ダムを決壊させる爆発がどんなものか、見当のつかない素人の目からも明らかに過剰な閃光と
爆轟に押され、下の通路へ転がり落ちる。
下手な受け身が成功したのか、今度は意識は失わずに済んだ。
痛みを感じない、ただひたすら重いだけの体を引ずり通路を進む。追撃がなかったのは、イ号の
手心でもダメージが深いのでもなく、爆発を合図に突入した本隊の動きを察知したからだろう。
Ⓐ「イ号に出くわしたら、まず全員に知らせて合流を図る。後は時間稼ぎに徹して、こちらからは手を出さない」
手首の無線機を見る。表面の時計を模した文字盤はひび割れ、中の回路があらわになっている。
スイッチを入れ耳を近づけても、かすかなノイズ以外は何も聞こえない。
Ⓑ「仮に合流前にやむなく戦闘に入る場合も、決して単独では戦わず、改人や他プレイヤーを巻き込むなどできるだけ有利が取れる状況に持ち込む」
計画は破綻、というより最初から成り立っていなかった。3人だろうが10人だろうが関係ない。闘うという前提が間違っていたのだ。
通路の突き当り、最初に侵入した正面玄関に続く階段までたどりついたとき、開口部から大勢の動く物音がした。ふらつきながら昇ったロビーには既にPCがたむろしていて、驚いた何人かがこちらに銃を向ける。
「ダ・ベルベラ‼」
あわてて左手を掲げると、戦闘員の中から丸い大きなサングラスにスーツを着た男(ドレスコードでもあるのだろうか)が銃を下げさせながら歩み出る。
「所属と番号は」
「五号部隊所属、593番です」
近づくにつれ、かすかに漂う泥の臭い。間違いなく、バライールだった。
「他の連中はどうした」
男の周囲に、ばちばちと何かが光る。冬場の静電気のような、かぼそく白い明滅。
四号作戦、電力接収。
なるほど、電気ウナギは適任というわけだ。
「ダム爆破のため潜入中、イ号と遭遇。もうひとりが至近で爆薬を起爆しましたが、標的の生死は不明。生存していれば、突入した本隊との戦闘中にあると思われます」
ばちりと、イールの背中で電光が鋭く爆ぜた。
「隊長」
たたみかけるように、ひときわ小柄な戦闘員が手を挙げる。額には424の番号。
「手当と報告のため、同志を本部に連れ帰ってもよろしいでしょうか」
四号作戦を経て十分なエネルギーを得たであろうイールにとって、随伴のひとりふたり減ろうが問題にはならない。場合によっては、作戦変更の功績を独占できる可能性もある。
ならここで優先すべきは、戦況を自分の目で把握し、割って入るタイミングを見極めること。
「よろしい。424番は負傷者の移送と現況報告のため本部へ帰投せよ。残りは私とともに五号部隊の応援へむかう」
イール達の後ろ姿を見送ってしばらく、奥から叫び声と破壊音らしきものが聞こえ始めるのを
確認してから、自分達は静かにダムをあとにした。
*改行について指摘があったので、さわるのをほぼやめてみました。
また何かあれば教えてください。