よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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[一之瀬帆波(脳破壊)]


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幕間
畜生系主人公が神室真澄たちにセラピーを行う話(いんたーるーど) ★


 

 

 

「なんで……どぼじて……っ!」

 

 

 ごめん……忘れてた!

 

 

「うわぁあああああああんっ!!!」

 

 

 泣いちゃ……ったァ!!

 

 

 

「「これは酷い……」」

 

 

 

 まさに青春な真・体育祭も終わったあと、俺は地獄と向き合っていた。

 

 

 

 えっ、何をしているかって? そりゃ、お前――――

 

 

 

「のわーるぅ!!」

 

「ホームズよ。私のペットのホームズ……っ!」

 

「あァあああああああっ!」

 

「私が飼い主! 入学してからずっと……それはもうとてもイチャイチャしてきたわ!」

 

がぁああああっ!? 頭が……脳が壊れる! また会えたのはうれしいのに、のわーるは真澄ちゃんのペットになって楽しんで……いた!? ペットライフ満喫……私がペットに誘ったときはダメだったのに。大切な思い出の彼は他の女に……ね、寝取られっ!

 

「寝てから言いなさい。私は何度もホームズと一緒に寝たけど」

 

「寝たもん! 私だって妹と一緒にのわーる挟んで寝たもん! 私の方が先に!」

 

「そんな体験、上書きするぐらいの数をこなしたわ。所詮、帆波は昔の女なのよ」

 

うわぁあああああああんっ!? 脳が……脳が揺れるぅ!!」

 

 

 絶賛、脳破壊されて死にそうになっている一之瀬を見れば一目瞭然だろう。

 

 なんやかんやでご主人と一之瀬が仲を深めた結果、俺は売られる羽目になった。

 いや、売られる羽目になったというのもおかしいか、俺自身のやらかしのケツを拭く羽目になったというか、ともかく改めて一之瀬と対面して――

 

 

 今明かされる衝撃の真実! 実はホームズは一之瀬を過去に助けてくれた恩猫のノワールだったんだよ!

 

 

 ――をやったわけだ。

 ここまではよかった。

 

 

 どうにも一之瀬はやっぱり病院から消えた俺のことを死んだと思っていたらしいからな、生きてまた再会できた事実には喜んでいたし、涙を流しながら俺を抱き上げた。

 

 

 そう、そこまではよかったのだが……。

 

 

「それで……ノワール。ちょっと聞きたいんだけど、なんで今まで黙っていたの?」

 

「……にゃー」

 

「目を逸らしながらにゃーしてないで、ねえ? というか夏休みに妹からの手紙が何故か来たのもノワールだよね? うん、手紙自体はすごく嬉しい。……嬉しいよ? でも、手紙をノワールが運んできたってことは――妹には会ったんだよね?

 

「………」

 

「なんでかにゃー? 私より先に妹には会ってるのかにゃー? おかしい、おかしくにゃい? というか手紙を運んでくれたなら私に会っていけばいいじゃん! ねー!」

 

 

 まあ、うん。あれだ。一旦、感動の再会をやって冷静になった後、一之瀬は色々と気づいてはいけないことに気づいてしまったわけだ。

 

 お目々がぐるぐるし始めてきた一之瀬は本当に怖かった。瞳孔開いていたし……。

 

 

 それでまあ――ゲロった

 

 

 ぶっちゃけ、ちょっと前まで忘れてたこと。それが気まずかったので一般黒猫のふりをしてやり過ごそうとしたこと。あと妹ちゃんに会いに行って手紙を貰ったのも、ご機嫌伺いとかそんなのを兼ねていたことを……!

 

 

 

 そしたら、まあ……壊れたよねって。

 

 

 

「ううっ、にょわーるぅ!」

 

「にゃー」

 

 

 ギャン泣きだった。すごい……ギャン泣きだった。

 女子高生にもなって一之瀬は泣き喚いてフローリングの床を転がった。

 

 ここがご主人の部屋だから目撃者が限られているから良かったものの、これまでこの高育で積み上げてきた一之瀬帆波という偶像をぶっ壊すぐらいに彼女は泣きまくった。

 

 

「再会できた喜びとそれはそれとして酷い扱いをされた悲しさ、そしてすごい楽しそうに同級生のペットになっていた事実……それが入り交じって――なんかどういう感情で居たらいいのかわからない!」

 

「すごい、私リアルで脳が現在進行形で破壊されていっているであろう人を初めて見ました」

 

 

 珍しいものが見られてラッキー、みたいな顔をしているんじゃねーぞ坂柳。これ、一体どうするべきなんだ?

