よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公が神室真澄に内緒で暗躍する話

 

 

 

「ところで師匠。師匠なら単独でも調査は可能なんじゃないですか? いえ、頼ってくれるのは嬉しいんですけど」

 

 

 月城の調査を進める中で不意に山村からそんな質問をされた。

 たしかに彼女の言うとおり、俺はそういった調査は得意だ。

 

 気配を殺してストーキングするのは勿論、最も得意とするのは猫特有の愛らしさを前面に押し出し、相手の警戒を緩ませて懐に飛び込む手法を得意とする。

 

 可愛くて人懐っこい猫、これにほだされない人間はまず居ない。

 大抵の相手なら老若男女問わず、俺は懐に潜り込める自信がある。

 

 

 あるの、だが……何事も例外というものは存在する。

 

 

「例外、ですか?」

 

「にゃー」

 

 

 世の中居るんだわ。相手がこんなに可愛らしい猫でも全然なびかないタイプの人間。いや、猫アレルギーとかそういう仕方ないのを除いてさ。もっとこう……何て言うか、根本的に小動物に対して可愛らしさとか感じない人種。

 

 

 俺のセンサーが反応している。

 月城はあれだ、動物とかに暴力振るっても何の呵責を覚えないタイプだ。

 

 

 女を殴ってそうな顔してるしなー。いや、実際生徒に暴力を振るうのにも特に抵抗のないヤツだし。

 

 

 目的の綾小路以外の他の生徒にも多大な迷惑をかける試験とか平気にするヤツだ、ぶっちゃけお得意の愛らしさでメロメロにする技が効かないと考えている。

 そうなるとストーキングするしかないのだが、これだけだとどうしても情報収集には限度がある。

 

 

 そんなわけで山村の力を借りようと考えたのだ。

 

 

「よくわかりませんけど、よくわかりました。とりあえず、頑張ります」

 

「人から話を聞くのはホームズさんだけで、頑張るのは難しいですからねー」

 

 

 それな!

 

 

 というわけで必殺技の効果が薄い以上、真っ当な手段での情報収集が必要となった俺は山村と緊急参戦した椎名の助けを借りて、月城の調査を行っていた。

 

 

 えっ、何をやっているかって?

 

 

「やはり、調査は聞き込みからですね! 探偵ものの基本です!」

 

「二・三年生の意識調査はこれで終了ですね」

 

 

 というわけだ。

 情報収集といえば聞き込み、これが基本だ。

 

 月城は危険な男なので本丸を攻めるのはまだ早い、まずは色々と聞き回って他の人間から見た月城に関して調べていっている。

 彼のことを探るような動きをすれば目立つかもしれないが、今の時期なら代行として急に来た彼のことが気になって調べていた――という建前がある。

 

 

 実際、二・三年生もだいぶ月城の存在は気になっている様子だった。

 

 

 三年生――堀北学の場合。

 

「月城代行か……。ああ、彼のことについては気になっている。急に坂柳理事長が更迭されたのにも驚いたからな。まあ、更迭された理由に関していえば納得できなくはないんだが……何故、この時期に? という思いはある。それこそ、三学期が始まる頃でいいだろうに」

 

「いや、すまない。月城代行の話だったな。この学園に来た経緯が経緯だ。少し違和感はあるが、今の学園の現状を改善してくれるのならそれに越したことはないのだがどうにも人となりが読めないな。元生徒会長として少し話したが、学園そのものの改善にあまり意欲を見せているような雰囲気ではなかったな。今年度、色々と騒ぎを起こしていた一年には興味を示していたが……」

 

「いや、体育祭では一緒にやった以上、共犯みたいなものか。まあ、それはともかく何かわかったら教えてくれ。こちらとしても色々と探ってみようとは考えている」

 

 

 二年生――南雲雅の場合。

 

「理事長代行、ね。なんとも胡散臭い感じがするな。現生徒会長として少し話をした。今後の特別試験のこととか、その兼ね合いで少しな。あっ、これはオフレコだからな? それ自体は別におかしい話じゃないんだけどな。反応がどうも……」

 

「第一印象はなんというかいい人なんだよ。身なりもしっかりとしているし、温和な笑顔。それに態度や喋り方も丁寧で凄くまともだ。まともすぎて気味が悪いくらいにな。社会人の大人なんだからそりゃ自分を取り繕うことぐらいするだろうが、あそこまで完璧だと何というか――全部が嘘くさい」

 

「こっちの被害妄想……っていうか思い過ごしならいいんだけどな。三年はともかく、一・二年は長い付き合いになるかもしれないんだ。慎重に探っていくつもりだ。何かわかったら教えてくれ」

 

 

 などなど。

 その他、複数の生徒からの証言を俺達は集めることに成功した。

 

 

「結構、証言集まりましたね」

 

「まだ着任して間もないので、実際に会ったことのある生徒の方が少ないはずですけど……なんというか皆さん注目されているんですね」

 

 

 なんというか……生徒側の警戒度の高さに草も生えない! 普通の学校とは違って理事長の存在の重要性が高いから、ある程度注目されるのはわかるんだ。堀北兄や南雲あたりの頭いい組なら注目して当然――みたいな?

