赤毛ロリ先輩   作:きし川

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頑張った後輩にご褒美を

 オッス!

 オレは赤羽(あかばね)みつみ。

 ちょっと秘密の多い高3女子だ。

 

 この間は待ちに待ったヒロイン選択イベントがあったが、まさかの誰も選ばれないという前代未聞の形で終わっちまった。

 ここから先どうなるかは分からねえ。けど、それもそれで楽しいことになると、オレは開き直ったぜ。

 

 というわけで、さっそく主人公を動かすことにする。

 

 オレはエロゲの主人公、御神真司のいる二年一組の教室の扉を開いた。

 

「たのもー、御神真司って奴いるかー?」

 

 突然やってきたオレに驚いた表情を向ける二年共。何やらヒソヒソと「ちっちゃい」だの「かわいい」だの、好きかって言ってやがる。

 悪い気はしないがな。

 

 

「えっ!? 赤羽先輩!?」

 

 ガタッと席から立ち上がる真司。

 友達と昼メシを食っていたのか見慣れた生徒(エロゲ内で友人や枠だったので知っているだけの)二人と机を囲んでいた様だった。

 

「飯食い終わった後でいいから、ちょいと面貸せ」

「今、食い終わったんでいきます! ……わりぃ、また後でな!」

 

 友達に謝りながら足早に出てくる真司。よっぽど慌ててたのか、口元にご飯粒が一つ付いている。

 これは教えないほうが面白そうだ。

 

「ゆっくりでよかったんだぞ?」

「いやいや、赤羽先輩を待たせるわけには……」

「ふーん、そういうことなら……さっさと行くか」

 

 真司を連れて、廊下を歩く。すれ違う生徒が真司を見て、くすくすと笑っている。当の本人は笑われているのに気づいてそうだが、なんでか分からなそうだ。

 

 ほんと鈍いやつだなぁ……。

 さすがヒロインからの好意をそれぞれのルートでの中ボスに言われ、それがきっかけで自分もそのヒロインが好きだったことに気づく主人公なだけはある。

 

 鈍感主人公の風上にぴったりな真司に気づかれないよう笑いをこらえながら、目的地の屋上に着く。

 

「さてと、人払いっと」

 

 魔法で簡素な結界を作り、普通(・・)の人間は屋上に来ないようにする。

 これで聞かれたくない会話ができる。

 

「よし、それじゃあ……こっちから話そうか?」

 

 真司の方へ向き、オレは尋ねた。

 ずっとソワソワしていた真司がコクリと頷く。

 先攻はオレからだ。

 

「まずお前が一番知りたがってることを話す。……この間、お前を後ろから斬った魔法少女はお前の言ってた通りオレだ、すまんね」

 

 ニッと笑いながら、親指で自分を指して言ってやった。

 しおらしく謝るのはオレらしくないし、真司も気まずいだろう、だから堂々とアイツが言い返せる隙を作っとく。

 

「……やっぱり先輩だったんですね。しかも、なんでカッコつけて言ってんですか、痛かったんですけどアレ」

 

 真司はジト目を向けて言い返してきた。

 予想通りの答えだ。

 

「その後、治してやったろ? てか、攻撃しようとしてる真正面に降りてきたお前もダメだろ」

「いや、その……焦ってたんです」

 

 恥ずかしそうに黒い短髪の頭も掻きながら真司は言った。

 まぁ、エロゲの作中で、女の子を助けることで頭がいっぱいだったってのは知ってたけどな。

 

「話が逸れたな。で、次にオレが……いやオレたちがどんな存在かって話だけど――オレたちは地球の守護者、魔法少女だ」

「なんで魔法少女って呼ぶんですか?」

「知らねー。いつの間にかそんなふうに自分たちのことを呼んでんだよ」

 

 魔法少女の名付け親は作中で言及されてない。

 さも当たり前のように作中のヒロイン達が名乗ってたし、それから一切、魔法少女に関する掘り下げがなかったんだ。

 

「気にならないんですか?」 

「別に? 分かったところで何かが起こるわけでもないしな、気にしてねぇ」

 

 本当にどうでもいいから、ちゃちゃっと次に行こう。

 

「ちなみに魔法少女にはそれぞれ名前がある。オレはスカーレッド・マギアだ。他のヤツらのは、また会ったときに教えてやるから、とりあえず魔法少女の時のオレと会ったらそう呼べ、分かんなかったら先輩でもいい、分かったか?」

 

 ちなみに、今日は四人の後輩たちは学校に来てねぇ。

 本人達曰く、今日は特段重い(・・)日らしい。

 あの寝不足な奴は違うだろうが。

 

