ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ!   作:パーカス

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逢引(デート)と休日、そして邂逅

オラリオ北のメインストリートにて、2人は約束の買い物をしている最中だった。

 

「いや〜ボクあんまりオラリオを探索してないからさ〜、どこに何があるかわかんないよね〜」

「俺も全部を把握している訳じゃないからなぁ」

 

2人は他愛のない話をしながらも、買い物の目的であるラケシスの洋服探しをしている。高級住宅街であるが故に、値段はするが魅力的な衣装が店頭に飾られてあったり、アクセサリー等も見受けられた。しかし、

 

「いや〜ボクにはあんまり着こなせないな〜」

「神のくせして謙虚か?」

 

違うよ〜と怠そうにしながら、チラッと一瞥して目を背ける。

 

「ボクはああいうやつより、もっと楽そうな格好がいいんだよね〜」

「ほぉ、例えばどんな?」

 

クロの問いにラケシスはそうだな〜と周りを見渡しながら、イメージ通りの衣服があるか探す。が、ここには見当たらなかったようで首を横に振る。

 

「ここにはないね〜」

「そうか、ならば別の場所へ向かうとするか」

 

そうして足を運ぼうとすると、ラケシスは手を引っ張りクロは振り返る。何だ?と疑問を覚えながら、ラケシスを見つめると手を広げとある要求を提示する。

 

「疲れたから抱っこ。またはおんぶを要求する〜」

「……」

 

何だ、この怠惰の神は……

 

クロは内心でそう思いながら、今回は彼女の買い物の付き添いなので仕方なく背中を向け、膝を地に付ける。ラケシスはお〜と満足気な返事をし、勢いのまま背に……ではなく、首に跨る。

おい、と一言文句を言いかけたが、そこまで重くもなく寧ろ軽すぎて心配が勝ち、ゆっくりと落とさないように立ち上がる。

 

「おぉ〜、いい眺めだ〜」

「お前、飯食ってるのか?」

「もしかして女の子に対して重いなんて言うんじゃないんだろうね?」

「逆だ。軽すぎる。しっかり飯は食っているのか?」

 

周りの視線は微笑ましく生暖かい眼差しを感じ、羞恥心が勝る前に少し急ぎ足で別のメインストリートへと向かった。

 

別の店へ向かったが、やはり彼女が納得するような衣服はなく、ましてや女性の服に関して知識も興味もないクロにとって何もアドバイスや手助けをする事など出来ない。

ましてや相手は神。人の身であるクロにはより一層理解出来る訳がない。

 

辺りをキョロキョロと見渡し、彼女に合いそうな服を分からないなりに探すクロ。だが、当の本人は頭の上で寛ぎ、服を見るどころか探してすらいなかった。

 

「おい、貴様の衣服だろ。何頭の上で寛いでんだ」

「いや〜思った以上に居心地が良くてねぇ〜」

 

怠惰を極めに極めきった神に、内心でマジかこいつと呆れながらメインストリートを歩く。通り際に、クロ達とすれ違った女性が振り返り、呼び止める。

 

「……貴方は」

 

ん?と声のする方へ振り返る。

そこには、白髪の少女……アミッド・テアサナーレが買い物帰りなのか荷袋を持ちながら、微かに表情を和らげ深々と頭を下げる。

 

「こんにちは、ユート様。怪物祭(モンスターフィリア)以来ですね」

「あぁ、あの時の治療師か。まさかここで出会えるとはな」

 

あの日の緊急時でしか会話をした事がないのにも関わらず、よく顔を覚えているなと感心しながら、挨拶を交わす。

買い出しか?と軽く雑談をし、互いの状況を交換し合う。

 

「なるほど……ラケシス様の衣服探しですか」

「何かオススメの店はないか?当の本人が探す気無いものでな」

 

頭の上でいつの間にか居眠りし始めた神を指差しながら、呆れ顔を見せてしまう。当の本人はヨダレを垂らしながら、幸せそうに寝ている。

 

