よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と離れた場所で試験の考察をする話

 

 

 

 現在、俺は一人――いや、一匹で島の中を歩き回っていた。

 

 

 先ほどまでは洞窟の拠点にいたのだが、ちょっとしたアクシデントというかなんというか。

 むしろ、予想通りの出来事が起こったというか。

 

 

『ほ、ホームズ……なんでここに?! と、とにかく船に――って、あっこら!』

 

『真嶋先生、ホームズのことについて少々質問が。キチンと預けていたはずなのにここに来てしまっていることに関して……これはおかしなことでは? ちゃんと預かっていたはずでは?』

 

『待て、神室。今はそんな場合じゃなくて……また船に』

 

『戻したところで逃がしてしまった事実は消えませんよね? 真澄さんは学校側に信頼を寄せて預けたというのに逃がしてしまうなんて……』

 

『さ、坂柳……。待て、まずはホームズを捕まえて……。その……協力をだな』

 

『ホームズは自然豊かなこの島をたいそう気に入っている様子で、私の言うことも聞かない状態で』

 

『大人しく座ってこっちを見ているが??』

 

『まあ、そんなこんなで捕まえるなら学校側でご自由にお願いします。私たちは試験中ですし』

 

『試験期間中の監督責任は預けられた側である学校側にありますからねー。さて、それはそれとして逃がしてしまったことについて、その責任をですね……できれば誠意という形で見せていただきたいなと』

 

『待て待て待て! 星之宮! とりあえず、ホームズを捕まえて――って逃げ出した!?』

 

『あっ、ホームズ。できればスポットの位置を探してきてくださいねー。さて、それで支払いに関することなんですが――』

 

 

 いやー、流れるような脅迫的な値段交渉だったな! 最初からそのつもりだったのもあるけど、ご主人も坂柳も慣れすぎなんよ。学校側を叩けばコインが出てくるサンドバッグぐらいにしか思っていないのかもしれないね。

 

 

 そんなこんなで俺は一度、洞窟の拠点から離れることにしたのだ。

 星之宮を含めた学校側の関係者が俺を捕まえようと追っかけてきたが、ちょっと遊んでやったらすぐにヘトヘトになってしまった。

 

 

 酒ばっか飲んでるんじゃなくて、もうちょっと体力を鍛えた方がいいぜ! もう若くないんだから怠惰に過ごしているとあとで泣きを見ることに……まあ、その辺はいいか。

 

 

 ともかく、俺は追っ手も振り切って無人島の中を散策しているというわけだ。

 坂柳に頼まれたこともあるし、スポット探しをやりつつほとぼりが冷めるのを待つ算段だ。

 

 

 その間に俺は改めて考える。

 坂柳がこの試験に勝つために、どんな手段に出たのかを推察するために。

 

 

 うーん、やはりわからない。……こういうときはまず整理からだな。原作ではどんな展開になったんだっけ?

 

 

 まずはAクラスの原作での戦略を思い起こす。

 

 

 AクラスはCクラスと同盟というか協力関係を築いたんだっけか? たしか物資を譲る代わりにプライベートポイントの支払い契約を結んだ。それで最初の300CP……いや、坂柳が欠席だったから-30されて、開始は270CPだったか。ともかくそれを丸々残して、さらにスポット占有で稼ぐ算段だった。

 

 

 だが、それは結局のところ失敗に終わった。

 リーダー当てに正解されてスポット占有で稼いだポイントは消え、さらには-100CPされてDクラスのリーダー当てに失敗。

 

 最終的に-150CPも引かれてしまって散々な目に……といった感じだ。

 

 

 Aクラスの失敗はCクラスとの契約をもうちょっと詰めるべきだったところだ。せめて、Cクラスをもうちょっと強気で契約で縛っておけばな……。まあ、原作だと邪ロリがマジで邪ロリだから功績を焦ってたからなんだろうけど。

 

 

 信用ならない相手であるのは明白なCクラスに対して、警戒と対策が甘かったのが敗因だろう。

 Dクラスにバレたことに関してはあれはタイミングがご都合主義的過ぎるというので仕方ないというか。

 

 

 偶々見られてるのはどうしようもないし、勝手に身内がやらかすのはな……。戸塚のやらかしなのは間違いないが、タイミングが綾小路にとって都合が良すぎるというか……。まあ、作劇的に負ける必要があったし。

 

 

