よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄と一緒にスパイが撃退されるところを見る話

 

 

「にゃー」

 

「どうしたのホームズ? お眠なの?」

 

「にゃむにゃむ」

 

「普段は夜遅くまで外を出歩いても朝は元気なのに……」

 

 

 大体、高円寺と綾小路が悪いよー。なんなのあいつら……夜というフィールドはこっちのテリトリーのはずなんですけどね。超反応とか先読みで対応してくるし、どんどん精度は上がる一方だしさー。これだから天才ってやつは……

 

 

「お疲れみたいねー、よしよし」

 

 

 疲れた様子の俺を労るように身体を撫でてくれるご主人。

 その優しさは五臓六腑に染み渡り、新たな活力となってみるみるうちに俺の体力バーとかスタミナバーが回復していくのを感じたが……それはそれとしてご主人、無防備になるのはいただけない。

 

 

 大体バレてるとはいえ、普段クールなご主人がそんなことすると被害者が出てくるというか……。

 

 

「神室さん……いいよね」「いい……」「坂柳さんを背負うって言ったときは痺れるほど格好よかったのに、ホームズ相手だとほにゃっとなっている神室さん」「いい……」

 

 

 ほら、ダメだったじゃん! 女子はいいが、男子は許さんからな! ご主人を「いい……」ってするのは仕方ないことだけど! 女神を美しいと思うのは仕方ないことだけど! それはそれとして――って、そういえばもう例の天才っ娘はどうしたん?

 

 

「ああ、坂柳? 坂柳ならさっき葛城に呼ばれて……」

 

「にゃー?」

 

「どうやら食料班がCクラスの人を見つけたみたい。ただ、見つけたってだけじゃなくてどうにも様子が変らしくて……」

 

 

 あー……Cクラス、スパイを送りつけてきたやん。結局、Cクラスってばこっちに話を持ちかけてこなかったし、やっぱBクラスと組んだ感じなんかねー? それでAクラスに。……誰が来たんだろ?

 

 

「えっと、誰だっけ? 名前は知らないけどCクラスの男子で頭がこう……マッシュルームみたいな? あと眼鏡をかけてて――」

 

「恐らくは金田という生徒です、師匠」

 

 

 ご主人の言葉を遮るように現れたのは山村だ。

 なかなかに腕を上げているようでしゃべり出すまでご主人は気づいていなかったのか、ビクッと身体を震わせた。

 

 

 あー、金田かー。なるほど、そういえば坂柳の命でCクラスのこと探ってたし、顔は知ってるのか。それにしても金田だねー。

 

 

「龍園君の方針に逆らった結果、暴行を受けて追放された……と主張しています。怪我に関してはたしかに負っているようで、判断を仰ぐために食料班は彼を連れてきたみたいですね」

 

「金田くんって言うんだー」「可哀想だね」「うん、可哀想」「やめなよ」

 

 

 山村の言葉に大まかな流れが判明した。

 その結果、周囲では同情の声が呟かれた。

 

 

 

 あっ、ただ勘違いをしないで欲しい。

 これは別に龍園に殴られたなんて可哀想――という意味ではない。

 

 

 

「それで連れてこられて、葛城が坂柳を呼んでって感じか……可哀想に

 

「にゃーご?」

 

「うん、ホームズの言うとおり――凄いイイ笑顔で向かっていったよ」

 

 

 

 どう考えても坂柳の玩具になるだろうな……という未来が全員わかってしまったから、金田は可哀想だよねっと言い合っているのだ。

 

 

 

 とりあえず……向かうか。

 

 

「そうね、ホームズ行きましょうか」

 

 

 

―――

 

 

 俺とご主人が向かうと思い描いていたとおりの光景がそこにはあった。

 

 

 

「なんと可哀想なことでしょう。特別試験に真剣に向かい合おうとしたばかりに暴行をされて追い出されるなんて、そんな酷いことを……。正義と大義をこよなく愛するこの坂柳有栖はこのような非道許すことはできません。直ちに訴えましょう!」

 

「あの、ちょっ――」

 

