よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と洞窟の拠点で過ごす話

 

 

 

 お邪魔しまーす!! 調子どう?

 

 

 俺は船から脱出し、そのままの勢いでご主人のもとへと向かい洞窟へとたどり着いた。

 

 

「おや、いらっしゃいホームズ」

 

「遅かったわね、ホームズ。あら、濡れてる」

 

「海を泳いできたんでしょうね。なにか拭くものを……」

 

 

 当たり前のようにむかえてくれる坂柳とご主人。

 それなりに時間が経ってしまったので既にAクラスはサバイバルに動き出しているようだ、洞窟の中で作業している生徒は少ない。

 

 恐らく周囲の探索に一部でているのだろう。

 それ以外にも食料を集める班を作って送り出したか。

 

 そんなことを考えながら、なにか拭けるものを探そうとする坂柳を俺は制止した。

 

 あっ、へーきへーきお構いなく。これぐらいは余裕だって。サバイバルなんだから物資は大事にしないと。

 

 

「そうですか? まあ、ホームズが大丈夫だというのなら大丈夫なんでしょう」

 

 

 それにしても洞窟の拠点を取れたのかー。原作でもここが一番いい立地だって言ってたからなー。

 

 

 感慨深そうに俺は周囲を見渡した。

 自然な洞窟ではなく、人工的に作ったものであることが窺える。

 

 

 天然にできた洞窟は不意の落盤などが気になるが……これならば問題はないだろう。

 

 

「うん、ここはいい感じね。取れて良かったわ」

 

「展望デッキで見てとれた島の全景から、恐らくここが最もいい場所なのだろうとは推測できていましたからね。どうせなら一番いい場所をおさえるのは当然のことです」

 

 ふふんっと無い胸を張る坂柳。

 

 だが、ご主人が少し疲れた様子で洞窟の中で休んでいるあたり、洞窟までの道のりは宣言したとおりにご主人が坂柳を背負ってきたのだろう。

 

 この様子だとやはりご主人は坂柳係になったようだ。

 

 まあ、食料班とかそういった体力を使う班に任命されるよりかはあまり動くこともないだろうし、楽そうで良かった。

 基本は拠点である洞窟周辺が活動範囲になるだろうからな。

 

 探索班や食料班も大事だが、拠点内作業もそれなりに大変だろうが見た感じ別にご主人たちだけではない。

 女子が多めだがみんな動きがいい、テキパキしているというかなんというか。

 

「やはり、試験が始まる前からキチンとした心構えができていたことが大きいですね。騙し討ちで試験が始まって早々に気持ちを切り替えられる人間は多くはありません」

 

「まあ、そうよね」

 

「それに加え我々Aクラスは準備を進めてきました。体力作りに試験の内容を予測しての討論、無人島試験そのものをぴしゃりと当てるのは無理でしたが……」

 

「ホームズが推したサバイバル知識が役に立っている感じね」

 

 

 一通り、調べて共有したもんなー

 

 

「あくまで経験の伴っていない知識でしかありませんが、他のクラスと違い知識を習得して挑むことができている……。それだけ、有利な状況で試験に挑むことができているという自負がモチベーションとなっているのですよ」

 

 

 モチベーションと高い団結力、それらが合わさってこの動きの良さということか。準備を重ねてきたのは無駄にはならなかったと言うことだな。

 

 

「ええ、もちろんですとも。だからこそ、いち早く私たちは方針を決め動き出すことに成功しています。それで――」

 

 

 

 

 

 

 

「――いや、ちょっと待とう! 姫さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 俺と坂柳、そしてご主人と三人の会話に口を挟んでくる存在が一人……その名は橋本。

 どうやら橋本も待機班というか拠点班の一人のだったようだ。

 

「なんですか橋本くん。ホームズと話している最中なのですが……」

 

「いや、個人的には猫相手に普通に会話をしているのもどうかと思うがそれは今更だから置いておくとして……。なんでホームズがここに居るのかって疑問に思わないのか!? なんか当たり前のように現れて入ってきたけどさ!」

 

「なんで……って、普通に私に会いに来てくれたに決まってるじゃない」

 

「いや、決まってるじゃないって普通にこう……船の中に捕まってた気がするんだけど!?」

 

「そのぐらい脱出するに決まってるじゃない。ホームズよ?」

 

 

 そうだそうだー!! ご主人あるところこのホームズあり!

