よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄とグラドル活動をサポートする話(いんたーるーど)

 

 

 

「――というわけでよろしいでしょうか?」

 

「……はい。それでいいので帰ってください」

 

 

 ご機嫌よう。

 我輩はホームズである。

 

 さて、今の現状を説明しよう。

 俺とご主人、そして坂柳と佐倉は職員室に居る。

 

 そして、もう見慣れた感じで坂柳が教員に対していい顔をして脅迫――もとい交渉を行っていた。

 

 幸いと言っていいのかわからないが今回のターゲットは真嶋ではなく、茶柱だ。

 真嶋は職員室に入ってきた俺たちの姿を見てビクッとしていたが、今回のターゲットが茶柱であることを察するとホッとした顔をしてそそくさと職員室から退避していった。

 茶柱はその様子を恨めしげに見ていたが、そんなことは関係ないと言わんばかりに話しかけてきた坂柳の舌鋒によってシワシワのピカ○ュウみたいになっていた。

 

 

 何故こんなことになったのか説明すると始まりは佐倉の相談からだった。

 

 

 この学校、基本的に外と連絡が取れないようになっているのだが佐倉は何故かコメント返信しなければ投稿するのはオッケーらしく、それでグラドルとしての活動を続けているわけなのだが、グラドルとしての雫の存在を知っているものは決して多くない。

 雫が高育の生徒であると知っているのは学校側を除けば、俺とご主人、坂柳と鬼頭――あとはDクラスの山内くらいだ。

 

 山内に関しては知らないうちにバレていた。

 原作でもそうだったし、まあそういうこともあるだろう。

 

 山内は佐倉が雫だと知るとアプローチをかけようとしたらしいんだが、その時は鬼頭がどうにかしたらしい。

 ストーカー事件があったあとだからか、変なアプローチには敏感になっていた佐倉がすぐに相談してきてくれたのがよかった。

 

 鬼頭の顔面のメンチの強さと恐ろしさに山内は震え上がって逃走した。

 鬼頭は風貌が完全に「暴」の存在そのものだから、鬼頭の「にらみつける」を受けてそれでも佐倉にアプローチできるなら俺はちょっと山内を見直す。

 

 

 まあ、山内のことはどうでもいい。

 ようするに雫としての佐倉を知る人間は少ないので、相談できる相手なんて限られていると言うことだ。

 

 

 それでまあ雫としての活動に関して相談があったわけだが、端的にまとめるならもう少し積極的に活動をしてみたいということだった。

 

 これはどういうことかというと、たしかに自撮りでの活動などで雫としての活動は続けてはいたものの、それらはあくまで惰性というか……趣味の範囲に留まっていた。

 将来的にそれで喰っていこうとプロになろうと考えているわけでもなく、なんとなく続けている――そんな意識が強かったらしい。

 

 

 ただ、鬼頭に自撮りで使う衣服の相談をしたり、ご主人たちにも相談に乗ってもらって続けた結果、意識が変わったとかなんとか。

 

 

 もっと自分を試してみたい、そんな気分になったらしい。

 そこで活動を拡大してみたいのだがどうしたらいいのだろうという相談だ。

 

 今までのようにブログに自撮りを投稿していくだけではやはり趣味の範囲で終わってしまう、鬼頭とかも付き合わせている反面申し訳ないという気持ちも強いんだろう。

 

 最初は軽い手伝いのつもりだったらしいけど、最近はどっちかというと鬼頭の方がはまっているから気にすることはないと思うんだけどな。

 この間はクラスの女子から女性物のファッション雑誌を借りて読んでいたし……。

 

 因みにAクラス内だと鬼頭がファッションデザイナーを目指していることは結構知られているのであまり問題視はされない。

 他の男子が女性物のファッション雑誌を熟読していたらあれだが、鬼頭は普通に真剣に読み込んでいるからな。

 

 顔は怖いが信頼できる男子枠というのが鬼頭という存在だ。

 

 そして、そんな鬼頭からすると佐倉というのは素材力の塊だ。

 普段の野暮な格好と猫背の姿勢をやめるだけで、グラドルとして活動した容姿の暴力で人目を引く力がある。

 

 ファッションデザイナーを目指す鬼頭にとって、そんな素材の魅力をどこまで引き出せるか……自分の才能を測れるいい機会というわけだ。

 今のところはちょっとした衣服の改造や服飾の助言だけだが、夏休み中には衣服を丸ごと用意して撮ってみたいとぼやいていた。

 