「すみません、私もファッションには疎いもので……」

 

アミッドは申し訳なさそうに頭を下げるが、彼女の行動を諌める。

 

「気にするな、元より(コイツ)が選ばないのが悪いからな」

「神様を相手にコイツ呼ばわりは……」

 

未だ眠り続けるラケシスの頬を引っ張り、それを静止するようにと促す。

アミッドは話題を変え、彼に聞きたかった事を問い掛ける。

 

「そういえば、ユート様に聞きたい事があります」

「聞きたい事?」

 

彼女は懐から瓶を取り出す。中身等入っておらず、空き瓶を取り出したのだが、それが何なのかクロは一目見て察した。

 

クロが彼女に渡した‘’()()()()()()()‘’の空き瓶だった。

 

「こちらの回復薬(ポーション)……無事重傷者の皆さんに行き渡り、完治致しました。ありがとうございます」

「役に立ったのなら何よりだ。だが空き瓶等捨てれば良かったが、何故アミッド嬢は持ち歩いているんだ?」

 

クロの指摘に対し、アミッドの眼差しは真剣なものになり、雰囲気の変化にクロは言葉を失う。

 

「こちらの回復薬(ポーション)……差し支えなければ、製造方法を教えて頂けませんか?」

「……ほぉ?」

「勿論タダでとは言いません。ユート様が求められる物がありましたら、すぐ様提供致します」

 

彼女は本気であるとその銀の双眸がクロを見つめる。

クロはその視線を受け、どうするべきか悩む。

 

 

いや、回復薬にハチミツを調合するだけです。って言える訳ねぇよ!てか言った所で信じて貰える訳ねぇし!どうしよッ!?面倒事は嫌なんだけどなぁ!てか、この状況下でも寝続けるこの神はなんだよ!?働け駄神!!

 

 

内心で討論を行い結論が出ず困り果ていると、頭上から助け舟が出される。

 

「クロ君が困ってるからその辺にしてあげて〜」

「っ!?起きたのか、神ラケシス」

 

目を擦りながら大きな欠伸で返事し、アミッドを眠そうな目で見つめる。

 

「まずはお互いの仲を深めなきゃ〜、流石に急過ぎだよ?」

「……そうですね。ユート様、申し訳ございません」

「気にするな。それと悪いなぁ、ちょっと特殊な製造方法でな、俺も作るのにも苦労するんでな」

 

アミッドは驚愕し、尚更申し訳なくなったのか深々と頭を下げる。

 

「申し訳ありません。……確かにあれ程の効能であれば難しいのも無理もありません」

「すまんな、あの時の5本で限界でな」

 

全くの嘘である。

だが、この場を乗り切るにはその方法しかなく、嘘を見破る事が出来る神……ラケシスも沈黙を貫いている。

だが、こんな嘘を信じ込ませてしまい流石に可哀想なので、とある提案をする。

 

「もし出来た時、1本はアミッド嬢にあげよう」

「ッ!?……宜しいのですか?」

「教える事は出来んが、見て盗まれたのなら致し方ないからな」

 

それに、と付け足し、笑みを浮かべる。

 

「誰かの助けになるのなら、それに越したことはない。後は美しき『銀の聖女』とも謳われているアミッド嬢からの願いだ。断るのも無理難題でもある」

 

アミッドは表情が変わらずとも、耳が少し赤くなり、ラケシスがおやおやとニヤつく。

クロは手を差し伸べ、アミッドは首を傾げる。意図は理解出来てはいるが、取るべきか悩む。ふとラケシスの方を見ると、笑顔で頷いており、アミッドはもう一度彼の手を見て、そして手を取る。

 

「契約成立、だな」

「……そうですね」

「うんうん、青春だね〜」

 

何言ってんだとクロからツッコミを受けているのを他所に、アミッドは繋がれた手を暫く眺めていた。

 

「ではアミッド嬢、俺達はこれで。また会おう」

「はい、色々とありがとうございました」

 