 

 

「私たちは輪廻転生する前からの仲なんだから」

 

「意味がわかんねえよ真澄ちゃん!?」

 

「というかホームズに一週間も会えないとかホームズニウムが足りなくなって私が酷いことになるわよ? それを慮ってきてくれたのね」

 

 

 すげぇ、俺と似たようなことを言ってる……。これが以心伝心、心が通じ合うってやつか!

 

 

「飼い主を求めてやってきた、それなら……いや、納得できねーよ。保護されていたはずなのにそれから逃れて、船の中から脱出して、島に上陸してここにたどり着く――いやいや、ただの猫にできるわけねーって!」

 

「でも、ここにこうして居るじゃないですか」

 

「でも、ケージとかに入れられるもんだろ? それから抜け出して海を泳いでっておかしいだろ! 猫なのに泳げるの……」

 

 

 橋本……お前にはわからないだろうな。人間……いや、もう人間じゃないけど。そこはおいておくとして――人間、本気になればできないことって案外ないんだ。具体的に言うと保健所に捕まって去勢(男の玉取り)させられそうになったときとか。尊厳を守るために死に物狂いで抜け出すし、保健所の連中から逃れるために川へとワンチャンダイブぐらいするよねって。

 

 

 普通に死にかけたがそのおかげか俺はその時に泳ぎをマスターすることができたのだ。

 恐ろしき保健所の連中との戦いは激しかった。

 

 

「ホームズはただの猫じゃない……。何故ならホームズだからね」

 

 

 ちょっと遠い目で普通にあの日々のことを思い出す俺の傍らで、ふんすという顔をするご主人。

 クールキャラは何処へ行ったのかと言わんばかりの態度だが……滅茶苦茶可愛い。

 

 なんだかんだ上手く合流できるか心配の部分もあったのだろう、だがこうして俺がやってきたことでその不安は解消されため有頂天になっている感じだ。

 

 

 はー、可愛い。どや顔ご主人は無形文化財として残すべきだよね。絶対そうだよ、こんなの日本の宝……いや、世界の宝といって差し支えないはずだ。

 

 

 どや顔ご主人に抱きかかえられながら、俺は心底そう思った。

 

「いやいや、理由になってないって言うか。ホームズが賢いのは知ってるけど、猫は猫というか」

 

「猫である前にホームズなのですよ、橋本くん」

 

「ホームズである前に猫は猫だろ、姫さん!?」

 

「しかし、橋本くん。皆さんは特に気にしていないようですが?」

 

「えっ?」

 

 

 坂柳が向けた視線の先には他に拠点係となった女子生徒たちだ。

 彼女たちは何やら作業をしながらこちらへ視線を向けていた。

 

 

 おっ、みんな元気ー? 体調には気をつけて一週間頑張ろうな!

 

 

「にゃーん」

 

「きゃー、ホームズだー!」「神室さんが気になって来ちゃったんだね。わかるとも」「いや、なんだかんだで坂柳さんを心配してきたというシチュエーションで。これは萌える!」「やめなよ」

 

 

 普通に歓迎している様子の女子生徒たちの姿に橋本は困惑を隠せない。

 

 

「もうちょっとこう……あるだろ? なんでここに居るんだよ的な……。真澄ちゃん、全然気にしないし」

 

「まあ、ホームズだし」「だってホームズだし?」「っていうか橋本くんって……もしかして、気もないくせに神室さんのこと真澄ちゃん呼びしてるからホームズからの印象、悪くなってるの気づいてないのかな? そういう機微には詳しそうな感じなのに……もしかして高校生デビュータイプの――」「やめなよ」

 

 なんかサラッと橋本の秘密、勘づかれたような気がしていたがたぶん気のせいだろう。

 俺の聴覚では聞こえたけど、幸い橋本には届かなかったらしい。

 

 

 橋本は自身と周囲に認識のギャップに困惑を隠しきれない様子だ。

 

 

「ええぇ……。俺が……悪いのか?」

 

 たぶん、まあ常識的観点においてお前は間違えてはないと思うぞ橋本。……なんかそんなことを言うと俺が非常識な存在みたいだな。俺は極めて常識を持った猫のはずだが……。

 

 

 とぼとぼと洞窟の隅へと向かって作業を始めた橋本。

 その背中には哀愁が漂っていた。

 

 

「では、話を戻すとしましょうか」

 

 

 特に気にせず話を進める坂柳。

 さすがだぜ、この邪ロリ。

 

 