「はいっ! スカーレッドマギア、スカーレッドマギア、スカーレッドマギア……バッチシ憶えました!」

 

 ぐっと親指を立てて真司は自信満々の笑みを向けてきた。とはいえ、真司は抜けているところがある。

 テスト勉強を万全にしてきたのに名前を書き忘れるぐらいのミスをする。

 これで名前間違えやがったら、ちょっと叱ってやるか。

 

「さて、これでこっちはターンエンド。次はお前のターンだ真司」

「なんでカードゲームやってる体なんです? まぁいいですけど……俺のターン!」

 

 ノリがいいな。

 さすがコミュ力の高いエロゲ主人公だ。

 

 次は真司からあの鎧について話される。

 といっても、オレはエロゲの記憶で大体知ってるけどな。

 

 オレの知ってることを要約すると、あの鎧は未知の存在が鎧との適性が高い真司に組み込んだスーパーテクノロジーのパワードスーツだ。

 地上は言わずもがな、空も飛べて深海にも潜れて宇宙も自由自在。武器も豊富で物語が進むごとにいろんな武器が開放されて見ていて飽きがなかった。

 ちなみに最終決戦じゃ、ラスボスに拐われたヒロインを取り返すために自力で月面まで行ってる。

 

 だが今のところ、使う本人はまだそこまでの事を知らないから、真司の口からは、〝知らねー奴がくれたすげー鎧〟ってなんとも曖昧な説明ぐらいしかできなさそうだった。

 ちょっと意地悪をしてやろう。

 

「おいおい、情報が少なすぎるだろ。こりゃちょっと割に合わねぇな?」

「いや、でも……これ以上のことは俺でも分かんないんですよ」

「じゃあ、代わりに答えられそうな質問をするから答えろよ」

「うっ……変な質問しないでくださいよ?」

 

 不安そうな顔をしてオレを見る真司。

 なんだよ、その顔。

 まるでオレがいつもろくでもないことしかしてねぇヤツみたいじゃねぇか。

 信用ないなー。

 

「真司ってさ、好きな奴とか気になる奴とかいるのか?」

「えっ、はぁっ!? なんですか、その質問!」

 

 誰のルートになったのかあのイベントで分からなくなったから、それを探るための質問だ。もしかしたら、真司の中ではぼんやり気になってる奴がいて、そいつがこの世界のヒロインかもしれない。

 

「いいから答えろよ。まぁ無理にとは言わねぇけど、答えなかったらオレからも情報提供ナシな」

「えぇ……好きな人ですか……」

 

 真司は黙り込んだ。

 その間、オレの方をじ~っと見てくる。

 なんでコイツ、こんなにガン飛ばしてきてんだ?

 

「答えにくかったら、気になるやつでもいいし……もうめんどくさいからこの間出会った四人の魔法少女の中から選べ」

「えっ? 四人の魔法少女?」

 

 真司は首を傾げた。何のことか分からん様子だ。

 おいおい、頼むぜ主人公。

 

「オレの他にも四人いただろ魔法少女」

「あっ、あ~そういえば」

 

 手のひらに拳をポンと置いて思い出したように真司は言った。

 いやお前、言われるまでヒロイン達のこと忘れてたんかい。

 

「あのなあ……お前はあの四人を助けようとしてあの時飛び込んできたんだろ?」

 

 そう言うと真司は苦笑いを浮かべた。

 

「ハハハ……そうなんですけど、その後、先輩に斬られたり、先輩が魔法少女だったりで、なんだか頭の中が赤羽先輩のことばっかりになっちゃってて……」

「はぁ? 真司、お前ただでさえバカなのにオレなんかのことに頭の容量を使うなよ。ひょっとしてアレか? 紐パンのせいか?」

「ひ、ひひ、紐パンは関係ないです!」

 

 真司は頬を赤くして首を振った。

 いや、大いに関係あるだろその反応は。

 

「顔赤くしちゃって、スケベだなぁ。あっちなみに今日は同じデザインの黒だから」

 

 この間は赤だ。

 

「黒……」

 

 真司の視線が俺の顔辺りからスカートの方へ下がった。

 分かりやすいな〜主人公。

 どれ、もうちょっと弄ってみるか。

 

「見たいか?」

 

 ちょっと口角を上げて笑顔を作る。悪戯っぽい笑みって奴だ。

 その顔でスカートの裾をつまんで、ヒラヒラと持ち上げて言ってみる。

 

「け、結構です! 見たく、ありません……」

 

