まさかヘリの中でのことで一ページも使うとは・・・
作家さん恐るべし。いったい幾ら文字を書いているんだろう?
では、どうぞ
PM13:03 発病少女の《永久迷宮》化まで、残り1時間27分。
輸送ヘリは少年少女たちを乗せて移動する。
振動。
轟音。
クラスメイト達の緊張。
東京都吉祥寺から神奈川県横浜市までの移動時間は15分くらいのはずなのだが、少し長く感じられた。
隣の席には白が、白の隣に洋介が。俺の向かいに真之介が、その隣に陽見が座っている。
みんな静かだ。ヘリの音しか聞こえてこない。
「あの、2人とも、迷宮侵入には、慣れてるのですか?」
「なんで?」
「ん?なんで?」
「んと、2人ともすごく落ち着いているから」
「はは、そうかな」
「僕はへらへらしてるだけだけどね」
「だからあの、怖くないのかな、って」
陽見が俺と真之介を見て、そう聞いた。
彼女の瞳には、恐怖が映っていた。
怖く、ないのか?
その問いの答えは・・・難しかった。死ぬかもしれない場所に立たされて、怖くないわけがない。
ただ、それよりも怖いことがあるのだから、そのことに恐怖しないのだろう。
死ぬよりも怖いこと。それは妹に、もう会えない、ということと、妹が将来、大人たちに利用されるかもしれない、ということだ。
だから、怖くない。そう、自分に思わせることが出来る。
陽見は続けた。
「私は怖いんです。もう侵入は三回目なのに、いまだに・・・」
「そう。でもそれが普通じゃないの?」
「そうそ。陽見が普通で、俺達が普通じゃないの」
「ですが、群青さんや白さん、洋介君たちがあんなに平気そうにしてるのに、私はずっと、みっともないくらいに怖くて」
陽見はひどくおびえていた。
おそらく、恐怖への感受性が強いのだろう。だが、それは悪いことじゃない。
感受性が強いタイプは感応タイプや支援タイプの魔法の能力がブーストすることがある。
そして陽見は支援全振り。となると、やはりそれなりの使い手なのだろう。
「で?それ言ってどうすんの?」
「あの、私はあまりお役にたてないかもしれませんが、あなたがたのサポートを全力でさせていただきます、と、それを・・・言いたく・・・・」
真之介が半眼でジロジロ見つめる。
「・・・す、すみません・・・なにか、怒らせるようなことを私、したでしょうか?」
ちょっと泣きそうな顔で言う陽見に、真之介が言った。
「いいや。僕はもとからこういう顔なんだよ」
「あ、すみません」
「まあわかった。支援が必要なら頼むよ」
「ん、俺からも頼む」
「は、はい!」
「じゃ、とりあえず最初の頼みごとしていい?」
「え?なんでしょうか?」
陽見が嬉しそうに言う。真之介は何を言うのだろう?