 

 

「知りませんよ。身から出た錆じゃないですか」

 

「にゃーふ」

 

「真澄さんも悪ノリしていますし」

 

 

 

「残念だけどかつてはノワールだったかもしれないけど、今はホームズだから。私のペットだから」

 

「うわぁあっ」

 

「これを見なさい。一緒に楽しくボール遊びをしたときの動画、それにこっちは抱っこしながら散歩に行ったときの写真」

 

「はぐっ!? 何て楽しそうな……」

 

「無人島や船の中でも楽しく過ごしたわ。いや、それは帆波も知っていたわね」

 

「ううっ、そうだ。私はこの日までに何度も真澄ちゃんが仲良くホームズと遊んだり、過ごしていたところを見た! あのホームズはのわーるの面影を持っていたホームズじゃなくて、のわーるなホームズだってことで……あっ、ああああっ!」

 

「もう、ホームズは私のものなのよ。身の程を弁えることね」

 

「ふぐぅ……っ!」

 

 

 すごい、なんだろう。彼氏を寝取られた女みたいな感じになってる。ご主人はご主人で、なんか悪役令嬢っぽいムーブを決めている!

 

 Sっぽいご主人もまた素敵だー!

 

 

「はぅっ!!」

 

「ああ、一之瀬さんの脳にまたダメージが!」

 

 

 あっ……ごめん。

 

 

「それにしても、これが一人の男を奪い合う女の修羅場……生で見られるなんて! まあ、猫だけど!」

 

「ふしゃー!」

 

「面白がるなと言われてもこんなの無理でしょ。それにしてもあれが敗北系ヒロインの末路……むごい」

 

「敗北……? はあはあ、敗北者? 私は敗北系ヒロイン……? うっ、頭が……好きだった男の子とベッドインまで持ち込んで、普通なら勝利確定のはずなのに何故か読者から「出荷されるんだよね」みたいな養豚場の豚を見る目で見られる私……。結ばれたのに――何故!?」

 

 

 いかん、電波まで受信し始めている! しっかりいたせー!

 

 

「しっかりいたせー、も何もホームズのせいだと思うんですけど」

 

 

 細かいことはさておき猫パンチ! 額を打ち抜く一撃! 発狂状態を解除! ただし、脳破壊は解除不可!

 

 

「――ハッ!? 私は一体……そうだ、脳が壊れて情緒となんか色々……」

 

「落ち着きなさい帆波。……高育に来てからずっと作ってる私のホームズのアルバム見る?」

 

「う、ぉおおおお……っ! あっ、ことあるごとに脳髄が震える感覚っ! ……段々癖になってきたかも

 

 

 それ癖になっちゃいけないやつ!

 

 

「――それはそれとして見る、真澄ちゃん」

 

「……やるわね、帆波」

 

「例え、それで脳が傷ついても私はのわーる……いや、ホームズから逃げないよ」

 

 

 何故か死闘を経てわかりあったような雰囲気になる二人。

 まるでわからないが一応の合意が両者の間で得られたようだ。

 

 

「今まで不足していたホームズニウムを吸引しないと……スーハー、スーハー。猫吸いはやっぱりいつか癌にも効く――あっ、いい匂い」

 

「私が厳選したシャンプーを使っているからね。いつだって完璧」

 

「それはつまりこのホームズの匂いは真澄ちゃんとの合作ってことに……うっ! 真澄ちゃん好みの匂いに包まれるホームズ、真澄ちゃんに毎日洗われているホームズ……ああっ!」

 

「いけない、一之瀬さんの脳がバターのように溶け始めています。ナチュラルに飛んでくる脳破壊コンボのせいで! ホームズ、脳機能の回復鍛錬です!」

 

 

 よし、来た! 破壊された脳はゆっくり修復するんだ一之瀬。今こそアニマルセラピーの力を見せてやる! ご主人に整えられた毛並みと匂いを意識させると脳破壊が進みそうだから気をつけるとして――

 

 

 ならば、これだぁ!

 

 

 

「これは……ボール! わかったよ、ホームズ!」

 

 やろうぜ、ボール遊びをよぉ!

 

 

 とりあえず、俺と一之瀬は無心でボール遊びをすることにした。

 一之瀬がカラーボールを部屋の隅に投げて、俺がそれを追いかけて彼女のところまで持っていき、受け取った一之瀬は再度投げる。

 

 その繰り返し。

 猫というより犬相手の遊びな気がしなくもないが、細かいことは気にしてはいけない。

 

 それに案外、ボール遊びというのはバカに出来ないものだ。

 無心になって没頭するととても楽しい。

 

 

「わー、ホームズー上手ー! そーれ、取ってこーい!」

 

「にゃおん」

 

「空中キャッチ!? さすがだー!」

 

 

 無茶苦茶楽しい。

 すんごい楽しい。

 

 

 いや、これは一之瀬の脳を回復させるための……言わば医療行為だから! そ、それだけ……! 決してただ楽しんでいるわけじゃ――

 

 

「取ってこーい♪」

 

「にゃー♪」

 

 

 ひゃっはー! ボールだー! うぉおおおおっ! 見てみてー! ボール取ってきたー!

