よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と一緒に対策会議をする話

 

 

 

 

「CクラスがDクラスにちょっかいをかけるって?」

 

「ええ、恐らく。時期としては次のポイントの振り込みが行われる前までに何らかのアクションが行われるかと」

 

「ど、どういうことでしょう坂柳さん」

 

「ふふふっ、それほど予想すること自体は難しいことではないですよ? 真澄さんは知っていますが佐倉さんはBクラスとCクラスの諍いに関してはご存じでしょうか?」

 

「えっと……あまり詳しくは。ただCクラスの人に因縁をつけられてBクラスの人が困っている――みたいな話は聞いたことがありますけど」

 

「ええ、それです。この件に関しては恐らく組織的なCクラスの攻撃であると結論づけています。理由としてはこの学校のルールの確認のためですね」

 

「ルール……ですか?」

 

「この学校の中というのは特殊なルールのもとで運営されています。そのことは佐倉さんも生活していく上で理解しているはずです」

 

「たしかにクラスポイントとかプライベートポイントとかいろいろありますよね」

 

「中間テストとか過去問みたいな裏道までわざわざルートを作っているほど、だもんね。普通じゃ考えられないというか」

 

「ええ、そうですね。それほどまで、この学校は普通とはかけ離れた独自のルールに基づいて運営されている。Cクラスのリーダーはまずそのルールを把握してからゲームをしたいようですね」

 

 スラスラと述べる坂柳の様子に感心したように佐倉は頷いている。

 

 坂柳の言っていることは正しく、Bクラスへのちょっかいも、そして今後起こすであろうDクラスへの攻撃も原作では龍園の指示に基づいて行われていた。

 

 理由もまあその通りなのだろう。

 この学校の特殊な仕組みや制度をまず確認するために、こうした行動に出るあたり、言動も容姿も完全に不良な癖に案外慎重な男なのが龍園という男だ。

 

 

 いや、慎重というよりも抜け目ない狡猾な男と称するべきか。

 

 

「ルールの把握っていうと……」

 

「Bクラスへのちょっかいがどれくらいで学校側が動いてくるかの確認。ある程度のアウトラインとセーフラインの見極めが終わった次は具体的な処罰の見極めでしょうね」

 

「処罰の見極め?」

 

「ええ、先輩方に話を伺ったのですがこの学校の制度としてトラブルが起こった際、生徒会が仲裁する形で裁判を行うことになるらしいのです」

 

「裁判ですか?」

 

「ええ、例えば誰かが誰かを殴ったとします。つまりは傷害の事案です。これがカメラのある場所で起こったことならば学校側が処罰すればいいだけです。ですが、カメラのない場所で他に目撃者がいない場合などは判断が非常に難しいですよね?」

 

「まあ、どっちも自分に不利なことは言わないでしょうね。あっちが悪いって言い合うだけだろうし」

 

「そういった事案は生徒会が案件を預かって裁判という形で自らの主張を述べ合います。そして、それぞれの主張を聞いた生徒会が総合的に判断して最終的な結論を出す――という形になるようです」

 

「その結論を踏まえて処罰は下されるってことか」

 

「処罰の内容は様々です。プライベートポイントの譲渡や没収で済む場合もあればクラスポイントにまで影響を及ぼすこともあると」

 

「つまり、ルールの把握って言うのは……」

 

「ええ、どういう風に裁判は行われるのか。そして、裁判結果によってどんな処罰がくだされるのか。それを確認しようとCクラスはDクラスへなにかしらのアクションを起こすでしょう。アクションの内容としては……やはりカメラのない場所で事件を起こすのがベターでしょうね。それなりに大事にしないといけないですから、人目のない場所に呼び出して傷害事件でもでっち上げようとするかもしれません。ちょっと挑発したら手を出しそうな手頃な人はDクラスにいませんか?」

 

 

 ヤバいな坂柳、もう大体わかってるじゃねーか! まだ事件は起きてもないのに!   

