村井曰く、ノルマは2、3人。
例えば本部への入り口(ゴミ箱やマンホールの場合もあるが)があると思われる施設、主に付近の喫茶店や食堂で昼間からたむろしている、つまりは自分達のような連中。
本屋で買った地図を片手に店を巡ること二軒目、カレー250円・天ざる350円のそば屋の奥で、早くもそれらしい二人組が目に入る。
「どうせヒントなんか無いんだから」
「いや、探さないと見つからないって」
木製のテーブルにバンダナをした男と、キノコのような髪形の太めの男が向き合っている。
「話が進む内にいつの間にか解放、とかじゃないぞ絶対。適当にやってたらかすりもしないやつ」
「でも作戦中に出くわしたんだろ。手掛かりがないなら、とりあえずでも参加するしかないよ。
どのみち強制なんだし」
確かに"作戦”と聞こえた。たぶん間違いないだろう。
問題はここからだ。
サポート無しの交渉。しかも1対2。
「あの」
バンダナの視線が、こちらを向いて止まる。
言葉をこねくり回したところで、逆効果なのは見えている。
だったら、考えずストレートに切り出すだけだ。
「そっちは、イ号狙い?」
当惑する二人。が、それで引き下がっても仕方がない。
どうにでもなれ、と593の番号が入った目出し帽を広げる。
「覚えてない?ほら、問責で落とされた」
身も蓋もないアピールに「あー」とようやくキノコが気づく。
「でもなんか、レイド組んでたような…」
「いや、今はソロなんだ」
問責。手術。ダムでの顛末。相対したイ号の戦闘能力。
これまでの経緯については、正直に説明する。一部を除いて。
「――というわけで、手詰まりでもあるし、いったん様子を見ようって話になって」
「へえ。そこまで強いのか」
相槌を打ちながら、腕を組んだキノコ。
それと無言で視線を交わした後、今度はバンダナが探るように口を開いた。
「オレらも、イ号狙いで色々やったんだけど、全然かすりもしなくて…よかったらアドバイスとかもらえません?もちろんお礼は」
「じゃあ、仲間になるのはどうかな」
二人が再び顔を見合わせる。瞳には警戒の色。
失敗したら、なんて考える余裕はすでにない。
あるのは、台本を外れないよう取り繕う意識だけだ。
「ソロじゃいろいろ心配でね。それに、情報の拡散は少ない方がいいはずだ。お互いに」
「情報を二重のエサにするのさ」
そうすれば簡単に食いつく、と村井は続けた。
「もしここで断られれば、別のプレイヤーに声をかけることになる。同じ『説明』しながらね。あれこれ質問してくるやつがいても、無視するわけにはいかない。当然、接触相手が増えるほど、情報は拡散していくわけだ」
カードパックをサーチする小学生が如き視線を上から下まで投げたあと、バンダナが言った。
「…声をかけたのは、俺たちが最初か?」
「もちろん」
とりあえず、意図は伝わったようだ。