ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ!   作:パーカス

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運命と天命、そして運命(さだめ)

沈黙が拠点(ホーム)全体を包み込み、場を暗く、そして重く、まるで陰鬱な場所に来たかと思う様な殺伐としていた。

ラケシスと名乗った神はショートヘアでヘスティアと同じ位に小柄だが、豊満な胸はヘスティア程では無いがそれなりに持っていた。

 

片方は華奢で美しいというより可愛らしい笑みを浮かべ、もう片方は“鬼”の形相で何も発さず彼女をじっと睨み付けていた。

 

「……俺を」

 

彼がようやく口を開く。

 

「連れてきた……そう言ったな?」

「うん、そうだよ」

「……なんの為にだ」

 

彼女はうーんと唸り声を上げ、悩んでいる。いや、悩んでいる素振りをみせ、まるで今閃いたかのように目を爛々と輝かせ、答える。

 

「面白そうだったから!」

「何ィ?」

 

無邪気な笑顔を見せつけ、クロは余計に怪訝そうに彼女を見つめる。

 

「神は気まぐれ、ていうでしょ?それはボクにも当て嵌る訳さ」

「くだらん言い訳を聞きたい訳じゃない」

 

はぐらかされている様で怒りが込み上げ

 

「真面目に答えろッ」

 

圧力を増し、怒号の近しい声を荒げ問い詰める。

幸い周りの民家に人は幸運にも居らず、彼女にだけ聞き届けられる。

彼女は……ラケシスは、クロの眼差しを真剣に受け止め、語り出す。

 

「正直に言うと、君を選んだのはたまたまさ」

 

彼女はあの時の光景を思い浮かべる。

 

 

いつもの様に神であるボクは、人々の運命の割り当てる仕事をしていたんだ。

そしたらさ、君の運命(書類)がたまたまボクに渡ってきたんだ。

そこでボクは君の運命に興味を持った。これも運命的な出逢いだね!

そんなただただ平凡で何も取り柄も無く、普通に生きている君に僕はちょっとしたサプライズがしたくてね。

そこでボクは君に干渉できるこの世界……『ダンまち』の世界へと誘ったのさ。

まぁ、ちょっとした面倒事(トラブル)のせいで君に会いに行くのが遅くなっちゃったけど、まぁ問題無さそうだからイイよね!

 

 

────と、いった感じさ!分かってもらえた?」

 

クロは子供の発表会でも聞かされたのかと思うくらい、頭を抑え頭痛を訴える。

本当にそんな気まぐれで自分がこの世界に来たのかと思うと、少しガッカリする。

なんの使命もなく、なんの意味もなく、ただただ神の悪戯に巻き込まれただげだった。

 

「……」

「うんうん!気持ちはわかるよ!そんな理由で危ない世界に連れてこられてふざけるな!って感じでしょ?だからボクは君が好きだったゲーム?のキャラの能力を、技量技術を、そして見た目をプレゼントしてあげたのさ!」

 

ちょっと想定以上だけど、とボソッと付け足し、クロは頭を掻き呆れ返る。

 

「……つまり俺は、神の気まぐれでこの世界に来た訳か」

「まぁ、そうなるね」

 

何他人事みたいに言ってんだよ、と言いたかったが、何とか喉元で食い止める。

 

そっか……別に特別な事で選ばれた訳じゃないんだ……

 

クロはどこか悲しそうに、そしてどこか安心していた。

ラケシスはそんなクロの心を見透かしているのか、笑みを浮かべながら彼に質問する。

 

「日常から非日常に変わっちゃったけど、今は楽しい?」

「清々しい程までに他人事だな、貴様は」

 

まぁまぁと宥めてくるラケシスにクロは諦め、質問に答えた。嘘偽りのない今の自分を────

 

「……俺をこの肉体で召喚してくれた事には感謝してるよ。まぁふざけた理由だったのは気に食わないが……ってあれ?」

 

クロは自身に異変を感じる。

声がキャラの声でなく、本来の自分……黒中 悠斗の声色だった。

 

「やっぱり本音は君の声で聞きたいなぁ〜って思ってね」

「……そんな事出来んのかよ」

 

神の特権さっ!とドヤ顔を決め、クロがイラッとする。そして彼女は真面目な顔を見せ、真剣に彼と向き合う。

 

