よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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五巻
畜生系主人公が神室真澄と新学期を迎える話


 

 

 

 

 

 

「八百長をしましょう」

 

 

 

 

 9月、夏休みも終わり学校が始まって新しい気分で始まった2学期の初日、坂柳はそんな言葉を呟いた。

 

 

 そもそもの始まりはホームルームの時間に行われたとある行事の説明が原因だった。

 

 

「えー、本日から2学期が始まった。まずは連絡事項がある。一ヶ月後に体育祭が行われる。そのため体育の授業が割合が多くなる、これがその時間割でこっちが体育祭についての資料だ。全員に配布するので各自読んで欲しい」

 

 

 その行事とは原作でもあったイベント――体育祭についてだ。

 体育祭自体は学校の定番と言ってもいいイベントなので、クラス全体の反応は悪くはない。

 

 

 どうせCPとかプライベートポイントとかが関わってくるんだろうなー、とみんな興味津々だ。

 

 

 まあ、坂柳を筆頭とした運動が苦手な部類の生徒は明らかにやる気を無くしているが……。

 無人島試験に備えて体力作りをしたとはいえ、あくまで体力がついただけで運動能力が向上しているわけではない。

 

 何もしていなかったときよりマシだろうが、それでも苦手意識というのは早々変わらないものだ。

 特に体育祭というイベントの都合上、みんなに見られながらやるというのが苦手な生徒というのはそれなりにいる。

 

 

 特にリレーとかなー。自分の番だと強制的に注目されてしまうわけで、運動会が公開処刑イベントだった思い出のやつって居るよな……。わかるよ、俺もそんな感じだったし。

 

 

 坂柳に関しては苦手というレベルですら無い、不参加が決まっているイベントのせいか明らかに興味を無くしかけていた。

 

 

 全体の様子を見る限り、やる気が高そうなのはあんま居ないなー。まあ、Aクラスって基本的にそこまで運動が得意な生徒は多くないからな。スポーツ系の部活に入っている生徒も少ないし。高水準なのは鬼頭と葛城ぐらいか? いや、葛城もスポーツ系の部活をやっている生徒相手だとそれなりにキツいだろうからな

 

 

 平均値としては全体としてそれほど低くは無いが、突出した力を持つ生徒となると数が少ないのがAクラスの欠点と言えた。

 それでもクラス全体の反応として悪くないのは、ひとえに今のAクラスのCPの高さのお陰だろう。

 

 

 二位のBクラスとも多少負けても問題ないくらいの数値の開きがあるため、ある程度の余裕を持って生徒たちは体育祭という新たなイベントを受け止めていた。

 

 

 

「今回の体育祭は全学年を2つの組に分けて勝負する方式を採用している。資料に記載されている通り、AクラスとDクラスは紅組。BクラスとCクラスは白組の配属となる」

 

「なるほど、Dクラスと……」

 

 

 

 体育祭、という単語を聞いて興味をなさそうにしていた坂柳が反応した。

 

 

 

 あっ、反応した。下手に興味なくされて変な暇つぶしを思いつかれても困ったから良かったぜ。それにしても原作通りにDクラスとかー、高円寺に絡まれそうで嫌だな……。でも、雫に関してアドバイスとか貰ったからあんまり粗末にも出来ないんだよなー。

 

 ……あれ? こう考えることを読まれてもしかしてアドバイスしてきたのか? そんなバカな!

 

 

 

 などと考えているうちに説明は続く。

 

 

 

 

「さて、それでは体育祭についてルールを説明する」

 

 

 

 

・体育祭におけるルール及び組分け

 全学年を赤組と白組の2組に振り分けて行われる対戦方式の体育祭。

 内訳:[赤組]=[Aクラス+Dクラス]

    [白組]=[Bクラス+Cクラス]

 

・全員参加競技の点数配分

 結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。

 5位以下の成績はそこから更に1点ずつ下がっていく。

 団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。

 

・推薦参加競技の点数配分

 結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。

 5位以下はそこから更に2点ずつ下がっていく。

 

 最終競技のリレーのみ上記の3倍の点数が与えられる。

 

 

 

「なるほど、細かい点数についてはともかく。要するに高い点数を取った組が勝利……と」

 

「要するに多くの競技で勝てば良い。シンプルなのは良いことね。でも……」

 

 

 

 配布された資料を読みながら葛城とご主人はなんともいえない感情が込められた声を上げた。

 それもそのはず、二人の読んでいる項目はこの体育祭で得られる報酬についての部分だった。

 

 

・赤組対白組の結果が与える影響

 全学年の総合点で負けた組は全学年等しく-100CP。

 