「さて、ホームズがこうして来てくれた以上、今回の試験に関する方針をお話ししておかないといけません」

 

「ようするにどう勝ちに向かうかって話よね?」

 

「ええ、その通りです真澄さん。我々Aクラスは当然勝利を目指してこの試験に挑んでいるのですから。それでホームズ、我々Aクラスはこの試験にどんな方針で挑むと考えていますか?」

 

 

 その様子だともう動き出している感じか。

 

 

「当然です。この試験、恐らく初動で有利不利が変わりますからね。そのための手も打ちました」

 

「それってあれよね、たしか――」

 

「おっと真澄さん。そこまででお願いします」

 

 ご主人が何かを言おうとしたのを坂柳はそう言って制した。

 どうやら、俺が居ない間にこの試験を突破するための手をこの邪悪なるロリは打ったらしい。

 

 

 いや、いくらなんでも早すぎない!?

 

 

「速度こそ命の手でしたので……。ふふっ、私がどんな手を打ったのか知りたいですか?」

 

「にゃーご」

 

「ふふふ、知りたそうな顔をしていますね。この策は本当に限られた人物にしか喋っていません。敵を騙すにはまず味方から……なんて言葉もありますからね。あっ、でもちゃんと葛城くんには伝えていますよ? 事後報告になりましたが彼もこの策の有用性は理解を示してくれました」

 

「実のところ、私も内容自体は知らないのよね」

 

「知る人が少ないほどいいですからね」

 

 

 む、むむむっ! 坂柳の様子だとかなり自信のある作戦らしい。そして、その作戦は葛城も納得するほど効果のある作戦だと……。

 

 くっ、凄い知りたい! あー、最初から参加できなかったのが悔やまれるぜ!

 

 

「さて、Aクラスの試験突破への方針はスポットを重視する形で行うつもりです。これがAクラス全体に示している方針……。早速、スポットを取りに行っているところです」

 

 ヒントを与えるように坂柳は俺に説明を行った。

 

 なるほど、妙に数が少ないと思ったが周囲の探索班や食料を手に入れるための食料班、それに加えてスポットを回る班も居ないからか。

 スポット自体はリーダーがいればいいが、見られることを考えるとデコイは必要となるからそこそこの人数を割かないといけない。

 

 

 だから、この洞窟の拠点には人が少ないのか。

 それに関しては納得ができた。

 

 

 だが、問題はスポットを取ってポイントをゲットする作戦についてだ。

 これ自体はなんというかルール的に正攻法っぽく見えるが、実際のところこれは罠だ。

 

 

 スポットを取れればたしかにポイントは手に入るが、リーダーが動く必要があるためどうしてもリーダーの存在が露見してしまうリスクが高まる。

 リーダー当てに成功されてしまうとスポットで貯めたポイントも無効になってしまうので、ハッキリ言ってかなりリスクの高い行動なのだ。

 

 

 実際、原作ではリーダー当てで殴り合った結果、どのクラスもスポット占有ポイントを得ることはできなかった。

 正確に言えばリーダー交代したD以外は……だけど。

 

 

 まあ、それはともかくとしてだ。

 

 スポットを多く取れば取るほど、露見するリスクが高まり、リーダーがバレてしまうとそれまでの苦労が水の泡。

 

 ついでに当てられたことで-50CPさせられると考えるとリスクとリターンが釣り合うかは微妙な行為なのだ。

 

 実際、安定志向の原作Bクラスはリスクの高いスポットで稼ぐより、団結してどれほど最初の300CPを残せるかに重きを置いていたし。

 

 原作だとスポット狙いをしたのは原作Aクラスぐらいだ。

 とはいえ、これもCクラスの物資の融通があって一週間問題なく耐えることができそうだから取りに行った感じだ。

 

 Cクラスの援助がなかったら、生活のために人材を費やす必要があったため、たぶん取りに行こうとはしなかったんじゃないかな。

 

 

 それぐらい、スポット占有して稼ぐという手段はかなりリスクが高い行為だ。

 その程度のこと坂柳が気づいていないわけもなく、ならなぜその方針で進めることにしたのか――それには理由があるはずだ。

 

 

 そう、恐らくはリーダー当てを回避できる策。

 それを用意したから強気にスポットを狙えるのだ。

 

 

 リーダー当てを回避できるならスポットは取れるだけ取っておいた方がいいに決まっている。

 

 

