よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公と神室真澄が知らない話②(いんたーるーど)

 

 

・【とある朝の光景】

 

 

 坂柳有栖にとって、支配という在り方は当然のものだった。

 

 

 彼女は生まれつき身体が弱かったが頭脳は明晰だった。

 大抵のことは一度学べば覚えたし、それどころか1を知れば10を理解する天才。

 

 

 同世代の人間が何故こんなことも理解できないのかわからない、そう思ってしまうぐらいには普通とはかけ離れた少女だった。

 

 

 口にこそ出してはなかったものの、そんな感情はきっと伝わっていたのだろう。

 坂柳は小さな頃は良く虐められていた。

 

 単に人より優れている、というだけなら問題はなかった。

 きっと彼女を気に入らない同世代の子供たちも、「坂柳は特別だから」と納得できただろう。

 

 だが、彼女には欠陥があった。

 自分よりも何倍も頭のいい気に入らない同世代の女の子、そんな彼女には身体が弱いという明確な弱点があったのだ。

 

 

 

 だからこそ、それをあげつらって虐められることがよくあった。

 

 

 

 それに対して坂柳は相手を支配することで反抗した。

 相手を屈服させ、従える。

 

 最初は自衛の手段だったが、いつしかそれは普通なことになった。

 

 

 

「そう、つまりは私には悲しき過去があるというわけです。坂柳有栖に悲しき過去……」

 

「にゃー」

 

 

 いや、お前はナチュラル邪悪ロリだろ――という視線が飛んできた。

 確かに衆人観衆の前で土下座謝罪とかさせましたけど、それは別に趣味とかそういうわけではない。

 

 

 

 ちょっとゾクゾクした感情を芽生えさせてしまったが、心苦しく思う気持ちもあったはず……恐らく、きっと。

 

 

 

 そんなこんなな小学生時代を経て、すっかりと他人を従えることが当たり前になった坂柳は中学生時代を経て、きっと高校生活も似たようなものになるのだろうなと漠然と考えいたのだが……。

 

 

 

(世の中というものはわからないものですね)

 

 

 目の前の生物のせいで無茶苦茶にされてしまった。

 恐らく猫、きっと猫、たぶん猫な存在のせいで。

 

 

 入学してからコツコツと積み上げていたカリスマ貯金が一瞬で溶けて消えたあの恨みは未だに消えてはいない。

 

 

 

「にゃふん」

 

「しつこくないですー。この私があんな無様を……。ううっ、未だに夢に出ます」

 

「にゃにゃw」

 

「笑ってるんじゃないっ!」

 

 

 

 ホームズ。

 クラスメイトであり、今は大親友たる神室真澄のペットの黒猫……猫? 猫と自称しているから猫でいいはずな猫だ。

 

 

 思い返すにこいつが全ての切っ掛けだった。

 

 

 恐ろしく知的な怪生物のせいでこの私――坂柳有栖の高校生活は軌道修正する羽目になってしまった。

 高育の制度のクラス間抗争という仕組み自体は面白かったものの、相手となるプレイヤーはイマイチ。

 

 だからこそ、これまでの彼女なら自ら混沌な状況を作り出すためにAクラスを掌握、そして色々な策謀を繰り広げようとしたのだが大体この怪生物のせいで邪魔されてしまった。

 

 

 畜生。

 いや、今の畜生は猫畜生とかけたわけではない。

 

 

 ちょっとダーティな手段を取ろうとしたら、フシャフシャしながら妨害してくるホームズのせいで色々と修正する羽目になってしまったものだ。

 

 

 ファーストコンタクトの一件でカリスマ力が低下していたのが痛かった。

 カリスマ力を取り戻すには活躍が必要だ。

 

 

 ホームズは生徒に対してやるのはアレだけど、学校側に対しては緩くてあんまり止めても来ないのでそっちを狙うようになったのもそれが切っ掛けだった。

 

 

(おや? もしかして操縦されていませんか私? いえ、そんなわけありませんね)

 

 

