こちらもだいぶ時間が空いてしまいました。
勉強しないと倍率が結構上がってたんで・・・
では、どうぞ
迷宮の中で、一度分解された細胞が再構築される。
毎度思うのだが、この魔法。少しでも誤作動が起きたら使用者死ぬよな・・・
とか思いながら、目を開ける。
暗かった景色に色が入り、迷宮に入った、と実感する。
「ったく、真之介のやつおせぇな」
「はは、怖くなったんじゃない?」
「誰が怖くなったって?」
「あ、真之介」
「遅ぇぞ真之介!」
白が怒鳴る向こうで、群青が避けんだのがわかった。
「いっけぇええええええ!」
クラスメイト達を引き連れて全力で走り始める。
広い廊下には、数体のでかいクマの色とりどりの人形。
そしてその数体の人形が、襲ってくる。
群青たちの方にもそのクマが現れたのか、魔法を使う音が聞こえる。
だが、そんなのを無視して、魔法歌を聞き流す。
【パラパラ豪雨♪ザーザー小雨♪
雨降る森の 幻の雨♪パラパラ―――】
「霧雨スイッチ」
俺がそう呟くと、どこからともなく現れた水が、全方位から敵を貫いく。
もちろん、俺や白たちにはあたらない。
敵だけを確実に、貫いてゆく。
それで、俺らを襲ってこようとしていた敵は倒れる。
やっぱ狙撃は楽しい。距離にして約100m。
「ふぅ。あれ、なにしてんの?」
「なんかつかえねぇ魔法つかってるんだって」
「おいおい、制約が大きいぶん、強力なんだからさ」
「陽見、どうだ?」
「あ、はい。おもしろそうなとこを見つけました」
「どこ?」
「ここの、すぐ横です。この壁の向こうに教室がある。壁を破ることが出来れば保健室へ行かなくても、そこから校庭へ出られて、最短ルートになります」
「よーしよくやった。お前はトラップ探知の魔法に移行しろ。壁の向こうを探れ。こっからは俺がやる」
「あ、じゃあ白、よろしく」
「おう。しかしどれくらい分厚いかな。面で斬るか、穴空けるか」
その白の問いに、洋介が答える。
「どうだろうなぁ。人が通れるだけの穴でいいんだけど」
「じゃああ、穴か。よし」
白が指を振るおうとしたとき、陽見が言う。
「面でお願いします。壁の向こうに障害が三匹います」
「さっきのクマか?」
「クマかどうかはわかりませんが―――狭い穴を抜けるとそこを襲われ・・・」
洋介が遮って言った。
「さっき程度の障害なら、僕が防御する。白。そのまま魔法使っていいよ。穴空けて」
洋介も指を鳴らし、踊らせ始める。
俺も念のため、指を鳴らし、神速スイッチの呪い唄を起動させる。
ついでに左耳にもうひとつ、“小型化されたヘッドフォンファズ”を装着する。
これで、準備万端。なにが来ても大丈夫だ。
「ん~。じゃあいくぞ」
白がリズムを刻むように踵で足を鳴らす。
指を宙空に舞わせて、魔法を起動させる。
「―――千仙閃光スイッチ」
白の右手に槍が生まれる。その穂先がドリルのように回転し始める。
白が左足を一歩前に踏み出し、
「つらぬっけぇええええええええ!」
まるでピッチャーのように振りかぶり、槍を壁にぶつける。
その槍の穂先は、壁を巻き込みながら回転し、時折爆発しながら壁を削る。
数秒の後、壁に穴が空く。向こう側に、教室が現れる。
陽見が言った通り、そこにはクマがいた。三匹。
「クマー!」
「クマー!」
「クマー!」
一斉に白を襲う。白は魔法を発動し終えた直後だから、対処できない。
「洋介!」
「わかってる!ってかもう魔法は発動してるよ!反重量スイッチ!」
反重量スイッチ。一瞬だが、その区間の重力を変化させることができる魔法。
なるほど。そこそこいい魔法を持っているんだな。
その魔法にクマがかかり、後ろにさがらせられる。
