろ姿からは、黒いオーラとピンクのハートが同時に放出されているように見えた。

 

 1年生アイドル、久留米ましろ。攻略完了……というより、完全敗北。首輪をつけられたのは僕の方だ。

 

 僕は床に散らばった六千円を拾い集めながら、自分でも引くほどニヤついているのを感じた。王道、スポーティ、クール、そして小悪魔。フルコースを堪能し、僕の耳はもはや聖域と化した。いや、各ヒロインたちの「縄張り争い」の最前線と化したと言うべきか。

 

 もう、思い残すことはない。……嘘だ。まだだ。まだ足りない。同年代の少女たちによる癒やしは極めた。だが、それゆえにこそ際立つ、圧倒的な「経験値」の差。若さゆえの暴走や独占欲ではなく、すべてを包み込み、そして弄ぶような「大人の余裕」。禁断の関係性。背徳のスパイス。

 

 僕は拾ったお札を財布に戻し、最後の聖地へと視線を向けた。職員室。そこには、白衣を纏った魔性が潜んでいるはずだ。

 

 僕の冒険は、いよいよ最終章(ラスボス戦)へと突入する。紳士諸君、祈っていてくれ。僕が骨抜きにされてスライムになる前に、生還できることを。(いや、スライムになってもいいかもしれない)




豆知識 一番犬なのは主人公(畜生)である

ここから先の展開について、どういう方向性が見たいかのアンケートです。参考程度なので確定ではないです。

  • このままヒロインを増やし続ける
  • 主人公取り合いルート(親友視点)
  • 主人公取り合いルート(ヒロイン視点)
  • 各ヒロインルート書く
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