よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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二巻
畜生系主人公が神室真澄と部屋で女子会をする話


 

 

 

「というわけで改めて……お疲れ様ー」

 

「はい、お疲れ様です」

 

「お、お疲れ様です!」

 

「にゃーん」

 

 

 部屋の中で三人と一匹の声が響いた。

 この場にいるのは俺とご主人、そして坂柳と佐倉だ。

 

 今回の集まりは中間テストという学生にとっては面倒な時期を乗り越えた慰労会も兼ねてのものだ。

 

 

 ストーカーの一件を経て、ご主人は坂柳や佐倉と仲がよくなった。

 

 

 仲を深めるには同じ秘密を共有することが肝要だという話があるが、その例に漏れなかった形だ。

 

 ストーカーの一件は口止め料込みで貰ったから話せるのは仲間内だけだからなー。一人300万……ご主人は俺の100万分もあるから400万か、学校側を相手取ってもぎ取ったってのはちょっとした武勇伝だよな。

 

 それを共にやったという仲間意識が仲を深める切っ掛けになったのだろうと思う。

 

 

 まあ、やったのほぼ坂柳だけど……。強請の坂柳という二つ名を得てもいいぐらいの活躍だったけど。主に被害を食らった茶柱先生かわいそ……顔色悪かったな。――まあ、たぶんあれは別件だけど

 

 

 それはともかくとして。

 ご主人たちと佐倉はときどき遊びに行ったり、チャットアプリで話をしたりする仲になった。

 

 佐倉は内向的な性格であまりコミュ力が高いというわけではなかったが、ご主人が彼女のもつ撮影技術や知識などをとても頼りにしてちょくちょく聞くことが多かったのもよかったのだろう。

 

 自分に自信が無いタイプの佐倉だが、それでも専門分野のことなら上手く話せていた。

 そうして上手く相談に乗って答えられたというのは彼女のなかでちょっとだけ自信になっているのかもしれない。

 

 

 初めての頃より、最近は自然体で話せている気がする。

 

 

 前にご主人の部屋に呼んだときはガチガチだったのになー。今ではリラックスしちゃって……。

 

 

 俺は感慨深そうに頷いた。

 

 

「問題ないとはわかっていてもテストなんて嫌なもんね。ようやく解放された気分よ」

 

「私は嫌いじゃありませんけどねテスト。でも、皆さんやはりストレスだったんですね」

 

「そりゃ、そうでしょ。ただのテストでも面倒だってのに、この学校のルールとやらであっさり退学の可能性もあるんだもの。プレッシャーは感じるでしょ……。それでもまあ、まだAクラスはマシだったんだろうけどね。Dクラスは酷かったんじゃない?」

 

「そ、そうですね。とてもピリピリしていて……勉強会とか。過去問がなければどうなっていたか――あっ、そういえばAクラスのあの点数って」

 

 佐倉が思い出したように尋ねた。

 今回の中間テスト、クラスの平均点数はぶっちぎりでAクラスとDクラスが高い結果になった

 

 その絡繰りに気づくのは難しくない。

 

 佐倉の言葉にご主人は困ったような顔になった。

 テスト期間中、過去問という切り札を既に入手していたAクラスの人間として、真面目にテストを受けようとしていた佐倉のことをご主人は気にしていた。

 

 なんら悪いことはしていないが、ズルをしているかのような……そんな気分。

 

 とはいえ、他クラスである以上は過度な手助けもできないわけで。

 

 

「ああ、わかる? ごめんね、やっぱ他クラスだから言えなくて」

 

「いえ、神室さんには勉強も教えていただきましたし」

 

 

 ご主人の言葉に佐倉はそう返した。

 さすがに過去問は流せないので、その代わりにとご主人は勉強を手伝ってやったわけだがそのことを彼女は言っているのだ。

 

「あんなのちょっと手伝っただけよ?」

 

「それでも助かりましたから」

 

 

 実は過去問を早期に手に入れていて中間テストなんて余裕でした! なんてギリギリで手に入れたDクラスの人間からするとちょっとイラッとしてもおかしくないのに……。佐倉、なんて善い子! こんなに善い子なのに退学させられるんだよな……勉強鍛えておけばなんとかならんか?