 そこで尻すぼみになるなよ。未練たらたらじゃねぇの。

 

「というか、そもそも俺、あの四人と喋ってすらないじゃないですか!」

 

 真司は強引に話を戻してきた。

 このままだと、オレに転がされるとコイツも分かってきたようだ。

 成長したなぁ。

 

「じゃあ今度、あいつら紹介するからその時選べ、な?」

「選べって……そんな、合コンじゃないんですよ?」

 

 困ったように真司は言った。

 合コンか、ある意味正しいな。

 

「その通り、合コンだ。しっかり選べよ、いずれ家庭を築く相手だからな」

「いやいやいやいや……話が飛びすぎですよ」

「わからんぜ? こういう出会いからそこまで発展することもあるんだからな」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 予鈴が鳴った。

 かなり話し込んじまったらしい。

 

「じゃ、情報交換終わりな。授業に遅れんなよ」

「先輩の方こそ」

 

 校舎の中へ入ろうと、ドアノブに手をかける。

 その時、空間が一瞬歪んだ。

 

 ……このタイミングに化け物が来た?

 

 次に化け物が来るのは主人公の初陣から一週間後だったはずだ。

 今日はあれから三日しか経ってない。

 

 早すぎる展開。

 オレの知らない物語が進んでいる。

 

 おもしろいじゃねぇか。

 

「先輩、これって!?」

「そういうこった。真司、鎧を着ろ。すぐに来るぜ」

 

 ワクワクするのをこらえながら真司に言っておく。

 言うやいなや、屋上の真上の空間が渦巻いた。

 渦はやがて穴になり、中からケタケタと薄気味悪い笑い声が木霊する。

 

 その間にオレはスカーレッドマギアに変身した。

 

「ウオオォォォォォォッッッ!!」

 

 真司も雄たけびと共に全身を光らせ、赤と白のヒロイックな鎧を装着した。

 こっちの準備が終わった頃に穴から化け物はやってきた。

 ピエロ頭に玉が連なってできた細長い身体、無数の脚を生やした化け物。

 

 オレはこの化け物を知っている。

 主人公がヒロインといる時に現れて、ヒロインを糸で操り人形にする奴だ。

 賢い化け物でこの前のアリクイと違って喋る。だが、厭らしい性格をしていて、操ったヒロインにエロいことをさせやがる。

 

 まぁ、それは今回気にしなくていいだろう。あの化け物の能力は自分より弱い奴にしか効かない。

 オレの方が強いから操られることはない。

 

 むしろ気になるのは、こいつの登場はもう少し後のはずだったってことだ。もしかしたら、これから出てくる化け物の出番が前倒しになってくる可能性もある。

 今日来た奴ぐらいならいいが、マジで強い奴もいる。真司やヒロインが成長する前に来たら、誰かが死ぬかもしれない。

 

 それはちとまずいかもな……。

 

「ケラケラケラケラ!! いいところにメスがいるじゃねぇか!!」

「先輩ッ!!!」

「んあ……?」

 

 真司に叫ばれて、考え事をやめると化け物の糸がオレの身体に巻きついていた。

 

「ケラケラケラケラ! メスゲットォッ!! お前はこれから死ぬまで俺様の人形(肉奴隷)だぁっ!」

 

 お高く留まりやがって、雑魚ピエロが……。

 その赤鼻ぶん殴って、もっと大きくしてやろうか。

 

「何言ってんだ! 先輩がお前に人形になるわけないだろ!」

 

 真司がすかさず言った。

 さすがはオレの後輩、よくわかってらっしゃる。

 

 さっさと糸を引きちぎって、雑魚ピエロを片してやろうと思ったその時、ふと閃いた。

 

 この状況、上手く使えば真司の経験を積めるかもしれねぇ。

 

「さーて、まずはどうしてやろうかな、ケララ! よし、まずは服を一枚脱いでもらおうか!」

 

 勝ち誇ったように雑魚ピエロは言ってくる。

 いきなり脱衣かよ。せっかちだな、童貞か?

 

 とはいえ、服を一枚ね……ドレスは脱いだらほぼ裸みたいなもんだし、じゃこれだな。

 操られているふうにぎこちない動きで手をスカートの中に入れる。

 紐パンの結び目をつまみ、ゆっくりと引っ張った。

 ひらりと落ちる黒い布。

 

「先輩ッ!? なにをやって……!?」

 

 過去一動揺した声で真司が言った。

 さて、ここらでオレが密かにしていた努力を見せるとしよう。

 

 昔見た、ある映画を思い出す。

 当時のオレはその素晴らしさに涙を流さずにはいられなかった。今も思い出すだけでウルってきちまう。

 

 目頭が熱くなって、じわっと涙で視界がゆがむ。

 そのまま真司の方を向いて、涙声で弱々しく言ってやる。

 

「ぐす……っ、真司ぃ……っ」

 

 さぁ、目の前で女の子が泣いてるぞ。

 突っ立てるだけか、主人公?

