今回も書いていこうと思います。
早く新刊出ないかな~
では、どうぞ
今の時刻は8時12分。
朝のホームルームは、8時10分から始まるので少し遅刻だ。
なんでも転校生は少し遅れて教室に行くように、とのことだった。
朝のホームルームで転校生が来ることを伝えてから自己紹介させたいから、ということらしい。
少し待つと、階段の方から真之介が歩いてきた。
「・・・やあ」
「・・・」
俺が声をかけると、「ウザイ」とでもいいそうな顔をした。そして真之介が言う。
「お前もこのクラスかよ」
「相変わらずの性格だな」
俺はそう返して、教室のドアを開けた。
真之介も入れるように2歩、前に進む。
教室にいる生徒の数は20人。
男女比は半々ではなさそうだ。
ぱっと見、女子の方が多い。
その生徒たちが俺たちを見る。
そこにこのクラスの担任、昨日の面接官の女教師が声をかけた。
「やあ、霧ノ翔哉君、有栖真之介君。ようこそ、私のクラスへ」
「先生のクラスでしたか」
「お前のクラスかよ」
「あは、真之介君、その口の利き方で教室に入れるわけには・・・」
「先生のクラスですか。とても光栄です」
そう言い直して真之介が教室のドアを閉める。
そして先生がまたしゃべり始める。
「わ―――」
だが俺が割って入る。
「で、先生。俺たちどうすればいいですか?自己紹介でもしますか?」
「・・・・・そうね。じゃあまず自己紹介を。霧ノ翔哉君から」
「え~。俺からですか。・・・水野高校から転入してきた霧ノ翔哉です。趣味は読書、興味があるのは金と権力と強い仲間です」
これで終わります、と先生の方を見る。
「はい、ありがとう。続いて有栖真之介君。自己紹介をしてね」
そう、先生が言うと、真之介は肩をすくめてこう言った。
「まるでありません」
「じゃあ自己紹介なし?」
「なしでいいなら」
「ならだめ。自己紹介しなさい」
真之介は少し考えるような仕草をして言った。
「そんな突然話を振られても困るんですが・・・名前は有栖真之介。クラスの端で小さくなっているつもりなので気にしないでください」
「・・・それで終わり?」
「ええ」
「じゃ、2人とも座ってちょうだい。空いてる席ね」
空いているのは一番後ろの窓際の席とその隣の席だった。
その2つの席の上には、1輪ずつ花が花に入れて置いてあった。
「死者への手向け・・・か」
おそらく・・・というかそうなのだろうが。
俺はいすに座る。真之介も座る。
そして真之介はためらうことなくその花瓶を机から床に下ろす。
真之介、ためらいってものがないな。まあ、俺もだけど。
そして俺も花の入った花瓶を床に下ろす。
少し、まわりからの視線が強くなった気がする。
この席に座っていたやつと仲がよかったやつらだろう。
だがほかにどうしろと?そのままにしておけばよかったか?
そこで先生が言った。
「じゃ、これでホームルーム終わるね。真之介君と翔哉君は授業が始まる前までにこの学校についての手引きについてだけは読んでおくように」
俺は鞄を開け、中から俺から見たら薄い冊子を取り出す。真之介も同じように冊子を開いている。
《都立吉祥寺高校》
迷宮少女殺害科―――学校の手引き
手引きにはこうある。
・都立吉祥寺高校は、都が日本国の承認を受けて設立した、迷宮病患者に対処するための機関である。
・当校は年齢制限制迷宮と呼ばれる19歳以下しか侵入できない迷宮の攻略を主として処理している。
・主に関東地方において発病した患者の処理を任されている。
(東北圏、中部圏、近畿圏の高校が処理しきれない場合は出張の可能性アリ)
・発病少女が現れた場合、直ちに当校所属、及び提携研究所の研究員が派遣され、発病少女が生み出す迷宮についての調査を開始する。
・調査内容は―――
少女のパーソナリティ
少女が生み出す迷宮の構造(マップ)
中にいる障害(敵やトラップ)
少女のウィークポイント
少女が《永久迷宮化》してしまい、その区画を迷宮で塗り潰して固着してしまうまでのタイムリミット
・並行して、当校では対象少女の調査結果について、《少女殺害科》の生徒たちへ教育授業を始める。
・たいていの場合、迷宮少女について学ぶための授業時間猶予は五時間。
・最後の一時間迷宮に侵入して少女を処理する。
・その合計六時間の授業で、みんなで仲良く効率よく、少女を殺して世界を救いましょう。
ぜひ、がんばってください。
とまあ、手引きはこんな感じだった。
俺はすぐ読み終わり、持ってきた本を取り出して読み始めた。
少しすると、
「仲良く、ねぇ」
と手引きを机に置きながら真之介が言った。
すでにホームルームは終わり、休み時間は半分過ぎている。
読むの、結構遅いな、と俺は思いながらまわりを見る。
俺と真之介を遠巻きに囲むように数人の生徒がこちらを見ている。
その中の1人が1歩、前に出る。
小柄な、150センチないくらいの少女。きれいな金髪をポニーテールにしている。
目が薄く青い。それに色白の肌。混血だろう。
そして強気そうなつり気味の瞳。《ヘッドフォンファズ》がついているのは左耳。
つまりは感情型。天才型。ピンチになるほど、力を発揮する型。
その少女はまっすぐこちらを指差して言う。
「おい転入生。今からあんたたちにこの教室のルールを教えてあげる」
「ああ、それはありがたいなぁ。初めての教室でドギマギしていたところなんだ」
真之介が言う。俺は無言のままその少女を見る。
そして魔法を発動する。
【検索♪さくさく♪あなたはだあれ?