 

 

「中間テストでは誰も退学にならなかった。無事に突破できた。それでいいじゃないですか」

 

「そうね……。でも、勉強はこれからも見てあげる。もう少し、伸ばしておかないとついていけなくなってキツイわよ?」

 

「……ハイ」

 

「佐倉さんはそれほど勉強が?」

 

「どうしても趣味に没頭しちゃうといいますか」

 

「それ以外がおざなりになってしまうタイプですか。たしかに長所を伸ばして欠点をカバーするという方法もありますが」

 

「にゃん」

 

「はい、気をつけます。ホームズさん」

 

 

 勉強は大事だぞ。反省しなさい。

 

 

 ペシッと佐倉の肩に飛び乗って頭を叩くと佐倉はしょんぼりと項垂れた。

 

 

「まあ、でもそうですね。私としても少し開放感はあります。学校全体の空気が軽いというか」

 

 

 そういうもんだよな。テスト明けは、はしゃぎたくなるのが学生ってもんだ。

 

「葛城のやつも張り切っていたしね」

 

「葛城……たしかAクラスのリーダーの人ですよね? その人が何か?」

 

「いや、そいつだけが悪いってわけじゃないんだけどね」

 

 

 事の始まりはテスト明けにみんなで祝勝会をしようという葛城からの提案だった。

 過去問を手にし、万全の体制で中間テストに臨めるためAクラスにとっては言ってしまえば勝ちの決まった戦いのようなものだった。

 

 それでも放課後の勉強会は負担じゃなかったかと言えば嘘になるし、退学というペナルティはどうしてもAクラスの生徒にもストレスを与えていた。

 

 

 だが、それを撥ねのけて中間テストに挑み――その結果が学年一位という成果だ。

 Dクラスの躍進については意外ではあったが、それでもAクラスの結果には届かない。

 

 

 その結果を踏まえて慰労を兼ねた祝勝会をしよう――という話になったのだ。

 

 

 これにAクラスの生徒の全員が賛成の意を露わにした。

 

 クラス一丸となって頑張った上での勝利の達成感。

 そして、ストレスからの解放でいろいろと発散したいという思い。

 

 それらの気持ちが合わさり、祝勝会として――バーベキューをしようという手はずになったのだ。

 

 

「バーベキューですか?」

 

「最初はみんなで焼き肉店にでも行こうかって話になったんだけどね。そうなるとほら……飲食店はホームズがね」

 

「ああ、なるほど」

 

「貸し切りでも難しいって断られるから。じゃあ、バーベキューにしようぜって」

 

「真嶋先生に尋ねたらどうにもイベント用のバーベキューの設備があるようなので、それをポイントを使ってレンタルしました。それから場所に関しても一定時間の一部敷地をポイントで借りて。そこでみんなで集まってバーベキューを……と」

 

「なんというか……素敵ですね!」

 

 

 本当にな! 焼き肉店行った方が早いのに、俺を気遣ってバーベキューにするなんてAクラスのやつらいいやつ多過ぎだろ! これからはサービスを増やしてやらないとな! ――ただし、橋本、てめーはダメだ。

 

 

「ぶっちゃけ、テスト明けの開放感のノリで動いていた気がするわね……」

 

「だいたい、勢いで動いていましたからね。達成感とストレスからの解放のせいで色々と見えていなかったというか」

 

「な、何があったんですか?」

 

「いや、会場と設備を手に入れることに集中しすぎていて……肝心のバーベキューの具材がね?」

 

「あまり深く考えず、「みんなで食べたいものを買ってきて焼いて食えばいいじゃん!」くらいのノリで行動した結果――」

 

 

 

 

「男子のやつら……みんな肉しか買ってきてなかった!」

 

「ええぇ……」

 

 

 

 まあ……しょうがないよね。男子高校生だもん、肉食べたいよ。しかも、Aクラスだから小金持ちだし、ちょっと奮発してどうせなら高いお肉を自分用に……! と考えたAクラス男子生徒が大半でした。うん……元気があって大変よろしい!

 

 葛城は分厚いステーキ肉だった。

 それオンリーだった。

 

 

 野菜? 誰かが買うだろう――そんなものより肉だ! みんな大体そんな感じだったというオチ。

 

 

「あいつらバカだよ。葛城含めてバカしかいない」

 

 

 ご主人……男子高校生なんて生き物はな、男子中学生に次ぐバカな生物なんだよ。仕方ないんだ、ご主人。しかもアレだぜ? 大人がいない、学生だけの自分たちの金を使ってのバーベキューだぜ? そりゃ羽目を外すわ

 

 

「いつもの葛城くんならそこら辺、気づきそうなものですけどね」

 

「まあ、クラスのリーダーとして色々やらなきゃならないことも多かっただろうから、はっちゃけたんでしょうね。女子がいなかったら肉オンリーのバーベキューだったわよ……」

 

