よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話 作:サンディエゴ
畜生系主人公が神室真澄と一緒に放課後デートに行く話
「本当に大丈夫なのか?」
「ええ、問題ありませんよ。なにか手を借りる必要が出たら、その時はお願いしますね?」
「ああ、任せろ。どこまで出来るかはわからないが、それでも仲間として友人として手を貸そう」
「ふふっ、ありがとうございます」
月日が経つのは早いもので12月も後半にさしかかった教室。
坂柳と葛城がそんな話をしているのが目に入った。
内容に関してはまあ、月城の例の動画だ。
高育はすぐにネット制限をかけてしまったので、実物の動画を見た生徒は多くはない。
だが、誰も居ない――というわけでもなかった。
ニュースとかには圧力をかけているせいで、不自然なほどにノータッチだったがSNSとかではそれなりに騒ぎになっているからな、当然生徒たちの耳にも入っているわけで……。
被害者の生徒が坂柳と綾小路ではないか、という話はそれなりに広まっている話だ。
そして、それを坂柳も綾小路も肯定はしないが否定もしないスタンスを通している。
ぶっちゃけ、否定してない時点で肯定しているようなものだが対外的には認めていない――というスタンスが重要なのだ。
この件、さすがに月城としても認めるのは不味いのであくまでフェイク動画の一種であると生徒たちには説明している。
嘘の動画に流されてあらぬ噂を無責任に流してはいけないと、場合によってはクラス評価に差し障りも出てくるかもしれないと、明言こそしていないものの脅しのような文言も加えながら。
要するに箝口令のようなものを発布したわけだ。
こちらの狙い通りに。
初動が遅れてしまった月城にはその選択肢しかない。
だが、こういった対応すること自体が彼に対する疑心を煽る結果になる。
特に高育なんて基本的に生徒側からの教員に対する信頼度なんてカスみたいなもの。新しく外から来たってことでちょっと期待したやつも居たかもしれないが、こういった話が出てくると「……あっ、ふーん(察し)」という感じになるわな。
被害者と思われる綾小路や坂柳も明確に否定していないというのも要因としては大きい。
こういった類いの話は被害者側が否定でもしない限り落ち着かないが、話自体は事実なので月城も「あれは嘘の内容だ」と公表しろなんて強く二人には言えない。
なにせあまり刺激したら手段を選ばなくなる――と疑っているからだ。
綾小路と坂柳が知らぬ存ぜぬを貫いている以上、迂闊に突くことも出来ないと状況。
更に月城はやらかしたせいで方々に頭を下げるのに忙しい様子で、今は一種の冷戦状態に近い形となっている。
「ふふっ、穏やかに来年を迎えることが出来そうですね」
「にゃー」
「やれやれ、二人してあくどい顔をして……というか今年だけなの?」
「まあ、あの人にしてもこのままというわけにもいかないでしょうからね」
うふふっ、という邪悪な笑みを浮かべるロリの様子をふーんと言う顔で流しながらはご主人は俺の身体を抱きしめながら、さわさわと触っている。
ついでに匂いも吸っている。
「最近、遅くなってる……ホームズ成分が足らない」
月城の監視もあったから……。俺もご主人成分が足らなかったところなんだ!
