よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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【宥める神室】

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畜生系主人公が神室真澄に悩みを聞いて貰う話(いんたーるーど) ★

 

 

 

 一之瀬帆波。

 彼女がこちらの世界でもBクラスに配属されていたことに俺は疑問を持たなかった。

 

 

 普通にそういうものだと思っていたからだ。

 職員室で教員の会話に聞き耳を立てていた時に、原作同様に一之瀬が中学生時代に一時不登校になっていた過去も聞いた。

 

 

 あれさえなければAクラスだっただろう、という評価を聞いて「やっぱり原作通りなんだなー」と思ったものだ。

 不登校になった理由はもちろん、彼女がやってしまった過ち――万引きに起因するものだ。

 

 

 万引きをやった後、どうにかその事件をおさめることは出来たが一之瀬にとってはやはりショックな出来事だったようで不登校になってしまう……原作通りならそう言った理由のはずだ。

 

 

 それ以外の点においては誰がどう見てもAクラス相当な彼女が、Bクラス行きになった理由はただ一度の過ちである万引きから端を発する。

 

 

 では、もしその万引きがなかったならば?

 

 

 高育に入学できた一之瀬帆波はAクラスに配属されていたはずだ。

 だが、現実として彼女はBクラスであり、Aクラスから外された理由――不登校の事実も存在する。

 

 

 これは一体どういうことだろうか。

 万引きがなければ彼女が不登校になる理由もない、そのはずだ。

 

 

 だが、事実として一之瀬は一時期不登校になっていたらしい。

 

 

 

 ……うーむ!! その理由がさっぱりわからないな!!

 

 

 

「うん。これは嘘をついている顔ね」

 

 と俺を膝に乗せたご主人が一言。

 

 

「見てください佐倉さん。あれが実は思い当たることがあるのに、全力で見ないふりをする畜生の姿です。あと、そこの解答は間違えていますよ?」

 

「わっ、本当だ。ありがとうございます」

 

 離れた場所では佐倉の課題を見ている坂柳がそんなヤジを飛ばしてきた。

 

 

 う、うるせーやい! ま、まあ? ちょっと思い当たる節がないわけではない……。いや、でもまさか……。あくまで「かもしれない」という話でだな。

 

 

 その思い当たる節――というのは俺と一之瀬の別れについてだ。

 彼女と一時の間、関係を持っていたが結局のところその後の俺は野良を貫いていた。

 

 

 つまりは別れがあったということ。

 

 

 切っ掛けは元気を取り戻した一之瀬と妹ちゃんと共に過労で倒れたお母さんのお見舞いに行こうという話になったときのことだ。

 紹介したいからと言われ、俺も一緒についていって目的地である病院に近づいたときにそれは起こった。

 

 

 横断歩道を渡っていた一之瀬姉妹目掛けて、一台の車が突っ込んできたのだ。

 

 

 ハッキリさせておきたいのはあの時の姉妹は完全に交通ルールを守っていた。

 ちゃんと歩行者用の信号が青になってから渡っていた。

 

 そこに信号を無視して突っ込んできたのだ。

 反応できたのは俺だけで咄嗟に先回りして、飛びかかって彼女たちを押しとどめなければ二人は引かれていただろう。

 

 俺の突然の行動に驚いた彼女たちは足を止め、そのおかげで車に轢かれることはなかった。

 

 まあ、接触しなかったとはいえすぐ前を車が通過したため、驚いて転倒して少し怪我をしていたが……怪我自体は軽いものだった。

 彼女たちは助かったのだ。

 

 

 

 ――その代わり、俺は轢かれたけど。

 

 

 

 いやー、あの時はヤバかった。俺が普通の猫なら轢死体となっていただろうなー。回避するのは無理だと判断して、咄嗟に車に目掛けて跳躍してボンネットの上に着地できたから直撃だけは回避できたけど。

 

 

 その後のブレーキーのおかげで発生した慣性のおかげで俺は吹っ飛んだ。

 さすがの俺も九死に一生のシチュエーションに動揺を隠しきれなかったせいで吹っ飛んだ後の着地に失敗して、足をやってしまった。

 

 

 着地に失敗して足を怪我するなんて猫失格である。

 命があっただけ儲けものかもしれないが……。

 

 

 ともあれ、あわや交通事故を猫一匹の怪我だけで切り抜けられたのは幸運だ。

 命に関わるほどの大怪我ではないし、「いやー、よかった」と俺個人はのほほんと事態を受け止めていたのだが――一之瀬姉妹の動揺っぷりは凄まじいものがあった。

 

 

 急いで動物病院に連れて行かれることになった俺は運ばれる最中に考えてしまったのだ。

 

 

 これ、別れるいい機会じゃないかと。

 

 

 ……いや、わかっている。怪我してまで守ってくれた猫が急に消えたら、姉妹的に困るだろうってのは重々承知の上だ。

 

