ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ! 作:パーカス
「なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「そ、そそそそんな、ば馬鹿な事を、き、ききききみはっ!?」
情緒不安定だ。全く呂律が回ってない。
「き、君って奴は本当にっ!事の重大さに気付いてないのかー!?」
襟元を掴み、ブンブンと俺を揺さぶるヘスティア様にされるがままに受け入れる。
まぁ、10割俺が悪いしな。
「すまん、神ヘスティア。しかしこういう捉え方も出来ないか?」
「へ?」
俺の提案に聞く耳を持ってくれる。
「ここで恩を売り、今後困った時に手助けしてもらえる。それに神ロキに恩を売るというのは神ヘスティアにとって悪い話ではないと思うが?」
確かに、と俺の提案にヘスティア様は思案する。
まぁ、たった今思い付いた口からのでまかせだが。
だが結果良ければ全て良し。このままヘスティア様が納得すれば────
「それ〜成功したらの話だよね〜」
横槍を入れてきたのラケシスだ。
てか、寝ながらじゃが丸君食べるなって、あぁ食べカスがポロポロと……
寝間着の姿でぐ〜たらとしてる
「おぉ〜ごくろー」
コイツ、反省の色無しかよ。
「それにそんな危険な事、よく君はやろうと思ったね〜」
「本当だよ!君はまだ冒険者になってまだ1ヶ月も経ってないんだよ!?それなのにいきなり深層へ行こうだなんて……死にに行くもんだよ!それは分かっているのかいっ、君は!!」
ヘスティア様のお言葉はごもっともだ。俺でさえ、なんで賛同したのか未だに分からん。何、俺死に急ぎたいのか?
でも、この身体ならいけそうな気がするのも少なからずある。
「危なくなったらすぐ離脱させてもらえる事にはなってはいる。危険を感じたらすぐ逃げるさ」
すっごい疑いの目が俺に突き刺さる。
多分、いや絶対信頼されてないという事だけは分かる。
「ハァ……ホント君はボクを驚かせる事しかしないよね」
「反省はしているさ」
俺も望んでやってる訳では無い。それだけは伝わってほしい。
するとヘスティア様に指を刺され、
「か・な・ら・ずッ!生きて帰ってくるんだよ!わかったかいっ!」
「……拝命した」
……恐らく渋々納得してくれたのだろう。
俺も死ぬつもりは毛頭もないので、潔く頷く。
ちなみに隣でやれやれと首を振ってる
ようやく説教が終わり、俺は立ち上がるとずっと端で待機していたベルが意を決して俺に声を掛けてきた。
「あ、あのっ、クロさん!」
「ん?どした」
覚悟を決めた表情だ。何か決意を固めたに違いない。
もしや……告白ッ!?
「僕をっ、鍛えてくれませんかっ!」
「……何?」
俺は今日を以て、ベルの師匠になりました。
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オラリオの城壁の上。
僕は、とある人に特訓を願い出た。
「ここなら人の目を気にせず出来るな」
相手は同じファミリアであり、僕とほぼ同世代の冒険者……クロ・ユートさん。
この人の事はまだ分からない事だらけだけど、短い時間の中で分かる事があった。
この人は、シンプルに強い。
冒険に行った回数は少ないが、その冒険の中で驚かされる事は多々あった。直近で言えば、ダンジョンの壁を斬った事、かな。
そして
……でも、正直この人なら出来るのではないか?と納得する部分もあった。それだけの実力を持っている人なのだ。
僕はそんな人に今日、稽古を付けてもらえる。
クロさんは手首を回し、特訓の準備をしている。
僕がやる事は勝つことでは無い。少しでもこの人の戦いから何かヒントを得ることが目的だ。
「さて、早速始めるか」
「……はいっ!」
僕は短剣を構え、この人の動向を伺う。
クロさんは、動く動作を見せない。
互いに距離を保ち、牽制し合う。
「来ないのか?」
クロさんが、ニヒッと口角を上げる。
僕はその挑発に乗り、駆け出す。
「ハァァァッ!!」
短剣を右上に高く振り上げ、斜めに振り下ろす。
ガンッ!と鞘に納めた剣で弾かれ、後方へ吹き飛ぶ。
「ッ!ハァァァ!!」
僕は諦めず、再び飛び掛りクロさんに短剣を突き続ける。
結果は同じ。全て弾かれ、後ろに回り込んでも弾かれ、フェイントを掛けても弾かれる。
正直、分かりきってはいた。
自分とクロさんとでは、実力差は天と地の差がある。
戦いに関しての考え方も、戦闘技術でも、彼に勝つ事が出来ない。
「クッ!」
弾かれた衝撃を抑えきれず、地面に転がり込む。
まだ攻撃も反撃もされていない。ただ弾かれ続けただけだというのに……
「ハァハァ」
僕は息が上がっていた。
汗を拭い、膝を着き、肩で息を吸い込む。
一方で、クロさんは悠々と立ち、僕から目を逸らさず見続ける。
ゆっくり立ち上がる僕に対し、クロさんは剣を地面に突き刺す。
「力任せの戦法ばかりでは勝ち目はない……」
僕は耳を傾ける。
「持ち味をイカせッ!貴様にしか出来ん戦法を見つけろッ!」
……持ち味。
……僕にしか出来ない戦法。
頭を悩ませ、答えを探し出す。
「先に言おう」
クロさんは剣から手を離し、握り拳を作る。
「次は反撃する。覚悟して来いッ」
唾を飲み込む。
緊張が心臓の音で伝えてくる。
短剣を強く握り締め、深く息を吸う。
少しでも心を落ち着かせる為に。少しでも思考しやすい様に。
自分にしか出来ない……やり方ッ!