・学年別順位が与える影響

 各学年、総合点で1位を取ったクラスには+50CP。

 総合点で2位を取ったクラスは±0CP。

 総合点で3位を取ったクラスは-50CP。

 総合点で4位を取ったクラスは-100CP。

 

 

 

「なんていうかあからさまに回収に来たわね。やっぱりやり過ぎたんじゃないの?」

 

「私、悪くないもん!」

 

「いや、まあ坂柳の策は完全にルール内のものだったとはいえ、それはそれとして絞りすぎというかなんというか」

 

「ここまで露骨なのはちょっと……」

 

 

 

 なんというかあまりにもショボいイベント報酬にそんな声が上がってしまった。

 

 

 比較対象が荒稼ぎしまくった無人島試験と船上試験だからな……。むしろ、原作だと全体を通してもその二つの試験が明らかにおかしいレベルで稼げる内容だったんだけど。

 

 

 そんなことを葛城たちが知っているわけもなく、クラス内では坂柳が搾り取りすぎたせいで学校側がCPを回収しに来た説が浮上していた。

 

 

 一応、原作通りの内容なので坂柳は無罪だ。

 まあ、状況証拠的にそう思われても仕方ない要素が多すぎるのだが……。

 

 

 なんなら否定している坂柳ですら「あー、そういうことしてきます?」みたいな目を真嶋に向けていた。

 

 

「ごほん、根拠のない憶測は言わないように。……確かに今回、総合一位を取ったとしても組で敗北した場合は-50CP。組で勝利したとしても総合一位を取れなければCPがプラスになることはないが……」

 

「いや、せめて組勝利でも+CPを出しましょうよ。組対抗の形式なのに組で勝利してもプラスにならないとか、モチベーションに関わると思うんですけど……」

 

「――……ない、が! クラス区分とは別に個人的に成果を上げた生徒には個別の報酬が支払われる形となっている」

 

 

 

 ご主人の突っ込みを真嶋はなんとか流しつつ、説明を続けた。

 

 

 

・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)

 1位が5000プライベートポイント、または2学期中間テストで3点増の選択制

 2位が3000プライベートポイント、または2学期中間テストで2点増の選択制

 3位が1000プライベートポイント、または2学期中間テストで1点増の選択制

 最下位は-1000pr。払えない場合は2学期中間テストで-1点のペナルティ。

 

・反則事項について

 各競技のルールを熟読の上遵守すること。違反した者は失格同様の扱いを受ける。

 悪質な物については退学処分にする場合有り。それまでの獲得点数の剥奪も検討。

 

・最優秀生徒報酬

 全競技で最も高得点を得た生徒には+10万プライベートポイント。

 

・学年別最優秀生徒報酬

 全競技で最も高得点を得た学年別生徒3名には各+1万プライベートポイント。

 

・総合成績下位者へのペナルティ

 総合成績下位10名の生徒は2学期中間テストで全教科-10点のペナルティ。

 

 

「……いや、やっぱりショボくない?」

 

「まあ、一つのイベントで頑張れば最高で10万円……いや、11万円か。そう考えると貰えている方だとは思うけど」

 

「50万のインパクトと比べると……ねぇ?」

 

「桁一つ上ならまだわかるんだけどね」

 

「薄々勘づいていたけど金銭感覚がバグってきてるよね、私たち」

 

「中間テストの加点か、プライベートポイントの選択かー」

 

「1点とか3点ぐらいの加点なんて……」

 

 

 

 そんなヒソヒソとした会話がクラス内で行われた。

 二つの特別試験と豊富な毎月の資金を受け取っているAクラスの生徒にとって、特に刺激になるような報酬ではなかったことが窺える内容だ。

 

 

 まあ、今更1000単位のプライベートポイントなんて大した金額じゃないからなー。学年トップの成績を出しても1万……まあ、金額は割に合わないよな。

 

 

 中間テストの加点に関してもそもそもが成績優秀なAクラスの生徒にとって、それほど心が動かされるような内容でもない。

 勉学がそれほど得意ではない生徒にとっては大事かもしれないが、Aクラスにとっては誤差の範囲の加点でしかない。

 

 

「というかペナルティの全教科-10点はエグいって」

 

「さすがにこれは不味いよね」

 

「加点はショボいのに、ペナルティだけはしっかりと付けてくる」

 

「そういうとこだよ、高育」

 

「やめなよ」

 

 

 生徒たちの言葉に真嶋が冷や汗をかいていた。

 

 

 まあ、それはそう。報酬は低いのにペナルティだけはしっかりしてるのとか、本当にそういうところだぞ。

 

 

 

「体育祭で行われる種目の詳細は全てプリントに記載されている通りだ」

 

 

 

[全員参加種目]

・100メートル走

・ハードル競走

・棒倒し(男子限定)

・玉入れ(女子限定)

