結構間があいてしまいました。
問題児の方をかいていました・・・
ということで、今回で授業の回終わりです。
やっと迷宮に入れる!!
では、どうぞ
『二時間目―――《少女が作った迷宮の構造を覚える》授業』
二時間目の授業は、少女が作った迷宮を、外部から太閤製薬の研究員たちがスキャンして解析したマップをひたすら暗記することだった。
情報によると、迷宮は学校のような形をしているのだという。
教室、職員室、保健室、理科室などなどがある構造。
だが地上十二階、地下十五階というバカみたいに広い構造だった。
おまけにすべての廊下は入り組み、迷路のようになっている。
だからこそ、マップの構造を完全に把握してから侵入する必要があるのだ。
でなければ、迷ったり、足止めされている間にタイムリミットがきてしまう。
時間内に処理できなければ、今回は三百万人の命が失われる可能性があるのだから。
失敗は許されない。侵入してからすぐに、一直線に、一度も迷わずに、少女を・・・殺しにいく必要がある。
少女がいるのは地下八階。
廊下の突き当たりにあるトイレの中の個室なのだという。
なぜ、彼女がトイレにいるのかは、わからない。
だが、場所はわかった。道も覚えた。
確かに、難易度が低いというのは本当なのかもしれない。マップのスキャンは詳細で、少女にたどり着くのは容易そうだった。
なら、簡単に攻略できるだろう。
・・・・ごめんな。まだ魔法が完成していないんだ。
・・・・・
それで、二時間目は終わった。
『三時間目―――《少女の弱点について》の授業』
三時間目はもっとも簡単だった。
少女の弱点についての授業。
少女は水が苦手―――ということだった。
少女の弱点については、自分が確認するまでは情報を100%信じない主義だから、『検索スイッチ』を使うまでは、“らしい”ということにしておく。
その調査書によると、もしもバケツで水をかければ、まるで硫酸をかけられたかのように体にやけどを負ってしまうのだという。
そんなこと、いったいどうやって調べるんだか・・・
学校の、トイレの個室、水。
もしも《迷宮病》を発症してしまうのは、心に闇を抱えた少女だ、というのが本当であれば、この少女になにがあったのか、大体想像できてしまいそうだった。
学校では人気者だったという前情報は、本当だろうか?
ほんとはいじめられていたとか?
・・・もしくは誰かをいじめていたとか?
「・・・・・」
だが、そんなことは関係ない。その少女がなぜ《迷宮病》にかかったのか、には興味があるが、攻略には関係ない。
それに、朝日桃果は俺の妹じゃない。
その少女には悪いが、俺は他人だ。できることなら助けてやりたいが、今は無理だ。
少女の弱点は、もう、わかった。
休み時間。
僕は白たちのところへ向かった。
「ねぇ。白たちって女子トイレ入ったことある?」
「あるわけねぇだろ」
「僕もだよ」
「私は毎回入ってますけど」
「「「そりゃそうだろ」」」
陽見が全員からつっこまれた。・・・真之介はいなかったが。
白たちもあたりまえのことを言った。
いや、そもそもそんな歳で女子トイレに入ろうもんなら、先生からのお説教だ。
「まぁ、そんなわけで俺たち、女子トイレの構造を知らないんだ。陽見、見取り図とか描ける?」
「あ、はい。描けます」
陽見が、開いたノートにさらさらと女子トイレの見取り図を描いていく。
「なんで見取り図なんか描かせるんだい?」
「お前・・・変態なのか?」
「いや、だって今回の迷宮少女がいるのは女子トイレなんだろ?女子トイレの構造を知らなくて遅れをとりました~なんて言いたくないだろ?」
「なるほどな。一瞬翔哉が変態なのかと思った」
「白・・・翔哉は性格的に考えてそれはないよ」
「わからんぞ?意外とこういうやつが―――」
「あははは、けんか売ってるなら買うぞ~~?白」
「はは、やってみるか?」
俺が久しぶりに楽しめそうかな~と思っていたそのとき、
「完成しました!・・・あれ?2人とも、どうかしたんですか?」
「ん、終わったか」
「残念だな。暇つぶしが会話だけとは・・・」
「あはは、今度相手してあげるよ」
「そうか?それは楽しみだ」
「2人とも・・・」
洋介が仲介に入ってくる。まぁ、今はこんなことをやってる場合じゃない。
陽見が描いた見取り図は、正確そうなものだった。というか、
「これ、男子トイレの小便器がなくなっただけじゃ?」
「そうだね。それ以外は鏡に写したみたいだね」
「ま、学校ってそんなもんだろ」
「っていうか真之介は?」
「あ、そういえばどこにいった?」
「ったく。ふらふらしやがって」
「まぁでも、真之介ってあんまり馴れ合いとかしなさそうだし」
「それなのに無理やり連れてきたんですか?」
「迷宮は1人じゃ攻略できないからな。永久迷宮ならまだしも、時間制は無理だ」
「ん?じゃあ、翔哉、お前は―――」
白がなにかいいかけた時、ビービービーと警報が鳴り響いた。
四時間目が始まる合図だ。
俺は席に戻りながら言う。
「じゃあ、また後で」
「はい。後っていってもすぐですけどね」
それから真之介と・・・群青?も教室に入り、(なんで群青と一緒?)