「なら、今日はデートね」
「にゃー!」
「ふふん、私も真澄さん分が足らなかったところです。今日はお部屋にお邪魔しますね!」
目下の悩みであった月城がしばらく動けなくなったことで、坂柳も気が楽になったのだろうそんなアピールしてきた。
ご主人に危害が及ばないか気にして少し距離を取ってたからな、何もかんもいざとなったら普通に暴力や権力を振りかざすタイプの邪悪な大人の月城が悪いのだ。
やだね、ああいったタイプー。目的のためなら手段を選ばないって言葉の意味を勘違いしているタイプ。目的遂行のためにより多くの手段を選択肢として取れることと、ダーティな手段を取ることはイコールじゃないってことがわかってない。
別に汚い手段を取れるのは、それ自体が偉いってことじゃないっていうのに。
「ああいうのはダメですよねー」
ダーティな手段にはダーティな手段なりのデメリットとリスクがある。
それを理解した上で正攻法でもどうにもならないときに使うべき手段なのに、それ以外の手段を模索する前にそういった手段を実行するのは、そういった手段を使うことに慣れて、溺れてしまったダメなタイプの典型だ。
ダーティな手段というのは効果は高いから、短期間で問題を解決するという点では有効な手段なのだがそれはリスクやデメリットと紙一重。
効果は高いけど副作用も強い薬みたいものなのだ。
本来なら用法用量を守ってここぞというところのみで使うべきなのに、薬を使った方が早く問題が解決するからと言って常飲すればそりゃ問題だって起こる。
少なくとも初手暴力、恫喝、脅迫なんて手段はその後の手段を制限することになる悪手。
それでもやってしまったあたり、それで上手くいったという成功体験が月城の中から選択肢を奪っているのだろう。
「事情はどうであれ、高育の理事長代行の地位に就けるほどにまでなったのですから、それなりに権謀術数には秀でていたでしょうに」
「にゃー」
「反面教師にしろ、ですか。まあ、そうですね。貴重な先達の教えと受けとりますかね。まあ、それはともかく12月と言えばなんですか真澄さん」
「12月……は12月でしかないと思うけど」
「そうですね、クリスマスです。というわけでクリスマスパーティーをしましょう!」
「にゃー」
「そうね、ホームズ。なんか無茶苦茶興奮してるわね。というか理事長代行はいいの?」
「どのみち動けませんよ。事後対応もそうですけど、それなりに社会的の地位の高い人間にとって12月というのは忙しい時期ですから。年始年末に向けた準備とか挨拶回り、パーティーとか」
「そういうもんなの?」
「ですねー。私もこの時期はよく父に付き合わされました。クリスマスとか連れられて、パーティーに出席するのが当たり前……みたいな?」
「へー、お嬢様みたい」
「にゃー」
「いや、あの? 私、お嬢様なんですけど? 上流階級の出身ですよ?」
「クソガキ感が強くて忘れたわ。ね、ホームズ?」
それな。
「酷くないですか?」
底意地の悪さというか、滲み出る性格のアレさ加減がお嬢様っぽいオーラを中和しているのかもしれない。
「えい♪」
「しゃー!!!」
「こら、教室で騒がない」
反射的に襲いかかってくる坂柳の手を回避して、俺は臨戦態勢に威嚇の声を上げた。
対する坂柳も威嚇のポーズをしようとしてご主人に止められた。
因みに俺と坂柳が一触即発の雰囲気になることはAクラスの日常の風景の一部なので、一連のやり取りは誰も気にした素振りを見せない。
Aクラスは今日も平和である。
まあ、それはともかくとして。
「それにしてもクリスマスパーティー、ね。どんな感じなの? 少し興味があるわ」
「楽しいものじゃありませんよ。そりゃ、食べ物とかはいいものが出ますけどね。基本的に年上の方々ばかりの場所ですからね。そこで愛想を振りまく仕事のようなものです」
「愛想を振りまけたのね」
「にゃー」
「まあ、確かにホームズの言うとおり、見てくれはいいからね。確かにホームズにやられるまで、愛想……というのとは少し違うけど、外面は取り繕ってたわね。なるほど」
「あの……そこら辺の話やめません? 普通に黒歴史なんですけど。あと負けてないですから、あれは引き分けだから」
「んにゃ、にゃー♪」
「何だとこの野郎……っ! ごほんっ、失礼しました。話を戻しますと私が毎年行っていたクリスマスパーティーはとてもつまらないものだったということです」
「まあ、確かにおいしいものを食べられるとしても、大人ばかりのパーティーに出るのはね。……それで?」
「今年は父も居ませんし、そもそも高育に居るので基本的に外出禁止。というわけでパーティーに強制的に行かされることもなく、クリスマスを過ごせるということなんですよ」
「いや、もうちょっと心配してやりなさいよ」
ちょっと鼻息を荒くして興奮している様子の坂柳にご主人が突っ込みを入れた。
