よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話 作:サンディエゴ
・【頑張れ、龍園くん!】
龍園翔にとって、暴力と脅しによる支配の仕方は当然のものだった。
効率良く、自らの手駒を作る手段。
従順で己を王として指示に従う下僕に仕立てるのに最適な手段だった。
その考えは自らの暴力以上の暴力――綾小路清隆の存在に会ってからも変わらなかった。
暴力に頼ったやり方ではああした自分よりも上の暴力を持った相手に会ったとき、それは容易く崩壊してしまう。
そのことを学び、色々と手法を練ったが根本のところで暴力や脅しによる支配というのは効率的である――という考え自体は変わらなかったのだが……。
「ちっ」
月城理事長代行。
彼のやらかしの一件は龍園の教材として価値があった。
即ち、イリーガルな手段を用いた場合のリスクについて。
理屈ではわかっていたつもりであった。
だが、自分ならもっとやれるという無根拠な自信が過去の龍園にはあり、そういった手段に安易に頼っていた節を――今の彼は自覚していた。
自分より頭の良い存在は居る。
自分よりも強い暴力を持つ存在も居る。
それを今の龍園翔は認めている。
だからといって負けを認めるかというとそれは話は別なのだが……。
(イリーガルな手段ってのは当然リスクがある。相手が馬鹿で間抜けならいざ知らず、月城のように反撃される場合もあるってことだ。わかっていたつもりだったが……こうして嵌められたやつを見るとちょっとは考えちまうな)
これまでやってきた経験から、暴力や脅しなどの手段の有効性は間違いない。
問題はそれがあくまで手札の一つであるべきだ、ということだ。
熟慮の末に手札の一つとして使うならまだしも、単にそれが手っ取り早いからと頼っていたのではないか。
思い返してみると思い当たる節は色々とあった。
それではダメなのだ。
それで勝てるほど綾小路も坂柳も甘い相手ではない。
(結局のところ、手段は手段でしかねぇってことだ。どれだけ強いカードでも使ってくるのがわかれば対応することは不可能じゃない。強力なカードはその分、リスクも大きくなる。強みが一つしかねーってのはただの雑魚。それじゃあ、勝負の土台にも乗れねぇな)
方針に間違いはない。
失敗例を確認できたことでその確証が得られた。
それだけでも月城常成という存在は龍園にとっては価値はあった。
これからは……どうかわからないが。
(面倒なことになった。前の理事長は学園のことに関して距離を置いていたからな。変な干渉はしてこなかったから無視できたが、今後はそういうわけにもいかねーだろうな)
詳しい事情を把握しているわけではないが、これで大人しくなるとは龍園には到底思えなかった。
何らかの理由があってあんなことをしでかしたのだろうという、動機が改善されていないのが一点。
それと暴力という手段によっていた同じ穴の狢として、そういった気性の人間がやられっぱなしで終われないだろうな――というのが一点。
何にしても、これからの学園生活はあの新しい理事長の存在を意識しつつ、行動を進めなければならないというわけだ。
(めんどくせーが……はっ、条件は同じだ。いや、むしろ直接恨みを買っている坂柳たちの方が面倒なはず。なら、その程度……)
邪魔してくるならそれを利用して勝利に繋げる。
それぐらい出来てこそ、龍園翔のはずだ。
「くっくっく……!」
「いや、笑ってないでさっさと課題済ませなさいよ。待っててやってるんだから」
「うるせぇ! 別に頼んでねぇだろうが!」
伊吹に対しそんな言葉を返しながら、龍園は課題に向き直った。
そう、これも必要なことなのだ。
Cクラスの基礎学力向上のため、テストに向けてケツを叩いて、褒美という餌のにんじんをぶら下げ、龍園は促した。
勝敗こそ負けたものの、その甲斐もあって想定通り……いや、それ以上の成果を出して学力向上に繋げることが出来た。
未だにAクラスやBクラスを上回ったとまでは言えないが、少なくとも勝負の土台に乗れる程度には基礎学力向上には成功した。
その成果は素晴らしかったものの――
「リーダーなんだからさー? もうちょっとね、点数を取ってくれないと」
「この……っ!」
「うるさいわよ、敗北者」
問題があったとすれば予想以上に全体的に伸びすぎたという点だった。
その結果、龍園の成績順位はクラス内でもギリ上位10名に入っているという状態になってしまった。
決して悪い数値ではない。
葛城に頭を下げてまで勉強もしたので、自分でもわりと手応えのあった結果だったのだが、それでも思った以上に……。
龍園は別にそれほどテストの点数を気にするタイプではない。