 

 

 

「そ、そんな人は! ……そんな人は……うん」

 

「……居るんだ」

 

 

 

 坂柳の言葉に咄嗟に否定しようとするも言葉を詰まらせる佐倉。

 

 

 うーん、この須藤……。佐倉からも「まあ、須藤くんなら……」って思われてやがる。

 

 

「で、でもなんでDクラスが狙われるって?」

 

「消去法ですね。まずBクラスは散々ちょっかいをかけたせいで警戒度が上がっています。クラス単位でCクラスに警戒の目を向けているので上手くはめることが難しいでしょう。次にAクラスですがこちらもつけいる隙は少ない。BクラスとCクラスの諍いを知ってからは警戒度を上げてますからね」

 

「カメラの少ない場所には近づかない、どうしても通る場合は複数人で固まって通る。なにかあったら作っておいた緊急用のグループチャットで助けを求める。――マニュアル化されてるからね」

 

「そういった動きは恐らくCクラスには伝わっているでしょう。そして、その二クラスよりもDクラスは隙が大きい。狙うならばDクラスでしょう」

 

 

 でしょうね。特にDクラスは一回クラスポイントが0ポイントになったところ、ようやくクラスポイントが増えた大事な時期だ。ここで暴行事件の結果、クラスポイントが減りましたなんて結果になったらクラスとして崩壊しかねない。そういった意味で格好の標的だ。

 

 それに――

 

 

「そして、何より……Dクラスはいまだ見えてこない部分が多いですから」

 

「見えてこないって……なにが?」

 

「クラスを率いるに足る人物――有能なリーダーの存在です」

 

「えっと、平田さんや櫛田さんとかは……」

 

「彼らにはクラスをまとめることはできても率いることはできないでしょう。少なくとも今のところはそう見えます。うちのクラスでは葛城君やBクラスでは一之瀬さんのようなクラスを率いるに足るリーダーシップを発揮できているとは思えません」

 

「つまり、坂柳さんが言いたいのは平田君や櫛田さん以外のクラスを率いることができる人がいないか、それを調べるためにDクラスは狙われるってことですか?」

 

「ええ、それも目的の一つだと思います。そういった意味では未知数ですからね。冤罪事件を引き起こしてそのまま通るならよし、上手く対処されたならそれはそれでよし」

 

「なるほど、あぶり出しってわけね」

 

「ええ、見えない相手とは戦えませんからね」

 

 

 やべぇ、やべぇよこのロリ……起こってもいない事件を分析して龍園の考えを見抜くなよ! 翔くんが可哀想だろ! いや、翔くんは翔くんで読まれたことを察したら喜びそうだけどさ!

 

 それにしてもやっぱこう整理されると須藤の暴行冤罪事件は起こるべくして起こる事件なんだな。

 

 龍園視点だとやらない理由が存在しないというか。

 

 

「ど、どうしたらいいんでしょうか?」

 

「まあ、佐倉さんは関わらないように気をつけてカメラのある場所を意識して行動していれば問題は無いでしょう。事件を防ぎたいのならDクラス全体に注意を促せばいいのですが、それをできる伝手も力もないのでしょう?」

 

「ううっ、そうですね……」

 

「仮に平田君や櫛田さんに伝えたとしても統制ができるとは思えませんし、大人しく自己防衛に終始していた方がいいでしょう。なんなら鬼頭くんを貸してあげます」

 

 

 鬼頭は貸すものではない。(戒め

 

 

 しかし、よく考えるとこれはどうなんだろうか。

 佐倉が須藤の暴行冤罪事件に関わらなくなるとなると……なると……別に居なくてもいいか。

 

 原作でも結局それほど佐倉の証言やらなんやらって重要視されなかったし。

 ストーカー事件も解決したから今更か。

 

 そもそもDクラスがどうなろうと俺には関係ないしな。

 佐倉がDクラスだからちょっと可哀想だけど最悪0ポイントに戻っても、300万プライベートポイントが佐倉にはあるから生活は困窮しないだろうし。

 

 

