黙示録と名づけられた迷宮   作:神流朝海

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これは黙示録アリスを原作にしたものです。
3巻を最近読んでこれ書きたい!と思ったので書いてみました。
問題児の方は続きがうかんでくるのですがソードアートのほうはまだうかばないです。一時凍結です。

ということで黙示録と名づけられた迷宮、スタートです。


《吉祥寺高校》への転入

・・・・・あれから何年たっただろう?

 

妹が迷宮病を発症してから、何年たっただろう?

俺は今17歳。ということは10年前か・・・。

 

妹が迷宮病を発症したとき、世界各国で同時に多数の少女が発症したらしい。

その少女たちが作り出した迷宮は、なぜか発症と同時に定着し、各国の主要都市を呑み込み、攻略難度がすべて400越えの永久迷宮となった。

それらの迷宮は黙示録~~と名づけられた。

その中でも有名なのは、ここ東京都にある2大黙示録だった。

一つは黙示録アリス。攻略難度は最高の666。

もう一つは黙示録マージ。攻略難度は665。

ここ、日本には世界最高難度の迷宮が二つもあるのだ。

なぜ黙示録アリスと呼ばれるようになったのか。

理由は中で出てくる怪物がすべて「不思議の国のアリス」にちなんだものであったことと、その迷宮病を発症した少女の名前をもじったことが理由だそうだ。

黙示録マージは1度侵入し、少しではあるが情報を持ち帰った太閤製薬によって1階層に現れる亜人が魔法を使うということだったからだ。

そして迷宮病を発症した少女・・・俺の妹は有名なMMOプレイヤーであり、そのゲームの中でマスターマージという職業についていたことからそう名づけられた。

なぜ、そんなことが理由になったのかというと日本では・・・というより世界でも妹をそのゲームで知らない人は少なかった。

そのゲームは日本人プレイヤー7000万人、全世界で34億人というプレイヤーをもつ世界最大規模のゲームだった。

ちなみにその時の日本の人口は3億2000万人、世界人口は94億人だった。

その中で妹は7歳にして世界ランクトップ10に入る実力だった。

だから彼女を、俺の妹を知らない人はそうはいない。

だがそれは過去の、十年前の話だ。

今は日本の人口は1億1000万人。そして世界人口は52億人だった。

あの黙示録の迷宮が現れたときにたくさんの人が死んだ。

 

ん、だいぶ話がそれたな。

まあ名づけられた理由はさっき言ったとおりだ。

俺は妹が迷宮化してから10年間、世界を旅し、迷宮を攻略してまわった。

そしてたくさんの魔法と金を集めてまわった。

そしてとても優秀な【脳内魔導起機】通称ヘッドフォンファズの技術者を雇った。

そいつは、

「2人も顧客が入るのはうれしいことだが・・・」

と独り言をつぶやいていたのを聞いたことがある。

もう一人は誰だろうか?

あいつ雇うなら相当金持ってるやつだろうが。

 

まあどうせここで会うだろう。ここは日本でも数少ない迷宮少女殺害科がある高校、《都立吉祥寺高校》。

「さて、ここには強い奴はいるのかな?」

俺はそうつぶやき、学校の門をくぐった。

 

 

教室に入ると面接待ちの生徒が十数名いた。

今回面接を受けに来た生徒は720人。

そして学校側の欠員は5名。

すでに他の教室には人はおらず、残っているのが今教室に残ってる十数名の生徒だ。他は落ちたのだろう。

とりあえず本でも読んどくか。

俺は持ってきた今お気に入りの本を取り出して、テラスに置いてあるイスに座った。

 

「クズどもがクズな顔して生きてるなぁ」

近くにいた男子がつぶやいた。するとそいつが横から声をかけられる。

「クズって誰のこと?」

女の声だった。そしてその声の主が続ける。

「しっかし、おとなしそうな見た目とは裏腹に君、とても口悪いんだね」

男子が女子のほうへ顔を向ける。

「誰?」

男子が聞くと女子が答える。

「名前ってこと?それともナンパ?」

そろそろがまんならない。

「あのさぁ。うるさいからよそでやってくれる?」

俺は本をパタンと音をたてて閉じながら言う。

「「?」」

2人してこちらを見る。そして女子の方が俺に問う。

「あは、あなたは誰?」

「そういうのを聞くときはまず自分から言うべきだと思うけど?」

女子は少し考えているようだ。男子の方は変わらず、無言のままニタリとした顔でこちらを見てくる。

「私の名前は気流キリ。キリって呼んでね。で、あなたは?」

「俺の名前は霧ノ翔哉。で、そこでへらへら笑ってるお前は?」

「え?なんで俺まで自己紹介とかしなきゃいけないんだよ?」

表情が少し変わり、うざったそうな顔になる。

「別にいいんじゃ?どうせ俺ら合格するんだから」

「お、余裕あるね」

「まだ受かるとは決まってないだろ」

 