 

「……てめぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 

 怒号。

 聞いたこともない真司の純度百%の怒りの叫び。

 その声量に空気が震えた。

 

「よくも――」

 

 鎧の背中にある二つの突起が伸び、上下に開く。

 

「先輩を泣かせやがったなぁぁぁっっっ!!!」

 

 露わになったスラスターから炎が噴き出し、真司は雑魚ピエロの顔面に突撃した。

 右手には格闘武器のグローブが装着され、強化された右手ストレートがピエロの赤鼻にめり込む。

 

「ギャアアァァァッ!!」

 

 殴られたピエロは鼻を押さえてもんどり打った。

 真司は止まらず、雑魚ピエロに跨り、顔面を打つ、打つ、打つ。

 ピエロ特有の白い顔はたちまち痣だらけになって、憎たらしいほどに白い歯はほとんど折れていく。

 

 計画通り。

 あまりにも上手く行きすぎて口角が上がる。

 

 アレがあの鎧の機能の一つ、装着の感情で強くなるシステム。

 女のためならどんな悪党だって殴れる主人公、御神真司と抜群に相性が良い代物だ。

 とはいえ、二度目の実戦でここまで動けるようになるとは、こりゃ演技の質が良かったかな。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 数分に及ぶ一方的な殴打が終わり、真司は肩で息をしている。

 その足元には、もはや原型がわからないほどにボロボロにされたピエロ。

 すでに息絶えたのか、体の消滅と結界の崩壊が始まっていた。

 

「真司」

「っ! 先輩!」

 

 声を掛けると、飼い主の帰りを待ってた犬みたいに駆け寄ってくる。

 

「先輩、体は大丈夫なんですか!?」

「おう。もう大丈夫だ。……それにしてもすげーな、あっという間にあのピエロを倒しちまうなんて」

「ハハハ……もう無我夢中でしたけどね……」

 

 恥ずかしいのか頭を掻きながら真司は言う。

 

「それでもすげぇよ。人の言葉を使う賢い化け物は実力も高いんだぞ。それを二度目の実戦……いや実質初戦で一方的に叩きのめしたんだから大したもんだよ」

 

 この間はオレのせいで戦えなかったからな。

 

「そ、そうですか……」

 

 えへへと、体をクネクネさせながら嬉しそうにする真司。

 鎧のかっこよさが半分以下になるからやめろ。

 少し浮かれすぎていると思えたが、本当に嬉しそうだし記念すべき初勝利だ。今日は大目に見てやる。

 

 しかし本当にスゴイことを真司はやった。

 これは言葉だけじゃ、ちょっと物足りないか? 演技とは言え、オレは真司に助けられたしな。

 

 なにか渡してやろうかなと、考えていると足元に落ちている黒の紐パンが見えた。

 

 ……おもしろいことを思いついた。

 

 口角が上がりそうなのを堪えつつ、オレは下着を拾い上げる。

 

「さて、初勝利の記念だ。ご褒美をやる。手、出せ」

「え? はい」

 

 差し出される真司の手。

 オレはその手のひらの上にさっき拾った黒の紐パンを置いた。

 

「えっ、はっ!? せ、せせせせ先輩……!? こ、ここ、これははは……!!?」 

 

 急に爆弾を渡させたみたいに腰を引いて、手どころか全身を震わせている真司。

 劇物すぎたか?

 

「女の脱ぎたての下着だ。レアモンだぞ、好きに使え。いらなかったら捨てな、どうせ魔法少女の衣装の一部だし」

 

 そう言って真司の横を通り過ぎる。

 後ろから「す、好きに使えって……そういうこと……ッ!?」とブツブツ言っているのが耳に入った。

 

 そういうこった。

 

「じゃ、授業遅れんなよ〜」

 

 屋上から出る直前に一応言っておいてやる。

 真司は未だに手に紐パン乗せたまま直立していた。

 鎧姿も相まって、なんだか深い意味のある芸術作品のようだ。

 

 アイツが明日からどんな顔をして学校に来るのか楽しみだぜ。





他のヒロインルートの場合

主人公が鈍感。


赤羽みつみルートの場合

ヒロインが鈍感
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