「それにしても須藤くん、ですか。私はそれほど詳しくないのですが、それほど喧嘩っ早いのでしょうか?」

 

「私も仲がいいわけじゃないからわからないけど須藤くんなら――やってもおかしくはないと思う」

 

「となるとやはりその方が狙い目。ターゲットの第一候補と見て間違いはないでしょう」

 

「他の生徒の可能性もあるんじゃない?」

 

「親交のない佐倉さんが「やってもおかしくはない」と思う程度に普段の素行が悪いのはでっち上げるには好都合ですからね」

 

「まあ、たしかにそうか。それにしてもCクラスか……結構、危なそうなクラスね」

 

 

 

 いい子もいるんだけどね。でも、あそこだけ完全にヤンキー漫画のノリだからな。ご主人は迂闊に近づいちゃダメだぞ、いざという時は守るけどさ。

 

 

 

「それで坂柳」

 

「なんでしょう」

 

「そこまでわかっててどうする気なの? 坂柳の性格的にそのまま傍観するつもりはないんでしょう?」

 

「ふふふっ、私のことをよくわかっていますね真澄さん」

 

 

 

 そりゃ、度重なるカリスマブレイクによってカリスマ欠乏症になって急速なカリスマ力回復を目標としていることはAクラスの誰もが知っているからな。

 

 

 

「狙いがわかっているのであればそれを利用しない手はありません。問題はどのタイミングで誰が何処で行うか……それを掴めればいいのですが」

 

「その須藤ってやつに誰か張り付かせてたらいいんじゃない?」

 

「こちらが気づいていることを察したらターゲットが変更されて終わりでしょうからね。さて、どうするべきか――」

 

 

 

―――

 

 

 そんな会話をした次の日のこと。

 俺は春の日差しが心地よい公園に向かっていた。

 

 

「あっ、ホームズさん! おはようございます!」

 

「にゃおん」

 

 

 俺のことに気づき、礼儀正しく頭を下げた女子生徒の名は――椎名ひより、という。

 椎名の挨拶に俺も答えるように頭を下げた。

 

 

 

「ささっ、今日は「まだらの紐」を用意しました。ホームズさんはこちらの作品をご存じですか?」

 

「にゃー」

 

「おおっ、読んだことがあるのですか。ふふっ、さすがですね」

 

 

 「まだらの紐」かー、懐かしいなー。これって題名がほぼネタバレになってるんだよね。翻訳の都合上なんだけどもうちょっとなんとかならなかったものか。

 

 ウキウキとした様子でベンチに座った椎名の膝の上に俺は座った。

 椎名と過ごすときはここが定位置なのだ。

 

 椎名は俺を膝に乗せたまま、本を開いて読み始めた。

 

 

 ……ってこれ、原書じゃねーか!

 

 

「やはり、英文の方が作品を直に楽しめると言いますか。あっ、ホームズさんは英文でも大丈夫ですか?」

 

「にゃー」

 

「では、ゆっくり進めますね」

 

 

 問題ない、とぺシペシと椎名の腕を叩いたら彼女は嬉しそうに本のページをめくり始めた。

 

 正直、なぜこうなったのかは俺にもよくわからない。

 ただ、どうにも俺の存在をいたく椎名は気に入ってしまったらしくよく見かけると話しかけてくるようになった。

 

 それだけだったらよかったのだが、椎名とこの公園にあったとき彼女がシャーロックホームズシリーズの本を開いていたのが一種の転換点だった。

 

 学校に通っていた頃、暇つぶしによく見ていたっけなーと懐かしく思って読んでしまい、その様子を微笑ましそうに眺めていた椎名が「ホームズさん。犯人は誰だと思いますか?」と尋ねてきたのに「コイツだろ」と普通に答えてしまったのが運の尽きだった。

 

 

 それ以来、こうやって俺を見つけてはミステリー本を読ませようとしてくる椎名の勢いに俺は押し負けている。

 

 

 いやだってさ、女の子がなんかサンタさんを信じる子供のようなキラキラした目をこっちに向けてくるんだぜ!? そりゃ、断れねえよ!