 学校側は良いサンドバッグだった。

 殴ればお小遣いが貰える、賞賛も受けてカリスマ力の向上にも役に立つ、とても美味しい獲物だったといえる。

 

 そのおかげでなんとか坂柳はカリスマ力を取り戻すことに成功。

 学校という共通の敵を作ってまとめあげる、その手法の有効性を私は改めて学習したものだ。

 

 

「ふふっ、支配するより共通の目的意識で集団をコントロールする方が楽ですね。あとは補佐の役割も大事。葛城くんには卒業後も私のサポートを頼みたいところです。滅茶苦茶、楽ですし」

 

「にゃー」

 

「なにを言ってるんですか、葛城くんはもうハゲているじゃないですか」

 

 

 当初の予定とは違った学園生活となってしまったが、それなりに私は満足していた。

 

 

 もちろん、不満はある。

 特になんか私よりもホームズの方が信頼されているんじゃね? なところとか。

 

 

 能力面とかそういうところではなく、道徳観とか倫理観的な部分で。

 葛城くんなどあからさまにお目付役としてホームズを派遣してくる。

 

 

 えっ、私って猫に道徳観とか倫理観で劣ってるって思われてます?

 

 

 親友たる真澄さんにそう尋ねたときの表情が忘れられない。

 

 

 おのれ、ホームズ!

 

 

「にゃー、にゃっ」

 

「違いますー、ホームズが悪いんですー」

 

 

 とりあえずムシャクシャしたので目の前でゴロゴロしている自称猫に掴みかかった、

 だらーんとお腹を見せてきたホームズをワシャワシャと撫でる。

 

 

 くっ、なんという触り心地……っ! こいつめ! こいつめ!

 

 

 ホームズという自称猫の存在のせいで、私のスクールライフの予定は狂いっぱなしだ。

 

 私に忘れることが出来ない屈辱を与えた存在であり、生意気だし、頭の上にすぐ乗ってくる。

 肉球パンチをすぐにしてくるし、邪悪ロリというあだ名で呼んでいることを私は許していない。

 

 

 なにが邪悪ロリだ。

 私はロリではない、まだ成長期に入っていないだけでもっと身長も伸びるし、ナイスバディになる予定……具体的に言えば真澄さんぐらいに。

 

 

「にゃいにゃい」

 

「ぶっ殺しますよ?」

 

「にゃーふ!!」

 

「ええっ……そこまでガチギレしなくても。ホームズの真澄さんへのガチっぷりにはドン引きです」

 

 

 ご主人様のスタイルを舐めているのか、とぶち切れたホームズに私はドン引きした。

 いや、私としてもさすがに真澄さんぐらいのスタイルは今更厳しいとは思っているがちょっとぐらい理想を持っていてもいいはずだ。

 

 

 合法ロリはレア属性? やかましい。

 

 

 私にとって、この目の前の猫っぽいなんかこう……形容しがたい生物はなんなのだろうか。

 それは一言では説明しにくい。

 

 そもそもこいつ猫か?

 という疑問から始まってしまうので、しょうがないのだが。

 

 

 

 まあ、ホームズはホームズ――ということで納得することにしている。

 

 

 

 関係性を表すのならばライバル、宿敵、怨敵……

 

 

「それにしても月城の件、どうもありがとうございました。これでしばらくは大人しくなるでしょう」

 

「にゃっ、にゃっ」

 

「ええ、もちろんです。真澄さんに手を出そうとは……くくくっ!」

 

「にゃーにゃ、にゃっ!」

 

 

 悪巧みをする同士、悪友。

 

 

「ちょっ、頭に乗らないでくださいよ。私の帽子がズレます、この駄猫!」

 

「にゃーん」

 

「はー? 別にー? 乗らなかったら乗らなかったで別に文句とか言いませんしー? あっ、やめなさい。尻尾で首筋を撫でるなー!」

 

「にゃふ」

 

「なにがさっさと行けですか! 許しませんからね!」

 

 

 

 あるいは――あるいは? もしかしたら友達とも言えるかも知れない。

 月城の件があってからよくよくこうして側に居ることが増えた気がする。

 

 

 あくまで体感ではあるけれども。

 基本的にはふらふらどこかへ行ったり、真澄さんのところでゴロゴロしているのがこのホームズという自称猫のはずなのだが……。

 

 

(もしかしたら、私を心配している……とか?)