 ただ、それを加味しても妹ちゃんの誕生日プレゼントも買えない懐事情の一之瀬家に、治療費を支払わせるのはなんというかさすがに気が咎める。ああいうのって結構高いんだよな。そんなのを野良猫のために使うぐらいなら、妹ちゃんに誕生日プレゼントを買ってあげてどうぞ。

 

 後はあれだな。あの時はやっぱり飼い猫になる気はなくて、野良で生き続ける気満々だったからな。居心地は良かったけどどこかで別れる切っ掛けを探っていたタイミングだったし……。

 

 

 野良猫として生きてきたが、生きていればそれなりに多くの出会いと別れを経験している。

 農家をやっている俺を「大三郎」と呼ぶ老婆も去年死んだし、俺を「クロ」と呼んで街で見かけると寄ってくる小学生の男の子は親の仕事の都合で沖縄に引っ越した。

 

 

 頻繁に会うやつも居れば色々な事情でもう何をしているかもわからないやつなんて大勢居る。

 

 

 別れというのは悲しいがそれはきっとそれだけで終わるものではないはずだ。

 特に一之瀬姉妹はまだ若いんだし、最初は寂しく思うかもしれないがカサブタのように剥がれて、気分を切り替えて歩んでいくだろう――

 

 

 

 

 

 とかなんとか考えて、さっさと姿を消しましたぁ!! いや、でもそれが不登校の原因になったなんて、そんなわけ……そんなわけ……うごごごごっ!!

 

 

 

 

「ホームズさんがとても頭を抱えています」

 

「見てください佐倉さん。あれが過ちを認められない畜生の哀れな姿です。確信しているくせになんとか自分の責任を回避しようとする、とても浅ましい様子ですね。あと、その問題の選択肢は――」

 

 

 

 うるせー、ばーか! ニヤニヤとした視線を向けてきやがって! 俺が悶え苦しんでいる姿がそんなに楽しいか!? 楽しんだろうな、邪悪なるロリだから! 畜生!

 

 

「畜生はそっちです」

 

「にゃー!」

 

「にゃー!」

 

「こら、威嚇し合わないの」

 

 

 とりあえず、坂柳相手に威嚇合戦をしたらご主人に止められてしまった。

 よしよし、されてなんとか精神を平常心へと戻した。

 

 

 いや、でもほら……あれだ。犯人の男にはちゃんと報復したし? 現場から逃げ去ってなかったことにしようとしていたから、ちょっと祟って一之瀬家相手に示談で済ませるように追い込んで、和解金でそこそこの金を支払わせたから一之瀬家の家計は少し楽になったはず。

 

 犯人の男はそれなりにエリートな会社に勤めていた会社員だった。

 あの日は会議に遅れていたため急いでいたらしい。

 

 接触はなかったとはいえ、一之瀬は男の運転のせいで怪我をした。

 しかも動揺した結果、その場から逃げ去っている。

 

 訴えられればまず負けるだろうし、会社も首になるだろう。

 男に出来るのは高給取りの金を使ってなんとか和解に持ち込むことぐらいしかなかった。

 

 

 立つ鳥跡を濁さず、というし猫である俺もアフターサービスぐらいはちゃんとやらなきゃなって。

 それでまあ、俺的には円滑に別れた感じだったというかなんというか。

 

 

 ちょっと動物病院から消え去っただけ、野良猫が野良に帰っただけでそんなにショックを受けるなんて思っていなかったというか……。

 

 

「そういえば佐倉さん。猫は死期を感じると姿を隠すという話があるらしいんですよ」

 

「そうなんですか?」

 

「実際は猫は不調を感じると弱った体を外敵から守るためにひと目につかない場所に隠れてしまうという習性があるため、それが悪い方向に作用してそのまま死んでしまうというのが事実らしいですけどね。人から見るとそういう風に行動が見えてしまうという話です。あっ、そこの途中式……この部分が間違っていますね」

 

 

 くそっ、刺してくるじゃん……。たしかに一之瀬がその話を知っていた場合、俺は死期を悟って消えた風に見えるのか? いや、でも怪我自体は足に怪我しただけで……。冷静に考えると野良で足をやられるのは普通にアウトか?

 

 

 普通に養生して穴場の餌場の近くで過ごして治したが、ただの野良猫だったら死んでいたような気がしなくもない。

 

 

 つまりはあれか。

 一之瀬的には万引きを止めてくれた恩人ならぬ恩猫が、身を挺して守ったあとに死期を悟ったように消えた感じになるのか……。

 

 

 ははーん? あのジットリとした視線の意味がなんとなくわかってきたな! ……うぉおおおおおっ!

 

 

 

「あらあら」

 

「見てください佐倉さん。あれが罪悪感でのたうちまわっている畜生の姿です。自分の尻尾を追いかけてぐるぐると回転するなんて、なかなかのストレスを感じているようですね。では、次の課題に移りましょう。あと少しで夏休みの課題は終了ですね」

 

「はい、ありがとうございます坂柳さん」

 

 

 動揺を抑えるために運動でストレスを発散しながら、俺はどうしたものかと考える。

 

 

 なんだろう……すごい、罪悪感を感じる! 邪悪なるロリみたいなやつなら別に構わないけど、普通にいい子な一之瀬に……なんというか申し訳なさが凄い! 邪悪なるロリなら別にいいけど!

