よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄がバカンスを楽しみにする話

 

 

 

 唐突だがAクラスの生徒は学校側に対して懐疑的な認識を持っている。

 

 

 始まりはやはり、須藤の事件にも関連したカメラに関することだろう。

 調べてみればわかる明らかな配置の偏り、あるいは謎に死角の場所があること。

 

 それを利用してBクラスに嫌がらせをするCクラスを放置していた事実。

 

 こうなってくると不安になる。

 掘り返してみればAクラスだからこそ、そこまで問題にはならなかったが入学してから「実は特権を受けられるのはAクラスだけ。全員受けられるなんて言ってないでしょ」とか言ってたのはどう考えても詭弁だった。

 

 実際、一般的にはそういう認識で広まっていたしそれが誤解なら入学説明会の時にいっておけばいいだけの話。

 入学して一ヶ月も経ってから言う話ではない。

 

 これが許されるなら世の中の大半の誇大広告と優良誤認は許されるべきだろう。

 

 話が色々と衝撃的すぎてみんな流されてしまったわけで、学生はみんな学校側に始めから騙されていた――といっても過言ではない。

 

 

 カメラの問題に初期から吐かれていた学校側の嘘。

 Aクラスは色々と不安になって、葛城の指示のもと調べ回ることになった。

 

 

 他のクラスと比べて余裕があったからこそできた行動だろう。

 その結果、わかってきたのは――

 

 

 なんか上級生の退学者が妙に多いことや管理人に頼めば当人じゃなくても合鍵をポイントで作れるということ、Cクラスのやつらには明らかに不良っぽいやつらがいてしかも明らかに喧嘩をしたような怪我をしていたなどだ。

 

 

 ここら辺の情報が共有されてAクラスの中では「この学校、ヤバいんじゃないのか?」という感じになった。

 

 

 エリート高の癖に退学者が多いというのはちょっとおかしいし、なんで不良が入ってきてるんだよって話だし、合鍵に関しては常識とか安全管理とかどうなってるんだという話だ。

 

 特に女子の嫌悪感はヤバかった。

 ご主人も合鍵云々に関しては「……は?」って顔になり、その日のうちに鍵を購入しに行ったぐらいだ。

 

 

 情報を収集できる余裕があって、ちゃんと分析して共有する体制があったAクラス。

 基本余裕のあるAクラスだからこそ広く視野がもて、だからこそキチンと認識できる不信感というのはちゃんと溜まっていたのだ。

 

 

 なんというか生徒視点からすると非常に性格が悪いのだ学校側は。

 

 

 だから、「豪華客船によるクルーズのバカンスだ」という話がでたとき、Aクラスの頭に過ったのは「本当なのか……?」という疑問だった。

 

 

 「さすがにまた嘘でしたーはないだろ」「いや、でもプールの授業の時、先生が泳げる方になった方が得だとかなんとか、そんなこと言ってなかったっけ?」「それってまさか……」「いやいや……まさか、ねえ?」

 

 

 そんな会話がクラス会議の時に起こったものだ。

 さてさて、そんな情報を踏まえた上で現状に視点を戻してみよう。

 

 

 

「―――というわけで私もバカンスに参加します」

 

「いや、しかしだな。坂柳の身体ではいささか危険で安全性が担保できないから、参加は控えるという話に……」

 

「たしかに私は身体に疾患を保っていますがクルーズ船に乗れないほどではありませんよ。無論、もしもの可能性は人より多いことは認めますが……」

 

「先生、クラスメイトの坂柳が行きたいといっているのです。我々、Aクラス一同もその気持ちを是非とも汲みたい。皆でサポートすれば問題なく過ごせるはずです」

 

 

 さて、状況を少し説明するとしよう。

 なんか職員室に襲撃を仕掛けるとかほざいていた坂柳だったが、その目的は夏のバカンスのことについてだった。

 

 本来、このバカンスには坂柳は不参加になる予定だった。

 彼女の身体的な疾患を考慮した結果、クルーズ船でのバカンスは負担が重いということで残念ながら……ということで話は進んでいた。

 

 それに関して坂柳は残念そうにしていたが納得していた。

 彼女の疾患はかなり重く、やはり船旅というのはリスクもそれなりに高い。

 

 わりと普通に楽しみにしていた様子の坂柳だったが、リスクと天秤にかけて仕方なく納得し葛城にも伝えていて諦める予定――だったのだが、ここで来たのが綾小路の存在だ。

 

 

 坂柳視点だと運命的な再会。

 当然、綾小路もバカンスには参加するわけでそれなのに自分はお留守番――絶対に嫌だ!