目を見開き、身を低く構え飛び込む。
……後数センチ。
彼との距離が徐々に縮まる。短剣を後ろに振りかぶる。
目と鼻の先まで接近し、勢いよく振り下ろす。
クロさんは剣を地面から引き抜き、短剣の軌道に合わせ剣を振るう。
……今だッ!
僕は短剣を滑らす様に少し斜めに構え、地面を滑る様に彼の股下を通る。
「ッ!?」
クロさんの剣は空を斬り、隙を見せる。
滑る身体を持ち上げ、高く飛躍し短剣を振り下ろす。
しかし、クロさんも体勢を戻し反撃が飛んで来る。
空中にいる僕は回避する事が出来ない。
……いや、出来るっ
僕は短剣を強く振り下ろし、反撃で振るわれた剣をバネとして弾く。身体は少し浮き上がり、再び彼の後ろをとる。
「ハァァァッ!!」
クロさんは瞬時に振り返り、目前まで接近した僕に剣を振り下ろす。
ここだっ!と足に力を込め、踏み止まる。そして剣の軌道上から飛び離れる。
彼の視界の外から短剣を横に振り斬る。
「お見事」
短剣を左手で止められ、一気に身体が宙に浮く。そして勢いよく叩き付けられた。
「ガハッ!?」
肺の中の空気が無理なり吐き出され、身体の節々が一時的に停止する。
そこで僕は、意識を失った。
意識がゆっくりと戻っていく。
仰向けで倒れ込み、そよ風が肌を刺激する。
結局、一本も取れなかった……
僕は瞑った目を開ける。
夕暮れの空が視界に広がり、赤みを帯びていた。
隣に大きな人影が見えた。
「よぉ、起きたか」
「……クロさん」
僕は身体を起こし、頭を下げる。
「ごめんなさい!僕、気を失ってっ、」
「謝ることは無い。寧ろ俺が謝る立場だ」
僕は顔を上げ、そこに彼の姿はなく、夕暮れの空を眺める。
クロさんは僕の隣に座り込む。
「すまなかった。少し力んじまって」
「い、いえ!特訓して欲しいってお願いしたのは僕の方なので……」
意識を失う前の戦いを思い出す。
あの時、自分でも不思議な程、身体が軽く思い描く様に戦えた。
あの感覚は……
「それにしても、最後は驚いたぞ」
クロさんは笑っていた。
「まさかあそこまで器用に戦うとは……やれば出来るじゃないか」
褒められた。
別にクロさんから初めて褒められた訳じゃない。
だけど、今回に限っては……
「……僕、もっと強くなりたいです」
目から零れ落ちそうになった涙を拭い、目指す目標を告げる。
「いつか、クロさんの隣に立てる位……強くなります」
「フッ……期待して待ってるぜ」
頭を乱暴に撫で回される。
夕暮れの空の下、僕は誓いを立てる。
────必ず、追い付く為に
神様は僕の伸びに驚いた顔を見せ、そして溜め息と一緒に優しい顔を見せる。
「……おめでとう。新しいスキルが発現したよ」
神様はそう言いながら、羊皮紙を僕に渡す。
僕は受け取った紙を見て、ニヤけた顔が止まらなかった。
【
・一定時間、早熟する。
・熱望が続く限り効果持続。
・熱望の丈により効果高上昇。
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特訓終わりの夜。
俺は就寝につく。
ベルも流石に疲れたのか、ぐっすり眠ってる。
ラケシスとヘスティア様も就寝につき、俺も眠りにつく。
明日は平和に過ごせます様に〜
目を開けると、辺り一面真っ黒な場所にいた。
どれだけ見渡しても真っ黒。寧ろ目が閉じてるんじゃないかと疑う程に真っ暗。
何周見渡したか、それ以外することが無くまた顔を横に向け──────
──────黄金の瞳があった。
「うわぁ───────
叫び声を上げる前に、鋭い牙が見え、一瞬にして
喰われた。
「はっ!?」
目を覚まし、飛び起きる。
肩で息を吸い、夢で見た悪夢を思い出す。
手を顔に当て、冷静になろうと心落ち着かせようと、
「あれ?」
伸ばした手は、
筋肉は多少はあるが、あの身体の筋肉質な腕ではなかった。
目を動かし、体を見下ろす。
腕同様、細く短く、巨体だった姿はまるで夢物語だったかの様にそこにはなかった。
……嘘だ、嘘だ
起き上がり、フラフラと覚束無い足取りで鏡がある洗面所に向かう。
鏡の前に辿り着き、ゆっくりと視界を鏡に向ける。
「お……れ、?」
そこに写っていたのは、絶望顔を浮かべた───────
ベル君が発現したスキル【
あれ?譁?ュがへ──────────