さくさく検索♪あなたはなあに?】
俺が誰にも聞こえないような声でぼそりと一言つぶやく。
「・・・検索スイッチ」
―――名前 水色群青
主な使用魔法 海月輪スイッチ、防波堤スイッチ
短所 心の弱さ
長所 周りからの信頼
―――
という情報が俺の頭に流れてくる。
この魔法は探索隊や調査隊などでしばしば使われることがある魔法だ。
確か、日本で使われているのは九州地方だけだったはずだ。
その障害(モンスター)や人の名前、主な使用魔法、短所、長所が把握できる便利な魔法だ。
しかしこの魔法は容量が大きく、他の魔法と同時利用が出来ない。という点からあまり使用されていない。
そしてその少女・・・水色群青が続ける。
そろそろ俺も会話に入らないとだろう。こいつがしゃべった後にしゃべるか。
「まず、この学校で一番大切なことを知りなさい。それは私のこと。私の名前は水色群青。学年トップの成績にしてこのクラスのボス」
「へぇ、ボスさんか」
「ボスってことはそれなりに強いのか?」
「あたりまえでしょ?すでに私は2回、死なずに迷宮を攻略して迷宮少女を殺して世界を救ってる。さらに4回、永久迷宮に侵入し、迷宮帰還品流用魔法の技術を死なずに持ち帰ることに成功している。
「あ、それはすごいなぁ」
それは本当にすごいことだった。
この平和な、とても平和な日本で4回も永久迷宮に侵入し、さらに魔法技術まで持ち帰った、なんてからには
「自慢じゃないけど、あたしには今、七社も企業スポンサーがついてるから」
やっぱりね。しかも堂々と自慢してきたし。
きっと財界にもコネがあるのだろう。彼女がつけている《ヘッドフォンファズ》は高級なものだ。
《三友社製・水死一型》。名前の通り日本製だ。
「「・・・それで?」」
俺と真之介が同時に言う。これには少し驚いた。
「つまりあんたたち凡人が―――」
「あ、言っとくけど俺たち、凡人じゃないし」
俺の言葉に群青が「へ?」って顔をする。
さらに俺は続ける。
「確かに君はすごいよ。その歳でそれだけの功績を持っていて、海月輪スイッチも使いこなせるような力を持っている。だけど、だからってその周りが強いとは限らない。俺は強い仲間を探している。だけど君の仲間も君も心が弱すぎる」
「な、何でそんなことが分かるのよ?」
「魔法の一つだよ。検索スイッチ。聞いたことない?」
群青やその周りの生徒が「そんな魔法あったか?」と言いあっている。
俺はさっきから気になってたある生徒に魔法を使った。
【検索♪さくさく♪あなたはだあれ?
さくさく検索♪あなたはなあに?】
―――名前 火城白
主な使用魔法 千閃光スイッチ 斬懺悔スイッチ
短所 ―――――
長所 仲間は絶対裏切らない
―――
へぇ~短所がない、ね。ま、白のチームの方がやりやすそうだからこっちにするか。
「ま、俺はチームに入るなら火城白のチームに入るね」
突然名前が出てきた火城白が目を見開く。
「・・・なんで俺の名前知ってんだ?」
「検索スイッチ使ったからね」
「ほう。お前、強そうだな」
「強いよ。俺も、真之介も」
「おい、僕を巻き込むなよ」
「じゃあどうするんだ?白たち側か群青側か、どっちか選ぼうよ」
「そうだな・・・じゃあ僕はひと―――」
「1人で、なんて言うなよ。仲間がいた方が楽なんだから。それに真之介は強いからな」
「・・・・・・・わかった。僕は火城白の方につく」
うっし!と白が後ろでガッツポーズをしている。(小さく)
群青が白に聞く。
「また邪魔をして。そんなに私に敵対したいの?」
「別に敵対してるわけじゃねぇんだけど?」
「してるじゃない。あたしの庇護下に入らないで邪魔ばっかり。しかも転校生までそっちに入ったじゃない」
「自分の庇護下に入らないやつらはみんな敵ってか?女王様」
そんな白と群青をよそに、俺は残りの2人と自己紹介を始めた。
「さっきのホームルームで自己紹介したけど霧ノ翔哉、よろしく」
「俺は遠藤洋介、よろしく」
「私は夕闇陽見です。よろしくお願いします」
「ほら真之介も自己紹介すれば?」
「・・・・・・・有栖真之介・・・よろしく」
「おう、よろしくな」
「よろしくお願いします」
まだ言い合いを続けている白たちにうんざりしたのか、真之介は席を立ち、廊下に向かった。
「俺もトイレ行ってこよっと」
そして俺も教室を出た。
廊下。
特に何の変わりもない廊下だ。