白が態勢を立て直し、魔法を発動する。
先ほどと同じ、黒い槍。
「ここかな」
白が呟きながら、とん、とんとんっと足場を確認する。
そして一気に槍を突き出す。
その槍は一匹のクマを貫通し、さらにそのまま、二匹のクマの真ん中で、止まる。
「終われ」
白がそう言った瞬間、ドリルの穂先が爆発する。クマは三匹同時に四散した。
結構いい動きをする。白なら、もっと強いやつにも対抗出来るだろう。
「よし終わった~。お前らこい。外に出でるぞ!」
「はい!」
「おう!」
「わかってる!」
陽見、洋介、俺、真之介という順で穴をくぐる。
そしてすぐに、教室を見回す。
誰もいない教室。
使われた形跡が無い机。
新しそうな黒板。
そしてその黒板に小さく、こんなメッセージが書かれていた。
『おまえらみんな、皆殺しだ。おまえらみんな、皆殺しだ』
二回、そう書かれている。
「みんなって言葉と、皆って言葉は同じだと思うけど・・・」
真之介が呟く。
みんな、皆殺し。
みんな、皆殺し。
《ヘッドフォンファズ》で魔法を使うときの呪い唄は、韻が踏まれて強調されることによって、脳漿を揺さぶる。
だから、《ヘッドフォンファズ》使用者は、日常的に韻を踏んだ言葉を使いがちになる。
だけど、《ヘッドフォンファズ》は民間人は使えない。そして、朝日桃果は普通の、一般の民間人だと、調査書には書いてあった。
もしも彼女が魔法を使えるのだったら、確実に調査書に書かれているはずだった。
なぜなら、魔法が使えるものが発症した場合、その難易度は高く、質が悪くなることが多いから。
みんな、皆殺し。
みんな、皆殺し。
おかしい。確実におかしい。
先ほどの神速スイッチはまだ起動したままで使っていない。
いざというときはどうにかなるが・・・
「・・・おい白。ちょっと待て」
と真之介が言った。
白たちはもう、窓から校庭へ出ようとしている。
「ん?」
背後の、壁の向こうから、小さく群青の声が聞こえてきた。
「保健室突破!さあ校庭に出て出て!一気にいくわよ!」
向こうもちょうど、校庭に出るところのようだ。
「くそっ!あっちはもう出たか・・・急げ、ここで群青たちを抜くぞ!」
「こちらの窓の方が、玄関には近いです!」
「さっすが陽見。今回は、勝とうぜ白!」
「ああ、当然だ!」
白が窓に手をかける。
みんなはおかしいとは思わないのか?
先に群青たちが校庭に出ているはずだ。
なのに、窓の外には群青たちの姿はない。
「白!窓を開けるな!」
真之介が、叫ぶ。
だが、遅かった。もう白は窓を開けてしまった。
「え?」
窓の外は、夜だった。
闇色の平原。
赤い月。
青い雲。
異常な光景だ。
その異常な光景の中から、キィイイイという不快ななにかの咆哮が聞こえてくる。
「くっそ、やられた」
どうやら、真之介は状況を理解しているようだった。
「はは、まんまと、な」
脳内には、さっきから流している神速スイッチの魔法が流れている。
【一秒♪一瞬♪わずかな時間♪
わずかな時間で時をも超えろ♪一秒―――】
「神速スイッチ!」
「加速スイッチ!」
俺と真之介が同時に叫ぶ。
かちんと体にスイッチが入る。魔法が発動し、肉体が加速していくのがわかる。
加速できるのは、ほんの3秒間だけ。
だが、3秒間もあれば、足りる!
「白、窓から離れろおおおおおお!」
真之介が白に向かっていったのを確認してから、俺は陽見と洋介のもとへ翔ける。
真之介に引っ張られた白が、教室内に吹っ飛ぶ。
「洋介!陽見!こっちだ!」
そう言いながら、二人の手を引っ張り、窓から離れさせる。
そこで、左耳につけていた《ヘッドフォンファズ》で流していた魔法を起動させる。
【検索♪さくさく♪あなたはだあれ?