四時間目が始まった。
『四時間目―――少女を殺すための魔法選択の授業』
四時間目の授業は・・・今回の迷宮で有用だと思われる魔法の選択についての授業だ。
《ヘッドフォンファズ》には基本、六曲しか呪い歌を入れることができない。
つまり、使える魔法は六つだけ。
その六つの魔法ですべての事象に対応することになるのだが、通常、迷宮の中で起きる障害やトラブルは六種類では解決できないことが多い。
例えば、攻撃タイプの魔法ばかりを入れてしまえば、防御タイプの魔法や、支援系の魔法、幻術を生み出す魔法、鍵開け、トラップ探知・解除などの魔法を入れられなくなる。
だから普通は、六つ分の呪い歌スロットに、『攻撃2、防御2、支援2(バランス型)』や、『攻撃3、防御2、支援1(攻防特化型)』など、ある程度バランスを考えた曲配分になる。
だが、チームで迷宮に入るなら、また話は変わってくる。
攻撃タイプの魔法が得意な者が攻撃を全て担い、防御の魔法が得意な者が一手に引き受け、支援系の魔法が得意な者を守りながら進む―――などという戦術を取ることができる。
だからこそ、仲間が必要なんだ。
・・・・・永久迷宮なら、1人でも行けるが。
無論、そんなことは口には出さない。
いや、出したとしてもありえない、と笑われるだけだろう。
1人でも仲間が多ければ、それだけ戦術の幅が広がる。それは事実だし、効率がいい。
今回の迷宮を突破するにあたって、絶対に必要とされている魔法は、この2つだった。
トラップ感知。
魔法鍵解除。
発病少女がいる地下八階へ向かう間に、破らなければならない鍵が3つ。
トラップ地帯が2フロアある、と報告書にはあった。
だけど、そんなことはどうでもいい。
俺はいつも、
攻撃を2つ。
防御を1つ。
支援を3つ。
いつもその構成で迷宮を生き抜いてきた。
だから今回もこれでいく。
チームワークも必要であると思う。
迷宮を攻略していく中で、仲間はとても重要だ。
もちろん・・・信頼できれば、だが。
だけど、白や洋介や陽見は、信頼できると思う。
おそらくどこかの企業のスパイ、もしくはその配下だろうが、そのときはそのときだ。
俺が選んだ魔法は、
『霧雨スイッチ』
『霧刃スイッチ』
『水壁スイッチ』
『水癒スイッチ』
『神速スイッチ』
『魔剣スイッチ』
上から、範囲攻撃、近接攻撃、防壁、治癒、身体能力上昇、武器補助の魔法だ。
いつもこれで迷宮を戦ってきた。これなら例え人と戦っても、勝てる。
真之介も大体決まっているようだ。ぼんやりと校庭を眺めている。
俺も机で本を隠しながら、本を読んだ。
とにかく今読んでる本がおもしろい。
突然異世界から手紙が来て、その手紙を読むと異世界に連れて行かれる、という感じの異世界ものだ。
その中でも、俺は十六夜ってキャラの性格が結構好きだな。あ、あと史夜ってやつもなかなかおもいしろい。
頭の中で世界を作りながら読み、四時間目は終わった。
『五時間目―――少女が作った迷宮を攻略するためのチームを結成するための時間』
迷宮侵入直前の、最後の授業。
仲間と話し合って、どんな戦略でいくか、とか誰がどんな魔法を《ヘッドフォンファズ》に入れたのかを話し合ったりする授業。
真之介を引っ張って、白たちのところへ行く。
「え、ちょっと」
「まぁまぁ、来いよ、俺たちは友達で仲間なんだから」
「う・・・あんなとこでミスらなきゃよかった」
「おいおい、ミスとか言うなよ」
ぶつぶついっている真之介を連れ、白のところへきた。
「で、白たちのスロットは?」
「ああ、洋介は全防御、陽見は全支援、俺は全特殊攻撃だ」
「まさか、全振りとはね。思ってはいたけど」
「全特殊?」
真之介が白に尋ねる。俺も少し気になってた。
「ああ、いや、俺のは全攻撃と思ってくれていい。で、翔哉と真之介がバランス型なら全体に調整が取れるんだが」
