毒々しい照明に目が慣れると、ちょっとしたホールほどの空間に無数の人影がいるのがわかる。
全員チュートリアルと同じマスクとタイツの黒ずくめで、会話したり、あたりを見回したり
手持ちぶさたにたたずんでいたりしている。
そうした視線の先を追うと、またよくわからないパーツが
<ダ・ベルベラ!>
視界を覆う分厚いブラウン管に、高々と右手を掲げた軍服の男が映し出される。大きな「V」を
あしらった軍帽をかぶり、暗い緑の
<どうした、聞こえんぞ‼ ダ・ベルベラ‼>
大半のPCが静まり返る中、「ダ・ベルベラ」と何人かが敬礼を返すと、将軍は満足したように
腕をおろした。
<敬礼は団結の証であると同時に、我々とそれ以外を識別する合言葉でもある。ゆめゆめ
忘れることのないように>
合言葉を大声で触れ回るのか、と一瞬よぎったものをすぐどこかへ追いやる。気にしても無駄だ。
<先日の作戦完遂により、われらの目的にまた一歩大きく前進した。作戦本部においては
この成果に甘んずることない、諸君らのさらなる活躍を期待するものである>
ばちり、と手袋をした指が鳴ると、将軍の姿は消え「極秘」と印字された封筒が大写しになる。
<現在計画中の作戦は三つ。諸君らはここから希望するものを選び、これに従事することになる。
選択期限は本日正午。作戦の概要及び詳細については作戦担当者によって行われるので、
各人傾聴し判断の材料とするように>
ぶつん、とモニターが消える。その余韻の消えぬ間に、にわかにあたりがざわつき始めた。
「え、終わり?」「うそやん」「全然わかんないけど」など聞こえよがしの声が響く。
無理もない。自分も似たような感想だったし。
《作戦に参加する場合は、設定された期限までに作戦担当となる
「期限までに作戦を選ばなかったら?」
《製品版での仕様は未定ですが、本テストではランダムに参加作戦が決定されます》
作戦は強制参加…テストプレイならば当然ということかもしれない。
左腕の時計に目を落とす。時刻は午前9時47分。
「なんだ。ここにいたか」
ジムとのやり取りが終わるのを見計らったように、おっさん改め黒ずくめの戦闘員645号が
背後に立っていた。
「話は聞いたな。あんたはどうする?」
選択を促すようにこちらを見つめる645。 実際、最初の分岐はここだった。