こちらオルクセン参謀本部 兵站部糧食課 食品研究室   作:Hastur_1

11 / 16
 食品と加工と栄養に関する与太話を書いて行きます。
『オルクセン王国史』の二次創作ネタバレを含みますので、原作本編読了後に読んで頂けると幸いです。

フェルト軍曹の章でアリマス。


コボルトの呪い
9:にんにく


――ヨーゼフ・フェルト軍曹は大変に不幸な牡であった。

ベレリアント戦争における最終所属は後備第一旅団、第十五師団第三四擲弾兵連隊。だが、その戦後は駐車場の係員よりマシとも言うべき兵宿舎管理業務であった。更に愚か者が起こしたギンバイと玉ねぎ中毒事故の余波で管理責任を取らされる始末。聞き付けたロートバルト中佐が慌てて救わねば危うく馘首になっていたであろう(もっとも中毒事故の発端と言うべき中佐にしてみれば、拾わねば余りにも寝覚めが悪い話なのだが)

 

さて世に問うなら、不幸とは何であろう――そもそもまず以って不幸の定義・文章化がされていない。不幸とは果たして幸運ではない事か。それでは幸運とは何か。定量性なのか回復性なのか相対性なのか。どこまでが幸運でどこまでが不幸なのかの那辺にありや。そも平均値を取れば良いのか、中央値を取れば良いのか。

 

戦場ならばその評価は簡単明瞭である。面倒が起きぬ事、過度の疲労をせぬ事、病気や負傷を受けぬ事、そして生命を失わぬ事。

この基準で語るならば、お偉方ながらも親しげに接してくれるグレーベン少将は余りの多忙のため、時折『食品研究室』に撤退と潜伏を図る程の疲労が故に不幸であろう。

敬して恩義もあるロートバルト中佐はかつて戦時「ディアネン包囲戦」只中で病魔に倒れ、ヴィルトシュヴァインに後送されたと聞く事からも不幸であったであろう。

 

だが、それを基準とするならば戦前に亡命したモリエンド嬢たちを始めとするダークエルフたちは? 戦場の銃火・病魔・事故に倒れエルフィンドから帰還叶わなかった同じ釜のパンを食べ合った仲の戦友たちは? 生命とは言わずとも手足や目鼻を失った者たちは? ――およそ不幸と呼ばれるには違いないのだが――

 

「――危ないっ!」

 

思索の内に不注意であったのだろうか。いや、警告の声に軍曹の身体は戦場にて幾度も我が身と戦友を助けた雷光の如き反射神経を一時的にも取り戻す――周辺は様々な食材や日用品が並ぶ朝市の通り、朝露の湿気に焼けたヴルストと珈琲の匂い、眼前は軍曹の2倍に比する高さの荷馬車から平衡を失い落ちつつある幾つかの麻袋――その下に驚きで固まってしまった幼いオーク族の兄妹。

 

「――任せろッ!」

 

荷崩れ支えるに身長が足らぬ、瞬時にも遅く足らぬ、幼き子供さえ助けられるならば良しと、子供たちをかばう様に押しのけ、我が身を落ちる麻袋との間に滑り込ませ、そして麻袋から零れた野菜の数々に圧し潰されたのである。

どばっと、ざらざらざら。

 

「……むぎゅぅ」

「軍人さん!?」「「おじちゃーん!」」

「アンタ、大丈夫かい!?」「おい、誰かエリクシエル薬を!」

「大丈夫でアリマス。あと、おじちゃんではなく」

「「おじちゃーん! たすけてくれてありがとー!」」

「本当に申し訳ない! お詫びさせて頂けませんか」

「我らは軍人、王の鉾にして民の盾でアリマスので」

「「おじちゃーん!」」「あと、おじちゃんではなく」

 

咄嗟に周辺の子供をかばう事は出来た。それは宜しい。荷馬車の御者に詫びられ中身ごと麻袋1つをもらう。まぁ事故であろう。だが感謝と謝罪と野菜入り麻袋を背に出勤すれば、上官たちから目鼻を顰め容赦無い指摘が待っていた。