 

 

「張り倒しますよ?」

 

 

 いや、でもマジでどうするかなー。やらかした事実に今更気づくことになるとは……。せめて一学期中に思い出していればまだマシだったのに、ご主人とのペット生活が至高すぎて全然気づかなかったゼ!

 

 

 思いっきり一人の少女の心に傷を作っておきながら、ペット生活を楽しんでいた俺は――普通に最低だった。

 

 

 

 しかし、一体どうするべきだろうか。

 気づかずに過ごして夏休みに入ってしまったわけで。

 

 

 

 ……………よし、決めた。思い出さなかったことにしよう!

 

 

 

「見てください佐倉さん。あれが畜生の中の畜生な発想をした顔です」

 

 

 ええい、うるさいわ! いや、だってしょうがないじゃん!? 今更、どんな顔をして言えばいいんだよ! ぶっちゃけ忘れてたとかそんなこと言えるわけがなくてですね?!

 

 

 幸い、一之瀬はまだ俺のことに気づいた感じではない。

 死んだと思っているのなら尚更、ホームズとしての俺を彼女が知る黒猫(ノワール)にとてもよく似ている存在だと認識している感じだった。

 

 

 つまりはギリセーフ、まだ誤魔化しは効く段階のはずだ。

 あくまで面影を感じるただの一般通過飼い猫だと思って貰う感じで……。

 

 

「人の心無いんですか?」

 

「しゃー!!」

 

 

 茶々を入れてくる坂柳に対して威嚇をして、俺はぐったりとご主人の膝の上で丸くなった。

 

 

 わかってはいる、わかってはいるが……しょうがない。

 こんなのどうしようもないじゃないか。

 

 

「にゃー」

 

「うーん、まあ……ホームズが悪いかなぁ?」

 

「みゃっ」

 

 

 ご主人の言葉に俺はダウンするしかなかった。

 

 

「まあ、でも変に問題にならないためにはそうするしかないのも事実ですね。全く昔の女を忘れているだなんて……所詮は畜生ですね。ざまぁ」

 

「ホームズも反省しているわけだから」

 

 

 昔の女とか言うなよ……なんか俺が軟派みたいじゃないか。とにかく、ノワールだということはバレないようにしなければ。そうすれば問題は起こらないはず。

 

 一之瀬に関して罪悪感が酷いが、そこら辺はほら――

 

 

 

 

 

 

 帰りに妹ちゃんのところに寄って、一之瀬宛のプレゼントと手紙を貰ってポストに投函したからな! それでチャラってことで! ヨシ!!

 

 

 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「あれ、お二人ともどうしたんですか?」

 

「にゃー?」

 

「いや、ホームズって時々凄いバカになるなって思って」

 

 

 ご主人!?

 

 

「恐ろしいほどポンコツになりますよねホームズ」

 

 

 なんだと邪ロリ!?

 

 

 可哀想なものを見る目でこちらに向けてくる坂柳に対して、俺は抗議の意味で鳴き声を上げたが彼女はまるで意に返した様子もない。

 

 

 

 くっ、何だってんだ。まあ、いい。これでこの件は終わり。一之瀬に疑われないようにすればそれで万事解決なんだからな。気は咎めるがそれが一番都合がいい結末……今のところ、ちょっと疑われているだけだからヘーキヘーキ!

 

 

 

 悩みが一段落し俺はスッキリとした顔で一鳴きすると身体をほぐすように伸びをしたのだった。

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→やらかしまくっていた猫、一応悪気はなかった。忘れていたこととBクラス入りの原因だったことに気づいて罪悪感に襲われた。なんとかなあなあに出来ないかなーと思っている。とりあえず、覚えてない作戦で誤魔化すことに決めた……決めたけど、ちょっと申し訳ない気持ちも強いので妹ちゃんのところにいってプレゼントと手紙を貰って、一之瀬にこっそり渡すことでチャラにすることにした。大事な家族からのプレゼントと手紙が届いて喜んでいるだろう! ヨシ!(何を見てヨシと言ったんですか??

●一之瀬帆波
→運命を変えられていた女。恩猫であるノワールそっくりな黒猫に出会って情緒が揺さぶられていたが、さすがに同一猫物だとは考えていなかった。あまりにもそっくりすぎて段々疑っていたが……。最近、謎に届いた妹からの手紙とプレゼントのせいで疑い度が爆上がりした。黒猫に関して知っていると思っていた妹が内容に書かなかったため一発アウトだけは避けることに成功できたが、本格的に彼女の中でノワール説が浮上している。なお、仮に確信できてしまった場合、その時点で仲睦まじく飼い主のペットやっている黒猫の姿に脳破壊される。あと妹の方には普通に向かったのでその件に関しても情緒が揺さぶられる模様。
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