「移動中は鬱陶しいから、友達づらして話しかけないでくれるかな」
「あれ?さっき廊下でキリにあったときキリ以外は全員友達とか―――」
「それ以上言ったら迷宮で殺すぞ?」
「ははは、怖い怖い」
上辺だけ、表情だけ、笑いながら言う。
真之介の言葉にやられたのか、陽見がショックな顔になる。
「おいおい、陽見をいじめないでよ。真之介」
「ん?」
「なんで真之介はそんないやなやつなのさ?そんな態度とっててなにかメリットあんの?」
真之介は顔を上げ、洋介を見て薄笑みを浮かべながら言った。
「少なくとも休日は静かに過ごせるよ」
「はは、友達が少ないから?」
「そう」
「じゃ、今度俺らと過ごそうぜ?翔哉も、せっかく仲間になったんだからさ。日曜に映画でも見に行って、ファミレスで駄弁って」
「なにそれ気持ち悪い」「なにそれ楽しそう」
真之介の言葉と俺の言葉がかぶる。
それがおもしろかったのか、笑いながら洋介は言う。
「いいからいいから。とにかくそんな休日を過ごすために―――」
洋介が手をこちらに差し出してくる。そして、言った。
「一緒に生き残ろう。俺は防御全振りだから、仲間を誰も殺させないよう、全力を尽くす。よろしく頼むよ。翔哉。真之介」
さらに洋介は陽見の手を取って、自分の手に重ねる。
さらに隣の席で外を見ていた白にも、
「なあ白~。こっちきてきて。始まる前にもう一回円陣組もうぜ」
「ん~?」
と振り向き、陽見と洋介を見て、手を重ねる。
「じゃあ、俺も」
と、俺も手を重ねる。
その重ねられた四人の手の押し売りに、真之介はげんなりと言った。
「あの、ハイタッチの時も思ったけど、こういう嫌がらせはやめてくれないかなぁ?」
「うるせぇさっさと手を重ねろ」
白に手をつかまれ、真之介の手が重なり、それで、五人の手が重なる。
そして、洋介が言った。
「じゃ、リーダー。一言よろしく」
「今回は絶対に俺達が勝つ。迷宮の難度も低いんだ。犠牲はゼロで、全てを手に入れる。生きて戻るぞお前ら!」
「ああ!」
「はい!」
「あたりまえ!」
「クソうぜぇ~」
そこでヘリが降下し始めた。
目的地に到着したのだ。
ついに迷宮進入が始まる。
タイムリミットはあと一時間ちょっと。
少女を殺せなければ、三百万人の犠牲が出る可能性がある。
だから、絶対に失敗はできない。
俺たちはそ残り時間内に、発病少女を殺して―――世界を救う。
六時間目《迷宮侵入》
始まる。
最後の授業が、少女を殺すための一時間が始まる。
ヘリの中では、泣きそうな顔をしている人。無理やり笑っている人。虚ろな顔でブツブツ呟いている人がいた。
だが、そんなことをしていられるのは、あと数分のはずだった。
そしてそのヘリの中で、群青の声がする。
「・・・さあ、来るわよ!」
俺は群青の方を見る。
その顔には、緊張があり、それでいて強気な目が、今回も成功させると語っている。
その向こうでは、ヘリの後部がゆっくりと開き始めている。
途端、突風と轟音と抜けるように青い空の景色が現れる。
そして本条先生が立ち上がり、入り込んでくる風の音を切り裂くように声を張り上げる。
「さあ~、ついに少女を殺す時間よ!大丈夫!落ち着いて対処すれば、あなたたちなら楽勝だから!」
群青が振り返って続ける。
「当然よ!あたしについてくれば今回も問題ないから、みんな。大船に乗ったつもりで行きましょう!」
そこまで群青の演説を聞き、俺は瞑想に入る。
迷宮侵入前はいつも瞑想をする。
それで、精神を安定させるのだ。
少したっただろうか。白に話しかけられる。
「おい、聞いてるか?翔哉」
「ああ、すまない。瞑想してた」
「いや、寝かけてただろ・・・最後にもう一度作戦を確認する。俺たち五組が侵入するのは、一階の廊下だ。だが廊下はいくら進んでもゴールがない、無限回廊の罠があることが判明している。だから、保健室に入り、窓から飛び出して一度校庭にでる。で、校門から―――」
