こちらオルクセン参謀本部 兵站部糧食課 食品研究室   作:Hastur_1

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 食品と加工と栄養に関する与太話を書いて行きます。
『オルクセン王国史』の二次創作ネタバレを含みますので、原作本編読了後に読んで頂けると幸いです。

鉄板焼きグスタフ



幕間1:国王陛下の休憩所

――実は、こんな物を用意してもらったんだ。

 

オルクセン国王グスタフ・ファルケンハインは国王官邸裏庭に新設した四阿に自らの愛妻である王妃ディネルースを招き入れた。その瞳はまるでこれからいたずらをするぞとばかりに企む少年の様に輝いていた。休暇の昼時に2匹とも立場を忘れた簡単な作業着である。その姿はまるで若夫婦が余暇に楽しむための緩い日中宿営を行う様であった。

 

石組みの竈に鉄板をしつらえ、水道や洗い場まで備えられたその場は王侯貴族にしては野趣あふれる施設である。もっともこの夫婦は内々身内においては山間の田舎者を自任し、元より100余年前までは山賊まがいの傭兵や鹿狩りのマタギの産であったと嘯く物である。諸外国と交渉協議するための一環として絢爛優雅たるその立ち振る舞いは現在でこそ慣れ――王妃は未だコルセットの締め付けに関しては勘弁してくれ! と嘆いてはいたが――ひなびた味わいを愛する趣向を胸の内に収めていた。

 

「今日は私たちだけで料理を作って食べようかと思ってね」

 

――そんな生まれだからこそ、2匹は相応に自炊の経験がある。グスタフ王に至ってはかつてシュヴェーリン元帥――当時は一介の武将であったのだが――の兜を使い肉と野菜を煮込む陣笠鍋を作っていた事もあるという。良く洗ったかい? と、くすくすと聊か失礼な話に笑うディネルースにグスタフは、鍋を無くすほど慌てて逃げたシュヴェーリンが悪いんだよと山賊鍋の塩味を追憶を火に掛け、目の前の鉄板を熱している。

 

「最近は軽々に将は兵站を語るべきだと宣う者がいるけど」

 

――話題は以前から現在に移る。立場と環境は変われども2匹は性根は軍兵と共に生きて来た将帥であった。生活はおろか在り方に染み付いている。色気が無いと言うが、それは2匹にとって軍の話題は日頃の雑談や睦事と同じくする物なのだから。

 

さて、グスタフ曰く兵站と言う概念は余りに広範に有り過ぎて真に正しく掌握する者は多くはないという。概ね糧秣や燃料・弾薬輸送の重要性を問うた物でしかなく、医薬品や生活物資や軍将兵並びに銃後の者の生活全般に関わる生産や加工を論ずるに至り、あぁやっと舞台に立てるかなと言う次第である。

 

とは言え、星欧諸国の中でオルクセン軍は大変に良くやっている。でなければ食品輸送に用いる冷却刻印魔術を施す木箱に保全や運用に心を砕く『刻印魔術式物品管理法(MIMS)』など出来はしない。もちろん立案の際には訓令戦術に基づく思考ありきの案件だった事も考えれば、軍の教育、民の素養、ひいては、オルクセンと言うこの国自体の気風がもたらした、ある種の奇跡なのかも知れない。

 

そして、軍の糧食とは気温や振動・落下による腐敗や破損による損耗が前提であることから、最初からそれはそうならない様にと前提から汲み上げる必要がある。そう言った意味では先般グレーベン少将の提言にカイト中将が承認した『食品研究室』をグスタフは扱き使うつもりであった。様々な食品毎の輸送に伴った各種の齟齬を理解して解消出来るならば、その知見の蓄積は人的物的・時間と空間等々の馬鹿にならぬ、軍のみならず国に取っての大いなる節約でもあるのだから。

 

「では、今日はその成果を預かって来たのでお見せしよう」

 

熱した鉄板で薄く切った豚肉を焼く。脂が多めのバラ肉は油を出してグスタフがその鉄板上に広げる。その油を使って、切ったキャベツの芯と短冊に切ったにんじんを焼く。火が通ったところで熱が弱い鉄板の脇に外して、追って荒く切ったキャベツの葉とあらかじめ茹でた小麦粉の麺を入れて焼く。火が通る前に蓋をして蒸しあげるが――