 

 

「わー、すごいよー。ホームズ!」

 

「にゃおん!」

 

「偉い偉いねー♪」

 

 

 なんか一之瀬の言動が幼くなってきている気がするが……まあいいだろう。

 ペットとのふれあいは童心に返してくれるものなのだ。

 

 

「うーん、この……。一之瀬さん、相当に脳に負担がかかっていたんですね。溶けすぎていたせいか、若干幼女化しています。というかあの馬鹿猫、完全にボール遊びに夢中になっていますね」

 

「………」

 

「真澄さん??」

 

「ホームズ、それー」

 

「なんで参加するんですか、真澄さん??」

 

 

 一之瀬の壊れた脳を回復する治療を行っていたら、なんかご主人も参加してきた件について。

 どうにも彼女とキャッキャうふふしていたのが気に入らなかったらしい。

 

 

 ボールをもう一つ取ってきて、投げてきた。

 

 

 嫉妬するご主人も可愛いな……。いや、そうじゃなくてここで治療をやめたら一之瀬の脳には修復できない傷が出来そうだ。

 

 だから、やめるわけにはいかない。

 

 しかし、だからといってご主人からボールを投げられて無視する存在がペットと名乗れるだろうか? いや、名乗れない!

 

 

「にゃー!」

 

「おおっ、すごい。二人から投げられるボールを完璧に対応しています。人間様の機嫌を伺う愛玩動物の面目躍如と言ったところでしょうか」

 

 

 ええい、喧しいぞ! 変な実況を入れるんじゃない! 俺は一之瀬とご主人、両方の相手を完璧にこなしてやるぜぇ!! 動け俺の身体、猫の俊敏性を見せつけろ! 唸れ俺の声帯、甘え声を出してやれ! うぉおおおっ!

 

 

「ホームズ、それー!」

 

「ホームズ、次よ」

 

「偉いねー、ホームズ」

 

「流石ね、ホームズ」

 

 

 さすがに二方向から投げられるボールに対応するのはキツいが、これなら……っ! ――ってなにィ!? 三つ目のボールだとぉ!? いったい何で……って、はっ!?

 

 

 振り向くとそこには何故かどや顔をした坂柳の姿があった。

 

 

「ほら、ホームズ。ボールを私のところまで持ってきてくだs――へぶっ?!

 

「す、すごい!」

 

「見事なオーバーヘッドキックね、ホームズ!」

 

 

 なに、お前も参加しようとしとるんじゃい! どう考えても嫌がらせだろうが! お前相手に振りまく愛想など無いとしれィ! この邪悪なるロリめ!

 

 

「何をするんですか! この馬鹿猫!」

 

「ふしゃー!」

 

「しゃー!」

 

 

 とりあえず、威嚇し合う俺と坂柳。

 

 

「にゃ、にゃー!」

 

「……にゃんにゃん」

 

 

 何故か参加してくる一之瀬とご主人。

 ご主人に至ってはいつ買ったのか猫耳カチューシャまでつけている。

 

 

 最高か? いや、そうじゃなくて……なんだ、この謎の状況。美少女が三人、部屋の中でニャンニャンしてる……天国か??

 

 

 そんなこんなありつつ、この日は一之瀬の脳の回復のために俺は頑張った。

 接待みたいな感じでとにかく彼女を癒やすことに努めた。

 

 

 ボール遊びや猫じゃらしで遊んだり、抱かれたり吸われたり、猫式癒やしマッサージのふみふみをしてやったりと色々だ。

 

 

 途中、ご主人や坂柳も混ざろうとしてその対応にも追われたが。

 

 

 ええい、ご主人はともかく坂柳! お前まで相手にしてやると思うなよ! ボールを投げられたり、猫じゃらしに反応なんかしてやらないんだからね! でも、ふみふみだけはやってやる! なんだかんだ、クラスのために働いているからな! そこは感謝してるから!

 

 

 その日、一之瀬の脳の回復のために俺は勤しんだ。

 

 

 彼女の脳はゆっくりと修復できたはず、たぶん、きっと、メイビー。

 

 

 なんだろう、とても疲れる一日だった。

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→ペットとしてアニマルセラピーを頑張った一般黒猫。猫は脳破壊にも効くと古事記にも書いてあったような、そうじゃなかったような。ともかく全力で頑張った。

●神室真澄
→ご主人様アピールに余念がない女。それだけは譲れない。

●一之瀬帆波
→死別した彼氏が実は生きてて別の女とよろしくやってて、しかも自分のことを忘れていた――みたいな脳破壊を受ける。相手猫だけど。彼女の脳はボロボロ、アニマルセラピーでなんとか回復したかもしれない。神室とは色々あったがホームズの話で盛り上がる中、記録しまくっていたホームズ動画や写真などを見せられる度に楽しむのとは別に脳が揺れる感覚を味わう。この感覚はいったい……なんか癖になってきた。

●坂柳有栖
→ゴムボールを投げたらオーバーヘッドキックで顔面に返された邪悪なるロリ。ホームズが大変そうな姿を見て悦に浸って楽しんだ。ふみふみマッサージはして貰った。
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