とそこで面接官の声が聞こえてくる。

「・・・之介。有栖真之介はいないか」

その声に返事をし、動こうとする者はいない。

「あは、あなたの名前分かっちゃった。有栖真之介。これがあなたの名前ね?」

有栖真之介と呼ばれた男子は気流キリと名乗った女子に「ウザイ」とでもいいそうな顔をキリに向け、面接に行った。

「で、翔哉君。あなたはどんな目的でここに来たの?」

「馴れ馴れしいな。なんだ?突然」

「だってここに入る人なんて何か目的があるとしか思えないもん」

「話す気も話してもらう気もないな」

「もう~~ひどいなぁ」

「別に。キリの性格よりはましだろ」

「なにそれ。ひどくない?っていうかやっと名前で呼んだね!」

そして、

「霧ノ翔哉。霧ノ翔哉はいないか?」

と俺の名前が呼ばれた。

「じゃ、俺呼ばれたから」

「ん、入学できたらよろしくね」

「何言ってんの?」

俺がそういうときょとんとした顔になる。

「俺ら、受かるに決まってるだろ」

俺はそう言って、面接官についていった。

 

 

面接官につれていかれたのは面接会場とは名ばかりの普通の教室だった。

面接官は4人。20代前半くらいの男女。

4人ともいすに座り、書類にペンを走らせている。

その中の1人の女が俺に聞いた。

「君の名前は霧ノ翔哉。17歳。水野高校からの転入。これで間違いはない?」

「ええ」

俺はうなずく。

現に俺は今、水野高校の制服を着ている。

「中学生のときは外国にいたってことになってるけどなにをしていたの?」

「別に。ただの中学生ですよ」

「そのただの中学生がこの学校に入るわけないと思うけど」

「そうですか?」

「ここは死ぬ可能性がある学校なのよ?」

「知ってます」

「では志望動機は?」

「そうですね・・・金と権力と俺並みに強い仲間を探して、ですかね」

「さっきの子と回答が変わったわね・・・書き直しといて」

俺に質問している女が隣にいる男に言う。

「さっきの子と違う、というのはここまでの回答が前の子とかぶっていた。ということですか?」

「そうよ。これから実力検査するから」

「ここでですか?」

「平樹先生、お願いします」

女の面接官は俺の質問には答えず、こういった。

まあ、別にいいのだが。

その平樹先生と呼ばれた男が席を立ちながらパチンパチンパチンと3回指を鳴らす。

さすが教師。それなりに魔法の展開速い。

 

だが、それも“それなりに”だ。

俺も3回、パチンパチンパチンと指を鳴らす。

それが俺の右耳に装着している《脳内魔導起機》通称《ヘッドフォンファズ》を起動させる合図だ。

そしてすぐに脳漿が魔法歌でダブダブになる。

 

【水壁♪障壁♪何でも弾く♪

    近づく物は♪全部♪弾け♪】

 

俺は指を操り、水色の光を放つ魔法陣を描く。

それを見て、女の面接官は叫んだ。

「先生!気をつけて!この子高難度の障壁迷宮から持ち帰った魔法技術を・・・」

だが、もう遅い。

平樹先生と呼ばれた男はすでに紫の炎を腕に宿らせ、俺を殴ろうとしている。

たぶん紫炎の迷宮から持ち帰った魔法だろう。

その拳が俺に迫る。

そして俺はつぶやく。

 

「水壁スイッチ」

「!!!!????」

 

俺の魔法が発動し、俺を殴ろうとした男が教室の端まで吹っ飛ぶ。

「ば~か。相手の魔法はよく見ようね」

今は俺の頭には違う魔法歌が流れている。

 

【水没♪溺死♪わずかな時間♪

    溺れて溺死♪呼吸は停止♪】

 

「暗・水没スイッチ」

「!?がぁ!?」

 