 

 

 というわけで予定を急遽変更、坂柳は真嶋先生のところに色々と引き連れて突撃したのだ。

 

 

 引き連れてきたメンバーを紹介するぜ! まずは坂柳から連絡を受けた我らが善なるハゲ! 葛城!

 

 

「坂柳の健康を気遣っての処置だとは重々承知の上でお願いします。Aクラスの仲間として彼女と一緒に思い出を作りたいのです。お願いします」

 

 連絡を受けた葛城は当然のように坂柳を助力する立場に立った。

 バカンスには不参加になるかもしれないって坂柳から聞いたとき、とても残念そうにしていたからな。

 

 健康上の問題のため仕方ないとはいえ、一人だけ不参加ということを気にしない男ではない。

 そして、坂柳がバカンスに参加する気になったというのなら全力で手助けをする立場を取る――それが葛城という男だ。

 

 

 そして、次のメンバーはもちろん、我らがご主人だ!

 

 

「先生、学校のイベントの一環としてのバカンスなんですから当然ホームズも参加できるんですよね? 確約をください」

 

「えーっと、それは……」

 

 

 バカンスに関して当然のように俺を連れて行く気満々だったご主人だが、坂柳の指摘でもしかしたら不許可になるかもしれないと思い確約をもらいに参戦。

 

 

「坂柳さんがいないのは寂しいです」「仲間はずれはな……」「みんなでフォローすれば大丈夫ですよ」

 

 

 他、Aクラスの生徒が多数。

 とある事実を確認するために呼び集めた圧力要因だ。

 

 

 

 その確認するための事実というのはもちろん――

 

 

 

「あー……そ、そうだな。だが、坂柳は不参加でもう話を進めていて……」

 

「まだ十分間に合うと思うんですけど」

 

「万が一があると危ないわけで」

 

「船旅といっても豪華客船のクルーズなんだからいざという時の設備も整っているはずです。我々、Aクラス一同でフォローやサポートをするのなら問題はないはずです」

 

 

 

「そう……ただのバカンスなのですから。――そう言いましたよね?」

 

 

 

 ダラダラ、ダラダラ……。

 

 坂柳の透き通るような声が職員室に響き、なんともいえない空気に包まれた。

 なんというか「やべぇよ、やべぇよ……」みたいな空気だ。

 

 

「船旅には多少の危険はあるかもしれませんが事前にキチンとした対策を行えばバカンスを楽しむことはできるはずです」

 

「ええ、楽しいバカンスという話ですからね。きっとそれ以外にないはずですから」

 

「……あー、えーっと」

 

 

 

 真嶋先生の顔色が悪かった。

 その顔で大体のことをこの場にいる人間は察してしまった。

 

 

 さて、なぜ真嶋先生が言葉を濁しているのか――それを説明しよう。

 

 

 実のところ、バカンスというのは嘘でクルーズ船の行く先は無人島なのだ。

 そこで特別試験が行われる予定になっている。

 

 

 このことは教員側は試験当日まで守秘義務が課されているわけだ。

 

 

 バカンス云々は嘘……いや、一応豪華客船なのは事実なので、船旅の間は楽しめるのは本当なので半分嘘ぐらいか? いや、でも帰りの船旅はまた試験あるからな……九割嘘といっても過言じゃないよな。

 

 

 元々、不信感があったAクラスにとって真嶋の反応は確証になりえるものだった。

 

 

「おい、やっぱりあの反応って……」「プールの授業の時の話と総合するとやっぱり?」「遠泳でもさせられるのかな?」「無人島でサバイバルとか?」

 

 

「いや、その……だな」

 

 

 試験があるならそう言えばいいのに、なんで変にだまし討ちみたいな真似をするんだろうね。アンテナ張って警戒していた生徒を評価したり、急に言われても対処できるかどうかを評価するためか?

 

 それって生徒側からの学校側への信頼度を低下させてまですることかねー?

 

 何かしらの意図はあったのかもしれないが、バカンスといって試験を受けさせられるのは生徒からすればだまし討ちでしかないわけで。

 

 

 

 真嶋の反応と職員室の雰囲気から、Aクラスはバカンスという体でなにかの試験が行われることを察してしまった。

 

 

 

「どう考えても運動系だよね……私、バカンスに参加するのやめようかな」

 

 

 一人の女子生徒がポツリとそう口にした。

 

 

「……えっ」

 

「あー……そうだよな、たしかに本当にバカンスかも怪しいし。豪華客船って乗ってみたかったんだけど」

 

「ま、待て! 豪華客船()本当だ」

 

 

