よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と裁判の顛末を聞く話

 

 

 

「で、どういうことなの?」

 

「そうですね。……ふふっ、素敵なことがあったんです」

 

 

 原作の時とは違い主従でもなく普通に友達の距離感のご主人と坂柳。

 もはや自らの部屋も同然の顔でクッションに座りながら、妙に機嫌が良さそうな様子で話の口火を切った。

 

 

 内容はもちろん、須藤の暴行事件の裁判についての話だ。

 ご主人も俺も正直、興味をなくしていたが想定とは違う結末となったとなると気になってしまうわけで話に耳をそばだてた。

 

 

 ……というか、うーんこのロリ。明らかに機嫌が良さそう。これはやっぱり……っていうか何やったかは知らないけど、絶対綾小路だろ――謎は知らんけど、犯人はお前だ!

 

 

 一発で犯人を見抜いてしまった。

 やはり、俺は名探偵なのかもしれない。

 

 

 そんなことを考えながら坂柳の話を聞いた。

 

 

「概ね、当初の想定通り裁判は終了しました。細々とした経緯は省くとして結論としては我々の証拠がダメ押しとなって裁決は喧嘩両成敗という形に落ち着きました。今回の事件は両クラスとも非があるという結論ですね」

 

「そうなるだろうって話だったわね」

 

「ええ、そうですね。証拠の映像によって証明されたのはまずにCクラス側の主張の「一方的に須藤が殴りかかってきた」ことが嘘であったこと、「自分の方が先に殴りかかった」という事実を隠蔽したことがハッキリとしました。この時点で須藤くんの退学処分は重すぎるという結論になりました。あくまで殴ってしまったのは防衛行動の一環であったと認められたわけです。相手側が複数人いたことも考慮されたのでしょう」

 

「相手が複数人いて人気のない場所で攻撃を受けたのなら咄嗟に手が出たとしても仕方ない、と」

 

「そういうことですね。ただ、Dクラス側の主張も不味かったですね。事件の矮小化を狙って「殴ってしまったのはあくまで相手が攻撃してきたため、つい手が出て当たってしまった」だけだとね」

 

 ようするに偶然当たってしまっただけで故意ではない。

 諍いがあったあと、教師などに事件のことを相談しなかったのは咄嗟の出来事で殴ったという自覚が薄かったから相談しなかった――と主張したらしい。

 

 殴った事実は認めるもあくまでも事故で、そしてその後になんのアクションもしなかったことは自覚が薄かったからで故意に事件の隠蔽を計ったわけではない……という主張だ。

 

 できるだけ減刑を狙った主張なのはわかるが、映像があるのはその主張だとだいぶ痛いな。

 

「……映像の中で思いっきり須藤のやつ拳で威嚇してなかった?」

 

「殴られたあと、退散する石崎くんたちに向けて拳を握って煽っていましたね」

 

 どう見ても偶然当たっただけ、という主張は厳しい。

 いや、偶然当たってしまったのは事実だったとしても映像の中の須藤は明らかに殴った事実を認識していた。

 

 Dクラスの主張は通らない。

 根底が崩れてしまっている。

 

 事情はどうあれ相手に怪我を負わせておきながら、その後教師などに相談することもなく過ごしていたことはかなり心証としては悪い。

 

 暴行という行為自体を問題視していないのか、あるいは暴行という事実を隠蔽しようとしていたのか――と。

 

 まあ、実際は単に須藤がアホすぎて軽く考えていたというのが事実だろうが、そこはどうでもいいのだ。

 

 

 重要なのはDクラスは減刑を狙い、裁判で暴行の事実をクラスぐるみで矮小化をしようしたと判断されたことだ。

 

 

「最終的に処罰としてCクラスもDクラスもクラスポイントが40ポイント減額されることが決定されました」

 