 

「……軍曹、今日の貴様は近年稀に見る臭いがするな」

「戻って着替えるに時間が無かったのでアリマス……」

「ほらほら、すぐにお脱ぎになって。洗いますわよ!」

「で、何があったのかな?」

 

説明がてら自ら懲罰を任じ半裸のまま腕立て伏せを始める軍曹、その半ば強制的に持って行かれた軍服と野菜入り麻袋からは、大いなる『にんにく』の臭いが立ち込めていて――ヨーゼフ・フェルト軍曹は今日も不幸であった。

 

                      /*/ 

 

他種族からすると意外な事なのかも知れないが、嗅覚に関してはオーク族の方がコボルト族より鼻が利く。ちなみにダークエルフ族は耳目が利く。もちろん社会においても軍隊においても大は小を兼ねるとは限らないのが常なので目端が利いて頭も回りおよそ何でも出来るコボルト族の有用性は高く適材適所という物である。

 

例えば戦時中のフェルト軍曹は前線にて連隊司令部から発せられた魔術通信を今まさに突撃しようとする部隊に伝える受信側の通信兵であって、魔術通信を使う者としては少数派ではあるが前線の移動に伴って大柄の体躯を活かし共に突撃する事もままある事であった。

 

もっとも、そんな戦場を乗り越えた軍曹の上下は昼前の日差しに翻る連隊期の如く軒下に干されているのだが。ぶらーん。そんな『食品研究室』の面々に室長ロートバルト中佐は今日も講釈を開示し始めた。

 

「匂いと言うのは魔術的な側面もあってね」

「エリクシエル魔術薬のような物ですか?」

「香りで気分を変える様な物とかですわね」

「ほら、匂いの煙は上に空へ昇るだろう?」

「想いは天に届く。情緒的な浪漫ですわ!」

「この辺は『北の良き魔女』様の領域だな」

「シュヴェーリン元帥のご夫人でアリマス」

 

五感の中で嗅覚は理性から一番遠い感覚である。古代の戦士は臭いから相手の感情を読む事が出来たとされ、匂いは精神状態に働き掛ける鎮静剤にも興奮剤にもなり得る。故に古代では『香』に神前を浄め邪気を祓う効果を求めた。

 

例えば、黒死病の原因は臭いだと思われいた中世では薬草の芳香による予防が試みられ『医師専用の仮面』が作られていたり、オルクセン国内では目立たぬが星欧諸国で最大派閥とも言える聖星教(スタリック)においては創世記にて生誕の祈りにより乳香と没薬が良く用いられる。華国や道洋における宗教では沈香・白檀・丁香(クローブ)・桂皮(シナモン)・欝金(ターメリック)などが用いられている事がある。

 

にんにくに関してもロザリンド以前、先王アルブレヒト大王の治世ぐらいまでは魔術的な薬草であった。オーク女性たちの各家庭の料理や縫製や育児などの生活全般の経験則が家政学と言う学問に昇華されて、民間療法が時代の流れで科学的な薬学として組み上げられて世間一般に更新と知識共有がされるまでは『勝利の野草』とも呼ばれ、不浄な精霊の攻撃から身を守る呪物護符としても栽培されていたのである。

 

「オスタリッチ帝国の東部では血を吸う不死の化け物の伝説が有ったろう」

「にんにくの匂いで封じて心臓に白木の杭で打てばやっと死ぬんだっけ?」

「心臓に杭を打てば化け物でも死ぬと思うのでアリマス(腕立て伏せ中)」

 

とはいえ、生活に憚りあるほどの臭いも迷惑である。

先の華国や道洋における宗教僧侶は、にんにく・らっきょう・にら・長ねぎ・たまねぎは『五辛(生姜や香菜(コリアンダー)が入る事もある)』と言い、心が落ち着かず修行の邪魔になるとされて食べる事が禁止されているという。

 

にんにくの臭いはその球根(鱗茎)が破砕される事により、更に多く発生する『臭いの成分』は、先の『らっきょう・にら・長ねぎ・たまねぎ』の調理法と同じく、水に溶け熱に弱いのでスープを作る事などで弱くなる。