自分より学力の高い生徒など居て当然だと理解している。
そのため、別に1位とかは狙ってはないが、それはそれとしてやはりリーダーとして王としての格好というものがあるわけで。
「ねー? 私に負けた龍園くーん?」
「くそがァ!!」
「あっはっはっは!」
山が当たったのもあり、いい点数が取れた結果、調子づいている伊吹を睨み付けながら龍園は課題に向き直った。
次のテストではぜってー泣かす。
完膚なきまでに敗北させる。
今まで使ってこなかった部分の脳を働かせながら、勉強をしつつ、別の部分で龍園は次の企みのために頭を働かせた。
(イリーガルな手段は使うべきタイミング、ポイントを熟慮しねーとな。それら以外でクラスをもっと支配……強くするためには。得るものは有ったとはいえ、テスト勝負自体は敗北。となるとやはり手下共の気分転換も必要となるか。となると――)
最後に自らが勝者になるために龍園は今日も頭を悩ませるのだった。
・【やめなよちゃんは「やめなよ」と言った】
Dクラスには問題児が多い。
入学当初の頃と比べるとクラスの統治者、つまりはリーダーの存在のお陰で一定の支配力が発揮されていること、そしてCPもある程度回復したため生活に余裕が出来ていることが大きな要因となって、今のクラスは安定化している。
女子側で少し問題を起こしそうな軽井沢のグループも、地位が盤石になっていることと指摘を受けたせいか、衝突が起きそうなことは控えているため問題になるようなことにまで発展することはほぼ無い。
問題があるとすれば男子――正確にいえば三馬鹿と呼ばれる存在だった。
入学当初こそクラスとしては問題が起こったものの、その後は大きな問題も抱えずに順調にやってこられた。
その結果として特に大きな不満を抱えるわけでもなかったので、問題行動を彼らが起こすことはなかったがそれは別に三人が人間的に成長したから……というわけでもなかった。
須藤は真・体育祭で活躍し見直されたのもあって、多少マシになったように見えてやはり短気な部分は残ったままだったし、池と山内にとっては三人の中で一人だけ活躍して真・体育祭中に女子から声援を受けたこともある須藤に対し、劣等感というか嫉妬のような感情を覚えていた。
いつの間にかリーダー的なポジションにまで登り詰めていた綾小路については、もう別格だったと判断する知能はあったが須藤に関しては同レベル――という考えがあったのかもしれない。
だからこそ、活躍して賞賛を受けた須藤に対して裏切りのような感情を抱いてしまった。
その結果、そのストレスを解消するために二人はあることを実行しようとした。
それが原作軸でもやろうとしていた盗撮だ。
ラジコンにカメラを付けて風景を撮っている、という言い訳を盾にして偶然写ってしまったことにしようという頭の悪い作戦。
普段ならクラスのことに目を光らせている綾小路が察知し、手を打っていただろうが彼は月城への対処に思考を割いてしまっていたため、そのことに気付くことが出来なかった。
その結果――――
「やめなよ」
「いや、ちょっ――」
パンッ!
「やめなよ」
「待っ――」
パン、パンッ!
「そういうのは――やめなよ」
やめなよちゃん――いや、矢雨奈代には政治はわからぬ。
頭はそれなりにいいがこれといった将来の夢もなく、精々いい感じの彼氏を作って青春な学生生活を送りたいとかいう極めて普通な願望しかない、高育を受験したのも単に一番有名だからという理由の至って普通の少女だった。
思っていたのとはまったく違った高育での学園生活、それも優秀なクラスメイトと共に悪くはない感じで過ごすことが出来た。
優秀なクラスメイトの多いAクラスの中で、自分はいたって目立っていない一般生徒であるという自覚はある。
学力も運動も平均的、クラスに貢献できているかと問われれば疑問に感じてしまう程度の存在。
並な女こそが矢雨奈代である、と自覚している。
そんな並な彼女だがわかっていることが一つだけある。
信念とも言っていい。
それはやめさせなきゃいけない――と思ったことはちゃんと言葉で言おう、行動しようということだ。
矢雨奈代には難しいことはわからぬ、だがやってはダメなことぐらいはわかる。
故にビンタ。
言葉で注意したら言い逃れをされそうになったので、そういったときは行動で示す。
よくよく考えれば暴行やら傷害やらであとで訴えられるかもしれないとか、証拠だけおさえて生徒会に持ち込んで裁いて貰おうとか、このネタを使ってDクラスと交渉しようとか――そんなことは考えも付かなかった。
ダメなことはダメ。
ちゃんと叱る。
逃げようとしたら殴ってでもわからせる。
そのことで矢雨奈代の頭はいっぱいだった。
パン、パンッ、パンッ!!