「君には自由に生きてもらいたい。前言撤回とは言えないが、理由はどうあれ君には幸せになって貰いたい。これは嘘偽りのない僕自身の本心さ」

「……」

「君は恐らく『キャラ』という仮面をこれからも被って行くんだろう。でも忘れないで欲しい。その中には君自身の思いも含まれているんだと」

 

ラケシスはクロの心臓がある位置に指を指し、慈愛の笑みを浮かべる。

 

「その体は『ゲームのキャラ』の体かもしれない。けど、今も鳴り続ける心臓は間違いなく君自身の物だ。だから君の意思で、君だけの選択を、君にしか出来ない事を、この世界でやっていけばいいさ。大丈夫、ボクは君の味方だよ。何時以下なる時であっても」

 

クロは目を逸らし、悪態をつく。……それしか抵抗の術がなかったからだ。

 

「……今更神様ムーブしても意味ねぇって」

「そうかな?アハハハッ!」

 

高笑いし、先程の子供の様な神に再び戻った。

怪訝そうな顔をしながらも、ラケシスが言った言葉が心に残る。

 

「……ビビりでも、何か出来る事があるのかな」

「あるとも。それはもういくらでも!」

「……猫被りでも、誰かの助けになれるのかな」

「助けたい、と思ったから行った行動だろ?なら君自身の本心じゃないか!」

 

ラケシスは笑い、それでも彼の言葉を肯定し続ける。

 

だからだろうか。

彼は、本音を彼女にぶつける。

 

「…… 偽善者(ニセモノ)でも、このキャラの様に英雄(ハンター)に成れるかな?」

 

彼女はニヤリと笑う。

手を大きく広げ、その小さい体が大きく見える程に─────

 

 

「成れるとも!ボクが宣言しよう!君は、ハンターにも英雄にも成れる!何故なら……他でもない『君』がそう望んだのだから!」

 

 

彼女が眩しかった。

その光に、手を伸ばそうとした。

 

 

彼の意識は、心象世界へと飛ばされる。

 

どこか殺風景で、誰も何も無い砂漠……

 

この世界で暮らして、ベルやヘスティアと出会い、家族になり、楽しい時間を過ごしていた。でも心のどこかで、それは自分じゃないと決め付けていた。自分は『偽物』だからと、このキャラを……クロ・ユートという()()を作り隠れていたのかもしれない。

 

自分には出来ないが、クロ・ユートなら出来る。と、どこか他人事の様に見ていた気がする。

 

……それは違う。俺は、俺なんだ。

 

クロ・ユートは、仮初の自分……なんかじゃなく、紛れもなく自分自身なんだ。

でも、けどそれでも……恐れは拭えない。

怖いものは怖い。泣きたいものは泣きたい。逃げたいものは逃げたい。

 

何も無い砂漠の中、彼はただ1人ただずむ。

 

 

あと一歩……

 

─────この足は踏みとどまり、前へと進めない。

 

……あと一歩。

 

─────足が固まり、前へ進む勇気が湧かない。

 

ここで踏み出せたのなら、俺は変われるだろうか?

この一歩を踏み出せたのなら、世界は……変われるだろうか?

 

踏み出せっ、踏み出せっ、踏み出せッ、踏み出せッ!

 

砂嵐は止むことを知らず、視界を遮る。

この先にお前の望む道はないのだと、見せつけるかのように……

 

 

嫌だ嫌だ

俺は変わりたいッ

臆病なまま、終わりたくないッ

ベルみたいに……夢にまっすぐ──────

 

 

 

ふと背中を押された。

 

 

 

押された勢いのまま、一歩二歩と前へ進んだ。

クロは勢いよく後ろを振り向く。

 

「……えっ」

 

 

 

そこには、(ハンター)がいた。

1人だけじゃなく、他にも(ハンター)が立っていた。

 

 

俺は、彼らを知っている。

 

 

俺は、彼らの奇跡(物語)を知っている。

 

 

吹き荒れる砂嵐の中、彼らは微動だにせず、ただの俺の事を見て笑みを浮かべている。

その“目”が俺に語り掛けてくる。

 

 

 

 

『次は、お前の奇跡(物語)を紡ぎだせ』

 

 

 

 

固まった足が、身体が、吹き荒れる砂嵐の中で動かす。

なし崩し的に一歩を踏み出した彼は、背中を押してくれた英雄(ハンター)に決意を示す。

それに納得したのか、彼らは各々アピールを返し、クロを応援する。

 