「安心してください我々Aクラスはあなたの味方ですよ、金田くん。全力で支援を行います。暴行の事実がある以上、これは既に傷害事件です。暴行行為は学校側も厳しく禁止している行為、厳正な処罰を求めましょう? えっ、試験のルールには同クラス内の暴行に関しては明示されていない? 仮に適応されても失格とプライベートポイントの没収のみ? なにを言っているんですかあなたは。試験のルール以前の問題ですよ、人に怪我をさせてはいけないなんてこと!」

 

「ほ、報復が怖いので――」

 

「退学にしてしまえば報復なんて怖くありませんよ。そもそもCクラスは須藤くんの事件で退学を要求していたんですから、金田くんが被害者の暴行事件も加害者の退学を求めるのは当然のことですよ。更に言えば他クラス相手にやるならまだ暴行事件だけで済むかもしれませんが、同クラス内でやるなら報復を恐れて逆らえないことをいいことにした行為――つまりはいじめ問題でもあります! 暴行+いじめ! これは退学処分の公算は高いですよ、金田くん!」

 

「え、えっと――」

 

「なんならその他のCクラスの人たちにも処分を広げましょう! いじめは見て見ぬ振りをした人もいじめに加担していると言うでしょう? しかも、今回のは怪我を負うほどの暴行事件。これを知りながら学校側に報告していなかったとなるとこれは組織的な隠蔽があったと考えざるを得ませんね! 厳正なる処罰が必要となるでしょう! 加害者である龍園くんと共犯者をまとめて退学に追い込めば平穏なスクールライフがあなたを待っていますよ、金田くん! まあ、その代わりCクラスはさっぱりするかもしれませんがこれも正義と大義のため、我々Aクラスは如何なる助力も惜しみません! 須藤くんの事件もリーダーである龍園くんの指示によるものと聞きますし、BクラスやDクラスも訴えるときには協力してくれるのではないのでしょうか? それは実にいい考えだと思いませんか金田く――金田くん? 金田くん!

 

 

 

 

 

 

 金 田 悟 は 逃 げ 出 し た !!

 

 

 

 

 

「……これは酷いわね」

 

「にゃー」

 

 

 大体予想通りの光景ではあったが、俺とご主人はそう言い合った。

 

 

「あー……坂柳?」

 

「なんでしょう葛城くん♪」

 

「金田が逃げてしまったんだが」

 

「ええ、本当に残念です。私たちAクラスは総力を上げて彼を救うために動くつもりでしたのに――一体なぜ?

 

「姫さん……」

 

 

 そんなニッコニッコな顔をしてなにを言っているんだこの邪ロリは……。みんななんとも言えない顔になっているじゃないか!

 

 

 坂柳以外にもその場には葛城や橋本、他複数のAクラス生徒がいたがその誰もなんともいえない表情になっている。

 まあ、アレを見たらそんな顔になるのも仕方ない。

 

 とはいえ、誰も脱兎の如く逃げ出した金田を追わなかったな……。

 

「あの様子だとやっぱりスパイだったみたいね」

 

「おや、真澄さん。そのようです、実に残念なことです。くっ、Cクラスで行われているいじめを解決して救ってあげようと考えていたのに……裏切られた気持ちです。とても心が傷つきました」

 

「顔が笑顔過ぎるのよね……ホームズ」

 

 

 ほい、来た。ドSを発揮しすぎだ! うぉおおおっ! カリスマブレイクだぁああ!

 

 

「むっ、ホームズ!? って、にょわっ!? このっ! また私の頭の上に……にゃん!」

 

 

 ご主人の指示に従ってとりあえず坂柳のカリスマブレイク作業に没頭する俺、抵抗しようとしているが無駄である。

 

 

 それにしても原作と違って大義と正義を振りかざすようになった坂柳のたちの悪さが向上しているな……。

 

 

「それでやっぱりあれって……」

 

「ああ、Cクラスの策略だろうな。坂柳の推測から察するに……」

 

 

 俺達の戦いをいつもの光景としてナチュラルに流すご主人と葛城、そしてその他のAクラス生徒。

 推測について知らされていた幹部勢はともかく、その他のAクラス生徒も基本的に頭がいい奴ばかりなので、当然のように金田がスパイとして入り込もうとしているのでは無いかと警戒はしていたようだ。

