<五号作戦の結果について、既に多くの同志達の存ずるところであろう>
ベルマン将軍は切り出した。
<ダム爆破は失敗し、バラマンモスはじめ実行部隊は壊滅。ばかりか、援護に駆け付けた四号部隊も含めた死傷者は二百名を超える、まさしく惨憺たる敗北だ>
(そこは認めるのか)誰かが言った。
(そりゃニュースでもやるし、誤魔化せんだろ。そういや任務やらずに逃げたらどうなるの?)
《そうした試みは粛清の対象となり、抹殺班が編成されます》(まじで。強さ的にどんくらい?)《班員は対象に近しい者が優先的に選抜されるので、初期段階では同等レベルの相手が多くなると思われます》(え。じゃあオレが選ばれてこいつ倒したらいくらもらえる?)(おい)
<この結果を受け作戦本部は戦略の再構築のため、当面の作戦計画の立案を延期する。各員は待機状態を維持し、作戦再開に備えるべし>
ぶつり、と光の余韻を残して画面が消える。言うまでもなく、合流を提案したことでこの壊滅的な被害の要因を作ったであろう自分達が問責されることもなかった。
責任はあくまで採用した指揮官が担うということか、それとも処罰する余裕がないほど損失が大きいという演出なのかは、知る由もない。
結果がどうあれ、作戦が終わればいったん集合するということは事前に決めていた。
だが約束の時刻を過ぎてもTAOTAOに村井、というか村井らしき人物は現れない。
おかげで尼野と二人、顔を突き合わせて過ごすはめになった。
「これ来なかったらどうするの?」
テーブルに足を投げた尼野が口を開いたのは、約束から二時間過ぎた午後四時頃。
黙っていなくなる。そんなことが有り得るだろうか。会って数日(実際には数時間)もないが、村井の性格からしてどうにも考えにくい気がした。
「何にしたって、いつまでも待てないでしょ。お互いに」
ジム曰く、プレーヤーの死から復活までのラグは最長でもこっちの数時間ということなので、
昨日の作戦終了から十分過ぎる余裕があるはずだ。
そこでふと思いつく。
「作戦で生き残ったプレイヤーが、あのホールにいないとしたら何が考えられる?」
《例えば重傷を負ったキャラクターで、医務室に収容されたケースなどが考えられます》
「医務室の場所は」
《本部地下13階、みなさんが手術を受けた『ラボ』の内部にあります》
エレベーターで降ること五階分、モニターのあったホールのちょうど下くらいにあたりそうな
位置に【技術研究所】というプレートのついた巨大な鉄扉がそびえている。
インターフォンの無機質な声に番号と要件を告げると、扉がゆっくりと開いた。
「やあ、調子はどうだい?」
真っ白な壁に囲まれた診察室のようなスペースの奥、キャスター付きの黒いイスに見覚えのある女が腰かけている。
蜘蛛の巣のようなスカーフェイスに、座ったままでもわかる大柄な身体。似合わない白衣。
あの手術室にいた、Dr……ガーベラだ。
「調子も何もイ号に手も足も出ないで一人吹っ飛んだんだけど」見てきたように尼野が言った。
「108いや村井君か。彼は残念だった。
こともなげに書類をめくる様子から、村井の生存は絶望的のようだった。
「手術について詳しい説明はないの?」
「基本的なことは説明にある通りさ。あとは実地で、習うより慣れろだ」
「変身した後元に戻る方法は? 説明にはなかった」
「ないよ。不可逆だからね」
「指揮官たちは人間になってたけど」
「もちろん、相応の功績をあげれば復元機構のついたR型術式を受けられる。そもそも君らのは敵前逃亡の懲罰だ」
正直、その辺りに関してはある程度予想もしていたが、すでに問題はそこではない。
「R型ならイ号に対抗できるのか」
「当然個体差はあるが、今のところR型もI型も身体能力に大きな違いはみられない。さらなる能力の向上には、より上級の
およそ訊くまでもない、無意味な質問だったのかもしれないが、尋ねずにはいられなかった。
「そんなもの本当に、自分たちが受けられるのか」
「別に不可能じゃないさ。例えば、そう特別褒賞とか」
つまりは様式美だ。