 焦りすぎて致命的な失言をかましているがそれを指摘する人間はいなかった。

 

 

「ええ、そうですね。もしかしてとは思いましたが……裏切られた気分です」

 

「うむ、そうだな。なにをさせられるかわからないバカンスに行くより、いっそのことみんなで不参加にして遊びに行くのはどうだろうか? 昼間は思いっきり遊んで夜はバーベキューに花火だ」

 

「おっ、いいじゃん。たしかにそれの方が――」

 

 

 

「よし、わかった! 坂柳の参加とホームズの参加は認める。だから、不参加はなしだ。あとこの話を広めるのも――」

 

 

 

 話の方向性がヤバい方に向き始めたことを悟ったのか真嶋は大声を出した。

 他人の振りをしていた職員室に居た教員も慌てて説得に入ってきた。

 

 

 そりゃ、そうだろう。

 まさか、話がAクラスがバカンスに――いや、特別試験に不参加するかもしれないという話になったら色々と台無しだ。

 

 

 Aクラスがバカンスをボイコットしたら特別試験はどうなる?

 

 

 B、C、Dクラスだけで特別試験をやるのか。

 それはまあ無理だろう。

 

 あくまでAクラスはバカンスを休んだだけだ。

 それなのになぜか試験が行われ、三クラスがクラスポイントが加点されるなど一方的な不利益をAクラスは受けてしまったとなれば……色々と特別試験という制度が破綻してしまう。

 

 

 規模の大きな試験だ。

 準備も大変だっただろう、今更やめるというわけにもいかない。

 

 

 いっそ、試験のことを一年全員に周知してしまえばいい気もするがそれもいろいろと難しいのだろう。

 

 

 下手に脅すこともできず、真嶋たちができることは要求を受け入れてなんとかボイコットしないでくれ……と説得をすることしかできず、Aクラスの生徒はその様子をどこか冷めた目で見ていた。

 

 

 最終的には納得したという形で俺たち、Aクラス一行は職員室をあとにしたのだった。

 

 

―――

 

 

 職員室から去ったあと、俺たちはAクラスの教室に戻った。

 そして、その教壇に坂柳が立ち、朗々と語っている。

 

 

 

「さて、つまりはそういうことだった……というわけですね。学校側はバカンスと称してどうやら試験を行う予定だったようです」

 

 

 

「またかよ……」「なんで嘘つくの」「普通に楽しみにしていたのに……」

 

 

 

 坂柳の言葉に教室内にざわめきが広がる。

 教室内には不満の空気が満ちていた。

 

 

「真嶋先生って俺たちのこと馬鹿にしてるんじゃねーか」

 

「やめろ弥彦……。教員への言葉は聞かれればポイントを引かれるかもしれん」

 

 

 宥める葛城の言葉も硬い。

 というか宥める言葉が「教員に対して悪口を言ってはいけない」ではなく、「ポイントに影響が出るかもしれないから」な辺りで葛城の不満が出ている。

 

 

 葛城のやつ、「もしかしたらバカンスってのも嘘なんじゃないか」って話になったときも擁護していたからな……。

 

 

 色々と怪しい学校だがまさかそこまでは……と思いたかったのだろう。

 だが、その気持ちは裏切られた。

 

 

 今まで溜まっていた学校側への不信感が今回のことで吹き出した形だ。

 

 

 試験云々はどうでもいいのだ。

 やれと言われれば真面目にやる。

 

 

 だけど、もうちょっとこう……やりようがあるだろ! というのがみんなの率直な感想だろう。

 

 

 元々、高校一年生という年頃の少年少女だ。

 多感で大人という存在に反感を抱きやすい時期でもある。

 

 

 軽く見られているというか、馬鹿にされたような扱いを受けているとわかって苛立たない者はいないだろう。

 

 

 

「ここはこういう場所なのでしょう。我々は試される側で学校は私たちを試す側。教えられる側と教え導く側……という関係性ではなかったということです。我々、生徒はこれから何度もこうして試されて、その結果を評価される。それは仕方のないことです」

 

「ですが――」

 

「正直……ムカつきますよね?」

 

 

 

 教室内は坂柳の独演会となっていた。

 

 

 

「学校側は学校側なりのロジックでやっているんでしょうけど、皆さんも感じているんでしょう? 所詮、子供だから。こっちは教師で生徒だから。どうせ、逆らえない。私たちが用意した箱庭の中で、大人しくルールに従ってやっていればいい。――そんな風にこれからも私たちを上から目線で試して、終わったら「よくできました」とお褒めの言葉をくださるのでしょう」

 

 

「それはとても……ムカつきます」

 

 