 

 

 問題があるとすれば生徒側が一切学校側の人間を信用してないってことだな。いや、正確にいうと学校側の人間ってだけで信用度にマイナス補正が掛かる感じ? まだ月城は何もしてないのに「こんな学校の理事長代行に来る人間なんて……信用できるのか?」みたいなバイアスが掛かっている感じといえばいいのか。

 

 

 もしかしたら、本当にこの学校の状況を憂いて、改革のために来た人かもしれないだろ! 何もやってないのに疑いに掛かるとか……酷い!

 

 

 

 

 まあ、実際にこの学校の改革なんて考えてないし。生徒のことなんてどうでもいい。自分の目的が達成できればそれでいい、そのためなら暴力を使うことに躊躇いのない人種だったりするわけだが……。

 

 

 

 

 うん、まあアレだ。

 これ学校側へのというか大人への不信が深まりそうですね、はい。

 

 

 話した感じ、明らかに上級生たちって協力して理事長代行を見定めようみたいなスタンスになってるっぽいし。

 

 

 やだ、どんどん生徒たちが結束していく……。

 

 

 それはともかくとして、生徒からの聞き込みが終わったら次はどこから聞き込みをするべきか。

 そうだね、次は教員だね。

 

 

 というわけで職員室にやってきました。

 

 

「おや、椎名くんですか」

 

「坂上先生、少し聞きたいことがあるのですが」

 

「ええ、いいですよ。なんでも聞いてください」

 

 

 対応したのはCクラス担任の坂上だった。

 なんか変な風に覚醒しちゃったCクラスのリーダー、龍園のことで最近はニッコリの坂上だ。

 

 彼からすれば暴力一辺倒だった龍園が、色々と視野も大きくなり、恐怖ではなくクラスのみんなからもリーダーとして認められるようになって、クラスを牽引していく存在になったのは嬉しい限りだろう。

 

 今回の期末試験もクラスのレベルアップを目的に真っ当な学力を目指して、勉強をさせているし……。

 

 まあ、問題児であることには変わらないけど。

 ニッコリしながら「ペーパーシャッフルに備えてるんだな……」と思ってるかもしれないけど、ペーパーシャッフル自体はまともにやる気は無いけど。

 

 それでも、まあ一年の教師という立場でいい空気を吸っている御仁だろう。

 因みに最下位は綾小路のパシリになってる茶柱とやらかしまくるAクラス――というか主に坂柳のせいで、胃薬を手放せない真嶋だろう。

 星之宮に関しては一之瀬曰く、「もうそういう人だから……」みたいな感じで諦められているらしい。

 

 

 ろくなヤツがいねーな、おい。

 

 

 まあ、それはともかくとして。

 職員室に入ると同時に俺と山村は絶を使って潜入を開始した。

 

 椎名が入室し、坂上に話を聞くことで視線や意識が彼女の方へと向く。

 その隙間を縫うようにして俺達は職員室の中を動くのだ。

 

 つまりは椎名は陽動なのだ。

 普通に教員の立場から見た月城に関して聞くのも重要ではあるのだが……。

 

「師匠、それでどこに行けば?」

 

「にゃー」

 

「こっちですね?」

 

 坂上以外にも教員は何人か居たが、その程度相手ではない。

 俺は当然として、今の山村ならば綾小路や高円寺相手にでもかなりの確率で存在を誤魔化すことが可能。

 

 

 それほどの絶技を彼女は習得したのだ。訓練の果てに……っ! なんでかは知らないけど。

 

 

 これ真っ当に生きていくのに要らないスキルだよなー、と思いつつ山村を誘導して奥の資料室へと俺達は向かった。

 職員室の中にはある機械があるのだが、それは学校のシステムに繋がっている。

 

 

 基本的には教員が資料の閲覧とかそういう目的に使うものなので、権限自体はそこまででもないが今回はこれで十分だ。

 

 

「えーっと、パスコードは――でいいんですよね?」

 

「にゃー」

 

「ちゃんと手袋は着けてますよー」

 

