ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ!   作:パーカス

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協定と憤怒、そして謝罪

────翌朝。

廃教会(ホーム)

 

 

「え?今日は行かないんですか?」

 

ベルは冒険の支度を済ませ、共に行くであろう筈だったクロに今日は同行出来ないと告げられる。

 

「悪いな、少し野暮用があってな」

「そうなんですね。じゃあ、今日は僕だけ行ってきますね」

 

リリによろしくと伝え、元気よく出て行くベルを送り出した後、クロは自身の支度を始める。

支度といってもこれといって準備する物はないが、強いて言うなら‘’心”の準備くらいだろう。

 

「別に行きたくなかったら行かなきゃいいのに〜」

 

眠そうに怠けきった(ラケシス)が、顔を覗かせる。

目を擦り、昨日買った服が気に入ったのかそのまま寝間着として使い、上着が肩からズレ落ち、欠伸を吐くラケシスにクロは指摘した。

 

「上着がズレ落ちてるぞ」

「別にいいさ〜こっちの方が楽だよ〜」

 

怠惰、その言葉が今の彼女にピッタリだった。

ふわぁ〜と再び欠伸を吐き、彼を一瞥する。

 

「面倒事は嫌なんじゃなかったの?」

 

その言葉に動く手を静止する。

彼女が何故そんな事を問うのか。

 

それは、昨日の夜に遡る─────

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

─────昨晩。

 

リリの暴行現場を目撃したクロが静止し、そして闘いが起ころうとしていた時、【ロキ・ファミリア】の団長、フィン・ディムナが現れた。

 

双方共々、まさかの人物の登場に動揺を隠せず、男達とクロ、リリがフィンに注目する。同時に冷や汗も流れ始める。

 

相手は都市最大派閥、【ロキ・ファミリア】を束ねる団長である。その肩書きに相応しき重圧が薄暗い路地裏を圧迫する。

誰も口を開かない。開くことすら出来ない。

重い空気が辺りを充満し、動く事すら出来ない。

 

沈黙は、注目を浴びる彼が切った。

 

「話は途中から聞いていたよ」

 

フィンは男達を一瞥し、ゆっくりと近付く。

男達は後退りし、フィンが着実に追い詰めていく。

 

「彼の言う通り、ファミリア同士の問題に口を挟むのはお門違いだ。だから本来であれば、僕はそのまま通り過ぎていただろう」

 

だが、とフィンは睨む様に圧を増す。

彼の背は低いにも関わらず、背中が大きく感じ取れた。

 

「同族を馬鹿にする発言は、流石に聞き逃せないな」

 

ひぃいと悲鳴を上げ、よろけながらその場を駆け出して行く男達を見届け、フィンはふぅと軽い溜め息を吐く。

そしてクロの方へ向き直り、不敵な笑みを浮かべる。

 

「初めまして、というべきかな?」

「……確かに貴様とはここで初めて会話するな」

 

2人の謎の圧のぶつかり合いに、リリは慌てふためくが、それを他所に話は進んでいく。

 

「僕はフィン。【ロキ・ファミリア】の団長を務めているよ」

「存じている。都市最大派閥であり、二つ名【勇者(ブレイバー)】の名を持つ第一級冒険者小人族(パルゥム)、と」

 

恥ずかしいね、と照れ隠しに頬を掻き、苦笑いを浮かべる。

クロの警戒は解けない。睨む目を強める。

 

「それで、第一級冒険者様が何の御用だ?」

 

少し嫌味ぽくフィンに問い掛ける。

相も変わらず苦笑いを浮かべ、敵対していない事を伝える。

 

「警戒を解いてほしいな。僕はただ、君と話がしたいだけなんだ」

「ふん、話がしたい?今初めて会っただけの俺にか?」

 

警戒を解け?無理に決まってんだろ!