 諸々を考えると甘さこそあったものの、方針としてはそれほど悪くはなかったと思う。

 きっちりと守っていればリーダー当てなんて成功する見込みの方が少ないのだ、Cクラスをキチンと契約で縛って戸塚がやらかさなかったら普通に勝てる見込みの方が高かっただろう。

 

 

 そういやこっちでは戸塚はやらかしてないんだよなー。食料班の方に居たからキーカードは持ってないはずだし。まあ、原作と違って坂柳派閥と葛城派閥でわかれているわけでもないからな……。

 

 

 クラス一丸となっている今のAクラスはそれなりに人材も豊富なので、原作のように葛城の右腕というポジションには戸塚はなっていない。

 

 ちょいちょい、調子に乗ると空気読めない発言をするところはあるがそれ以外は普通の一般Aクラス生徒って感じだ。

 原作とは違って派閥争いがないからかもしれない、思うに原作で空回ってやらかしてたのは葛城を助けようという意識が強すぎたせいだと思う。

 

 それがないので特段、焦っている様子もなく伸び伸びしているというか。

 

 まあ、戸塚のことはいいのだ。

 問題は原作との相違点として恐らく綾小路に初日から見られてリーダーバレてるって展開は恐らくないということだ。

 

 

 葛城は手堅くいくタイプなので周囲を警戒しつつ、無理をせずにスポットの占有は行ったはずだ。

 いくら綾小路でもガッツリ固められていたら、偶々タイミング良く近くに居たとしてもリーダーを見抜くのは難しいだろう。

 

 

 あと原作の違いがあるとすれば……Cクラスって本当に原作の通りにAクラスに契約を持ちかけてくるのかね? 今のところ来てなさそうだし、するならもう持ちかけてきていないと意味がない気がするが……。

 

 

 Cクラスの原作での戦略を思い起こす。

 

 Cクラスがやった戦略はかなり特殊だ。

 あえて最初に与えられた300CPを使い込んで0CPになって、身軽になることでいろいろとやるという作戦。

 ポイントが0より下がない、という点を利用した策だ。

 

 

 物資をAクラスに譲渡する代わりにプライベートポイントを毎月もらう契約を結び、カモフラージュとして豪遊するところを他クラスにアピールしつつクラスみんなのリフレッシュを行ってリタイア、あとは0ポイントだから減点が痛くないからギリギリの行為であるスパイを送り込んでリーダーを探し当てて、リーダー当てでCPを得るという戦略……だっけか。

 

 

 龍園らしいトリッキーな作戦だ。

 0ポイント以下、つまりマイナスになることはないというルールをうまく使った戦略……と言えなくもないが。

 

 

 実情としては0ポイント作戦をするしかなかった、というのが正しいんだろうな。暴力と恐怖で統制を保っているCクラスなんて、Dクラスと大して差がない纏まりしかないからな。一週間の集団生活なんて普通に無理、どこかで破綻するのは目に見えているからな。

 

 

 だからこそ、龍園はトリッキーな0ポイント作戦に出たのだろう。

 本命であるプライベートポイントの支払い契約さえ結んでしまえば、最低限のこの試験での目的は果たせている。

 

 あとは部下のリフレッシュをしつつ、更なる利益を狙えるなら狙うというスタンスだ。

 

 

 スパイ作戦なんて雑も雑な手段だからな。あんなの一之瀬と平田じゃなきゃ、内に入れるなんて判断はしないって。暴力禁止のペナルティはたしかに自クラスのことは明示されてないとはいえ、殴られたことを学校側にアピールすればワンチャン通っちまうんじゃないか? 基本、被害者が言わないと動かない学校側とはいえ怪我という形で証拠が残っているなら、訴えられたら動かないわけにもいかないだろうし。

 

 

 証拠のないいじめとかならばともかく、傷害罪は親告罪ではないので、「伊吹や金田が暴行を受けた」と学校側に訴えられたら……まあ、普通に通りそうな気もする。

 高育ならそれでも動かない可能性はあるが、それでも相当に危ない手段でスパイとして送り込もうとしている。

 

 

 そんなリスクを背負ってうまく送り込むことに成功したとしても、リーダーを見抜くのは至難の業。当然、向こうだって警戒するし伊吹も金田もそういったことが得意という人材でもないからな。

 

 

 ハッキリ言ってスパイを送り込んでリーダーを見抜くなんて手段は雑すぎる手段だ。

 うまくいく可能性の方が圧倒的に低い作戦。

 

 

 やはり龍園の目的としてはプライベートポイントの支払い契約という利確と配下のメンタル改善が主目的だったように思える。

 

 

