とある愚兄の偽造神格   作:夢見ぬ猫様

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第二話~。
視点は結構コロコロ変わります~。


2.告白

          〈シルエット〉

 

 

 

 

 

正直、俺は驚いていた。

 

今までも潜入や詐欺の依頼はいくつかこなしてきたし、そのどれも怪しまれることなく成功を収めてきた。だいうのに、平和な国の女子中学生にあっさりと口調の演技を看破されたのだ。プライド云々以前に驚愕という言葉しか出てこない。

 

だからこそ、隠し通しても無駄。さらに注意や警戒を与えるだけ。

 

ならば、いっそのこと俺の秘密の一部を話して、距離を置かせようと考えた。

 

その方がばれずに護衛するにはちょうどいい。

 

 

 

 

 

          〈御坂美琴〉

 

 

 

 

 

笹宮さんに案内された場所は普段誰も使わない第二体育倉庫。薄暗くて、埃っぽいこの空間に来たがる人は滅多にいない。ここがお嬢様学校ってこともその一因だろう。

 

当の笹宮さんは倉庫に入った瞬間、倉庫の壁や扉にカードのようなものを張り付けていた。意味まではわからないが北欧のルーン文字が書いてある。

 

「おまじないです。これを張っていれば安心して内緒話ができるって知人に聞いたものですから」

 

その知人はオカルトでもやっているんじゃないだろうか。失礼ながらそう考えてしまう。

 

ようやく張り終わり、笹宮さんは私の正面に立った。『ついて来てくれませんか』と言った時と同じく、真剣で、意を決したような顔で。

 

何か彼女にとって重大な秘密を打ち明けるつもりに違いない。

 

「今から話すことは内密にしておいて欲しいのです。お願いできますか?」

「もちろん。誰にも話さないって誓う」

 

こんなに真摯な表情で頼み込んでくる子の言葉に背くことができるわけがない。そもそも人の秘密をべらべらと話すような最低で軽薄な行為を私自身が許せないのだから。

 

 

「私は―――笹宮鏡子は、実を言うと男でも女でありません。体は女でも心は男なんです」

 

 

「え?」

 

思わず訊き返していた。男でも女でもない? 体は女でも心は男? それって性同一性障害ってこと?

 

動揺しながら、私は笹宮さんの顔を見た。そして、自己嫌悪に陥ることになる。

 

彼女は、いや、彼は、ほんのわずか、ほんのわずかだけど、悲しそうな顔をしていた。多分本人も無意識であろうほど些細な変化。

 

私が動揺したせいに違いない。あろうことに私は彼の明かしたことが普通ではないと太鼓判を押してしまったのだ。行為の違いはあろうと、彼を忌避し嘲笑ったことと何の違いがあるだろうか。

 

そう考えが至った時には、私は深く彼に頭を下げていた。

 

「ごめんなさい!」

「へ?」

「私は笹宮さんの言葉を聞いて動揺してしまった。せっかく勇気を出して打ち明けてくれたことなのに」

 

私が頭下げたまま10秒ほどの時間が経った。彼はどんな顔をしているのだろう。怒られても構わない。むしろそうされるべきだ。彼にとってはそれだけデリケートな問題のはずだから。

 

「・・・・・・顔を上げてください」

 

しかし、彼がくれたのは微笑みと優しい声。

 

「私はこのくらいの反応慣れていますし、大体の場合もっと酷いものでした。あからさまに蔑んできた人もいます」

 

だからといって、私の行為が正当化されるわけじゃない。そう言おうとした時、

 

「それに、私は御坂さんが頭を下げてくれた時、ほっとしたんですよ」

「え?」

「だって、御坂さんが義理堅い人だってわかったんですから。だからこの人に話してよかったと思えたんです」

 

そう言って笹宮さんは再び微笑む。

 

カッコいいと思った。絵本に出てくるようなヒーローなんかよりもずっと。

 

「それに」

「?」

「御坂さん、私と似たような体の人に会ったことがあるのではありませんか? 気づいていないのかもしれませんが、そんな顔をされていました」

 

 

 

 

 

          〈シルエット〉

 

 

 

 

 

多分、俺の勘は間違っていないと思う。伊達に魔術師という大人たちの中で生きていないのだ。人の感情に多少は敏くないとやってられない。

 

御坂は少しだけ呆気にとられたような顔をしたが、すぐに立て直す。やはり勘は当たっていたか。

 

「ええ。会ったことあるわよ。というか、子供のころずっと一緒にいた。でも」

「でも?」

「いきなり私の前から消えちゃって、もう顔も思い出せない」

 

転居でもしたのか? まさか誘拐や殺人なんてことはあるまい。

 

本音を言うなら、訊きだしてみたい。どうしてか、その答えを知らなければならないような気がしたのだ。

 

しかし訊くことはできない。護衛対象の過去や秘密に深入りするのは御法度であるし、こんな顔をしている女の子に訊いていいわけがない。

 

俺は空気を変える為に口を開いた。

 

「御坂さんにお願いがあります」

「何?」

「風紀委員活動第一七七支部って知りませんか? ちょっと用事があるんです」

 

 

 

 

 

           〈初春飾利〉

 

 

 

 

 

今日この一七七支部に新人さんが入ってくる。そう聞いて私はちょっとだけわくわくしています。

 

話によれば新人さんは常盤台に転入したばかりの人だとか。常盤台ってことはお嬢様です! お嬢様!

 

いいなぁ。きっと綺麗でおしとやかで上品な人が来るんだろうなぁ。

 

『ガチャリ』

 

あ! ドアが開いた音です!

 

ついにいらっしゃったんですね! お出迎えしなくては!

 

入口まで一目散に走ります。そして、

 

 

「ようこそ! 第一七七支部へ!」

 

 




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