 

と内心でボヤき、警戒レベルをMAXまで上げ、どうやって逃げ出すかを思考を巡らせる。

 

「僕は礼を言いたくてね。怪物祭(モンスターフィリア)でうちの団員を助けてくれてありがとう」

「……あぁ〜そんな事もあったな」

 

あの日の光景を思い出し、そういやエルフの女の子を助けたわ〜と軽い感じで思い出すが、その後そのエルフの少女に助けられたから特に礼を言われる筋合いはないと判断した。

 

「礼など不要だ。俺も助けられたからな」

「いや、団長としてここは礼を受け取ってほしい」

 

大分頑固な性格だなと少し戸惑うが、正直今の彼は早くこの場を去りたい一心なので、素直に受け取りトンズラしようと考えていた。

 

「分かった。礼は受け取る。これでいいか?」

「ありがとう……そしてもう1つ、君に聞きたい事が───」

 

どうやら本題はまだ残っている様で、流石のクロも焦燥感に駆り立たされ、後退りをする。

 

「は〜い。そこまで〜」

 

後ろから気怠げそうな声が近付いてくる。

先程まで物陰に隠れていたラケシスが流石に見兼ねたのか、助け船を出す為姿を晒した。

 

「もう夜も遅いしまた今度にしな〜。それにそこの女の子が可哀想だよ〜?」

 

ラケシスはずっと2人の圧に挟まれ続けていたリリに近付き、大丈夫〜?と声を掛ける。リリは震え声で大丈夫と伝えるが、流石に短い時間とはいえ強者の圧力には耐える事が出来ず震えていた。

その様子に気が咎め、クロはリリに近付き頭を下げる。

 

「悪い、少し熱が出ちまった」

「へ、あ、いえ!その、助けてくれて、ありがとうございます……」

「僕からも謝罪するよ。申し訳ない、長々と話し込んでしまって」

 

2人からの謝罪に狼狽えながらも、2人から謝礼金を受け取り帰って行った。謝礼金に関しては全力拒否で断わろうとしたが、クロが無理矢理受け取らせ、それに乗っかりフィンも上乗せで増し、後は困惑したリリを見送って解散。……とはならず

 

「君を僕達の黄昏の館(ホーム)に招待したい」

 

フィンが去り際に、招待状を口頭で告げられた。

クロ自身、断りたかったがここで行かなければ後々面倒事になる事を懸念し、悩み抜いた末

 

「では明日、伺うとしよう」

 

そう告げてしまったのだ。

フィンは嬉しそうに待っているよと告げて帰路を辿った。後ろ姿が見えなくなるのを確認した後、クロは自身の発言に後悔した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「……では、行ってくる」

「気を付けて〜」

 

ヘスティアは朝早くにバイトへ向かい、拠点(ホーム)にはラケシスだけとなる。ダラダラとソファに凭れ掛かり、手を振って見送る。

 

コイツっ……!

 

他人事の様に溶けるラケシスに嫌気が差しながら、重い足を進ませ【ロキ・ファミリア】の拠点(ホーム)へと向かった。

 

 

 

 

 

 

へぇあ〜……デケェ……

 

【ロキ・ファミリア】の拠点(ホーム)、【黄昏の館】に到着して最初思った感想はたった一言で、何とも圧倒される立派な屋敷が目の前で広がっていた。拠点(ホーム)は周囲の建物と比べて圧倒的な高さを誇っており、高層の塔がいくつも重なっている邸宅であった。その頂点には【ファミリア】の道化師の紋章(エンブレム)が描かれた旗が立っていた。

 

俺達もファミリアが大きくなったら、拠点(ホーム)も大きくなるんかな?

 

今住む廃教会を思い浮かべながら、そうなる未来があるのかと夢想する。だがあまり想像つかず、将来もあの廃教会から逃れられないんだと勝手に諦める。

 

……で、着いたはいいものの……

 

辺りを見渡し、待ち人(フィン)を探すが見当たらず、薄々気付いていたが黄昏の館の門に目を向ける。

門の前には門番が立っており、先程から辺りをキョロキョロしていた自分の事を不審がって睨んでくる。

 

……言ったら入れさしてくれんのか?