 

常温からオリーブ油でゆっくり弱火で煮る様に揚げて、臭いを減らす調理法を心得るエルトリア王国などはにんにくを料理としてより活かす方法を研鑽して来た土地と言えるだろう。

 

「考えてみれば当たり前なんだけど。それぞれの種族によって臭いを感じる強度は違うよね」

「人間種が一番鈍くて次にダークエルフ族、大幅に鋭くなってコボルト族でオーク族の順か」

「オルクセンは国も軍は風呂が充実して助かるでアリマス。体毛に臭いが絡むのでアリマス」

「およそ軍兵とは、野戦に至っては不清潔の代名詞だが――適度な運動、宿営の清掃、被服の洗濯、そして入浴の励行があって将兵の健康は保たれる。食料弾薬のみならず、そう言った事も兵站なんだ」

 

ベレリアント戦争では終戦調印後、動員解除されるその寸前に現地でチフスで亡くなった者もいるという。多分に留意する事であろう。噛みしめる様に語るロートバルト中佐に、単純にオーク族は伝統的なお風呂好きですからとゲルズガルド少尉がまとめる。フェルト軍曹にとっては士気の維持も絡みマスと有難る事であった。

 

                      /*/ 

 

それでは『にんにく』について論述する。にんにくはヒガンバナに分類されるネギ属の多年草である。前述の通り臭いが強く、強壮強精・体力増進の作用がある薬草として、遥かな古代から球根(鱗茎)を香辛料として茎の部分を野菜として用いられてきた。

特に肉類と併用して保存が効かぬ場合などで臭み消しや風味付けに使われる。だが、効果を求め過ぎる余り、にんにくを生食した場合は刺激が強過ぎて胃壁などを痛めるので注意しよう。

 

鱗片を種球として9月頃に植えて越冬した翌年6月頃に収穫と9ヵ月程の栽培期間を要するが、連作障害が出難く病虫害の心配も少なく手間が掛からない。肥料に石灰やリンを用いると良い。それを留意すれば家庭菜園や植木鉢の栽培すら簡単である。収穫後は乾燥保存も効くため様々な面において有用である。

 

「最近は刻印魔術のお陰で早々に肉が傷む事は無いが」

「にんにくが単純に美味しいからで良いではないかな」

「肉は塩とにんにくで焼くだけで十分満足でアリマス」

「その、私たちは食事後の口臭も気になるのです……」

 

オルクセンの乙女たちの為か、にんにくの消臭効果について研究された論などもある。にんにくの臭いは口臭になるものと体内で消化した後に発生するものとなる。要は臭いの成分を起こさせないか体内で発生させないかである。これは食前に牛乳、食中に珈琲、食後にりんごが適正ではないかと言われている。とは言え、にんにくはそれだけ食したい物であるという証明でもあり――

 

「と言う訳で軍曹がもらった、このにんにくは『マウルタッシェ』にするよ」

「「「「わーい」」」」「でもマウルタッシェに、にんにくなんて入れますの?」

 

小麦粉などの粉物を練って肉・野菜・チーズ・香辛料などを入れ丸めて、焼いたり茹でたりした団子の事をセンチュリースターではダンプリングと言うが、この形態の料理は世界各地に存在する。エルトリアのラビオリ、ロヴァルナのペリメニ、華国・道洋の餃子や焼売、そしてアスカニアとオルクセン南部でのマウルタッシェ。奥深い調理法であり、ペリメニと餃子の境目を探しに旅出た知恵者もいたそうである。

そしてマウルタッシェは本来、パスタ生地の中に挽肉・ほうれん草・パン粉・たまねぎを練って詰め茹で、パセリ・ナツメグ・胡椒で風味を調えてコンソメスープ仕立てにするが、バターと卵とたまねぎで炒める事もある。なので本来のマウルタッシェにはにんにくは入らないのだが……?