 

 山村が俺の指示に従って打ち込んでシステムが立ち上がった。

 

 

 さて、あとは時間との勝負だな。俺の肉球だとこれ操作が難しいんだよ、タッチパネル式だからさー。キーボードにしろ!(憤慨)

 

 

 というわけでちゃちゃっと山村に動かして貰った。

 彼女はこの機械を使うのは初めてなので、使い方なんてわからないだろうが俺は知っているので問題ない。

 

 甘えるふりをして資料室の中に入り込んで、呑気に休んでいるふりをして使っているところを観察していたからな。

 

 

 いつかご主人のためになるんじゃないかと考えて、覚えていて良かったー。

 

 

 俺がこの機械を使うことで月城の何を調べたいのかというと、彼のやっていることだ。

 今は月城も綾小路の情報収集に専念しているが、既にいくつか理事長代行の権限を使って高育システムに指示を出しているはずだ。

 

 

「あっ、ありました。システム面での更新。生徒に配られている端末の位置特定アプリ、それを遠隔でオンに出来るように設定が……」

 

「にゃー」

 

「それとこっちはネットへの接続の制限。フィルターのレベルが上がっているようです。学校内の再統制のためという理由だけど」

 

 

 位置特定アプリの遠隔操作もアレだけど、ネットの制限って……。あれか? やっぱり綾小路に外部に味方がいるって考えているのか? 特に内部から外部へ情報を流すのが難しくなっているな。元から規制が強かったけど。これ、雫のネット活動にも影響でないだろうな? 考えているわけ無いか。

 

 

「それから生徒の個人情報の閲覧が多いみたい。特にDクラスを中心に履歴が……。なんでだろう? 堀北元生徒会長や南雲生徒会長とかならわかるけど」

 

「にゃーん」

 

「あっ、はい。えっとデータ、データ。それをダウンロード、っと。でも、少し気味が悪いですね。担任なら生徒の個人情報を確認するのはまだわかるんですけど」

 

 

 山村の言葉に同意するように俺は頷いた。

 

 

 まあ、普通にキモいよねって。権限上は閲覧しても問題ないとはいえ、山村視点だと意味がわからないだろうし。しかし、この様子だと思ったよりも綾小路周辺を調べているなー。

 

 

 綾小路がオカルトにハマっていたのがよほど予想外だったのだろうか、それとも報告したら変化の原因を探れとでも言われたのか、どうにも月城は彼の周辺を調べているようだった。

 その痕跡が履歴という形で残っていた。

 

 

 たしか原作だと最初は自主退学を進めるんだったっけ? それが一番早いからな。とはいえ、原作でもダメだったのにこの世界の綾小路は明らかに高校生活を楽しんでいるからな。

 

 

 まだ接触はしていないが、月城視点でもそう上手くは行かないだろうと考えているのかもしれない。

 

 

 そうなってくると手段としてはやはり試験で退学させるか、あるいは周りの人間を狙うか……か? 高育に来る前の綾小路ならまず効かなかっただろうけど、変わってしまった綾小路なら誰かを人質にコントロールするという手法も可能かもしれないしな。

 

 

 可能性がないとはいえない以上、調べる価値はあるかもしれない。

 単に綾小路を退学させるために使えそうな駒を探しているのかもしれないが、あまりいい動きでは無さそうだ。

 

 

 原作だと坂柳もちょっかいをかけられるし、綾小路だけじゃなく他の生徒にも危害を加えないか注意しておかないとな。まあ、とにかく情報収集としては十分な成果だな。さて、そろそろ戻るぞ。椎名もそろそろ限界だろうし。

 

 

 

「わかりました。では、撤退を開始しましょう。えーっと、機械の停止オッケー。指紋残しは無しでオッケー、その他諸々証拠になりそうな残留物無しでオッケー」

 

 

 では、撤退ー!

 

 

「おー(小声)」

 

 

 そんなこんなで資料室から脱出し、坂上とまだ話していた椎名と合流し、職員室から離れることに俺達は成功した。

 結局、坂上は俺と山村の存在に気付くことはなかった。

 

 

 人目に付かず、もちろんカメラも無い場所へと退避し終えると俺達は互いの成果を話し合った。

 

 

「どうでしたかホームズさん! 私、上手くできましたか!?」

 

「にゃにゃ、にゃー」

 

「えへへ、上手くできたみたいで嬉しいです。なんというかスパイ映画みたいで楽しかったです。山村さんも格好よかったですよ!」

 

「そ、そうですか? ……へへっ」

 

 