 

明らかにそんな雰囲気など感じないが、他に択が無いため大人しく門番の方へ近付く。門番はすぐ警戒態勢に入り、手に持つ槍を強く握っていた。

 

「何の用だ!ここは【ロキ・ファミリア】の拠点(ホーム)だぞ!」

「招待を受け、ここに馳せ参じた。クロ・ユートだ」

 

門番に招待された事を伝えたが、信じる訳もなく槍の穂をこちらに向ける。

 

「嘘を付くな!貴様の様な奴に誰が招待などするものかっ!」

 

おいおいフィンさんや、ちゃんと伝えてないんかい……

 

悪態は付くが、かといってここからどうしようもなく大人しく帰る事しか選択肢がなかった。寧ろその方が有難かったので、人の勇気を無下にしやがって、と捨て台詞を内心で吐き捨てながら帰ろうと振り返る。

 

門が開く音が、聞こえた。

 

「やぁ、待っていたよ」

 

門の開門と同時に聞き馴染み……いや、出来れば聞きたくなかった声が聞こえ、恐る恐る顔を後ろへ振り向く。

金髪の小人(パルゥム)……フィン・ディムナが笑顔で出迎えて来た。

 

「彼は僕の客人だ。通してくれ」

「は、はっ!かしこまりました!」

 

門番は門の端の方へ移動し、フィンは中へと招く。

 

「さぁ、中へ入ってくれ」

 

結局入るのか、と不満を漏らし、フィンに連れられる様に黄昏の館へとお邪魔する。

 

「門番に来ること伝えてなかったのか」

 

一応フィンに先程の門番の対応について文句をつけるが、困った顔が返ってきた。

 

「一応伝えたんだけどね」

「であるのならば些か問題では無いか?それで門番が務まるのか?」

 

後で注意しておくよと指摘を受け取り、とある一室の前に止まる。

 

「今から中にいる僕の同期達を紹介したい。彼らにはもう事情は伝えてあるからね」

「同期?」

 

質問が飛び交う前にフィンは執務室の扉を開け、中へと入った。

 

「彼を連れてきたよ」

 

フィンが語り掛けると、中には翡翠色の長髪を持つハイエルフの女性と茶色の瞳と髪を持ち、長い髭を蓄えたがたいのいい中年のドワーフがソファに座り、待ち侘びていた。

 

「……彼が噂の人なのか?」

「ほぉ、中々の筋肉質だな。相当鍛え上げられているわい」

 

彼らはクロを見るやいなやジロジロと観察する。フィンは彼らの自己紹介を済ませる。

 

「僕の同期のリヴェリアとガレスだ」

 

簡易的に済ませれば、リヴェリアが不服そうな顔を見せる。

 

「おい、自己紹介くらい我々にさせろ」

「簡易的に済ませおって……」

 

2人の愚痴にごめんと笑いながら謝罪し、リヴェリアは咳払いをする。

 

「リヴェリア・リヨス・アールヴだ。副団長をしている」

「儂はガレス・ランドロック。今も残っている中では一番の古参ということになるかの」

 

2人の自己紹介を聞き届け、俺の番か?と自分に問い掛け、名乗り出す。

 

「クロ・ユートだ。【ヘスティア・ファミリア】に所属している」

 

特に役職はないからそこで切り上げる。そして案内されるがままに、ソファへと座る。

クロの前には、フィン、リヴェリア、ガレスの3人。

 

……何、面接?

 

あまりの圧迫感に懐かしき光景を思い出し、嫌な感じがするが、気を取り直し話を聞く。

 

「さて、話の内容だけど、君に1つ確認取りがしたい」

「ほぅ?」

 

「君はあの日、()()()を見た事があるかい?」

 

「赤い……光?」

 

フィンが告げる‘’赤い光”

クロにはなんの事かさっぱり分からず、しかし話は進む。

 

「我々自体もその光は目撃はしたが、詳しい事は分からない。だがロキやアイズ達がその現場にいてな」

「ヤツら興奮気味でこう言ってきたんじゃ……」

 

 

背の高い冒険者の放った斬撃だよ、と

 

 

クロは冷や汗を流す。

赤い光と聞かれた時、なんの事かさっぱりだったがあの日、自身がやった行動を思い出す。

 

「更にその冒険者の名前もアイズ達が聞いていてね」

 

フィンは含みのある言い方で着実に詰めていく。リヴェリア、そしてガレスの瞳も彼に注がれる。

 