「どっちもどっちって判定か。Dクラスは主張の仕方を間違えた感じか。まあ、カメラもない当事者たちだけの場で起きた事件。それを完全に撮っていた映像があるなんて思わないでしょうからね。仕方ない部分もあるんでしょうけど」

 

 

 ここまではまあ……問題はない。

 予測の範囲内だ。

 

 

 喧嘩両成敗で共にクラスポイントを減額された。

 それなのに最終結果、Dクラスだけがその減額がなかったことになった。

 

 

 暴行事件の裁判が処罰が両クラスのクラスポイント減額で決定したということは、その裁決のあとに――()()()()()()()のだ。

 

 

 

「裁判が終了すると同時にDクラスは訴えを起こしました。訴えた相手は学校側。そして、訴える理由は――()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

 

 

 ……うん、どういうことだ? 安全管理体制の不備? それで訴えを起こしたということか? たしかにカメラのない場所で今回の事件は起きたわけだが、それで訴えるのはかなり難しいのでは?

 

「その論拠としてあるものを提出しました。それはBクラスが学校側に提出していた要望書です」

 

「要望書? なにそれ?」

 

「CクラスとBクラスが諍いを起こしていたのは真澄さんもホームズもご存じの通りですね? 諍いといってもCクラスからの攻撃……というか嫌がらせだったわけですけど」

 

 

 たしかあの時もカメラのない場所を利用して因縁をふっかけたり、絡んだりしていたんだっけか。

 

 

「今は落ち着いているとはいえ、またあのようなことをされては困るということでBクラスはクラスとして、学校側にカメラの設置を要望書として提出していたんですよ」

 

「えっ、でも……カメラのない場所って」

 

「ええ、結論から言えばカメラのない場所。あるいは意図的に作られた空白地帯は学校側の意図したもの……これは前に説明しましたね?」

 

「意図的にグレーなことができるエリアを作ってるって話よね? そういうことなら要望書なんて提出しても……」

 

「そう、無駄です。受け取りはするでしょうけど棚晒しになるでしょうね。Cクラスはあくまで学校の仕様をうまく使ったに過ぎません」

 

「なら、何の意味もなくない?」

 

 

 ……いや、あるな。

 

「いえ、あります。要望書の中には全十二カ所の場所にカメラの設置を要望しているのですが……その一つが須藤くんの事件が起きた場所だったんですよ」

 

 

 坂柳の言葉にご主人は目を見開いた。

 

「えっと……つまり? 事件の前にカメラ設置の要望書が提出されていた。理由はもちろん、カメラがない場所を利用しての嫌がらせが起こったから対応して欲しいって意味合いで」

 

「そうなりますね」

 

「そして、学校側はそれを?」

 

「当然、受領はしたものの()()()()()()()()()()()。そして、提出された一週間後に事件は起きました」

 

 

 つまり、Dクラスはそこをついたわけだ。

 

 

「学生がトラブルが起こるかもしれないから対処のためにカメラを設置してくれと要望した。だが、学校側は動かず、そして危惧の通りに事件が発生した。なるほど、たしかにこれなら……」

 

「ええ、学校側を訴えるロジックとしては十分です。学生でも予見できる安全管理体制の不備を学校側は対応しなかった。その結果、事件が起きてしまった。しかも、よりにもよってその事件の関係者は要望書のなかで指摘されていたCクラスです」

 

「殴りかかった石崎はCクラス。Cクラスはカメラがない場所を意図的に利用しているところがあると指摘されていたクラスの人間ね。石崎が須藤に殴りかかることができたのは、カメラがないことを知っていたからこそできたのではないか」

 

「つまりは学校側の安全管理体制に不備があったからこそ、事件は発生してしまったのではないかという主張ですね」

 

 

 実際、その指摘は正しい。カメラがないからこそ誘き出したんだろうしな。

 

 

「ただ訴えるだけでは退けられていたでしょう。問題を起こした生徒たちが悪いと。……問題は事件一週間前に事件が起きるのを予見するかのように提出された要望書の存在です」

 