 

 それにこれはあれだ。

 

 俺の修行でもあるのだ。

 実はちょっとだけ思っていたのだ――俺って「ホームズ」の名前負けしてない? 実際のところ原作知識ありきだし、やってることはスパイとか諜報員じみてるし? 名探偵の名前を背負うにはまだまだ未熟な気がする。

 

 

 つまりはこれは一種の修行パート、推理パワーを得るための時間でもあるということだ。

 

 

 あとはあれだ。

 

 

「ここに居たのか」

 

「あら、どうしたんですか?」

 

 

 穏やかな時間を過ごしていた俺たちに話しかけてきたのは長髪の男――龍園翔だ。

 ある意味では原作の真ヒロインではないかといわれている男だ。

 

 

 そして、須藤の事件の首謀者でもある。

 

 

 こうしたことがあるから俺はちょくちょく椎名と会っていた。

 

 

「どうしたもこうしたもねぇ。お前には話を通していたはずだ。迂闊な行動は控えるように……ってな」

 

「そのことですか。私はあまりそういったことと関わりたくないのですが」

 

「お前は頭が切れる。そのことは認めているからな。どのみち気づかれるなら初めから釘を刺して置いた方がマシだ」

 

「別に他クラスになにかを言う気はありませんので放って置いて欲しいのですが」

 

「そうもいかねぇ。どうにもBクラスの動きがおかしいからな」

 

「やり過ぎたからその仕返しなのではありませんか?」

 

「はっ! それぐらいの気概があるならおもしれえが……まあ、なんにせよだ。変な動きはするんじゃねーぞ。石崎のやつらも浮つきやがって」

 

「はい、わかりました。ご用件はそれで終わりですね? 私はホームズさんとの読書の時間がありますので」

 

「……聞こうと思っていたんだがそれは何をやってるんだ? そいつはたしかAクラスの猫だろう?」

 

 

 俺の存在が気になっていたのか龍園は言いづらそうに尋ねてきた。

 それに対して椎名は元気よく答える。

 

 

「ホームズさんというんです! 一緒に読書をしています!」

 

「猫が本を読めるわけないだろうが」

 

「でも、ホームズさんですよ?」

 

「ただの猫だろうが」

 

「ホームズさんは賢い猫さんです」

 

「賢かろうが猫は猫だ」

 

 

 龍園はそう言い捨てるとふらっときびすを返した。

 いろいろと裏工作をしている龍園は忙しい身なのだろう、ある意味この学校でこいつほど努力している男もいないだろう。

 

 

 

「ホームズだっけか? ご主人様に伝えておけ、すぐにAクラスも相手をしてやるよってな」

 

 

 

 おっけー、ちゃんと伝えておくぜ龍園。この鬼頭製のスカーフの中にはボイスレコーダーが入っているんだぜー。それを俺がちょいと爪でスイッチを入れればいつでも録音が可能って寸法よ。この仕様知ってるの俺とご主人だけだけどさ。

 

 

 

 鬼頭でさえ、このことは知らない。

 ただ、敷地は広く迷子になっても探せるように発信器を入れるポケットを作って欲しいとご主人に頼まれているから用意しただけだ。

 

 

 スカーフを弄ぶようなふりをしながらボイスレコーダーの電源を切り、俺は考える。

 

 

 龍園の話によるとやはり原作通りに石崎たちが事件を起こすようだ。

 となると石崎たちをマークしていれば冤罪事件の現場に居合わせる事は難しくはないはず。

 

 

 Cクラスはまさか行動を起こす前にそこまでつかまれているとは考えてないはずだからな。

 

 

 そこで事件の証拠を上手く掴むことに成功すれば――あとは使い方次第か。

 

 

 それにしても……やっぱり、俺のやってること名探偵ではないのでは? 完全に諜報員というか……いや、子供になった名探偵パイセンは盗聴とか十八番だったし、これも名探偵ムーブのはず―――きっと!

 

 

 

 

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