 となるとやっぱりこの世界でも0ポイント作戦自体は実行しそうな気がするんだよなぁ。

 

 

 だが、原作と違ってAクラスへの接触は未だにない。

 契約を上手く進めたいのならできるだけ早く接触するべきだ、なにせもうCPを消費していたら物資を譲ることでCPの消費を抑えられるというアピールポイントの効果が薄くなってしまうからだ。

 

 

 そうなると……やはり、Bクラスか? ぶっちゃけ、あの取引を持ちかけるならBクラス相手の方が的確だよな。AクラスはそもそもCPで優位を確保しているんだから、焦らずにリードを守ることに終始すればいい。原作の葛城はクラスの内部分裂があったから契約してしまったけど、本来はAクラスに持ちかけても上手く契約できる見込みは低い内容だった。

 

 

 Aクラスの実情を見抜いてその隙を上手くついた原作の龍園がその点は上手かったとみるべきだろう。

 

 だが、この世界のAクラスは内部分裂は起こしていないし、むしろ光のリーダと邪悪のリーダーが合わさり結束力は強化されている。

 取引を持ちかけるだけ無駄だと判断してもおかしくない。

 

 そして、その代わりに別の標的を選ぶとしたらそれはBクラスしかない。

 BクラスとDクラスの二択なら、まあ選ぶのはBクラスしかない。

 

 Dクラスはそもそもの支払い能力に疑義が出てくるし、そもそも統率が上手くいっていないのでクラス間での契約交渉がスムーズにいくかも未知数だ。

 その点、いろいろと諍いはあったがリーダーである一之瀬さえ納得させることができるなら契約できるBクラスを取引の相手に選ぶのは必然だろう。

 

 

 とはいえ、Bクラスは受けるか……? 微妙なところだな。物資の融通の代わりのプライベートポイントの支払い契約、契約すると一定のプライベートポイントを毎月支払うことになるのは長期的な観点からするとキツいものはあるが……メリットはたしかにあるからな。

 

 

 原作でのBクラスの戦略を思い起こす。

 

 原作でのBクラスはこの試験であまり大きな行動を起こしていない。

 堅実な方針を好むBクラスはスポットを占有してより大きな利益を狙う代わりにリスクを負うよりも、最初に得られた300CPの消耗をどれだけ抑えられるかに労力を費やした。

 

 手堅い手ではある。

 スポットを占有しなければキーカードを隠しておくだけでリーダーがまずバレることはない。

 

 だから、リーダー当てでの-50CPを気にする必要はなくなるし、リーダー当てを狙わなければ外したときの-50CPもない。

 

 どれだけ協力してポイントを節約してサバイバルを乗り越えられるか。

 それだけを気にしていればいい、というのは精神的にも楽な戦略だからな。

 

 

 ただ、この手法で得られるCPっていいとこどれだけ頑張っても200CPは超えないんだよな。実際、原作だとBクラスは物資に110CP使ったはずだし。そこからリーダーを当てられて-50CP……まあ、この際そこら辺は無視するとして。

 

 

 どれだけ削ってもそれでもサバイバルには100CPちょっとは使う必要がある。

 

 

 110CPって別にそれほど抜きん出て抑えられた成果ってほどでもないんだよなー。なんだかんだでトラブル続きだったDクラスも125CP分で済ませている。……いや、軽井沢たちが勝手に使ったのを除けばほぼ差がない数値だ。

 

 

 基本、騙し討ちで心構えもなく一週間の無人島集団生活をさせられるのだ。

 それこそ、あらかじめ予測してクラスとして対策していた今のAクラスならともかく、他の三クラスのクラス単位のサバイバル能力にそれほどの差があるとは思えない。

 

 

 最初に与えられた300CP、それをいかに消費なく過ごすか――というだけのBクラスの戦略は楽かもしれないが、受動的というか勝利を掴みにいけるような戦略ではない。

 

 

 だが、龍園が取引を持ちかけてきたらどうだろうか。

 Cクラスとの間には確執はあったが、須藤の一件の時にBクラスの出していた要望書のおかげでCクラスのみCPが引かれるという結果になったわけで。

 

 

 直接的ではないにしろ、それでやり返したということでBクラス側が水に流す可能性はある。毎月の支払いのレートと契約によるBクラスへの攻撃の縛り、その点が擦り合わせることができるなら……Bクラス的にも交渉の余地がある取引にはなるか。

 

 

 BクラスとCクラスの動向、やはり探っておくべきだろう。

 

 