「それならちょうどよかったな。俺はバランスだ」
「僕もバランス」
白亜が指をパチンと一回鳴らす。
「よし。なら今回は、群青に勝てる」
勝てる、ね。全振りのパーティなら、1人欠けた時点で終了だ。
しかし人数を増やそうにも、あの群青とかいうこのクラスのボスが白以外の生徒を配下にしてるから、増員が叶わず、それで負けていた。と白は思っているのだろう。
そして真之介がしゃべり始めた。
「ねぇ白」
「ん?」
「白と群青って、どっちが優秀なの?」
「俺だ」
「はっ」
「ほんとだぞ?」
「ま、いいけど。で、群青のスロット構成は?」
「今回どうしてくるかわからないが、確か攻撃特化気味のバランスのはずだ」
「・・・へぇ。攻撃3防御2支援1?」
「防御と支援が反対。防御1に支援2だ」
「ああそう。それは好感が持てるなぁ」
「そうか?俺は攻撃2防御1支援3だから微妙なとこなんだが」
「そういえば、翔哉さんはどんな魔法を入れたんですか?」
「ああ、俺は攻撃が『霧雨スイッチ』『霧刃スイッチ』防御が『水壁スイッチ』支援が『水癒スイッチ』と『神速スイッチ』と『魔剣スイッチ』」
「「「「・・・は?(え?)」」」」
「え?なに?」
「いや、初めて聞く魔法ばっかりだったから」
「私も聞いたことないのがありました」
「俺も知らないのがあった」
「・・・神速?魔剣は僕も使ってるけど、神速ってのは?『加速スイッチ』の上位なのか?」
「ああ、まぁそんな感じだ。・・・とそろそろ本番が始まるみたいだぞ?」
真之介も外を見ている。こちらには、五機の輸送用ヘリが飛んできているのが見える。
移動するのだ。発病少女がいる神奈川県に。
教室の黒板を叩いて本条司先生が言う。
「は~い、五時間目が半分終わりましたー。残りの半分は、現地へ移動しながらします。みんな、準備は?」
クラスメイトたちはそれに、緊張の顔で黙り込む。
群青が立ち上がり、胸を張っていった。
「はっ、あたしを誰だと思ってるんですか?天才の水色群青ですよ?生まれたときからとっくに準備は出来てます」
「はは、群青はおもしろいな。産まれたときから準備ができてるのか」
「はいはい、そんなことしてる場合じゃないでしょ?」
先生が仲介に入る。群青が何か言い返そうとしたのだろう。
ま、言いたいこと言えたからいいけど。
「はは、いいツッコミだったな」
「ははは、翔哉は結構おもしろいね」
「ふふっ、翔哉さんは結構人の揚げ足を取るのが上手いんですね」
「・・・・・・」
「ま、とりあえずだ。・・・さあ、いくぞ。今回は俺たちが勝つ」
そして掌を上げる。
「やりましょう」
洋介がその手に、パチンッと手を合わせた。
陽見が、
「が、がんばります」
おどおどしながらぺチンと手を合わす。
「俺らがいるから今回は楽勝だな」
俺も、手を合わす。
最後に白が真之介にその、掌を向けて、
「お前もだぞ。真之介」
「まさか、僕にもハイタッチをしろと?」
「ああ」
「宗教上の理由でそれはちょっと」
「吐かせ」
白が笑う。洋介も、陽見も笑う。俺も笑った。・・・上辺だけ。
そしてそれを睨んでいる視線を感じる。群青だった。
なにかあったのだろうか?真之介はヘラヘラとした目で群青を見ている。
そうして笑っている間にも、状況は進む。
タイムリミットまで、もう、ほとんど時間は残っていない。
本条先生が言った。
「さあさあ、行くわよ!みんな教室を出て、ヘリに乗りなさい!」
そして、神奈川県への移動が始まった。
先に言っておきますが、「生まれたときから準備は出来てる」という群青のセリフのあとの翔哉のセリフ「産まれたときから準備は出来てる」というのは誤字ではないです。
読んでくれてありがとうございました。
なにか問題とかありましたら感想までお願いします。
感想くれたらうれしいです。