ほとんどすべての魔法は迷宮に出現する怪物たちを倒すためにつくられているが、この魔法は違う。

この魔法は対人用につくられた魔法だ。

気管に水球を発生させ、溺死させるというものだ。

そこでふと、思い出す。

「あれ、俺って教師を殺しちゃったときの免責書類ってかわしてましたっけ?」

俺はパチンと指を鳴らし、魔法を消去する。

そして若干唖然としている面接官に向かって俺は聞く。

「俺、合格ですかね?」

「今回は優秀な人材が豊富のようね・・・面接官をあそこまで圧倒できる人材を、私たちが逃がすわけわけないじゃない」

「つまり?」

「ほんと前の子と変わらない受け答えね。あなたは合格よ。ようこそ《都立吉祥寺高校》へ。私たちと一緒に世界を救いましょう」

女教師が手を広げ、そういう。

 

―――一緒に世界を救いましょう

 

「いや、別に俺は世界を救うつもりとかないんで」

と俺はそう言って教室を出た。

 

面接教室を出ると、次の面接者が俺に馴れ馴れしく話しかけてきた。

 

「お、また会ったね、翔哉君。面接どうだった?」

 

さっき少ししゃべった気流キリだ。

 

「別に。ただの雑魚だったよ」

「ということは受かった?」

「ああ」

「やっぱり君は優秀だね」

「少なくともキリよりはね」

「え~私も結構優秀だと思うけどな」

「それで実力なかったら見た目だけの女だからな」

「それはほめてるのかな?喧嘩を売ってるのかな?」

 

キリはポケットから《ヘッドフォンファズ》を取り出し、パチンパチンパチンと3回指を鳴らす。

それだけで、あの面接官の男よりはるかに強いことが、分かる。

俺もパチンパチンパチンと指を鳴らす。選曲した魔法歌は・・・

 

「キリって思ったより強いんだね。面接官ぐらいかと思ったのに」

「あは、そんな実力じゃ見た目だけの女だよ?」

 

そこで、俺は起動していた魔法を消去する。

 

「ま、行ってこいよ。受かるかどうかわからないけど」

「え~~そりゃ受かるでしょ」

 

キリは笑いながら言ってくる。

「じゃ、もしキリがここに転入できたらよろしくな」

「うん。よろしく」

 

そして俺は自分が住んでいるホテルへと足を進めた。

帰る途中に校庭が見えた。そこからは男女の楽しげな声が聞こえる。

「はは、・・・青春謳歌、馬鹿かってな」

言ってから、自分の言ったことのつまらなさに乾いた笑いを漏らす。

俺にはなぜ、こんなにも無邪気に笑うことができるのかわからない。

どうやら俺は妹が迷宮病になってからあんな風に無邪気に笑うことが出来なくなったらしい。

 

でも、少なくとも俺みたいに笑えなくなった人間はそう少なくないはずだ。

なぜなら《迷宮病》という異様で奇妙な病気は俺から笑うことを奪う以外にも、世界に劇的な変化をもたらしたのだから。

病気の定義はこう。

 

 

《迷宮病》

・16歳までの少女だけがかかる病気。

・発病した少女は、自分を中心とした周囲に異次元迷宮を生み出す。

・迷宮の規模、構造、構成は様々。閉鎖された学校なような形や廃病院のような形。巨大な一戸建て。ゲームの様な平原など、どうやら少女の過去のパーソナリティが影響していると思われる。

・最低半径2キロから数百キロにまで達することもある。

・迷宮に覆われてしまった区画は迷宮が現実世界に固着する《永久迷宮化》を起こす前に中心にいる少女を殺さなければ二度ともとには戻らない。

 

 

これらすべてがたった十年ちょっと前に始まったことだった。

もちろん世界は大混乱。

病気に対処できなかった国はほとんどの国土を永久迷宮化されてしまい、消えた。

おそらく今では世界の4分の1の大地が永久迷宮に覆われてしまっているはずだ。

特にあの十年前の迷宮化はひどかった。

黙示録と後々名づけられる迷宮が世界で同時出現し、瞬時に現実世界に固着したのだ。

アメリカのワシントン、日本の東京、イギリスのロンドン、ロシアのモスクワなど、各国の主要都市が呑み込まれた。

死者は数十億人。

だが、その大災害も人間を進化させた。

人間は永久迷宮に侵入し内部から現代科学とはまったく違った技術を持ち帰った。その新しい技術が、

 

「・・魔法」

 