「女子生徒も野菜オンリーというわけではなく、いろいろと細々なものを買ってやってきていたので最終的には肉が八割、それ以外が二割ぐらいのバーベキューに」

 

「なんというか……濃いね」

 

「肉の焼ける匂いしかしないので気分が悪くなったぐらいですよ、まったく。そこのバカ猫も大興奮してステーキ肉を食いあさるし……」

 

 

 馬鹿野郎! バーベキューなんて肉だけ食べていればいいんだ! むしろ、それ以外はいらん! 肉肉肉肉肉肉! おーいしー!!! ……いや、まじでうまかったわ。

 

 

「まあ、楽しかったですけどね」

 

「そうね」

 

「Dクラスはそんなの無かったの?」

 

「うーん、なかったかな。もしかしたらグループによってはやっていたかもしれないけど、クラス単位では……ほら、うちはポイントが」

 

「そういえばそうだったわね。とはいえ、今回のこともあるし多少は持ち直せるんじゃない?」

 

「まあ? Aクラスとの差は縮まりませんけど――ふぎゃ!」

 

 

 そういうとこだぞ坂柳。なんで取れるマウントは全部取ろうとするんだお前は……

 

 

「あはは、そうだね。でも、今回は結果がよかったらポイントが貰えるかもって噂になっててクラスの雰囲気もよくなってて」

 

「0ポイントだからね」

 

「うん、0じゃないだけマシだって少し前向きというか希望が見えてきたというか。だから、空気が軽くなってて――……ああ、300万ポイントが憎い」

 

 佐倉はそうため息をついた。

 その理由がわかるご主人は苦笑しながら同意した。

 

 

「小市民にはきついわよね。大金って」

 

「わかります! 300万ポイントが重くて重くて!」

 

 

 ご主人の言葉に佐倉は勢いよく同意した。

 なにせ月に10万で騒いでいたのにまさかの300万という大金だ、宝くじに当たってしまった人のように佐倉は不安でたまらなかっただろう。

 

 金は大事だが、あり過ぎても困る。

 特にこんな閉鎖空間においては。

 

 どこからバレるかわかったものではない、さらにいえば佐倉はDクラスだ。

 散財した結果、困ったことになっている軽井沢や金欠でゲーム機を売りつけようとする池だったか山内だったかの存在。

 

 

 佐倉が300万ものポイントを持っていることがバレたら……どう考えてもいいことは起こる気がしない。

 

 

 間違いなく食い物にされる。

 生肉を巻いた状態でサバンナにいるようなものだ。

 

 

 佐倉自身もそう考えているのだろう。

 生きた心地がしない時間だったようだ。

 

 

 

 それでも中間テストをいい結果で突破することができ、クラスの中の雰囲気にも余裕が出てきて――ようやく一息がつけてホッと一安心といったところか。

 

 

 

「Dクラスは大変そうですね」

 

「そうですね。……ええ」

 

「なんか困ったことがあったら言いなさいよ?」

 

「手を貸しますよ、佐倉さん」

 

 

 

「坂柳さん、神室さん……」

 

 

 

 二人の言葉に感動したように佐倉は呟いた。

 佐倉の口から語られたDクラスの実情にご主人も坂柳も同情的なのだ。

 

 0ポイントになったことは知っていても、遅刻居眠り、授業中の私語は当たり前。

 さらには例の女子の胸でランキングをつけていた話を知ると二人のDクラスの男子生徒の評価は普通に最低になった。

 

 

 良い感じでDクラスの内情を知ることができるぜー、みたいなノリだった坂柳でさえ同情した。

 

 

 やはり、胸に関しては他人事ではないからか――

 

 

「ホームズ? 不埒なことを考えていませんか?」

 

「……にゃーん」

 

 

 猫なので難しいことはわかんにゃい!

 

 

 ジトッとした視線を向けてくる坂柳に対し俺はすっとぼけるように鳴いた。

 

 

「Dクラスでは雫だってこともバレないように注意した方がいいわね。ちょっと信用できない男子生徒が多すぎる。目の色を変えそうね」

 

「鬼頭くんのような紳士な方もそうはいないでしょうしね」

 

 

 坂柳の言葉にご主人が同意を示すように頷いた。

 実のところ、鬼頭とご主人はそれなりに交流があったりする。

 

 

 その理由は俺がいま首に巻いているスカーフにあった。

 実はこれ鬼頭が作ってくれたものなのだ。

 

 ペットショップなどは存在しないため、ペット用の猫服や服飾やらを購入する手立てはないことをご主人は気にしていた。

 

 場合によってはポイントを使って学校側に仲介を依頼して外から購入という手段もあるが、さすがにそれはポイントの浪費が過ぎる。

 

 そこで俺が思いついたのが鬼頭の存在だった。

 たしか鬼頭はファッションデザイナーになるのが目標だと言っていたはず、なんとかならないものかとファッション誌を読んでいた彼に突撃して頼み込んでみた。

 

 

 これ欲しい! これ欲しい! 鬼頭、これ欲しい!