 

「道洋の餃子風にしよう」「にんにくを入れるのか」

「華国では主食だけど、道洋ではおかずだそうだよ」

「パンでパンを食べる様な感覚の違いになりますわ」

「主食とおかずの違いが曖昧な環境性もあるけどね」

 

挽いた豚肉に刻んだキャベツとベアラアホ、擦り下ろしたにんにくを混ぜ下味を付けて練り、小麦粉と水で生地を作り薄い円盤状にした皮で包んで茹でる。挽き肉は塩分を含む調味料を加えて練る事により、調味料が馴染むだけでなく肉全体に粘りや弾力が出てまとまりやすくなる。加えて混ぜた野菜などの材料と絡み合い加熱した際も崩れ難くなる利点があった。

 

「こねこね」「つめつめ」「つめつめ」「つめつめ」「出来たら呼んでくれ」

 

小麦粉の皮を作り続けるロートバルト中佐と、肉と野菜のタネを詰める間には思わず無言になる他の『食品研究室』の面々であった(この間にフェルト軍曹の上下は乾いたので着用している。まぁ半裸で料理をする訳にはいくまい)尚、グレーベン少将は逃げた。まぁ栄えある将官殿に細かい料理作業をさせる訳にはいくまいと……。

 

「叔父さまこれ、ヴルスト論争になりませんか?」

「茹でる派と焼く派と揚げる派で戦争にナリマス」

「目玉焼き学会の如く派閥に分かれ混沌を極める」

「生の豚挽肉、メットヴルストをお忘れですか!」

「アレは軍で出せる物なのかなぁ……」

 

ヴルスト論争とは、個々人の好みで茹でる派と焼く派で常に論争になるというオルクセン市民特有の食べ物拘り過ぎ問題である。ちなみにメットヴルストとは、味を漬け込んだり燻製したりして保存処理を施した生の豚挽き肉、メットから作る風味の強いソーセージである。柔らかくスプレッド(塗り物)としてパンやクラッカーと共に食される事が多い。

ともあれ、どの界隈であれ愛が深すぎるのも問題である。ちなみに同様の現象は目玉焼き学会と言われ片面焼き派と両面焼き派でこちらも百家争鳴の論争になり得る。なお『道洋風餃子』に関しては茹でと焼きに加えて『揚げる』が存在するので戦争が始まりかねない。

 

「で、何の味で食べるんだ」「塩とビネガーですかね?」

「唐辛子を入れてですね?」「蜂蜜とマスタードとか?」

「ホワイトソースで煮込み」「それタダのシチューでは」

「ケチャップとマヨネズ島風ソースに『ブルドック印のソース』ですね!?」

「「「「まぁ待て落ち着け」」」」「普通に薄いコンソメスープ仕立てで……」

 

上手い事時期を読んで戻って来たグレーベン少将共々、昨今中毒患者よろしくクドい味好みとなったモリエンド嬢に総ツッコミを入れる面々であった。もし濃すぎる味付けが加味されていたら薄味が好みのフェルト軍曹は更なる不幸を迎えたであろう……。

 

「あ、少し悪い事考えた」「拝聴しようじゃないか」

「にんにく『だけ』餃子」「とても悪い事ですわー」

 

                      /*/ 

 

美味しく頂きました。食後には珈琲と創世記にも書いてある。書いてないが。オーク程の嗅覚が無くとも臭いを気にする者は多い。別に臭い対策のつもりではなくも珈琲に加え、ゲルズガルド少尉とモリエンド嬢はりんご果汁を嗜んでいる。

 

「――そう言えば何だが、さっき入れた『ベアラオホ』なんぞ、最近は道洋や華国でも手に入るのだな」

「いや、本当は逆だよ。向こうではニラを使うんだ」

 

オルクセンで春を知らせる『ベアラアホ』は「森のにんにく」とも言われて、星欧全域で自生する多年性の野草である。細長い形をした葉は臭いと味がニラに似て、球根は大きさも形もラッキョウに似る。道洋や華国では行者にんにくと同じ風味と健康効果が有る物として扱われるという。

 

「先日の陛下がな。コボルト族たちはにんにくを食べれない物だろうと勘違いしてたそうだ」

「聡明博識を以ってなる我が王が。と思うけど物を知るからこそ勘違いする事もあるのでは」

 