 

 

 そんな鬼頭のやる気に刺激された部分もあるのだろう、そんな相談を受けた坂柳はちょっと考え込むように俯くと――

 

 

 

「では、ちょっと今から職員室へ向かいましょうか。許可をもぎ取りにいきましょう」

 

 

 

 そこら辺に散歩に行きましょうの感覚で職員室襲撃を敢行した。

 

 

 坂柳とご主人が職員室の中に入ってきた途端に緊張が走る職員室の空気。

 いったい、俺達がいったいなにをしたっていうんだ。

 

 

 えっ、結構やらかして問題児扱い? 坂柳はともかくご主人は……いや、ご主人も結構やってたな。ストーカーの件はほぼ偶然だけど俺の100万ポイントを含めて700万ポイントほど学校からむしり取ってるからな……。まあまあ、マークされて当然だった。

 

 

 まあ、そこら辺は別にいいや。

 それで坂柳は佐倉のためにどんな交渉を茶柱にしたのかということだ。

 

 

 端的にいえば活動範囲の拡大だな。

 自撮りをブログに投稿するだけではなく、y○utube的なサービスでも配信させろってことだな。

 

 

 これには当然、向こうは難色を示した。

 良いか悪いかは別として外部と基本的に遮断されているのが高育の制度だ、高育内からの情報発信は認められないと。

 

 一方でコメントの返信をしなければ、自撮りアップはいいと許していたのも学校側だと指摘したのが坂柳だ。

 

 その理屈で言うなら最初から許可するべきではなかったというのはその通りの話だ。

 それに単に遊びや何かで始めたいわけではなく、高育に来る前からやっていた雫として活動の一環としてなら認める余地があるのではないか、学生が率先して行っている成長の機会を制限することが教育機関がするべきことかと坂柳はあの手この手で弁舌を回した。

 

 

 坂柳のやつ、自分より社会的立場の上の人間をやりこめる喜びを知りやがって……。

 

 

 そんなこんなで最終的に投稿する前に学校側が検閲することで許可するという話になった。

 

 要するに内部のことを外部に知られるのが学校側として恐れているらしい。

 思い当たる節が多すぎるが、ともかくそこさえクリアできれば押し通すことは不可能ではなかった。

 

 あくまで雫としての実績がある佐倉だからこそ、その活動の一環に限っての許可のため一般生徒にはまず無理だろうが。

 

「で、収益が発生した場合なんですけど……これらの評価はどうなりますか? 活動による実績として捉えるべきだと思いますが」

 

「……そこら辺は協議の結果次第だが佐倉へプライベートポイントとして渡すことになるだろう。登録者数次第ではクラスポイントにも加算は認められるかもしれない。……それでいいのか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 茶柱の暗に塩を送ることになっているがいいのか、という質問に対し坂柳は答えた。

 

 ぶっちゃけ今回の交渉、Aクラスには何のメリットもない。

 どちらかというDクラスには棚からぼた餅レベルでメリットになるかもしれない話だが、坂柳はそんなことを気にする女ではない。

 

 綾小路へのパスになるなら構わないし、坂柳のやつは佐倉のことをわりと気に入っているというのが大きい。

 

「坂柳さん……」

 

 何故かと言えば佐倉は坂柳のことを格好いい女の子だと認識しているからだ。

 いや、正確にいうとストーカーの玉を潰したご主人も含めて……だが。

 

 自分だと解決できなかったであろうストーカー相手に一方的に潰したご主人、そして学校相手に一歩も引かずに弁舌を回す坂柳というのは引っ込み思案の佐倉からすると大人の憧れの女の子的に見えているらしい。

 

 

 ご主人はわかる。クールで格好いい系の女の子だからな、でも坂柳に憧れるのはやめようぜ。こいつの性根と腸はドブ色に腐っているに決まってるんだ。

 

 

「ホームズ? 次はありませんよ?」

 

「さ、坂柳? どうした?」

 

「いえ、なんでも……ともかく許可が貰えて何より、これで失礼します」

 

 

―――

 

 

 そんなこんなで佐倉は動画撮影をすることになった。

 写真撮影ならともかく、動画撮影はみんな初めての試みだったがストーカーのおかげで手に入れた軍資金100万があるし、とにかく挑戦しようぜという話になった。

 