『キーンコーンカーンコーン』
「やべ!急いで教室入れ!」
廊下に残っていた男子生徒たちが慌てて教室に入る。
残ったのは俺と、真之介と・・・
「あは、また会ったね。真之介君、翔哉君」
「やあ、キリ。合格できたんだね」
「あたりまえでしょ。やあ、また会ったね。すかし野郎君」
「誰かな?ぜんぜん覚えていないんだけど」
「うそうそ。私の顔に反応してたし、すぐに目線が私の胸に移動したでしょ。この変態」
そうキリに言われて、真之介がジロジロとキリの胸を半眼で見つめる。
そのしぐさがおもしろい・・・がおもしろいと思うだけだ。
さすがに耐えかねたのか、キリが降参する。
「ちょっと、そんなに見られたら恥ずかしいんだけど」
「え、だって僕、変態なんでしょう?」
「もぉ、相変わらず性格わるいなぁ。ちゃんと友達できた?」
「当然。ざっと100人はできたよ」
「・・・この学校のクラスは5クラス20人で100人しかいないはずなんだけど」
「ああ、つまり君以外全員友達になったわけか。ごめんな、君だけはどうしても生理的に無理なんだ」
「え?それってもう俺とは友達ってことか?」
ふと思った疑問を俺は真之介にぶつける。
そしたらしまったというような表情を浮かべ、まあいいかという表情に変わり、言った。
「・・・そうだよ」
「私は?私は?」
「さっきも言ったけど君だけは生理的に無理なんだ」
「あは、ぶっ殺そうかなぁもう」
その発言は群青とは違っておそらく冗談だということが分かる。
キリは右耳に《ヘッドフォンファズ》をつけている。つまりは俺と真之介と同じ理性型。
理性型は一時の感情じゃ動かない。
キリが言う。
「でもほんとにちゃんと仲間作らないとだめだよ。迷宮入ったら1人じゃどうにもならないんだから」
「仲間なら俺がいるぞ?」
「2人で迷宮を攻略しきるつもり?」
「残念ながら5人だ。すでに3人仲間がいる」
「あは、さすが翔哉君」
そうやって授業を少しサボっていたとき、突然警報が鳴り響いた。
『ビービービー』
「ん?何の音だ?」
「はぁ~。真之介、手引き読んでないのか?これ、発病少女が出た合図の音だぞ?」
「なっ!?」
真之介は少し驚き、こちらを見る。
そして警報は続く。
『少女殺害科の生徒たちに告ぐ。大至急教室へ戻りなさい。神奈川県で迷宮病患者が出ました。少女を殺すための授業を始めます』
キリが走り出す。
「サボりは中止~。教室に戻るね。あ、それと、ほんとに向こうではよろしくね、2人とも。一緒にがんばって少女を殺しましょう」
すれ違いざまにキリが俺たちにハイタッチしようと手を上げる。
―――一緒に少女を殺しましょう
真之介も俺もそのハイタッチを受けない。
「あれ?翔哉君はやってくれると思ったのになぁ」
俺は答えない。少女を殺す、なんていうやつとハイタッチなんてしたくない。
俺の中では、迷宮病少女は殺害対象ではなく救出対象なんだ。
「・・・じゃあ、向こうで」
俺はそう言って踵を返し、自分の教室、五組に戻る。
ちょうど先生も教室へ戻ってきたところのようで、手には分厚い書類を持っている。
おそらく、神奈川県で発病した少女についての書類だろう。
少女のプロフィール。趣味や家族構成、友達関係、生み出した迷宮の構造などなど、研究員や調査団が調査した内容が、それにはぎっしりと書かれている。
「先生・・・少女の名前と年齢は?」
突然真之介が先生に聞いた。
聞いてどうするのか?という疑問よりも、妹と同じ年齢だったらいやだな、という思いが強かった。先生は真之介の質問に答えた。
「そんなことはどうでもいいの!とにかく少女を殺すわよ!タイムリミットは六時間しかないんだから速く教室に入りなさい!」
どん、と先生が教室の扉をたたく。
「さあ、さっさと少女を殺して世界を救うわよ!」
言いながら教室へ入ってゆく。
少女を殺して世界を救う。
俺が進もうとすると、真之介が呟いた。
「は・・・何が世界だ。気持ち悪い」
「それには俺も同感だな。行くぞ、真之介」
これから授業が始まる。
俺がここ、《少女殺害科》に転入してきてから初めての、
少女を殺すための授業が始まる。
こんにちわ
次回から一時間目の授業開始です。
5時間目までにあと数ページくらい使いそうで、迷宮潜入は次の次くらいになりそうです。
なにか問題などありましたら感想までお願いします。
問題とかなくても感想お願いします