・男女別綱引き

・障害物競走

・二人三脚

・騎馬戦

・200メートル走

 

[推薦参加種目]

・借り物競争

・四方綱引き

・男女混合二人三脚

・3学年合同1200メートルリレー

 

 

「この参加表に君達で話し合った全ての種目の出場者を記入し提出してもらう。提出期間は体育祭の1週間前から前日の午後5時までの間で、期日以降の変更は如何なる理由があろうと認められない」

 

「提出しなかったら?」

 

「その場合はランダムに割り振られることになるな」

 

「質問があります。仮に何らかの理由で急遽、生徒が競技に出場が出来なくなった場合どうなりますか?」

 

 

 坂柳が挙手をして立ち上がって質問をすると真嶋はビクリッと身体を震わせた。

 

 

 警戒されてて笑うんだが??

 

 

「むー」

 

 

 睨んでくるなよ……。

 

 

 教室の後ろで優雅に様子を眺めていた俺に坂柳はジトーとした視線を一瞬だけ向けてきたのだった。

 

 

「その場合は……最下位として扱うことになるな」

 

「なるほど」

 

「個人競技は当然として、団体競技……つまりは二人三脚や騎馬戦の場合の場合も同様の処理となる」

 

「代走などは認められないと言うことですね?」

 

「そういうことになるな。ただ「推薦競技」に関しては1人10万プライベートポイントで変更が可能だ」

 

 

 

 一見するとただ単にルールの確認をしているだけのはずなのに、今までの所業のせいで坂柳は明らかに警戒されていた。

 というか真嶋だけでなく、A組のクラスメイトからも「何を企んでいるんだ……」という視線を向けられているあたり、みんな慣れてきた感じがある。

 

 

「では、もう一つ質問があります。競技で得た点数で勝敗を決めるという話ですが、当然点数が同点になる場合も考えられるはずです。その場合はどう処理が為されますか? 例えばそうですね……クラス総合点数が四位の場合は-100CP、三位の場合は-50CPという話ですがその下位二クラスが同点であった場合、それはどうなるのか――これは重要なポイントですよね? それとも何かの勝負をして三位決定戦でも行われるのですか?」

 

「むっ、その場合は……たしか同率三位という風に処理される決まりとなっているはずだ。つまり、その二クラスはそれぞれ-50CPという形で処理される」

 

 

 聞かれたことが意外だったのか真嶋は手に持っていた端末を弄って確認し、そう答えたのだった。

 

 

 

「なるほど、ありがとうございました」

 

 

 

 坂柳は穏やかな笑顔でそう答えると席に座った。

 もっと厳しい質問が飛んでくるのかと思い、ビクビクしていた真嶋は思いのほか大人しく座った彼女の様子を見て肩透かしを食らったような顔をしたが、すぐに頭を切り替えたのか教室を見渡した。

 

 

 

「他に質問者はいないようなので、では説明は終了する」

 

 

 

 だが、俺は見ていた。

 こっそりと質問するときにボイスレコーダーを起動させていた坂柳の姿が、後ろからハッキリと見ることが出来た。

 

 

 

 邪悪なるロリが大人しく座ったってことは……つまりは目的を達成できたってことなんだよなぁ。

 

 

 

 たぶん、葛城とかご主人とかは気づいているし、その他の勘の良い生徒たちも今のやり取りだけで坂柳が十分な収穫をしたのを察したのだろう。

 無駄に真嶋に質問をする様子はなかった。

 

 

 

「では、残りの時間は好きに活用するように。次の時間は体育館に移動後、各クラス他学年との顔合わせを行う予定になっているので遅れないように」

 

 

 

 そう言って真嶋が教室を去ってから坂柳は徐に切り出したのだった。 

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→邪ロリがヒートアップしてきたのを察して、そっと近くに待機している。カリブレチャンスを狙っている。

●坂柳有栖
→「学年単位で見るとCPが増える(OK」、「学年単位で見ると学年内でCPが移動する。つまり奪い合い(まあ、わかる」、「どうあがいても学年単位でCPは減る(よっしゃ!」。体育祭と聞いてやる気を失って大人しくクラスの応援に回るつもりだったが、あまりのクソイベントっぷりにやる気スイッチが入った。

●真嶋智也
→原作通りのイベント内容で前から決まっていた内容なので別にそういう意図はないが、傍目から見てどう見ても「学校側が配りすぎたからCPを回収しようとしている」としか見えない自覚はある。そのため、坂柳あたりが猛抗議をしてくると思いビクビクとしていたが、思ったよりも大人しくて肩透かし。冷たい視線を覚悟していたが思いのほか冷静に「あっ、そういうことしてくるんだ。ふーん……」という生徒の態度が無茶苦茶辛かった。
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