ベアラアホは一見して有毒のスズランやイヌサフランと葉の形が似ているため間違え食中毒を起こす事も有り得るだろう。また、日当たりの良い急傾斜地で生育するため、採取者が滑落し負傷・死亡事故を起こす事もある。つまりは、多々様々な知識が綯い交ぜになる事で逆に余計な誤解をする事になったのでは無かろうかと――。

 

『将来的に『コボルト印』のこれ食べたらダメ『刻印魔術』を作ると良いね」

「小官たちは臭いだけでは何とも判別し難い事もあり有難く思うでアリマス」

「そうだ、臭い対策と言えば『有毒気体』対策に防毒仮面を試作してたろう」

「中世の『医師専用の仮面』を改造した物だね。当時は半分正解だったんだ」

 

世には病となり得る『悪しき臭いの空気』があると言う認識までは正解。

薬草の芳香による予防効果があるとの憶測が誤りである。

 

イスマイル帝国が興る遥か古代の医師曰く、病は穢れた霧の様な概念である『瘴気』を吸う事により発病するのだと提唱されていた。その瘴気とは『悪い空気・悪い土地・悪い水辺』から発生するため、霊的な呪詛の類と信じられるよりかは余程、感染症対策として科学的であった。単に悪しき空気を遮断すれば良かったのである。

 

ベレリアント戦争末期、廃鉱山に籠る潜伏工作員の対策に『有毒気体』の研究がされていた。使われる事無く終戦を迎えたが、自分たちがやるならば相手も当然の如くやると考えるのが業深き軍人という物である。自ら対策を並行して進めるのが参謀職であろう。

 

よって『防毒面』が試作された。顔全体を覆う面体にから鳥の嘴の様な部分は廃され、円筒形に厚手布や綿におがくずや石炭を加工した活性炭を積層させる瀘過部分を装着した。

目に入ると危険な有毒気体もあり得ると防塵眼鏡も組み入れられた。装備部から預かった『防毒面』を試着する面々だが、当然ながらオーク族用のため顔の形が合わぬフェルト軍曹とモリエンド嬢には付かない。

 

「しかし空気を吸うのも大変だな。コーホーコーホー」

「コーホーコーホー。毒を吸うよりマシだって事だね」

 

――そして、にんにくの残り香が残っていないかと確認している内に日が落ちた。退勤時間は超えている。如何に自己的な放任主義のグレーベンと言えども本来の副官には残業など許さず帰らせてしまっていた。

 

加えて預かった『防毒面』は明日の参謀部で用いるためにも『食品研究室』に置きっ放しにする訳にはいかない。一応は機密の試作品であり管理責任という物が有ろう。一旦自宅に持ち帰る事にして明日また職場へ持ち込めば良い。

 

ゲルズガルド少尉に『防毒面』を持たせつつ『自宅への先触れ』に向かわせ、ロートバルト中佐の「僕の部下なんだけどなぁ……」とつぶやく苦情を背に、フェルト軍曹を荷物持ちとしてすっかり暗くなってしまった自宅玄関に着いたグレーベン少将は腰を抜かした。

 

暗闇の中に赤いランタンを下げ、黒い外套をまとい『防毒面』を被り魔王立ちする自らの奥様の畏怖すべき姿によって。先触れに向かった少尉は奥方の口車でにんにく食も含めて全てを開示していた。大変に恐怖。コーホーコーホー。おぉ、テリブル!