俺は一度立ち止まり、指をパチンと鳴らす。

迷宮から人間が手に入れたのは迷宮帰還品流用魔法と呼ばれる技術だった。

人間の脳に暗号化された音振をあびせ、脳内の異界領域にアクセスして無から有を生み出してしまう―――などろ説明がなされている新しい技術。

俺は右耳につけた《ヘッドフォンファズ》をぽんぽんっとたたく。

右耳につけると主に左脳に、左耳につけると主に右脳に魔法は響くのだという。

俺は左の脳を揺さぶるのが好きだった。

言語を操って魔法を発動させるのが好きだった。

 

そんなことを考えていたらもう、ホテルに着いた。

といっても、俺が住んでるのは狭いホテルだが。

 

部屋には旅行かばんが5つ。

緑の鞄には主に魔法を使うための《ヘッドフォンファズ》がいくつか。

水色の鞄には身分を偽り、各国の研究機関に入るための偽造パスポートや身分証明書。

残りの鞄は生活用品。捨てても問題ない。

俺は高度なセキュリティがかけられている水色の鞄を開ける。

そしてさっきまで持っていた学生鞄を開け、その中から高校一年生のときは水野高校に通っていた。という嘘の経歴や、中学まではイギリスにホームステイしていた、という、やはり偽りの経歴の証明書を移す。

ちなみに、実際には俺はいろいろな国の研究機関を巡っていた。

非人道的なやり方で魔術師を養成している諜報機関に所属していたこともあった。

 

「都立の学校にそんなやつ入れるとか・・・大丈夫か?日本」

 

それも俺が入ったのは、国家の最上級軍事機密を担う、《少女殺害科》なのだ。

迷宮の中から高度な魔法技術が発見されるようになって以来、世界では軍拡競争が続いていた。

それは国家同士で。

大規模企業同士で。

危険思想化や傭兵、テロリスト、宗教組織まで入り乱れて、我先にと技術を奪い合っている。

より性能のいい、強力な魔法技術を取り入れたものが世界を制するのだ。

だから国が所有している《迷宮病少女》の攻略技術は最重要機密事項のはずだが。

 

「それとももう、俺の素性は調べ終わってるのかな?」

 

言いながら俺は右耳につけていたヘッドフォンをはずす。

今つけていたのはそこそこ実力のある人間が好んでよく使う、汎用三型《ヘッドフォンファズ》だ。

なんでも、実力のない人間が使うとひどい頭痛がくるらしい。

 

「そういえば真之介のヘッドフォン、汎用二型だったな。あんなのを使うやつには思えないが」

 

俺はつけていた汎用三型を鞄に戻し、水色と白が基調の《ヘッドフォンファズ》を取り出す。

汎用三型―――に見せかけられた、まったく別の構造で起動するヘッドフォン。

イギリスの《ジャック社製・試作二七型》―――と呼ばれる《ヘッドフォンファズ》だ。

脳内処理と精神への負担があまりにも大きいため実用化されなかった機器なのだが、俺はこれが好きだった。

そのヘッドフォンを右耳に装着し鞄を閉じる。やることは終わった。

さっきのヘッドフォンでもよかったが、こっちの方がしっくりくる。

もし誰かに襲われてもある程度は大丈夫だろう。

今まではそうだった。

俺はソファに座ってテレビでも見ようかとリモコンに触れたとき、携帯が鳴った。

俺はポケットに手をつっこみ、受話ボタンを押す。

ヘッドフォンに音声が転送される。

 

「はい。もしもし?」

俺が電話に出ると相手がしゃべりだした。

「あら、あなたは有栖真之介君と違って態度がいいのね、霧ノ翔哉君」

相手は面接官の女だった。

だが、一応、もう転入はしたことになってるので先生と呼ぶ。

「あ、先生でしたか。それで、なんの御用でしょう?」

「明日からすぐに授業が始まるから登校しなさい」

「どこに?」

「《少女殺害科》校舎の、五組に」

「五組・・・分かりました。他には?」

「とくにないわ。絶対登校するように」

「わかってますよ」

 

俺は電話を切った。

明日からもう、学校が始まる。

俺の妹のような、病気になった少女を殺すための学校。

俺は窓の外、「黙示録マージ」の方を向いて独り呟いた。

 

「・・・ふぅ、やっと帰ってきたよ、美羽」




読んでくれてありがとうございました!

こんなこと書いてる暇あるなら問題児書けよ!と言われそうですがそれは勘弁を・・・・

ということで黙示録と呼ばれた迷宮、スタートいたしました。
問題児と同様、更新速度は遅いですがよろしくお願いします!

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