〈美夜〉
―――地面との御対面まで残り数秒―――
常人なら、いえ常人ではない能力者でも、このような状況に陥ればパニック状態になり、能力を使うどころではなくなります。たまに冷静に対処する能力者もいて、そういう人ならダメージを軽減したり私の能力を解除しにかかるわけです。
おそらく白井黒子も本来ならそういったタイプの人間でしょう。しかし、彼女は状況に対応しきれていない。これには理由があります。それは彼女がテレポーターだからです。
テレポートは、能力の規模と座標だけを計算すればいいその他の能力と違って、他にもいくつか演算が必要な過程があります。テレポートさせる対象の質量、座標。テレポートさせる場所の座標。それらを通常の3次元世界と11次元世界の二つに分けて同時に演算して、さらにそれらをピッタリと重ね合わせるように考えなければなりません。テレポーターの数が少ない原因は、この計算式にもあるのではないでしょうか。
このような複雑かつ迂遠な演算が必要なテレポートを、時速360kmで地表に落下しながら行使できると思いますか? 余程肝がすわっている豪勇か、危機も感じることができない愚か者にしかできません。白井黒子はそのどちらでもないということでしょう。
そう。白井黒子は愚者でも豪勇でもない。だからこのままだと数秒でただの肉塊と化してしまいます。そして、何もしなければ私もそうなってしまう。
それは決して面白くない。
能力範囲を指定。衝突予想地点を中心とした半径50mの円。
対象指定。私を除く範囲内の人間と街頭監視カメラ。
発動1。時の流れを1/100に減衰。
周囲の人間の動きが急激にスローモーションへと変わる。
能力範囲を指定。私の肉体を覆う形状20cm。
対象指定。範囲内の空気。
発動2。時の流れを凍結。
時が凍結した空気を緩衝材に無傷で着地。
発動2を解除。
能力範囲と対象を指定。私の肉体と衣類。
発動3。時の流れを100/1に加速。
同時、白井黒子が発動1の能力範囲に突入。
白井黒子の落下速度を通常状態へと回帰。
白井黒子落下予想地点にて跳躍。
地表34m地点にて接触。
首に腕を回し頸動脈を圧迫。
同時、発動1を1/10に緩和。
自己体感時間4秒で気絶。
白井黒子を抱え、空気を蹴り地表へと加速。
筋力任せに着地。
発動1を解除。
発動3を1000/1に強化。
発動3の範囲拡大、白井黒子の肉体と衣類。
全速力を以て移動を開始。
秒速14kmを維持。
実数1秒未満で第七学区常盤台中学寮に到着。
ロビーで白井黒子を降下。
発動3を限定解除、白井黒子の肉体と衣類。
その場から退避。
第三学区のとある高級住宅前に到着。
発動3を解除。
ここまでしてようやく、
「安全確保完了」
私は臆病なのかもしれません。
いつも以上に短いけど気にしちゃメっ★
と、まぁカワイ子ぶってみたもののキモイだけでした。すんません。