 

 

 いきなり去った彼のことを気にした素振りもない。

 

 

 まあ、坂柳のあれを受けてわざわざ逃げたあたり確定としか言いようがないからなー。

 

 

「やっぱり狙いはリーダーか?」

 

「でしょうね。それからAクラス内部の情報も探りたかったのでしょう」

 

 

 坂柳の言葉に俺はなるほどと頷いた。

 原作と違いいろいろと一致団結している今のAクラスは、クラス単位でクラス間の抗争と対学校に備えている。

 

 そのため情報統制は完璧だ。

 別に外部のクラスの生徒との交流を制限しているわけではないが、みんなそこら辺は線を引いて付き合っているようで基本的に深い情報は探られないようになっている。

 

 反面、Aクラスの情報集めに関しては俺と山村、あとは手が広い橋本のおかげで十分すぎるほどに集まっているという状況だ。

 

 龍園からすれば機会があればAクラスの情報を探りたいと考えてもおかしくはないだろう。

 彼からすれば最終的に倒す相手、敵のことをろくに知ることもせずに勝てると思い込むほど龍園は愚かな人間ではない。

 

 

 とはいえ。

 

 

「急にスパイやれって言われても困るでしょ、金田だっけ? メガネのやつ」

 

「それはそうだよな。しかも、姫さんに目をつけられて……可哀想なやつ」

 

「なんですか、橋本くん。可哀想なのは彼の言葉を信じて助けてあげようとしたのに裏切られた私では――って、ひゃんっ?! 首を舐めないでください、ホームズ!!」

 

「ツヤツヤした顔でよくいうわ。それにしても……逃がしてよかったの?」

 

「というと?」

 

「神室が言いたいこともわかる。要するに金田に言っていたこと……つまりは龍園を訴えるという作戦、それは別にしてもよかったのではないかということだ」

 

 

 ほーん? 葛城も坂柳に染まったか……そういうことを言うなんて。まあ、多少坂柳をキメるのはいいことだ。少量の坂柳は健康にいいからな、多量に摂取すると「ダーティーな手段が取れるやつ」から「ダーティーな手段しか取れないやつ」に劣化してしまうから用法用量には気をつける必要があるけど。

 

 

「そうですね、あのまま金田くんを捕まえて先生のところに突き出して龍園くんを訴えるという方法もたしかにありました。金田くんがなにを言おうが関係ありません、傷害罪は親告罪ではありませんから」

 

「なら、それで龍園の首を取った方が楽だったんじゃないか姫さん?」

 

「まあ、たしかにそれで決着がつくのならよかったとは思いますけど」

 

「けど?」

 

「恐らく、訴えることができたとしても退学まで持って行けるかどうかは微妙なところでしたから」

 

「赤点取っただけで簡単に退学させるのに、暴行で故意に怪我を負わせても退学にするのは難しいってどういうこと?」

 

「それは龍園くんの動きが恐らく学校側の意向通りの動きだからです」

 

 ご主人の疑問に坂柳は答えた。

 

 

「龍園のやっていることが学校側の意向通り……だと?」

 

「ええ、葛城くんも知っているでしょう? どうにもCクラスにはいわゆる不良と呼ばれていた人間が多いと。そうですよね、橋本くん」

 

「ああ、そうだぜ。調べた限りではそこそこ有名なのも何人か。そして、その筆頭が龍園なんだが」

 

「学生である橋本くんでさえ、調べあげることができた。なら、学校側が入学前に知らなかったと言うことはあり得ないでしょう。かといってCクラスのテストでの成績を見る限り、素行の悪さを帳消しにできるほど優秀な学力を持っていたというわけでもない。……運動部が多く、身体能力が高い生徒は多いようですがそれも全国大会に簡単に行けるほど高い――というわけでもない」

 

「なるほど、特筆する学力や運動能力が評価されて入学できたわけじゃない。評価された点があるとすれば……」

 

「アウトロー気質、とでも言うのでしょうかね。ルールを破ることに抵抗がない人材がCクラスには多くいるように見えます。クラスとしての特色とでもいえばいいのでしょうか」

 