 

 

 聞いてみたい気もするが、外れていた場合とても煽られる気がしてなんとなく聞けない。

 

 自意識過剰、とか馬鹿にされたら羞恥のあまりに掴みかかる自信がある。

 そして、当然のように負ける未来の姿も。

 

 

 人は猫に勝てない。

 特に貧弱な運動能力の私なら尚更だ。

 

 

「むむむっ……!」

 

「にゃーお」

 

「はいはい、わかってますよ。真澄さんが朝食を作っているので早く、ですね」

 

「にゃふにゃーふ」

 

「いえ、違いますからね? 別に私だって朝食ぐらいは作れるんです。だから、真澄さん頼りになっているわけじゃなくてですね……あっ、こら揺れるな!」

 

「にゃーふ」

 

 

 

・【観察日記vol.■】

 

 

 

 この世には未知が存在している。

 

 

 未知を知ることができ、こうして観察できる今の現状は――なるほど、幸福なことなのだろう。

 

 

 少なくともあの白い世界に居ては得られないものだった。

 

 

 あの黒猫はオレに新鮮な刺激をくれる。

 存在とその行動がオレの中の知識欲を、好奇心を満たしてくれる。

 

 

 入学当初はそれなりに距離があった関係もそれなりに距離を縮めることが出来たように思える。

 

 

 慎重に慎重を期して距離感を測っていた甲斐があったというものだ。

 黒猫はオレのことを警戒こそしていたが、思った通り――というか、黒猫が言ったとおりに飼い主にさえ迷惑が掛からなければ、基本的には印象を悪化させないのだろう。

 

 

 あと、性格は極めて道徳的、倫理的だ。

 未熟である学生たちにたいして求めるハードルはそれほど高くなく、代わりに大人である人間に対しては求めるハードルがそれなりに高い。

 

 

 要するに極めて一般的な感性をしている。

 やや身内というか縄張りの中の存在に対する存在には依怙贔屓をするものの、それも良識の範囲内において。

 

 

 妙に人間くさい黒猫だ。

 奔放ではあるものの極めて理知的だ、自戒が出来ているというべきか。

 

 

 だからこそ、この黒猫の寛容のラインを超えてしまうのは恐ろしい。

 

 

 それを月城は身をもって教えてくれた。

 

 

 猫の恨みは恐ろしい。

 やはり、敵に回すべきではない存在だ。

 

 

 黒猫は恐ろしい。

 黒猫は神出鬼没だ。

 

 

 猫は液体である、などというジョークの一種がある。

 これは猫の驚異的な柔軟性に由来する話だ。

 

 猫はとても身体が柔軟性に富んでいる。

 関節や筋肉、靭帯も柔らかく、且つ内臓の位置なども移動できるため、一見すると通れないような狭い場所に入り込めたり、通ったりすることが出来る。

 

 

 それらをネタにしたジョークというわけだ。

 

 

 猫は人が通れない場所も通ることができる。

 柔軟性に富んだ小さい身体、高い瞬発力と跳躍力、俊敏性に優れている。

 

 

 だからこそ、どこへでも行けるのだがこの黒猫はそれ以上だ。

 

 

 意識して観察してみてわかったことがある。

 黒猫は人の意識の隙間に入ることができるということだ。

 

 

 意識して観察しているはずなのに、例えば声をかけられて意識をほんの僅かにでも逸らしてしまったら次の瞬間には消えてしまっている。

 人間というのは多くの情報を一度に処理しているように見えて、実際のところは視界に捉えているはずのものでも必要なもの、不必要なものを取捨選択して処理を行っている。

 

 

 そのため、見えているはずなのに見えていない――という現象が起こる。

 見えているが認識できていない……と言った方が正しいのかもしれない。

 