 

 佐倉――ではなく、グラドル雫バズり計画である。

 

 

 動画を撮るにあたって高育内のことがわかるような場所さえ気をつけてくれれば、敷地内の場所なら撮影の許可をもらった。

 

 どうにも外部向きの広報として使う腹づもりがあるようだ。

 在学中は雫が高育の学生であることを公に認めるつもりない(なんせ場合によっては退学になる制度だし)ようだが、仮に無事に卒業できるならそれまで行ってきた活動を認めてグラドルが活動しながら通っていたということでアピールしたいという欲があるらしい。

 

 そのための優遇措置みたいなものだ。

 なんというか強かではあるが、それである程度自由に敷地内の場所で撮影ができるなら安い物だ。

 

 

 とりあえず、風景が良さそうな場所とかロケーションを探して鬼頭も呼んで敷地内を歩き回ってチェックを入れた。

 

 

 そして、次に服装だな。

 これに関してはなかなか決まらなかった。

 

 

 坂柳はゴスロリ系を推すし、ご主人はスタイリッシュ系だ。

 佐倉は素材がいいので大抵の物はなんとでもなる。

 

 

 だからこそ、洋服店に行ったときは二人の着せ替え人形となっていた。

 自分の服装に頭を悩ませるのも好きだが、他人を自分の好みで着飾るのも好きというのが年頃の女の子というやつだ。

 

 

 細かな服飾に至るまで喧々囂々の議論が行われた。

 正直、女子って凄いしそれについていける鬼頭もすげぇ……。

 

 

 最終的に最初なんだからあまり奇をてらわずに清楚なワンピース姿でいいのでは、という結論に至ったのは四時間ほど経過したあとだった。

 

 

 着せ替え人形になっていた佐倉の目が死んでいたぞ、ご主人たち。

 そのあとは撮影機材と編集機材を手に入れて撮影計画を立てた。

 

 

 あまり物事に積極的ではないご主人が楽しそうに考え込んでいた。

 坂柳と同じく、佐倉のことをご主人は気に入っている節がある。

 

 

 カメラのことを教えてもらったことを切っ掛けに個人的に仲良くなっているというのもあるのだろうが、基本的に神室真澄という女性は情が深い女の子なのだ。

 ツンツンしているが身内に入るととても甘いというかなんというか、そういうところがご主人にはあるからな。

 

 

 そういったこともあってやる気だ。

 

 

「ふーむ、こういったことに関わったことは初めてですけど。なるほど奥が深い」

 

「やってみないとわからないことが多いわね」

 

「やはり、佐倉の魅力を引き出すにはもうちょっと……。いや、肌を晒す必要はない。そんな手に頼らずとも――引き立てるのがこちらの役目」

 

「うーん、いつもはカメラマンさんに言われるがままにやってたけど。結構、撮られる側も技術が……」

 

 

 というか全員やる気だ。

 

 

 基本、自分が関わるならそれなり以上の結果じゃないと気に入らない坂柳、負けず嫌いなご主人、夢に関わる話で自分の仕事にプロ意識を持っている鬼頭、触発される形で真剣に打ち込む佐倉。

 

 

 これが青春ってやつか。

 若人が一つの目標に向かって協力し合って向かう……良きかな良きかな。

 

 

 俺も手伝ってやりたいところだが、さすがにこういったことはな。影ながら応援するしか――

 

 

「ふーむ、やはりあれですね。動画制作の経験がある人間がいないのが痛いです。それなりに試行錯誤はするつもりですが、経験を重ねないことにはわからないことが多いですね」

 

「とはいえ、そこで尻込みしてたらいつまでも完成しなくない?」

 

「それもそうですね。夏休み期間中なら時間も空くでしょうから、そこでせめてある程度下地はつけたいところ。だから、初の動画を投稿したいところですが……あまりクオリティが低すぎるのを出してしまうのも、今後の人気にも関わるかもしれませんし――なにかいい感じに誤魔化せる存在が……あっ」

 

 

 坂柳は俺に視線をやりながらそんな言葉を漏らした。

 そして、鬼頭や神室に視線を飛ばし二人とも少し考えて頷いた。

 

 

 ど、どういうこと?