クロ達は再び歩きだし、アミッドはその背中を見送る。そしてもう一度繋いだ手を見つめ、思い馳せる。

 

「……私は、照れているのでしょうか?」

 

自問自答。

答えなど本人にしか分かる訳がなく、彼女を暫く悩ませる種として残り続けた。

 

「私ももう、行かなければ……」

 

 

アミッドは深呼吸してから、クロ達とは真逆の方向に身体を向けた。

いつかまた出会える事を密かに楽しみにしながら、彼女は市場の方へと向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

空はすっかり暗くなり、オラリオに街灯が照らされ始める。

結局、彼女の衣服は購入する事が出来た。

1()()だけ。

 

「こんだけ歩き回って1着だけって、最初っから探す気なかったろ」

「そんな事ないさ〜、この白のワンピースは気に入ったよ〜動きやすいし」

 

肩出しの白ワンピース、モコモコの上着を着用し、明らか外に出る格好ではなく家で寛ぐ用の様に見えるが、クロは‘’敢えて”ツッコまない。

彼が貸した重ね着だが、返しては貰ったが一応念の為マイセットに登録しいつでも取り出せる様に準備してある。

 

「今頃ヘスティア達も逢引(デート)中なのかな?」

「確かに時間帯的には約束の時間ではあるな」

「いや〜今日はボクも楽しませてもらったからね〜お2人も楽しんで欲しいよ〜」

 

てめぇはほぼ寝てたろ、と内心でツッコミを入れ、ベル達とデートが成功する様に祈る。

 

……いや、無理かもしれんな。

 

夕暮れの時に、何かを追い掛け走り回る女神達を目撃しており、追われてる対象がうちの主神と団長ではないかと感じていた。そう思うとやはり少し心配になりはしたが、それも冒険かと勝手な解釈し、素直に成功を祈った。

 

 

───────勘が告げる。

 

 

「ん?」

「どしたの?」

 

クロの唐突な挙動にラケシスも不思議がる。

彼が見つめる先は、薄暗い路地裏の小道。

 

「……どうやら穏やかじゃない雰囲気だな」

 

クロはラケシスの方へ振り返る。彼女は小さく頷き、それを了承と受け取り路地裏の小道へと足を踏み出す。

 

進んで行くと、奥で何人か駄弁っているのが見て取れた。そしてそこには、顔見知りもいた。

 

「……アイツは、リリ?」

「知り合い?」

「あぁ、昨日一緒に冒険をした仲だ。……どうやら面倒事に巻き込まれているようだな」

 

バレないように隠れながら彼らの動向を見届ける。だが、1人の男が行った行動に、驚愕する。

 

「っ……!」

「ど〜れ」

 

1人の男がリリから何かを奪い取り、そして勢いのままリリを突き飛ばした。

男が奪った物は、ヴァリスが入った子袋だ。

 

「ほう?いつもよりマシじゃねぇか」

 

会話の内容はギリギリ聞こえる。しかしこれ以上近付けば、‘’隠れみの装衣”を持つクロならまだしも、ラケシスがバレてしまう為、少し離れた所で黙って耳を澄ます。

 

「お前みたいな役立たずのサポーターが、俺ら【ソーマ・ファミリア】の一員でいられるのは誰のお陰だ?」

「っ……ぼ、冒険者様のお陰です……」

 

リリが弱々しくそう嘆く。

 

「……ソーマ。なるほど、あいつか」

「知ってるのか?」

「酒を作る事しか能の無いヤツだよ。まさかここであいつの名前を聞くとはね……」

 

何か嫌気が差して珍しく悪態をつくラケシスに、目を丸くする。

 

「わかってんなら……死ぬ気で稼いで来いやぁ!」

 

男はリリを蹴り飛ばし、大きく後ろへと飛ばされる。

その様子を黙って見ていたクロだが、当然怒りは込み上げずにはいられる筈も無く、脈は浮き出、髪は逆立ち、歯を強く噛み締める。

その怒気は忽ち溢れ、彼の理性が怒りに持っていかれそうになる。

 