 

 視界の中に入っていてもそうなのだから、視界外のことなど尚更といっても過言ではない。

 人の知覚は概ね視覚情報が大半でそれ以外の感覚器官の情報精度は高くはない。

 

 

 黒猫は意識と意識の間に滑り込ませる術を持っている。

 

 

 だからこそ、黒猫はどこにでも居るし、黒猫はどこにも居ない、どこにでも現れるし、どこでも認識されない。

 

 

 この高育は既に黒猫の縄張りなのだろう。

 耳も目もどこにあるのか、今も見られているのか。

 

 

 黒猫は賢い。

 人語を理解するだけでなく、普通に文明の利器も扱える。

 

 

 黒猫はとても賢い。

 一般的な動物に向けられる賢さのレベルではなく、黒猫は完全に人語を理解しているし、何なら感情の機微まで理解している。

 

 更に言えば普通にスマホやパソコンのキーボードを使っているのも見た。

 やはり、怪異。

 

 最近の怪異はネットも使いこなすのは定番の話だ。

 

 月城を嵌めた時もそうだが、あの神出鬼没っぷりで道具まで使うのは反則だと思う。

 

 更に言えばずる賢さもあるのが酷い。

 黒猫は相手によって賢さを見せるラインを変えている。

 

 

 特に学校側、大人に対してはとても警戒しているらしく生徒側と教師側では黒猫の賢さについて、恐ろしく差異があるようだ。

 

 

 茶柱を含め、ただのお騒がせな猫。

 あるいは時々とても甘えてくる賢い猫どまりの印象だった。

 

 

 これは恐らく故意によるものだ。

 黒猫の行動方針からして、基本的に学校側は飼い主の敵――だからこそ、情報を与える気がないのだろう。

 

 

 あるいは感受性が高い子供には認識できて、大人には認識できないという怪異定番のアレか……まあ、それはともかく。

 重要なのは教師陣、大人たちは認識が甘いという点だ。

 

 

 だからこそ、黒猫を月城は警戒することが出来なかった。

 驚くほど無防備に背を晒し、そして怒りに触れた結果があの様だ。

 

 

 

 一応、父からの手先と言うことだが正直なところ、もう月城常成には興味を感じない。

 それよりも黒猫だ。

 

 

 

 やはり、黒猫は素晴らしい。

 考察のし甲斐がある。

 

 

 特にあの当然のように溶けこむ力、コミュ力……というのも変な言い方だが、それらは興味深い。

 

 

 黒猫と親しければ親しいほど、黒猫のやることを当然として受け止める。

 違和感を抱かない、黒猫のやることだから……ということで終わる。

 

 

 オレ自身も既にそうなっているような気がする。

 できるだけ客観視し、認識するように努めているつもりだが――ああ、なんて……。

 

 

 

「この世は未知に溢れている」

 

 

 

 




〈人物紹介〉
●坂柳有栖
→最近はもう神室の部屋でご飯を食べるのがいつものことになった天性のドSロリ。悲しき過去はあるがそれはそれとしてナチュラルボーン、屈辱の顔で謝らせたいじめっ子のことはとてもいい記憶として残っている。怨敵たるホームズのせいで高校生活の予定がだいぶ狂ったがまあこれはこれで……という気分。ダーティ過ぎる行為をすると邪魔してくるホームズだが、月城に関してはゴーサインが出ているので新しい玩具だと思っている。

●綾小路清隆
→ホームズとの距離もちょっと縮まったので観察に勤しんでいる。その存在と行動一つ一つが興味深い観察対象、知的好奇心が擽られる。大体、やっちゃダメなラインとOKなラインも把握できたので今は存分に観察を楽しんでいる。月城のことは既に対して興味ない。けど、ホームズのサンドバッグとしては期待している。

視点での描写が欲しいキャラ

  • 葛城康平
  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 鬼頭隼
  • 山村美紀
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 佐倉愛里
  • 南雲雅
  • 堀北学
  • 茶柱佐枝
  • 真嶋智也
  • 星之宮知恵
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