 

「ここで大人の味だ」

 

冷却刻印魔術を施した木箱からビールを取り出すと、蒸し水代わりに一差し。じゅわっと水蒸気が出る所に蓋をする。その間に手早くレタスと胡瓜とケールと薄切りビーツでまとめたサラダを取り出す。トマトのケチャップとマヨネズ島ソースを1:2の比率で混ぜたロゼのソースを掛け、揚げ玉葱をどっさり。これが食品加工と生鮮物流の成果であろう。

 

「このソースが良いんだ」

 

蒸し上がった麺へ脇に外していた肉野菜を戻して『ブルドッグ印のソース』とわずかにトマトのケチャップを加えて炒め合わせる。焦げるかどうかのところまで麺に味が馴染んだら胡椒を一振り。鉄板の脇に外し軽く焼きながら食す。2匹は本命のビールで乾杯してサラダと焼きヌードルを食べる。ほど良い酸味のロゼのソースに瑞々しい野菜の軽い苦みが良く似合う。香ばしい揚げ玉葱の食感が程良い。焼きヌードルは焼いた肉と野菜の甘みに薄く焦げたソースの味、わずかながらビールの苦みと風味を感じる濃いめの味に酒が良く進んだ。そこへ味変とマヨネズ島ソースを少々追加する。

 

「ねぇ、グスタフ。貴方、鉄板で焼いている姿が国王なんかよりも余程似合っているわよ」

 

回った酒精で赤い顔でくすくすと笑う愛妻に隠居したら考えようとと、相好を崩してグスタフは笑う。

 

よろしい。ならば君は鉄板焼き屋の名物女将だ――

 

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◆はすたさんの与太話。

元ネタはこちらw > 鉄板焼きグスタフ
https://x.com/KulasanM/status/1880173485080866982

そう言えば、
『オルクセン王国史』メシテロ・ファンムービー
https://www.youtube.com/watch?v=l5BbI0OJYtk
『オルクセン王国史』ファンムービー
https://www.youtube.com/watch?v=Y_O1q254pCE

オルクセンの動画も作ってたって言ってませんでしたね。

                      /*/ 

◆鉄板焼きグスタフの焼きヌードルの作り方(4人分)
(想定読者である道洋の人間種基準に再計算済み)
<材料>
◎冬キャベツ:100g(Lサイズ4枚。芯を入れても良い)
・ にんじん: 75g(Lサイズ1/2本)
・ 豚バラ肉:150g
・焼きそば麺:600g(4袋)
・ サラダ油: 15g(大さじ1杯)
・  ビール: 60cc(大さじ4杯)
・  ソース: 60g(大さじ4杯)
・ケチャップ:  5g(小さじ1杯)
・マヨネーズ:  5g(小さじ1杯。不足なら好みで追加)
・    塩:  1g(ひとつまみ。不足なら好みで追加)
・   胡椒:  1g(ひとつまみ。不足なら好みで追加)
<作り方>
1:キャベツを洗い芯は薄く刻み、葉は一口大に切る。
2:にんじんはヘタを切り落としピーラーで皮を剥く。
3:にんじんは短冊切りに、豚バラ肉は一口大に切る。
4:フライパンを熱してサラダ油で豚バラ肉を炒める。
5:フライパンにキャベツ芯とにんじんを加え炒める。
6:炒めた豚野菜を一旦フライパンから別の皿に外す。
7:フライパンにキャベツの葉と焼きそば麺を入れて、
  軽く炒めた上にビールを掛け蓋をして蒸し上げる。
8:フライパンに肉とキャベツとにんじんを戻し入れ、
  麺と肉野菜をソースとケチャップで炒め合わせる。
9:全体に味が馴染み焦げる間際で塩胡椒で調整する。
10:脇にマヨネーズを添える。
11:オークや人間用は玉葱100g(Lサイズ1/2個)を加え炒めても良い。

                    /*/

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今回はPixivFanboxで限定公開している様なレシピ集を乗せています。
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