背に優しい手が、添えられる。

 

「我慢する必要はないさ。ただやり過ぎないようにするんだよ?後片付けは面倒いからね〜」

 

いつものお気楽で怠惰な神が、そこにはいた。

そのお陰か理性を取り戻し、そして深く深呼吸をした後、神に告げる。

 

「行ってくる」

「いってら〜」

 

今のクロに、ビビりな気持ちはない。

仲間を笑われ、仲間を傷付け、小さい子に手を掛ける者に、怒りの鉄槌を。

 

 

クロは、英雄(ハンター)達に出会えた事で、何か心境的に成長したのかもしれない。

 

 

 

 

 

「ハッハッハ」

 

笑う男達の後ろに影を覆い被さる。

男達は怪訝そうに振り返り、後悔する。

 

リリは、見てしまった。

 

 

そこには‘’()”がいた。

 

 

眼を赤色に輝かせ、怒気が目に見えて分かる程身体中から溢れ出し、夜空に照らされたその()は笑みを浮かべていた。

 

「俺の仲間が世話になったようだなぁ?」

 

『仲間』……その単語にリリはえっと声を漏らす。

男達は何の事か分からず、下手に出て伺う。

 

「な、なにか気にさわりやしたか?」

 

クロは男の話を耳を向けず押し退け、尻餅を着き目を白黒しているリリに近付く。

 

「同じファミリア同士……悪いとは言わん。それに俺が口出すのはお門違いというやつだ」

 

リリを持ち上げ、立たせた後付いた砂を払ってあげる。

 

「だが、仲間であるのなら話は別だ」

 

リリが呆然と立ち尽くすの他所に、クロは彼らを睨む様に怒を顕にする。

リリを庇う様に仁王立ちで立ち尽くし、あまりの力みに地面が陥没する。

 

「他者を見下す事でしか戦う事が出来ん貴様らに何がある?俺は仲間であるのなら、家族であるのなら、如何なる戦でも助けに行く覚悟があるが、貴様らにあるか?」

「な、なんなんだてめぇは!いきなり現れて!」

 

男達が機嫌が悪くなり苛立ちを顕にする。しかし人は恐怖には抗えないものであり、特に何倍もの筋肉質で巨体から発せられる圧に押し負ける。

 

「よ、弱ぇ奴を使って何が悪いんだよ!それにそいつは小人(パルゥム)だろ!?役に立たねぇ癖にイキがるそいつが悪いだろ!」

 

男の主張に呆れを超え、腕を天に上げ力を込める。その拳にどれだけ力が込められてるか見ただけで分かる。あまりの圧力に男達は警戒し剣を抜き、クロに向ける。クロはその腕を男達に向け、勢いよく振り下ろす。

 

 

 

 

 

「────双方、剣を納めてもらおう」

 

 

 

 

 

だが、この場にいる者達以外からの声により静止する。

 

暗闇から1つの影が現れる。

その影はゆっくりと近付き、その正体を顕にする。

 

「な、てめぇは!?」

 

暗闇に月の光が差し込み、金髪が照らし出され、少年である事が分かる。光が少年を正体を曝け出す。碧眼に幼く華奢な風貌をしており、手には金の長槍が握られていた。

その正体を答えるかのように、誰かが彼の名を呼ぶ。

 

 

「……【勇者(ブレイバー)】、フィン・ディムナ」

 

【ロキ・ファミリア】の団長、フィン・ディムナが姿を現した。

彼は、双方の様子を一瞥し、そしてクロと目が合う。

 

彼の口角は、少し上がっていた。

 

「…… 【勇者(ブレイバー)】」

 

クロの頬に一粒の汗が流れ落ちる。

彼は怒りを忘れ、焦りに変わる。

 

 

 

 

 

再び、【ロキ・ファミリア】との邂逅を果たした。

 

 

 

 

 

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