「だからといってボイコットしたところでなにも得られるものはない。ええ、いいでしょう。彼らの言うとおり、箱庭の中で踊ってあげましょう。クラス間抗争もやってあげましょう。彼らの望み通りの戦いをして私たちAクラスは勝利します。ただし、ただの勝利ではありません」

 

 

「彼らの想定を超えた――そんな勝利を目指しましょう。私たちならきっとできるはずです。他のクラスになど負けません、当然勝ちます。そして、学校側のくだらない目論見にもいいようにされず。堂々たる勝利の果てに、私たちはAクラスはAクラスとして卒業します」

 

 

 

「私たちを見定めるには実力不足だったと認めさせるような……そんな結果を残して、私たちは勝ちます。それが私たちAクラスの戦いです。それを始めましょう」

 

 

 

 歓声が上がった。

 その日、坂柳はたしかにAクラスの影のリーダーとして総意のもとに認められた。

 

 

 

 

 

 ……いや、無茶苦茶ディスってるけどお前の親父の学校では? まあ、突っ込むの野暮だけどさ。大体予定通りなのが強いなこの邪悪なるロリ。

 

 

 

 俺は熱狂が発生しているAクラスの教室の中でそんなことを考えていた。

 ぶっちゃけ、ここまでの展開――全て、坂柳の想定通りである。

 

 

 単純に俺と坂柳を参加させるだけならちょいと脅せば通りそうなものを、わざわざ色々と呼びつけて職員室に特攻を仕掛けたのは見ての通り、バカンスの嘘を暴いてあわてふためく教員の様子をみせることで彼らの信用を落とすことだったのだ。

 

 

 今回の一件で三つ、坂柳は得た。

 

 一つはバカンスに参加する権利。

 一つは試験が行われるという確証。

 そして、最後の一つが学校というクラスの敵を作ることで団結力を手に入れたこと。

 

 

 Aクラスに弱点があるとすればそれはAクラス……トップのクラスであるという傲りだ。

 クラス間の抗争もこれまで上手く対応できてきたこととポイントに余裕もあるのもあって、どうしても真剣度は下がってしまう。

 

 

 それこそ、ケツに火がつかなければ上が居ないのにモチベーションを保つということは難しい。

 

 

 なら、そのモチベーションを作るための敵を用意すれば良いのだ。

 大人への反感、これまでの不満もあいまってAクラスは学校を敵として認識した。

 

 

 集団をまとめるのに共通の敵を作るというのはありふれた手法だ。

 だが、とはいえ学校というのはやはり権力もあり強い相手だ容易に相手できる存在ではない。

 

 

 だからこそ、坂柳有栖だ。

 実績もある過激派筆頭ともいえる彼女の力がAクラスには求められる。

 

 

 実質的な表のリーダーが葛城。

 そして、影のリーダーが坂柳。

 

 

 それこそが自然な形であると……Aクラスはそうなるだろう。

 

 

 

 

 坂柳の思うままに。

 綾小路を迎え撃つために。

 

 

 

 

 そのための一手が今日の出来事だ。

 その熱狂の中、俺とご主人はというと――

 

 

 

 

「ふふふっ、これで心おきなく一緒に行けるわねホームズ♪」

 

 

 嬉しいからって頬を緩めすぎじゃないご主人? 今、みんなそれどころじゃないからって油断しすぎというか……いや、まあみんな薄々気づいているけど。

 

 

「さーて、水着を買いに行かないとね」

 

 

 やったー、ご主人の水着姿だー! うおーん、生きてて良かった……。 

 

 

「坂柳に一応、恩ができちゃったわね」

 

 

 最悪忍び込む気満々だったけど、堂々と乗り込めるなら越したことはないからな……。

 

 

「うーん、Xを見つけてからあいつのテンションおかしいわね。ヤバくなったら頼んだわよホームズ」

 

 

 任せておけご主人。ああ、でもしかしご主人の水着姿……見れるのは嬉しいけど、他の男子生徒の目にも触れてしまう。ああっ、悩ましい。しかし、ご主人と一緒に豪華客船……今から楽しみだなー。

 

 

 騒ぐAクラスの教室の中でのほほんとご主人と一緒に夏の計画をたてるのだった。

 

 

 





坂柳「楽しくなってきた!」
Aクラス「学校はクソ」「大人はクソ」「いいんかコレ」「なんだろう風が吹いている」「まあ、ホームズがいるから問題ないだろう」「それはそう」「うおー!」


須藤の裁判後のクラスポイント

「Aクラス」:1080
「Bクラス」:663
「Cクラス」:452
「Dクラス」:87
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