 

 

 

―――

 

 

 画面の中で白いワンピース姿の佐倉――いや、雫が歩いている。

 いつもの猫背の姿勢と俯き加減が影もなく、眼鏡を外し、整った容貌を晒しながら歩く姿は完全無敵な美少女だ。

 

 露出の多い格好ではない。

 清楚さを前面に押し出した服装だが、驚くほどに似合っている。

 

 動画編集技術も拙いため、本当に余分なところだけカットしただけの素材の味だけで勝負するそれほど長くもない雫の動画。

 

 白い少女である雫は高育の敷地の中をいろいろと歩いている様子が動画で映っている。

 そして、そんな白い少女である雫の隣には対照的な黒い猫――そう、俺がいた。

 

 

 これが坂柳が思いついた作戦である。

 多少の経験のなさによる粗を俺という存在を放り込むことで気づかせないという魂胆だ。

 

 

 猫というのはそれ自体がコンテンツの一つだからな。

 その証拠に猫に関する動画なんてこの世には溢れ返っている。

 

 

 溢れ返っていると言うことはそれだけ需要があるということだ。

 無論、ただ猫を動画内に出すだけなら効果は低いだろうが……そこは一般的なモブ猫の場合だ。

 

 

 俺は何を隠そうご主人の猫! ……前世の記憶があるとかそういう特徴もあるが……今はご主人の猫であることがアイデンティティーのスーパー猫である。

 

 

 それ故に演技とか撮影のためにいい感じで配慮することだって可能だ。

 所詮、本能のままでしか動けない駄猫とは違うのだ駄猫とは。

 

 

 そんなこんなで完成した雫の一作目の動画は投稿してからかなりの好評だ。

 

 

 やはり雫自体の容姿がいいし、それを引き立てる俺の演技も冴えている。相乗効果というやつだな。あくまで主役は雫、俺はその引き立て役というスタンスを守って甘えたり、はしゃいだりしたものだ。

 

 

 美少女と猫、やはりこの組み合わせは正義だ。

 

 

 想定していた以上にいい滑り出しの評価に坂柳はにっこり、鬼頭も手直ししたワンピースのことを評価されてにっこり、佐倉も恥ずかしそうにしていたが今回のことでどこか自信になったみたいでにっこり。

 

 

 

 そして、ご主人は―――

 

 

 

「……むー」

 

「にゃー?」

 

「むーーーー!」

 

 

 とてもご立腹だった。

 雫の動画のコメント欄、雫と俺が一緒に映っているシーンを称賛するコメントを見ながら俺を抱きしめている。

 

 

「……ホームズは私のなのに」

 

 

 そう、ちょっとやり過ぎたのだ。

 撮影のために頑張っていい感じに振る舞ったのだが、それが以心伝心の通じ合った仲……みたいな捉えられ方をされたのだ。

 

 

 いや、それ自体は別にいいんだが……そこから「雫のペット説」とか「俺の雫を好きすぎるだろ」とか「雫は猫をメロメロにする」などなど。

 

 そこら辺のコメントになってご主人の眉間にしわが寄った。

 そして、確保されて抱きかかえられるとそのままベッドでゴロゴロ不貞腐れモードだ。

 

 

 

「ホームズは私の……そうだよね?」

 

「にゃー!」

 

 

 もちろんだぜ、ご主人!

 

 

「んっ。……はあ、私って面倒な女ね。嫉妬深い嫌な女」

 

 

 嫉妬されていることにむしろドキドキですぜご主人! ご主人ー! ご主人が一番だー! うぉおおおおっ! 届け、俺の愛!!

 

 

「ふふっ、ありがと。でも、動画内だと佐倉とイチャイチャしてたわよね」

 

 

 しょうがないじゃん! 撮影なんだしさー!

 

 

「抱っこされたり、指とか顔を舐めたり……同じこと全部やってくれたら気分がなおるかも」

 

 

 マジかよ、俺にとってはただのご褒美じゃん。

 

 

「もうすぐ船に乗って二週間は離れるわけだし、今日は家で過ごそっか。暑いしね」

 

 

 いろいろと忙しかったからな、楽しかったけど。そして、家に居るってことはずっとご主人と一緒……ふふふっ、機嫌を治してもらうために媚を売るぜー! 売りまくるぜー!

 

 

「どうしよっかなー♪」

 

 

 

 ちょっと嫉妬モードに入ったご主人は――とにかく、最高でした。

 また雫の動画に出たいなと思った。

 

 

 

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