あ、こりゃあ駄目だぁー

 

クロはあまりの圧力に──────

 

 

「《クロ・ユート》ってね」

 

 

────降参するしかなかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

正直、冷や汗が止まらない。

 

フィン・ディムナはクロを問い詰めながらも、心臓の音が煩く笑顔を作るだけで精一杯だった。親指は疼き、震えていた。

 

彼と出会ったのは、昨晩だけじゃない。あの時の宴の時に感じた恐怖。絶対的な強者の圧力。

あの時は、誰から放たれたものなのか分からなかったが……

 

フィンは、クロを見つめる。

 

今なら分かる……彼だっ!あの時感じた圧の正体はっ!

 

この話だって最初ロキ達から聞かされた時、そんな訳ないと思っていた。もしそうなら今頃名を馳せている筈だと。

彼をここへ招く時、2人にも予め見定める体で話を進めていた。

 

だが、今の2人の顔を見たら分かる。

 

あれは、恐怖を隠した者の顔だ。

 

彼には何故か気付かれていない、いや、もしくは気付いているが無視しているのか。

僕達、ロキ・ファミリアの第一級冒険者であろう3人が、たった1人の冒険者に物怖じてしまう。

 

「……何が言いたい?」

 

彼から発せられた低い声。

怒りか?或いは呆れか?

分からない……だが、彼の問いに答えなければならない。

 

「強き者である君に、我々に力を貸してほしい」

「ほぉ……」

 

我ながら震え声で喋らない自分に褒めてやりたい。

 

「我々は近日中に遠征へと向かう。……だがその為にはまだ戦力が足りない」

「故に儂らからの頼みとして協力してほしい」

 

そして、今の発言に嘘はない。

 

僕達は近々遠征へと向かう。

行き先はダンジョンの深層。目標は我々の辿り着いたことのない59階層に到達すること。

 

その戦力として、色々なファミリアに協力を求め、準備を進めていた。

そんな時に、出会えた‘’彼”という戦力。

彼の力は僕としては喉から手が出る程欲しい逸材。

 

今回の交渉は、彼の遠征への参加の協力を得ること。

 

その為、2人に協力してもらい、この場を用意してもらった。

本来であればロキにもいてほしかったが、生憎彼女も野暮用で今は留守にしている。

 

沈黙は続く。誰も言葉を発さない。

 

「……フッ」

 

彼は笑みを浮かべた。……いや、違う。

 

「フッフッ───────」

 

彼は────────

 

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!」

 

 

爆笑し出した。

 

高笑い、爆笑し、破笑し、哄笑し、談笑した。

 

僕達は息を飲むことしか出来なかった。彼の笑いは徐々に収まり、落ち着きを取り戻し席に座る。

 

「……力を貸せ、だの、協力しろ、だの。どの口がほざくか」

「え─────」

 

漏れだした言葉は、彼の様子を目撃し、掻き消される。

 

身体から溢れ出す闘気、髪は逆立ち、圧力は部屋全体を重く包み込む。

 

紛れも無く、怒っていた。

 

彼の腕筋からは脈が浮き出し、眉間にも憤怒の証が目に見えた。

 

僕達は、何か間違った事を言ったかっ!?

彼の神経を逆撫でする様な発言をしたかっ!?

 

フィンには、理解出来ず、残りの2人にも目を向ける。

2人も青ざめており、同じ考えだったのか互いに交互を見渡す。

 

2人の顔は、酷い顔だった。

恐怖に打ち負けた者の顔。絶望を目の前にした時の表情。

 

……恐らく、僕も同じ顔をしているのだろう

 

「弱者を見下し、己を棚に上げ、挙句の果てに他者の災難を肴にする愚……」

 

身体が震えていた。

 

「にも関わらず、自身の都合で見下す他者に縋り付くその身勝手さ……」

 

男は、怒りを彼らに向け、言い放つ。

 

 

「イヤミか、貴様ッ!!」

 

 

怒号が黄昏の館に響き渡る。

比喩表現だが、拠点(ホーム)が揺れた様な気がした。

 

我慢の限界を迎えたのか、彼は怒り立ち上がる。

 