 

 

意識が戻り、ラケシスの方に目をやる。彼女は何かに驚いた顔をしていた。

 

「驚いた……ボク以外にも君を支えてる人がこんなにもいるとは……」

「ラケシス様」

 

クロは改まって神様(ラケシス)の名を呼ぶ。

 

「俺は、多分変われない。今も、そしてこれからも……」

 

でもと彼は自分の答えを導き出す。

 

「今は、それでいいと思うんだ」

「どうして?」

「俺は面倒事は逃げるタイプなんだよ。だから英雄なんかになっちまったら、面倒事のオンパレードだろ?俺は絶対嫌だね」

 

それに、彼は笑い脳裏に思い浮かべる。

 

()()側より、()()側の方が俺に合ってるさ。これまで通りに、ね」

 

彼女は彼の選択に驚きもせず、拍手を交わし褒め称える。

 

「いい選択だね!ならボクも君を全力でサポートするよ!」

 

ラケシスは指を天に指し、高らかに宣言する。

 

「目指せッ!英雄王の道ッ!」

「だからなんねぇつったろッ!?」

 

掴み所が分からない神に選ばれたな、とクロは心から呆れ、そして楽しそうに笑うのだった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「さて、彼も帰った事だしぐ〜たらしよ〜」

 

クロは元のキャラに戻して貰った後、ヘスティアとベルを探しに再びオラリオへ探索しに向かい、廃教会(ホーム)に1人残されたラケシスはソファに寝っ転がり、家主達が帰ってくるまで寝ることにした。

 

「彼を拾ってくれたのがヘスティアで良かったよ〜。フレイヤとかロキとかだったらめんどくさかったしぃ〜」

 

彼女は文句を垂れながら、目を瞑る。

 

 

 

そして瞑った目を開け、一枚の紙を取り出す。

 

 

 

彼女が遅れた原因である面倒事(トラブル)が起きたのは、クロを転移しようとした時の話だった。

 

クロの魂をゲームキャラの肉体に定着させ、必要なスキルを彼のステイタスに刻み込む。

彼女は転移させる為の手筈を終わらせ、オラリオに送り込もうとした。

 

その時───────

 

 

 

 

 

()()()()が覗いていた。

 

 

 

 

 

ラケシスは咄嗟の事に加え、今までに感じたことの無い憎悪を感じ取り、ゾッと寒気が弥立ち、青ざめる。

 

しかしその瞳は、彼女を()()()()()

 

その事に気付いた時には、既に遅かった。

 

()()()()、そして何も無い空間から()()()が姿を現し、転移前のクロ(かれ)の魂に喰らい付いた。

喰らわれた彼を侵食する様に禍々しいオーラが纏い、黒い龍は煙のように消える。

 

そして彼女が用意した転移にエラーを起こす。

 

座標指定が狂い、転移情報があやふやとなり、強制的に転移が起動する。

 

「そんなっ!?ま、待て!」

 

彼女はすぐ神の力を使い、阻止しようと試みるが制御自体が既に乗っ取られ、ギリギリ出来たのはオラリオ内の何処かに転移するという設定に留まった。

そして彼女にトドメを刺すかの様に、彼のステイタスに最悪なスキルが刻まれる。

 

 

 

 

黒龍伝説(ミラボレアス)

 

 

 

 

刻まれたスキルはそのまま彼の(ステイタス)に定着し、そのまま下界へと転移した。

 

「……やってくれたね」

 

彼女は憤怒を顕にし、前髪をかきあげる。

怒りを抑え、自身が下界に行く前に色々と準備を進める。

 

その結果、彼女が下界に来るのが、遅れたのだ。

 

 

 

 

彼女は紙を睨みつけ、手に力が入る。

 

「貴方が何者かボクには分からない。だが運命神の名のもとに、()()の好きにはさせないッ。覚悟しな──────

 

 

 

 

 

 

─────『黒龍伝説(ミラボレアス)』ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍は吠える。

産声を上げ、覚醒を待ち望む。

 

邪悪なる黒龍……

その名は決して避けて通ることのできない、

《運命の戦い》を意味する……

 




クロがどのようにしてダンまちの世界に転移し、何を思っていたのか?

あと最近なんか文脈おかしくなってきてるから、ちょい改めます。すみません。
ちなみに、(ハンター)とはモンハンというゲームの各主人公達です!
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