「要望書の中でのカメラの設置要望の場所、明確に事件の場所だったわけでしょ? そりゃ、主張されるわね。須藤の態度が悪すぎて喧嘩両成敗になったけど、先に手を出したのはCクラス……つまりはDクラス側は被害者側ということになる。学校が要望書を真剣に受け取って対処していれば事件そのものが防げていたのではないか……って」

 

「真澄さんの言ったとおりの主張をDクラスは行いました。そして、学校側もその否を認めることになったわけです。あの場所にカメラがないのは学校側の意図、ですから対処する気などなかったわけですけど」

 

「それを認めることはできないわよね。いくらなんでも……」

 

 

 カメラないのは意図的だから要望書なんて提出されても初めから対処する気なんてなかったよ、バーカ!! とはさすがに学校側としても認めることはできないわけで。

 

 学生からの要望書を協議もかけずに無視していた事実を掴まれているのも痛い。

 これじゃあ、対応に不備があったことを認めるしかない。

 

 須藤を完全無罪にすることはできないが、罰したあとで学校側の不備が訴えられたので処罰を相殺して結果的に0ポイントにしたってことか。

 

 一応、殴りかかられた側だからな。

 Cクラスは殴りかかった側だからそのまんま……なるほど、流れはわかった。

 

 

「やるじゃない、Dクラス。いや、要望書なんて提出していたBクラスのおかげ? とにかく、そんな切り札を見つけることができて運がいい」

 

「いえ、違いますよ真澄さん」

 

「どういうこと?」

 

「運が良かったからこんな結果になった……わけではありません。恐らく、これは――」

 

 

 

 爛々と坂柳の瞳が輝いていた。

 満面の笑みだった。

 

 

「そう仮称……存在Xの仕業なのです!」

 

 

 いや、反応的にもう綾小路に会ってるよなお前……。いきなりトンチキなことを言うからご主人がびっくりしてるじゃないか。

 

 

「存在……えっ? なに?」

 

「あの要望書、恐らくあれは仕込みです。事前に用意していたものなどと思います」

 

「事前に用意って……もしかして今回の事件を予期してってこと?」

 

「そうです」

 

「そんなことできるわけ……」

 

「私はCクラスが動く前に相手の狙いと行動、そして大まかな時期を予測できましたよ?」

 

「つまり、その存在Xとやらも同じことができたってこと? そして、そのための対策として要望書を用意させた?」

 

「そうですね、時期さえわかっているならタイミングを見計らって促すことは難しくはないでしょう。BクラスからすればCクラスはたんこぶみたいなものですし、相手がカメラのない場所を利用するなら学校側に要望を出せばいいというのは筋の通った主張ではありますからね」

 

「そりゃ、そうかもしれないけど……根拠は?」

 

「提出された要望書に記載されていた場所です」

 

 そう言って坂柳は俺に視線を向けた。

 

「実のところ、時期の他にもおおよそCクラスが今回の事件を起こすならこの場所だろうな……という候補を私はいくつか立てていました。ねっ、ホームズ」

 

「そうなの?」

 

 ご主人の言葉に俺は頷いた。

 坂柳はいくつかの候補の場所を俺と山村に伝えていた。

 

 

 その一つがビンゴであの場所だった。

 

 

「そんなことできるの?」

 

「カメラのない場所でなおかつ人気もなく、呼び出した須藤くんが来てくれる距離にある場所……なんてのはそう多くありませんからね。Xも同じく候補を絞っていたのでしょう、それを要望書の内容に混ぜ込んだ」

 

「事件が起きたとき、学校側を巻き込んでできるだけ被害を抑えることができるように?」

 

「さて、どこまで読んでいたのかは不明です。別の目的があったのか、あるいはこちらの動きを読んでいたのか。……今回、Bクラスはただの部外者と思い余計なことをさせないように釘を刺したのは失敗だったのかもしれませんね。そのせいでこちらの手を読まれたのかも。……だから、裁判中には使わなかった? ふふふっ、実に面白い」