 椎名は相変わらずテンションが高いなー、どんだけ楽しんでるんだか。それと山村は山村で俺とは普通に話せるくせに、他の人相手だと喋るの苦手すぎでしょ。

 

 まあ、そこら辺は今はいいや。こっちは上手くいったけど、そっちはどうだった? 教員たちから見た月城の評価というか感想というか。

 

 

「正直、よくわからないって感じみたいです。坂柳理事長の件もとても急な話で、当然代行として来た月城代行の存在も知らされてなかったみたいで……困惑?」

 

「困惑……」

 

「とにかく、背景がよくわからない人みたいらしいです。何を考えているのか、何をやりたいのかがわからないって。一応、学校の運営の改善を目的に着任したって話らしいんですけど」

 

 

 あまり教員からはよく思われていない、と。

 まあ、教員視点からすると「なんで急に…」みたいな存在だからな月城。

 

 

 これで教育者とか、教育関係の仕事で名が知られている人物――みたいな感じならわかるけど、そういうわけでもないらしいし。

 一応、肩書きだけはあるみたいで政府から派遣されたという話らしいのだが、それ以前の経歴もよくわからないものだから教員としても困るわな。

 

 

「んー、なんというか理事長代行には別の目的があるようにしか思えません」

 

「その心は?」

 

「はい、何といっても人付き合いの希薄さですね。上級生たちや先生の証言から考えるに、どうにもあまり深く関係を築くつもりがそもそも無い感じがするんです。どの程度の期間、代行として働くのは未定というはずなのに、まるでバイトの腰掛けのように表向きだけ取り繕って、本格的に人付き合いをする気がないみたいな?」

 

「にゃむにゃむ」

 

「単にやる気が無いだけ……というには熱心に調べ物はしているようですし」

 

 

 中々に鋭い。

 ミステリーマニアだけあって本質をよく突けている。

 

 

 

「――という感じでどうでしょうかホームズさん! 私の推理は?!」

 

 

 

 大体あってるので俺は椎名の頭を肉球でポムポムしてやった。

 すると満足げな表情になる彼女。

 

 

 椎名は思ったよりも感情表現の豊かな女の子だった。

 

 

「むふふー」

 

「でも、その目的って何なんだろう?」

 

「理事長代行が調べていたものを調べればわかるかもしれませんね」

 

「なら、私たちの成果の出番ですね。色々とダウンロードしてきて移してきました」

 

「この電子データの閲覧履歴っていうのは、本当に理事長代行のもので間違いないんですか?」

 

「はい、それは間違いないと」

 

「うーん、となるとやっぱり調べられた生徒が理事長代行の目的? でも、そうなると……」

 

「Dクラスの生徒が多いですね、傾向的に。ああ、でもAクラスも調べられていましたね。坂柳さんとか」

 

「坂柳さんは……坂柳さん、ですから」

 

 

 椎名は少しだけ困った表情で言った。

 まあ、色々とやりたい放題やった女なので邪ロリに関しては別に調べていてもおかしくはない。

 

 

 とはいえ、月城が目を付けている理由はそう言った理由ではないが。

 それはそうと、うんうんと唸りながら理事長代行の目的について、くすねてきたデータを元に考えている二人。

 

 

 調べられていた生徒のリストを見れば何かわかるかもしれない、とデータを眺めていた椎名が不意に声を上げた。

 

 

 

「あっ」

 

「にゃっ?」

 

「いえ、履歴を確認したら……理事長代行は、神室さんのことも調べていたんだなって」

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→へー、そういうことするんだ。へー……。

●山村美紀
→たぶん、高円寺か綾小路以外だとステルスすると見つけられなくなった子。別にアサシンは目指してないが、居た証拠すらちゃんとキレイキレイにできる。スパイムーブして満足。それはそれとして新しくきた理事長代行やべぇな……と思ってる。

●椎名ひより
→探偵っぽく聞き込みをしたり、ホームズたちの潜入を助けるために陽動したりしてドキドキ。小説に出てくる探偵もちょっと危険なことをしたりするので、物語の主人公になった気がしてご満悦。

●月城常成
→ホワイトルームの最高傑作の現状に困り果てている。なにか真の意味があっての行動であってくれ……! 色々と1年、特に綾小路周辺と坂柳周辺を調べている。自発的な退学をしてくれるのが望ましいが、無理そうなら試験を利用して辞めさせる腹積もりなのは原作通り。Dクラスの対抗馬としてAクラスをぶつけようと考えており、Aクラスを動かすために坂柳を動かそうと考えている。その坂柳を動かすための材料の一つとして、入学してから仲がいい友人である神室の存在に目を付けている。
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