 

軍曹の耳は驢馬の耳を自認するにしても参謀本部で上から五指に入る軍高官の醜態を見てしまった事故に、居た堪れない――ヨーゼフ・フェルト軍曹は大変に不幸な牡であった。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 




◆はすたさんの与太話。

駐車場の係員 > ランボーだ><
嗅覚に関してはオーク族の方がコボルト族より鼻が利く > 感覚器の数的には豚の方が犬よりも鼻が利くのです。
五感の中で嗅覚は理性から一番遠い > カントですね。亡くなられたのは1804年です。

医師専用の仮面 > いわゆる『ペストマスク』ですね。
乳香と没薬  > 聖書にも出て来ますよ。

北の良き魔女 > シュヴェーリン元帥の奥様、ベアトリクス夫人のこと。民間医療の大家として謳われグレーベン少将やロートバルト中佐の奥様など多数の弟子がいます。この作品独自の設定ですのでご注意ください。

臭いの成分 > 硫化アリルですね。
田中芳樹先生の小説『ウエディング・ドレスに紅いバラ』では、主人公たちが吸血鬼退治に硫化アリルを注射器に詰めて、相手の血管内へ直にブチ込むというパワフルな攻撃方法をしていましたが……w

適度な運動、宿営の清掃、被服の洗濯、そして入浴の励行があって兵の健康は保たれる。 > 公衆衛生の概念ですね。ここら辺もいずれちゃんと書きたく。

牛乳、珈琲、りんご > 大体アリシンのせいなので、体内で早々に結合させて別の成分にしてしまえば良いのです。

ダンプリング > ダンジョン飯にも出てきたかな?
ペリメニと餃子の境目を探しに旅出た知恵者 > 作家の芝村裕吏さんのエピソードだったかな……?

分かれ混沌を極める > 仮面ライダービルドの如くw
中毒患者よろしくクドい味好み > ジャンキーめ!

みんなの味の好みの傾向。
グレーベン少将 :平均的。高級参謀なので質素な物から高いのまで食い慣れてる。
ロートバルト中佐:古今東西の味を理解するため、ある種めずらしい味付けを好む。
ゲルズガルド少尉:若いので濃い味付けと甘味好き。他は拘らない。お嬢様なのに。
フェルト軍曹  :シンプルに塩で。例えおじちゃんと言われようとも好みが渋い。
モリエンド嬢  :質素だった反動でジャンキーに。ケチャッパーにしてマヨラー!
この作品独自の設定ですのでご注意ください。

イスマイル帝国が興る遥か古代の医師 > 古代ギリシア、コスのヒポクラテス
ベアラアホ > 向こうではそういう扱いだそうですw

『コボルト印』のこれ食べたらダメだよ『刻印魔術』 > 
アレルギー表示ですね。ピクトグラムにすると良いかも知れません。
私がお手伝いした『ネバークラウドTRPG』という、近未来SFの世界観では、
https://sion-academy.wixsite.com/nctrpg
誰もが日常的に用いる眼鏡で見る、拡張現実(AR)でアレルギー表示されてました。

防毒面 > ガスマスクの事ですね。鉱山での使用が1799年。消防用が1823年と言われています。
軍用の物は第一次世界大戦まで時代が下ります。

暗闇の中に赤いランタンを下げ、黒い外套をまとい『防毒面』を被って魔王立ち > 
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』終盤で登場するダース・ベイダー卿。
あの「勝てるかバカーっ!」的な絶望感はすごいですよねw

                      /*/ 

◆今回のボツネタ。

そこにグレーベン少将は見当違いの疑念を述べる。

「そう言えばエルフは風呂に入らんのか?」

エルモンド嬢を見るに極めて非常に文化的にも礼儀的にも失礼な発言だが、確かに言われてみれば白黒問わずエルフ族は体外に汗とかの排出を余りしない物で――

「今ではちゃんとお風呂に入ってます!」

すすすす。みんなちょっと横にずれた。

「入ってます!」

                    /*/

あと、コミケ106にスペース頂きました。
8月16日(土曜)東5ホール【タ49ab】お誕生日席です。

とは言え、電源不要ジャンル(TRPG系)なんですよね。新刊は『ゲーマー向け幻想食品論』を予定しています。

この『こちらオルクセン参謀本部 兵站部糧食課 食品研究室』も同人誌化したらコミケ当日に欲しい方います……?

                    /*/

お気に入り登録、評価やご感想、読了ポストを頂けますと、とても励みになります。よろしくお願いします。
PixivFanboxにも連載しています。https://hastur.fanbox.cc/
こちらでは作中の『レシピを限定公開』しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。