「私はこの試験……いえ、これからの試験もそうですが。他のクラスの戦いであり、同時に学校側との戦いとも思っています。具体的に言うと――稼ぐ気満々です

 

「にゃーお」

 

 

 好戦的な坂柳の目を見て、俺は考え込んだ。

 まあ、坂柳の性格からして守りに入るようなタイプではないことはよく知っている。

 

 言葉通り、存分にこの試験でCPをもぎ取る気なのだろう。

 問題は……それをどうやって為すつもりなのか。

 

 

 そのための手を坂柳はもう打ったと言っているのだ。

 俺にはその方法が皆目見当もつかない。

 

 

「教えて欲しいですかー?」

 

「にゃっ……ごー!」

 

 悩む俺の様子を眺め、坂柳は実に楽しそうにニマニマ、あるいはニヤニヤとした表情を浮かべている。

 

 

 ちょっと漂白されたかなー、と思っていたが実に元気な坂柳らしくて安心するぜ畜生! いや、畜生は俺の方なんだけど……っ!

 

 いくら頭を働かせても思いつかないものは思いつかない。

 そもそも、それほど頭がいいわけではないのだ。

 

 

 だから、仕方なく……仕方なーく、俺は坂柳の方へ向き直って鳴いた。

 

 

「ふふふっ、教えて欲しそうですねー♪ ですが――」

 

 

 

 どやっ!

 

 

 

「残念! 教えませーん♪」

 

 このメスガキがよぉ!!

 

 

 

 

 圧倒的なメスガキスマイルを決めてそう言い切った坂柳。

 咄嗟に飛びつきたくなるが、ここで実力行使に及んだら俺の負けだと思い何とか耐えることに成功する。

 

 

「すごい、坂柳さん……なんてメスガキ力!」「わ、わからせてぇ!」「やめなよ」

 

 

 俺にマウントが取れるのが嬉しいのか坂柳の顔は実に楽しそうだ。

 それはそれは楽しそうでとてもムカつく。

 

 

「まあ、どうしてもというのであれば……教えてあげなくもないですけど」

 

「ふしゃー!」

 

「ほー? じゃあ、頑張って当ててみてくださいねー? あっ、真澄さん。ヒントはあげちゃダメですからね」

 

「いや、私も答えを知らないし。でも、ヒント云々はあのことよね」

 

「ええ、それについて知っている人は口止めをします。葛城くんに聞いても無駄ですからねー?」

 

 

 上等だ! そんなズルしなくても答えなんて見抜いてやる!

 

 

「というか私はホームズの味方だから当然教えるけど――」

 

 

 待ってくれ、ご主人! これは俺と坂柳の戦い……手助けは不要だ!

 

「ふっ、上等です。答え合わせをするまでにせいぜい答えを見つけられるように祈っていますよ」

 

「凄い坂柳さん、ご機嫌だ。耳があったらピコピコ動いてそうなぐらいご機嫌だ」「うーん、これこれ。やっぱり、この寸劇があるとAクラスって感じするよね」「やっぱホームズ大好きじゃん、坂柳さん。坂柳×ホームズ……キテる」「やめなよ」

 

 

 こうして俺の戦いが始まった。

 邪悪なるロリの無人島試験、そこでなにが起こるのか……それを解明するための戦いが。

 

 




<人物紹介>

●ホームズ

→野良猫時代に前世を含めて一番の危機に瀕した悲しき過去を持つただの猫である。

●坂柳有栖
→一週間のアウトドア生活にワクワクが隠せない邪悪ロリ系マスコット。ホームズも合流できたのでニコニコ度が上昇し、メスガキ力が非常に高まっている女である。

●神室真澄
→原作でも美術部なのに異様に評価の高い運動能力を持つフィジカルエリートな女。洞窟まで坂柳を普通に背負ってたどり着いた。ホームズも合流したのでホッと一息でだいたい無敵な気分のご主人さまである。

●橋本正義
→今のAクラスの「うぉおおおっ」な一致団結に性格的にいまいち乗り切れていない性根蝙蝠タイプな男。故にAクラス内でホームズとの意思疎通能力が唯一のDランクだったりする。

●同人誌ちゃん
→生ものの掛け算同人誌を書いていたことがバレ、高育に自ら収監されにきた悲しき過去をもつ一般モブAクラス生徒。坂柳×ホームズが最近のトレンド。

●「やめなよ」ちゃん
→どんなときも「やめなよ」を貫く一般モブAクラス生徒。友情は大事にするタイプ。

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