ジョジョ×プロセカ『singing the World』   作:紙ふうせん

1 / 2
朝比奈まふゆは『誰もいないセカイ』で一本の古びた矢を見つけた。
セカイの住人であるミク曰く、その矢はまふゆの『本当の想い』を探すのに役立つからここに存在するのだという。
自分の本当の想いを知るために、ミクから使い方を聞いたまふゆはそれを自分に使おうとする。
しかしまふゆがスタンド使いに目覚めたことで、セカイを通して奏や絵名、瑞希にも影響が現れ始めて……。


プロローグ『絶望の底にいる』

     『僕はまだ「マイナス」なんだッ! 「ゼロ」に向かっていきたいッ!』

           

               byジョニィ・ジョースター

 

 

 暑くもなく寒くもない。

 僅かな光の差す、無限に続くように見える誰も居ないセカイ。

 そこはまさに、『朝比奈まふゆ』という人物を象徴する空間だった。

「違う! これじゃない!!」

 書いていた途中の楽譜をぐちゃぐちゃとペンで塗りつぶし、目の前から払い除ける。

 バサっと音を立て、五線譜の引かれた紙が宙を舞った。

 塗りつぶされた楽譜が、元々どんな曲だったのかはもはや誰にも分からない。

「また違った……これで、何回目だろう?」

 そんなもの数えたことなどない。

 ひたすらありもしないものを吐き出そうとすることが、まふゆにとってどれほどの苦痛を伴う作業なのかなど誰にも推し量ることなどできないだろう。

 だがまふゆはまたすぐにペンを取り、楽譜に向かい始める。

 これほどまでに苦しい想いをしているにも関わらず決して手を休めようとはしない。

 これじゃない、また違った。

 そう呟き続けるまふゆの悲痛な声が、誰もいないセカイに響き渡る。

「違う、こんなんじゃ見つけられない……!」

 紙にペンを走らせ続けていたまふゆはついにペンと共に体を床へ投げ出し仰向けに転がる。

 その姿は、まるで癇癪を起こした子供のようにも見えた。

 まふゆは光を宿していない虚ろな瞳で転がっていくペンの行方を追う。

 占いなど全く信じていないが、転がり続けたペンが自分に似ているような気がして……最終的にどこに行き着くのか興味があった。

 傾斜がないにも関わらず、そのペンはどこまでも転がり続け———コツンという小さな音を立てて何かにぶつかった。

 それは黄金のような金属で作られた、簡素な装飾の施された矢尻だった。

「なんでここにこんなものが……」

「まふゆ……とうとうその矢を見つけちゃったんだね」

 いつの間にかまふゆの背後に、白いワンピースがよく似合う少女が立っていた。

 その声はどこか残念そうで、まるで見つかってほしくなかったような言い方だ。

「ミクはこれががどうしてここにあるか、知ってるの?」

 ミクと呼ばれた少女は静かに頷き、その矢を指差した。

「多分、まふゆの本当の想いを見つけるのに役に立つからここにあったんだと思う……」

 その言葉を理解するのにまふゆは数秒もかかってしまった。

「これを……使えば、『本当の自分』を見つけることが……できるの?」

「……うん、まふゆの望む形かどうかは分からないけど、確かにその矢を使えばきっと今のまふゆの想いと向き合うことができる」

「どうやって使うの?」

 まふゆは今にも掴みかかりそうな勢いでミクに詰め寄り、無言で睨み続ける。

 その気迫に気圧されたようにミクは答えた。

「その矢で自分を傷つける、それだけ……でも、自分の思いと向き合えてもそのせいで余計に悩むことになるかもしれない。それに……」

「そう、ありがとうミク」

 まふゆは最後まで話を聞く事なく、自分の掌を何の躊躇もなくその矢で切りつけた。

 まふゆがまだ生きていることを証明する真紅の液体が、ピチョンと音を立て床に落ちていく。

 だが不思議なことにその傷はすぐに塞がり、まるで何事もなかったように流れていた血も止まった。

「・・・・・・これだけ?」

 その現象自体は非常に奇妙な出来事であったが、それはまふゆが望んだ魔法ではなかった。

 しかしその考えをまふゆはすぐに改めることになる。[newpage]

 不意にこのセカイには存在しないはずの『寒さ』をまふゆは感じた。

 このセカイ全体の温度が下がったわけではない、まふゆの周囲1mだけ気温が1~2℃ほど下がっているのだ。

 冷気の正体を確かめるべく振り返ると、まふゆの側に、機械仕掛けの人形のような姿の奇妙なオブジェが立っていた。

「なにこれ?」

「それは側に現れ立つことからスタンドって呼ばれてる力。このセカイと同じで、まふゆの想いから生まれたもの」

 人形は冷気を放ちながら、なにを話すこともなくまふゆを見下ろす。

 その姿が、まふゆには酷く気色の悪いものであるように見えた。

「これが私の内にある想い? 冷たくて無機質で・・・・・・これが私なの?」

 足元が揺らぐような錯覚に襲われる。

 冷気を放つその人形は、まふゆという人物の本質を痛い程に捉えていた。

 それは自分の努力になんの意味もなかったことの証明に他ならず、まふゆにとって救済とは程遠い事実だった。

 糸が切れた操り人形のように全身から力が抜けていき、遂にまふゆはその場にへたり込んでしまう。

「……ディスパイア、この想いに名前をつけるなら……フロムマイディスパイア」

「それは……どういう意味?」

 俯いていたまふゆはゆっくりと顔を上げ、なにも映さない濁った瞳でミクを見据えながら答えた。

「意訳するなら……『絶望の底にいる』」

 




おまけ

スタンド名−「フロムマイディスパイア」
本体−朝比奈まふゆ

破壊力−A
スピード−B
射程距離−E(2m)
持続力−B
精密動作性−D
成長性−A

能力–触れた水分を凍結させる能力。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。