「聞いてなかった分際でいうのもあれだけど、そんなことを今さら説明されなきゃいけないレベルなら、エスケープした方がいいぞ。足手まといになる。マップ覚えてないとかいうやつは迷宮生物に食われればいい」
白が俺を見る。他の三人を確認してから、笑う。
「だってさ。お前らなら大丈夫か」
陽見がおどおど言う。
「が、がんばります」
洋介がメガネを指で弾いてから言う。
「もちろん大丈夫だよ」
真之介がつまらなさそーに言う。
「あ、それ、僕がいいたかったな」
「はは、じゃ、あと決めないといけないのは陣形か。白が先頭、支援の陽見を守って、僕が殿っていうのはいつも通りだとして、この嫌みな転校生と優しそうな転校生の位置は?」
「ははは、僕ってそんな優しかったかな?」
「ば~か。真之介じゃなくてどう考えても翔哉のことだろ、それ」
「はは、そう?ありがと。じゃあ、俺は遊撃で」
「翔哉が遊撃なら、真之介、お前も前衛だ。俺の横で、俺と陽見を守れ」
「めんどくさいけど、いいよ」
それから少しの間、また瞑想に入る。
目を開けたのは、本条先生が大声でしゃべったときだ。
「時間よ!今私たちは迷宮上空にいる!『侵入』の魔法の準備をしなさ~い」
俺は指をパチン、と一回鳴らす。
《ヘッドフォンファズ》が少しだけ呪い歌を流す。
【侵入、潜入、不法侵入♪
侵入、潜入―――】
脳内に『侵入』の魔法が起動する。
座標が網膜の裏に現れる。あとは潜入のためのトリガーとなる呪文を唱えるだけで、次の瞬間にはもう迷宮の中だ。
本条先生が言う。
「まだよー。まだいかない。腕章をつけて」
「「腕章?」」
また、真之介と俺の声がかぶる。
横から白が、白地の腕章を渡してくる。真之介にも同様に、だ。
「渡し忘れてた。ほれ、翔哉、真之介。これをつけろ」
「なにこれ?」
「星が二十個ついてる」
「このクラスの、仲間の証だよ」
腕章には、五組、と書かれている、確かに、クラスの仲間をアピールする文字だ。
「その星が、その時迷宮内にいる仲間の数だから。で、誰かが死んだりエスケープしたら、一個ずつ消えていく」
今の説明に疑問があったので、質問する。
「じゃあ、先生。なんで今星が二十個あるんですか?迷宮には誰も入ってませんよ?」
「ああ、もうめんどくさいわね・・・ん~・・・仕様よ。そういう仕様」
なんかてきと~に流されたが、まぁ、いいか。
「いつも言ってるけど、星が四つを切ったら、もう少女殺すの無理だから、攻略あきらめてエスケープしなさい。わかった?」
はい、と周りの生徒たちがいう。
そして、先生が笑って言う。
「ま、今回は難度0.4の迷宮だから、ここでエスケープなんてことは―――」
「そんなクズはすぐに退学させてください!」
群青が遮る。群青のその言葉に、生徒たちが笑う。
緊張しながら、笑う。
先生がそれに微笑んでから、言う。
「じゃあ、あと十五秒~。今回もうちのクラスが勝つわよ。他のクラスに手柄は譲れない」
残り十秒。
群青が怒鳴る。
「みんな!迷宮に入った瞬間、一気にいくから!ついてこれないやつはあとで殴るから!そのつもりで!」
残り五秒。白が真之介の背中をぽんっとたたく。
陽見の背中も。
洋介の背中も。
そして俺の背中も。
そして、言う。
「よし、やるぞみんな。がんばろう」
「はい」
「おう!」
「まかせとけ」
「・・・・・」
真之介は答えなかった。
残り、一秒。
先生が言った。
「さあ入って!」
生徒たちが一斉に呟く。
「ダイブスイッチ」
「ダイブスイッチ」
「ダイブスイッチ」
脳内にあふれさせている『侵入』の呪い歌を発動させるための、トリガーコードだ。
次々と生徒たちの体が消え、迷宮の中へと、転送されていく。
それを見ながら、俺も呟いた。
「ダイブスイッチ」
刹那。
俺の体が分解され、迷宮の中に転送された。
次回から、迷宮攻略スタートです。
すみません。こっちの方はぜんぜん投稿してなかったです。
問題児に一番力を入れているので、その辺はわかってもらえたら、と思います。
読んでくれてありがとうございました。
問題とかありましたら感想までお願いします。
感想書いてくれたらうれしいです