 

 

 みたいな雰囲気で雑誌に載っていたスカーフを巻いていたモデルの姿を猫パンチ連打。

 俺の言いたいことはどうやら伝わったようで次の週には綺麗なスカーフを作ってきてくれたのだ。

 

 

 これにはご主人もニッコリ。

 それからちょくちょく鬼頭にあれを作って欲しい、これを作って欲しいと頼むようになった。

 

 無論、材料費や報酬としてのポイントを払った上で。

 最初はただの気まぐれだからと乗り気ではなかった鬼頭だが、最近はわりかし楽しそうに引き受けている。

 

 たぶん、スカーフを巻いた俺の姿が好評だったからだろうな。

 自分が作ったものが評価されるというのはやっぱり嬉しいものなのだろう。

 

 

 別にペット用の服や服飾を専門にするつもりはないんだろうがそこはそれ、話が別ということで。

 

 

 そんなこんなで結構、交流も深いご主人の鬼頭への評価は高い。

 だから、グラドルの佐倉のことも紹介したのだ。

 

 

 鬼頭がポロッと将来的にはファッションデザイナーになりたいという目標を口にしていたことをご主人は覚えていたのだ。

 

 

 それなら本職としてそっちをやっていた佐倉ならいい相談相手になるのではないかと考えたわけだ。

 諸々の事情を佐倉へと伝えると彼女としてもなにか思うところがあったらしく少し悩んだあと了承した。

 

 

 なのでとある休日、ご主人は佐倉と鬼頭を引き合わせた。

 佐倉は鬼頭にビビった。

 

 

 まあ、顔が顔だから仕方ない。

 とはいえ、話してみると案外普通……と慣れたあとは結構、相性がよかったのか話は盛り上がっていた。

 

 

 鬼頭がグラドルの雫という存在をあくまでプロとして捉えていろいろと尋ねていたのがよかったんだろう。

 佐倉も落ち着いて話せていた。

 

 

 それに互いが補完できる存在だったこともよかった。

 

 

 鬼頭からすれば貴重な業界人視点での意見を聞ける相手。

 そして、佐倉からするとファッション関係での意見を相談できる相手でもあった。

 

 

 原作でもそうだったのだが佐倉はネット上では部分的に活動を行っている。

 学校のルール内で自撮りをして投稿しているのだが、そのことで少し悩みがあったようだ。

 

 それが衣服に関することだ。

 佐倉は基本的にグラドルとして撮影技術や撮られることに得意でも、ファッションセンスに秀でているというわけではなかった。

 

 もちろん、経験もあってそれでも一般的な人よりも知識などは多いがそれでも衣服を自前で用意できるほどではなかった。

 

 

 自撮りに変化を出したいがそれだけのために衣服を購入するとなると……と悩んでいたところに縁ができたのが鬼頭の存在だ。

 

 鬼頭は軽い手直しやちょっと変化をつけるぐらいの裁縫ぐらいならできると言い出し、それを切っ掛けにして二人は交流を深めるようになったのだ。

 

 

 

「そういえばこの間の投稿もよかったわね。見たわよ」

 

「ええ、本当に」

 

「ありがとうございます。あれはちょっと自信作で……」

 

 

 楽しげに会話をする佐倉の様子から充実した時間を過ごせていることが窺えた。

 

 

 実にいいことだ。

 いいことなんだけど……。

 

 

 中間テストが終わったってことは……そろそろ動き出すよなー。

 

 

「佐倉さんが楽しそうに過ごせているようでなによりです。ですが、少しだけ注意を今日はしておこうと思いまして」

 

「注意ですか?」

 

 

 

 

 

 

「ええ――Cクラスが動き始めると思います。恐らく、狙いはDクラスで」

 

 

 

 

 

 なんでなにも言ってないのに察知してるんですかね。

 変にクラス内での派閥争いなんてしてないせいなのだろうか。

 

 

 こいつ、やっぱり真面目にやると凄いんだな。……いや、真面目に自分のドS欲を満たすために原作でも頑張っていたんだろうけどさ。

 

 

 

 

 

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