さくさく検索♪あなたはなあに?】
「検索スイッチ」
―――名前 P.T.スネーク
使用可能魔法 なし
短所 頭部が弱い
長所 低レベルの防御魔法は破れる
―――
以上のことが、わかる。・・P.Tの意味って、もしかしてプラスチック・トーイか?
この0コンマ数秒の間に障害の長所と短所を理解する。
その蛇のおもちゃみたいなのが、四匹入ってくる。
そしてその全部が、俺の方に・・・
「は!?なんで全部こっちきやがるんだよ!・・・もういいや、俺について来い!」
神速スイッチでなら逃げ切れる。
そう思い、懐からナイフを取り出して、蛇に近寄り、気をひかせる。
そして全部の蛇が俺の行動にひっかかり、こちらによってくる。
よし、このまま・・・
「馬鹿翔哉!周りをよく見ろ!」
突然真之介が俺に向かって叫んだ。魔法は3秒たち、効果を失っている。だが、捌けるはずだった。俺の技量を持ってすれば、この程度、ナイフ一本でクリアできる障害のはずだった。
前方には蛇が四匹。
後方には・・・しまった!後方に蛇一匹。窓から新しく入ってきやがったな!
俺は・・・その蛇に対処できない。
「あ、やべ・・・」
「避けろ!翔哉!蜘蛛脚スイッチ!」
洋介が防御魔法を展開しながら、俺の肩を押す。
そのレベルの防御魔法じゃ―――
「がはっ」
洋介が血を吐いて倒れる。洋介の左胸中央が蛇に貫かれていた。
「洋介!!」
「馬鹿野郎!なにぼやっとしてんだ!」
真之介が加速スイッチを使いながら、洋介を貫いていった一匹の蛇を捌いた。
俺も、ナイフで前方の蛇四匹を捌く。
洋介の怪我を見て、陽見が泣きそうな顔で叫んだ。
「いやぁああああ!」
今のは確実に俺のミスだ。
洋介がいなくても、防ぐことはできた。
だが結果、洋介がかばい、死にかけている。
・・・くそ。
「洋介!意識はまだあるか!?」
「が、あ・・・く、まずった、くそ」
「ごめん洋介!俺が油断した!」
洋介が怪我をしたのは、俺のせいだ。治療は、まだできる。
【水滴♪一滴♪わずかな力♪
女神の泉の 命の一滴♪水滴―――】
「水癒スイッチ」
俺がそう呟くと、薄く黄緑色に光る水が、傷口に集まる。
その水は、洋介の傷を癒していき、だいぶ傷が薄くなった。
「・・・なんだ・・・?その魔法」
「・・・よかった。ごめん、洋介。今回のところはエスケープしてくれ。傷口を塞いだだけだ。内臓にはまだ傷がある」
「そうか・・・ありがとう。お言葉に甘えてエスケープすることにするよ。ごめんな、みんな。俺は先にいくわ。また後で・・・エスケープスイッチ」
瞬間、洋介の体は分解されて、消える。
「洋介君は・・・助かるんですか?」
「ああ、たぶん助かる。助からない確率は0,00000001%以下だ」
「よ、よかった・・・」
「翔哉、油断しまくりじゃなかったか?」
「やっぱそう思うよな、真之介。俺もそう思う。長らく迷宮に入ってなかったせいか、体がなまりきってやがる」
「だが、これからさきどうする?ここは高難度の迷宮だろ?」
「ああ、そうだと思うな。白。俺の予測では、15とかそれくらいだ。すまなかった。俺のせいで洋介がエスケープしちまって」
「いいや、お前はあいつを助けてくれてからな。今度俺らに奢ってくれたら、許してやる」
「はは、いいよ。今度行こう。この迷宮をクリアしてから」
そんな他愛もない会話をし、感情を消す。
そろそろ真面目にやらないとな。
「次はミスらない。勝つのは俺たちだ」
「・・・!」
「お、おう」
「は、はい」
三人は、その、翔哉の空気の変わりように、驚いていた。
洋介が退場なされました。
ここでエスケープさせるかさせないか迷ったのですが、結果、こうしました。
魔法もだいぶ開示しました。あとは「霧刃スイッチ」だけですね。
ヘッドフォンファズを二つ装備できてたことについては後ほど。
読んでくれてありがとうございました。
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