でも短いよ!
もはやデフォです!
13.前兆
〈通りすがりだった男〉
人生は幸運と不幸が釣り合っているとか、悪いことが起こった分良いことが起こるとか言うが、僕に関してはそれなりに幸運が多い方だと思っている。
大金持ちというほどでもないとはいえ、貧富の差が激しいこの中華人民共和国おいて裕福といえる程度の生家。聖女なんて表現はありえないけど、家族には優しく料理も作ってくれる母。少々天然じみたところもあるけど、家族の為に一生懸命働いてくれる父。生意気なところが鼻につくけど、慕ってくれているということがわかる弟。自他ともに認める『良い家庭』だ。これで不幸な奴だという奴はほとんどいないだろう。当然、僕も自分が不幸だなんて思えない。
だけど、今日ばかりはこう言いたい。
「不幸だ――――ッ!」
「うるせぇ! 手ぇ休めるんじゃねぇ!」
・・・・・・僕の魂の叫びは虚しくもマスターの怒鳴り声で掻き消された。
始まりは今日の昼頃だった。
いい感じの雰囲気の喫茶店でチャイを楽しんでいた時だ。僕はそこで中国語ではなく日本語で店員にまくしたてている白人の少女を見た。
恐らく中国語がわからないのだろうと踏んだ僕はなんとなく老婆心を発揮して、日本語で彼女に話しかけてみた。
「ねぇ、君はコーヒーを注文したいのかな?」
急に話しかけられたというのに、少女は驚きもせず僕を見て言う。
「ううん。カレーが食べたイ」
「カレー? カレーって言うと、あのライスの上に茶色のソースがかかっているアレかい?」
「そう! そのカレー!」
ニパッと笑って答える少女。健康的に整った顔立ちも相まって天使のようにも見える。不覚にもドキッとしてしまった。
「でも普通喫茶店にカレーはないよ?」
「エ」
笑顔のまま固まってしまった。そんなにおかしなことを言っただろうか?
「で、でもジャッポーネでは喫茶店にカレーがあるっテ・・・・・・」
「ジャッポーネ? ああ。日本か」
確かイタリア語だったね。じゃあ、彼女はイタリア人なのか。
「日本ではそうなのかもしれないけど、香港じゃそういう店は少ないかな。少なくとも僕は知らない」
「What? ここはジャッポーネじゃなイ?」
「いや、こっちこそ『What?』だよ。どこをどう間違ったら香港を日本と間違うんだ」
日本のコミックでいうところの『ポカーン』という擬音が似合うような、有体に言ってカルチャーショック受けたような間抜けな表情でも、美人というのは絵になるらしい。どうでもいい新事実だ。
彼女はボソボソとイタリア語?で呟き、急に無言になった。
そして、急に立ち上がり、
「し、しまっタ! これじゃ遅刻しちゃうヨ!」
慌てて店を飛び出して行ってしまった。
そう。彼女は一も二もなく脇目も振らず飛び出していったのだ。当然お金なんか払っていない。
そうなれば唯一食い逃げ犯に話しかけていた誰かは、食い逃げ犯の連れだと思われるわけで。
そして身内だと思われてしまった僕は自分の分のコーヒー代分しか財布に入っていない。つまり、
・・・・・・僕の優雅になるはずだった休日は誰とも知らぬ少女のコーヒー代を稼ぐために費やされたのだった。
〈???〉
いやいや、まさかここが日本じゃなくて中国だったなんテ。全く思いもよらなかったヨ。日本じゃこういうのなんて言うんだっケ? ああ、そうそウ。
青ビョウタンからコマイヌ、とかいったはズ。日本人は変な言葉作るナ。どうやったら青ビョウタンが犬の神様になるのカ。
まぁ、ことわざとかどうでもいいんだけどネ。兎に角ワタシは驚いたってことですヨ。
今大急ぎで上海浦東国際空港というところまでタクシーで送ってもらっているけド。運転手サンに聞いた次の飛行機に間に合うかどうかわからなイ・・・・・・。・・・・・・あっ、そういえばさっきのカフェでお金払ってないヨ! 食い逃げしちゃったネ! ま、いいカ!
あれもこれも日本人と中国人が似てるのが悪いヨ! アジアの人ってなんでこんなに似てるカ! ・・・・・・まぁ、彼は違うけどネ。
今回ワタシがわざわざイタリアから出向いてアゲルのも、呼び出したのが彼だからっていうのがやっぱり大きいヨ。我ながら乙女っぽイ。ボスの命令? そんなのもあったネ。
オ? そろそろ空港に着いたみたイ。
「運賃は62元になります」
「100元出すヨ。おつりはいらなイ」
おつりはチップ代わりネ。ちょっと多いような気もするけド。こういうのは気持ちヨ。
国際空港というだけあって大きなその建物を見上げながら、日本のアイツに思いを馳せル。
――――――今行くヨ。シル。
新メインキャラ登場! です!
メインヒロイン2(仮)です!
これ以上増やすつもりは今のところないですけど、ご希望であればハーレム化も考慮します!