本部アジトの奥深く。凍るような蒼の岩肌に瘴気の立ち込める暗い洞穴の底。
645いわく、戦獣師団の居城であり、作戦の司令部ともなるこの岩窟には、すでに多数のPC達が
終結して奥にたたずむ洞の主の言葉を待っている。
『戦獣師団 戦士バラリンクス』
弾丸をはじく銀灰色の毛並みに鋼板も切り砕く牙を備えた
三号作戦の遂行責任者に任じられた大隊きっての生え抜き。らしい。
「ダ・ベルベラ!」居並ぶ同志たちに右腕を掲げると、意気軒高な敬礼が返ってくる。
実に結構。
「ではこれより、第三号作戦『青葉幼稚園バス襲撃作戦』の説明を行う」
びしり、と空気の絞まる音が聞こえるようだ。
「概要はいたって単純だ。標的となるバスを所定のポイントまで誘導し、これを接収する」
手にした指し棒を伸ばす(爪が引っかかって何度かやり直す)と背後の平坦な壁面に、町の地図が映し出される。
「決行には
第二班は接収担当。ポイントで待ち伏せし接収にあたるほか、周辺の道路封鎖や監視も担う。
なお本作戦の目的は、組織の恒久的活動のための資金および人材の確保にある。無用な損失は
可能な限り避けねばならない」
掌で指し棒を縮め、傾聴する同志一同に向き直る。今日だけで五回は繰り返したスムーズで
「以上、概要についての説明は終わりだ。疑問がなければ」
「あの」
闇の中、おずおずと手が挙がる。
常人には暗黒でしかない洞内でも、山猫の眼は覆面に記された番号まではっきり捉えていた。
「質問か。816番」
それを質問の許可と受けとったのか、816が口を開く。
「その、もし邪魔が入ったら…」
「邪魔?」意外な言葉に思わずき聞き返した。
「邪魔とは、警察の介入か?」
もちろん警察など問題にならないことは承知のはずだが、任務を前にいくらか過敏になっている
のかもしれない。
「確かに、今の諸君らにとっては拳銃すら脅威に感じるかもしれない。が、恐れることはない。
われらの科学技術の
手にできるからだ」
言うがはやいか、手にした指し棒を逆手に握り、そのまま左の掌へ突き刺す。
痛い。
ざわめきが広がるなか、血飛沫とともに棒を引き抜くと、傷口がぶくぶくと泡だち、
破れた肉球がみるみる塞がっていく。
「そのためには与えられた指令をこなし、組織への貢献を果たさなくてはならない。
この、オレの様にな!」
「……」
無言で腕を下す816。
血をふるった手でグフォンと咳を払い、一同を見渡す。
全員水を打ったように静まり返っている、わけでもない。
「これはどっちだ。ハセイイベントの類は起きないのか? いや、わからんて。
あくまで表向きの話だろ」
びくり、と奥で顔を寄せ合っていた二人組がこちらへ視線を向ける。
213番に641番。
聞こえるはずのない内緒話を、一言一句再現されたのでは無理もないだろう。
「手術は各種の身体機能を飛躍的に向上させる。この耳もその一端に過ぎない。遠慮は無用だ。
全てに応じるとはいかないが、ひそひそ話し合うより直接訊く方が手っ取り早いぞ」
「だったら」
ついでとばかりに213番が声を張った。