 そして、最後に思い起こすのはDクラスの原作の戦略。

 まあ、Dクラスというか綾小路の戦略だが……。

 

 

 Dクラスはトラブル続きでろくにクラス単位での戦略方針すら決めることができず、とりあえずサバイバル生活している感じだった。

 最終的にリーダー当てに成功して100CPを当てるが、これも綾小路個人の頑張りだしクラスとしては……うん。

 

 

 綾小路の戦略で一番の特徴だったのはリーダー交代策だろう。

 堀北の体調不良を利用して、リーダーを変えることで誤答させてAとCからそれぞれ50CPを削った。

 

 

 ついでに僅かだけどスポット占有のポイントも唯一ゲットしている。

 作品の主人公らしい一発逆転した正しく秘策だったわけだ。

 

 

 こうして思い返すとそれぞれのクラスには色んな戦略があったわけだ。

 Dクラスはあんまだけど……まあ、それはともかく。

 

 

 つらつらと原作の内容を思い出しながら、試験の状況を整理していくも――

 

 

 

 うーん、やっぱりわからない。坂柳がどんな作戦をしたのかが!

 

 

 

 ――という結論に至った。

 

 

 一番可能性があるのはやっぱりリーダー交代策か? これならまずリーダーを当てられる可能性がないから、強気でスポット占有を狙っていける。坂柳なら思いついてもおかしくないが……既に手を打った、という言葉と矛盾するんだよなー。リーダー交代策なら「策がある」と言うのが正しい。だって、まだ実行してないわけだし。

 

 それにリーダー交代策には欠点もある。その性質上、必ずリタイアする必要があるから-30CPが発生すること。そして、あくまで原作で効果的に発揮できたのは相手が誤答をしてくれたからだということだな。リーダー当ては未回答でも問題はないから、リーダー当てをするように仕向けたとしてもやるかどうかは……結局のところ相手次第になるというところだ。

 

 

 誰もリーダー当てをしてこなければ単に-30CPが発生しただけになってしまう。

 

 

 邪悪なるロリが実行するにはちょっと消極的な戦略な気もする。というかこの戦略でいくなら、いっそリーダー一人でスポットを回らせた方が効率的だ。スポット占有を助けるメンバーまで一緒に送り出す必要もないんだよな……。

 

 

 諸々のことを考えれば、やはり綾小路がやったようなリーダー交代策ではないと俺は結論づけた。

 

 

 結論づけたのはいいが――そこから、先の考えが進まない。

 

 

「にゃー」

 

 

 坂柳がどんな戦略を練っているのかまるでわからない。

 そのことにため息をつき、とてとてと自然の中を歩いていると――

 

 

 

 不意に全身の毛が逆立った。

 一瞬で臨戦態勢に入り、周囲を見渡した。

 

 

 

「ふしゃー!!」

 

 

 誰だ! 出てこい! 居るのはわかっているんだぞ!

 

 

 そんな俺の内心の言葉に応えるように木々の後ろから、黒い影がこちらに飛び出してきた。

 

 

 

 

「ふははははは! バレてしまってはしょうがない。気づかれるつもりはなかったが……私を察知した褒美として、この姿を晒す栄誉を与えようじゃないか。――キャスパリーグ!!」

 

 うわぁあああああっ! へ、変態だぁあああああっ!!

 

 

 

 

 現れたのは何故か上半身裸の男――高円寺六助だった。

 

 

 

 




<人物紹介>

●ホームズ
→島を散策中に野生の高円寺に出会ってしまった悲しき猫。真嶋先生には申し訳ないことしてしまったという気持ちはある。だけど、ご主人最優先主義なので……。学校に帰ったらアニマルセラピーをしてやろうとは思っている。

●真嶋 智也
→生徒からカツアゲに遭う悲しき担任教師。今回に関してはだいたいホームズが悪いが、それはそれとしてミスはミスなので金銭で解決する羽目になる。弱みを見つけたら徹底的につくのが高育メソッドなので仕方ないね。坂柳と神室に苦手意識を持ち始めている。

●神室真澄
→実は結構、高育のことは好き。だってお小遣いをくれるから……。とりあえず、搾り取ったプライベートポイントでなにを買おうか計画を立てるのに忙しい。高育内だとペット用品がないため、高育を通して外部から購入して貰わないといけないので手間がかかるのが難点だなーっと思っている。

●坂柳有栖
→ホームズを捕らえようと右往左往している大人たちを見てホッコリしている邪悪なるロリ。正義と大義を背負って対価を要求するの楽しい。

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