フィンは彼の言葉で、あの日の宴の事を思い出す。

 

団員達が、酒の肴として挙げられた冒険者の話を。

あまりにも人間として恥ずべき行いをしていた自分達の在り方を。

 

あの場で彼から発した圧の理由を、ようやく垣間見た。

 

話題に出した白髪の冒険者は、彼の仲間、いや、同じファミリアなのだと。

それは家族を愚弄され、醜態を大々的に公にし、嘲笑ったのだ。

仲間は弱いが、君は強い。そう言ってるのと同意だった。

怒らない訳がない。

 

 

ならば、自分が今やるべき事は1つ。

 

フィンは立ち上がり、そして───────

 

 

 

「申し訳ございません」

 

「ングッ……っ!?」

 

 

フィンは深々と頭を下げ、()()した。

唐突な事にクロ、そしてリヴェリア達も驚き眺めていた。

彼は自身の立場など弁えず、深々と謝罪したのだ。

 

「貴方の仲間を愚弄した所か、危険に晒してしまった我々に責任がある。今更だと思われても仕方ない。だから僕に出来る事は何でもする。……本当に申し訳ない」

 

クロは謝られるとは思って見なかった様で、フィンの謝罪に驚愕の溜め息が漏れ出す。

そして2人もフィンの意図、そして彼の怒りの原因を理解し、頭を下げ謝罪した。

 

「ウチの馬鹿共にはキツく言いつける。本当にすまなかった」

「謝罪だけで済むとは思っておらん。お主が望むのであれば、命の限りを尽くそう」

 

クロは3人を一瞥し、興が削がれたのか勢いよく座り込み、手で止めるよう促す。

 

「……もういい。それに、謝る相手は俺じゃない。その謝罪は意味を持たん」

「意味が無くとも、謝るべきだと僕は思った。だから、これは僕が勝手にやっていることだ。勿論君の仲間の予定が空いていたら、謝罪に向かう予定さ」

「ならばいい。俺の言いたい事は終わりだ」

 

居心地が悪くなり、クロが嫌気が指しているのを察し、頭を上げもう一度謝罪を告げる。

 

「改めてもう一度言おう。此度は僕達の軽率な発言、及び仲間を危険に晒してしまったことを深く謝罪する。すまなかった」

「くどい。謝罪は他に言うべき相手に言え。早く話を戻せ」

 

言われるがままにフィン達は席に座り、話を戻す事にする。

 

「手を貸せ、と言ったな?俺は駆け出しの冒険者ではあるが、その事は理解しているのか?」

「駆け出しであろうとも力を持ち、そして君の様に戦況を理解し瞬時に行動出来るなら話は別さ」

 

ロキ達情報を照らしだし、彼が取るに足る存在である事をこの目ではっきりと理解している。

だからこそ、彼の力は今回の遠征において、強力な切り札となる。

 

「……いいだろう」

 

彼は鼻息を鳴らし、協力に応じた。

 

「遠征というのに興味が湧いた。微力な戦力だが、手を貸そう」

「謙虚に出過ぎだね。だが、ありがとう」

 

フィンは彼と手を交わる。

 

彼との協力を得ることができ、事なきを得たフィンは脱力する様にソファへ凭れる。

 

「何をそんなに緊張してんだ?」

「いやいや、君がそれを言うかい?」

 

フィンは苦笑いを浮かべながら、陽気に聞いてくるクロにツッコミを入れてしまう。リヴェリア達もやっと緊張の糸が切れたのかふぅと深い溜め息を吐く。

 

「全く……とんでもない男じゃな、お主」

「あぁ……終始ヒヤヒヤが止まらなかった」

 

そんなに?と当の本人が気楽に聞いてくるものだから彼らは呆れ通り越し笑いが込み上げた。

 

「さて、門前まで送ろう。今日は──────

 

 

フィンが礼を言う前に扉が勢いよく開かれる。

 

 

開けた本人はハァ、ハァ、と息切れをし、全力で走ってきたのがわかった。

 

「また……会えた……」

 

金髪の少女は、嬉しそうに口角を少し上げる。

 

「……アイズ」

 

クロは再び、【剣姫】と邂逅した。

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