 坂柳の言葉に俺はなるほどと頷いた。

 たしかに龍園とその配下だけじゃ無く、全体的な気質としてCクラスにはそんな雰囲気がある。

 

 いくら脅されていたからと言っても、命令されてBクラスとスムーズに諍いを起こしすぎだし。

 

「その筆頭が龍園ってことね。Cクラスはそういう才能を見込まれて集めたってこと?」

 

「想像ですけどね。皆さん、よくご存じのように学校側はいわゆるダーティーな手段というものを事実上認め、むしろ推奨するかのように環境を整備しています」

 

「カメラの配置とか、過去問入手でテスト突破とかその辺よね。正攻法じゃないやり方を認めているというか」

 

「ええ、そんな学校側がわざわざ不良と呼ばれる人間を多く集めたのがCクラスです。恐らく、Cクラスの役割というのはゲームをかき乱す存在。そんな役割を求められて集められた」

 

「たしかにBクラスはなんというか大人しいというか普通というか……そんな感じでDクラスはそれどころじゃないし。積極的にクラス間の抗争を起こしているのはCクラスだよな」

 

「この試験でもどうやら積極的に動いているようですし。つまりは求められている役割そのものを果たしているといえます。そんなCクラスのリーダーである龍園くんに対して厳罰が下るかは……」

 

「だが、傷害だぞ?」

 

「普通ならそうですが、ここは普通ではありませんので」

 

「甘い裁定が下る可能性がある……と?」

 

「信じられませんか?」

 

 坂柳の言葉に葛城は少しの間、目を瞑って考え込んだが最終的には首を横に振った。

 

 

「……いや、可能性はあるな。さすがに行き過ぎた行為に関しては動くと思いたいが、それがどのラインかは――信用できん」

 

 

 うーん、あの葛城にそこまで言わせる高育よ……。

 

 

「そういうことです。訴えても甘い裁定が下る可能性がある……なら、むしろ無言の圧力をかけていた方がよいと判断しました」

 

 

 下手に甘い裁定で罰を確定するより、いざとなったら一時的な協調して暴行行為とかを訴えてもいいんだぞアピールをした方が抑止力になるって考えか……。金田は今回のことを龍園に報告するだろうしな。下手に裁定が確定してラインが明確化すると龍園はそれを悪用して、さらに積極的に動きかねない怖さがあるからな。

 

 

「なるほどね……」

 

「全く暴力なんて野蛮です、穏便に話し合うことの大切を知ってほしいものですね。私のように」

 

 

 どや顔で坂柳という邪悪なるロリがなんか言った。

 

 

 

話し合い(脅迫)」「話し合い(逃げ道を潰した後で押し通す)」「話し合い(マウンティング)」「やめなよ」

 

 

 

 外野からボロクソに言われているが坂柳は一切ブレない、心のタフな女である。

 

 

「さて、ではこちらからもアクションを起こすとしましょう」

 

「というと?」

 

 

 

 

「Cクラスも動き始めているようですから――その敵情視察に行きましょう」

 

 

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→天才二人に負けた。いや、負けてない。捕まってないから引き分けだから……でも、目的も果たせなかった。次はデビルニャットハリケーンも解禁してやると心に決めている。邪悪なるロリの浄化作業に勤しんでいるお疲れ猫

●坂柳有栖
→Cクラスのスパイの嘘に騙され、とても心が傷ついた(自称)可哀想な女の子。助けようとしたのに全部が嘘だったなんて許せねぇ、許せねぇよCクラス!真澄カーが最近のお気に入り。ホームズといるときはいい感じにIQが下がっているのではないかと噂されている。

●葛城康平
→腕時計の機械で健康状態をチェックしているとはなんだったのか。金田がスルーされている時点でやっぱダメだなと学校評価を更に下げた。知らなかったなら問題だし、知っててスルーならもうどうしようもない。禁止って口で言ってるだけじゃねーか。

●金田悟
→女の子の心を傷つけた人間の屑。Aクラスにスパイにいく役割になった時点で詰んでいた。殴られたのに何の成果も得ることができなかったし役割的にもバカンスを楽しむこともできなかった。可哀想だね。
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