「……悪いことしたら?」
「ご、ごめんなさい」
「も、もうしません」
無表情でぶん殴ってくる矢雨奈代ちゃんの迫力に押され、池と山内は震えた声で答えた。
彼らを真っ直ぐに見つめながら、淡々と叱りつけつつその頬をぶってくる彼女に折れてしまったようだ。
この二人、嫌悪や軽蔑の視線や態度には耐性はあった。
どうしようもないやつらだという視線も慣れている。
だが、ここまで真っ直ぐな視線を向けられ、ダメなことをしたんだと叱りつけられるのは……さすがに堪えた。
ガックリと項垂れた二人の様子を見ながら、頭が冷えた矢雨奈代は表情には出さずとも焦った。
二人の行動は問題だったとは言え、彼女が複数回も彼らの頬をぶったのは別の問題。
下手をすればCPにも影響が出るかもしれない。
慌てて、彼女は頼れるクラスの光のリーダーである葛城に連絡を取った。
闇のリーダーである坂柳はこういうときは頼ってはいけない。
問題の仲裁に絡ませるには邪悪なロリは邪悪なロリ過ぎる――というのがAクラスの総意だからだ。
そんなこんなで矢雨奈代からのヘルプコールを受け取った葛城だったが、彼はすぐに動いてDクラスのリーダー格との話し合いの場を設けた。
その結果、事情を聞いたDクラスの方からの謝罪もあり、盗撮事件も未遂に終わったと言うことで、今回の一件はなかったことにしようという話になり円満に収まった。
罰という意味ではわりと容赦なく張り飛ばしたお陰で制裁は加えられているし、いつもの様子なら逆ギレしていてもおかしくない二人が大人しいあたり、精神的にもかなり反省しているのだろうと判断した結果だった。
普段の様子を知っているDクラスの生徒からしても、その様子は驚いているようだった。
「本来ならキチンとDクラスで対処するべき事態だった。重ね重ね、礼を言わせて貰うよ。止めてくれてありがとう。二度とさせないようにこちらとしても頑張ってみるよ」
「いえ、私はただ止めただけですから。ダメなことはダメだ、って。それだけです」
「……ダメなことはダメ、か」
「はい、当たり前のことをしただけですから。少しやり過ぎちゃったけど」
「いや、それに関しては一切責める気はないよ。うん、ありがとう。……ダメなことはダメ、か」
最後にDクラスの平田と話しあと、矢雨奈代は解放されてお役御免となり解放された。
クラスのリーダー格同士では色々とあるのだろう、しがない並の生徒である彼女にはそぐわない。
だから、矢雨奈代はさっさと気分を切り替えてトラブルに巻き込まれた分の休日の巻き返しにはかることにした。
矢雨奈代――やめなよちゃんに政治はわからぬ。
難しいこともわからない。
ダメなことには「やめなよ」というだけの女の子である。
彼氏は未だに出来ていない。
〈自己紹介〉
●龍園翔
→成長目覚ましい男。ただし、勉学の方は……。カリスマ維持のため、担任にポイントを払って課題を出して貰っている。地頭自体は悪くはないため、学力自体はやる気があれば向上するのだが色々忙しい身なため、暗記科目などは苦手。因みに課題を出して貰うための交渉をしに行ったら泣かれた。
●伊吹澪
→山が当たったのもあり、かなり成績が良かった。日頃の恨みを晴らすため、全力で煽っている。手を出したら負けだと思ってることも見抜いているため、そりゃ全力で煽っている。楽しい。
●やめなよちゃん(矢雨奈代)
→ダメなことはダメと言えるだけの女の子。彼氏が出来ない。
●池&山内
→嫌悪や軽蔑に離れているが真っ正面から、しかも女の子から叱られるとなると……。なんか、かーちゃんを思い出したと述べている。素行不良がやや改善された。
視点での描写が欲しいキャラ
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葛城康平
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坂柳有栖
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神室真澄
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鬼頭隼
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山村美紀
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一之瀬帆波
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椎名ひより
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綾小路清隆
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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佐倉愛里
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南雲雅
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堀北学
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茶柱佐枝
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真嶋智也
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星之宮知恵