 

 とても楽しげに笑っている坂柳を気味悪そうにご主人は見つめ、俺に囁いてきた。

 

 

「変なものでも食べた?」

 

 たぶん、あれだ。自分でも詰んであとはチェックメイトをするだけの状況からスルッと逃げられてそれに喜んでるんじゃない? 知らんけど。

 

 

「ともあれ、CクラスはともかくDクラスはこちらの予測を上回って今回の裁判を乗り切ったというわけです。これは今後のDクラスに目が離せないですよ、真澄さん」

 

「キリッとした表情のところ悪いけどさ。そのXとやら誰かわかってて言ってない? 普通に誰か教えなさいよ」

 

「……嫌でーす。こう、運命的な再会をしたわけですから私としてもですね。いろいろとあるわけですよ」

 

「再会? ふーん、なんか事情がありそうね」

 

「ふふんっ! まあ、真澄さんとホームズならいいでしょう教えてあげます」

 

 

 こいつ、完全にテンションがバグってやがる。新しい遊び相手が見つかったぜー! 的なテンション……ってちょっと待て、もしかして喋る気なのか!? 原作とは関係性が違うからかな――まさかホワイトルームのことまで言わないよな……。

 

 

 ちょっと心配してしまったがさすがにホワイトルーム云々のことを言わない分別はあったらしいロリが、ある程度ぼかしながら綾小路との関係性をご主人に話した。

 

 

 

 ご主人の反応は如何に―――っ!!

 

 

 

「……あのさ」

 

「なんですか真澄さん」

 

「色々ぼかしてたからこう言うのもなんだけど……聞いてる限り、ただの他人じゃない?

 

「…………」

 

「一方的に坂柳が知ってるだけでそいつからすると、なんか自分のこと知ってる知らないやつじゃない?」

 

「…………」

 

「思考的にどっちかというとストーカー系統の勝手に運命や因縁を感じてるやべー女じゃ――」

 

 

 ご主人! やめてあげるんだ、ご主人! マジレスはやめてあげるんだご主人! 正直思ってたけども! 坂柳にも傷つく心があるかもしれないじゃないか!!

 

 

「真澄さん」

 

「はい」

 

「いいですか? ――私が運命を感じたのならそれは運命なんです

 

 

 坂柳有栖は心がつえー女なのか?

 

 

「真澄さんだってホームズと運命を感じたはず……。実は前世から運命の赤い糸で結ばれていた気がしないですか? そういうことにしましょう」

 

 

 なに言ってんだコイツ。

 

 

「……あっ、そんな気がしてきたわね」

 

 

 ご主人? ご主人??? 邪悪なるロリの口車に乗らないでご主人!!

 

 

「ホームズとは輪廻転生する前からの固い絆で結ばれた仲だった気がするわ」

 

 

 ご主人がそういうならそんな気がしてきたな……いや、そんなだった気がしてきた。

 つまり……坂柳が綾小路に一方的な運命やら因縁やらを感じてなにも問題がない?(お目々ぐるぐる

 

 

 運命って何だろう、という哲学的な問いを考え込む俺を放置して坂柳は宣言した。

 

 

「今回の一件は前哨戦として終えることにしましょう。そもそも、Aクラスの戦いでもありませんでしたし。やはり、面と向かって会いに行くには一度勝負をしてから……ふふふっ、この学校に来てから面白いことが多くて困ってしまいます。Aクラスの皆さんにホームズ、それにXまで――私、楽しいですよ」

 

 

 とても満足そうに笑う坂柳はその容貌もあいまって天使のように可憐だった。

 

 

 

 

「坂柳……」

 

「にゃー」

 

 

 

 

「さーて――とりあえず、明日……職員室に突撃して脅迫しますか。手伝ってくださいね

 

 

 

 

 まあ、坂柳は坂柳なんだが……。

 

 

 

 

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