一応、状況的にはピンチのはずの親類が居るにも関わらず、クリスマスを楽しむ気満々の彼女に。
「軍資金はタップリありますからね。楽しいクリスマスパーティーをしましょうね、真澄さん!」
「思った以上にやる気満々ね。私はそういうイベントごと熱心にやるタイプじゃないんだけど。面倒だし」
「えー」
「別にやらないとは言ってないわよ。……まあ、確かに適当にケーキだけ買って食べて終わりってのも寂しいし」
「ですよね!」
「それに何よりホームズと過ごす初めてのクリスマスになるわけだし、ここらで今までの主義主張を捨てるいい機会とも言えるわね」
「さすが、真澄さんですね。清々しいまでのホームズ第一主義! 妬けます!」
「変な理事長代行も来て、なんか学校も微妙な空気になっちゃったしその空気のまま今年を終えるのも何だから、パーッと楽しむのもいいかもしれないわね」
「――っ、しゃあ!」
ご主人の言葉に坂柳は歓喜の声を上げた。
なんだかんだご主人のこと大好きだよな、こいつ。まあ、如何に邪知暴虐の化身であるロリデビルアリスと言えども、大天使かつ女神相手に負けるのは当然のことか。世界の理と言っていい。
友達と一緒のクリスマスパーティー決定だー、と考えているのが丸見えの雰囲気の坂柳。
容姿がいいので本当に可愛く見える。
いや、実際に可愛くはあるのだけどそこは坂柳だし……。
まあ、それはさておきクリスマスパーティー決定だ。
いいね、実にいい。
なんていうか青春って感じがしてそこがいいのだ。
原作だとCクラス――というか龍園と綾小路のどったんばったん大騒ぎぐらいのイメージしかないけど、あんな殺伐とした学園生活なんてご主人に送らせるわけには行かない。
というか邪悪なロリの命令でなんか尾行とかさせられてたんだよなご主人……可哀想。
でも、まあこの世界の坂柳は善の……善の? まあ、相対的には善の坂柳だから仲良くパーティーを楽しもうぜ!
そんなこんなでパーティをやることで話が通った二人は計画を練り始めた。
年相応に楽しげな様子で計画の話をする二人の様子を見ながら、後方腕組み猫(心情的な意味で)をしながら眺めているのだった。
――――
放課後、俺達はパーティーの準備のためにショッピングに出掛けた。
時期も時期なので結構、人が多い。
やっぱ、テストも終わったのでみんな息抜きをしたくなるタイミングなのだろうな。
「おや、あそこに居るのは……」
「愛里ね。それに鬼頭も……ああ、そういえばクリスマス用の動画が云々言ってたわね。その準備なのかしら?」
「ふふーん、面白そうなので見なかったことにしましょう!」
「アンタね」
とても面白そうな顔をする坂柳に対してため息を吐きつつも、まあ邪魔することもないだろうと頷いたご主人。
というか性格悪いぞー。今更だけど。
「ええい、尻尾でペチペチしてくるんじゃありません。というか私の頭に乗らないでください! 帽子がズレちゃうでしょうが!」
12月だからね、冬の寒さに身体の弱い坂柳のことを気遣って温めてあげてるんだ。
「まあ、そうだったんですか! ――なんて、言うと思いましたか。頭の上に乗っても意味ないでしょうがこの駄猫!」
「はいはい、外で騒がない。それよりもパーティーの時には何が食べたい? どうせならちょっと手の込んだものを作ってみたいわね」
「えーっと、そうですね」
「あとはホームズ用のキャットフードの取り寄せも考えおかないと。豪勢なやつが良いわね」
肉で良いですよ、ご主人。ペットフードも良いけど、ワイルドにガッツリいきたいですご主人!
「肉かー」
「クリスマスにお肉……七面鳥?」
「七面鳥なんて調理したこともないんだけど。オーブンはあるけど作れるのかしら?」
「そういえば大型のを購入していましたね真澄さん」
「一人暮らしだし、ちょっと凝っても良いかなって」
料理上手なご主人マジ女神。
「幸い金あるなら色々とチャレンジしてみようかなって思ってね。奮発して買ってみたけど結構良いわね。料理に幅も増えて楽しいし」
「時々料理のサイトも見ていますしね。お料理上手な女性は素晴らしいと思いますよ」
お前は食い専だもんなー。
「いえ、別に私は料理が出来ないわけではありません。できるけど、やらないだけです。そこを間違えないように。それで話を戻しますが……」
「クリスマスの料理の話よね? ターキー、ターキーか……やってみようかな。うん、チャレンジは大事よね。ホームズのお願いだし」
やったぜ。香辛料たっぷりのスパイスが利いたやつをお願いします! ヒャッハー! キャットフードも良いんだけどね。やっぱり、これ身体に悪いだろってレベルで濃いものを食べたいときがあるものなのだ。
「香辛料、スパイスの利いた……大丈夫なのかしら? 猫的に」
「まあ、タマネギもなんか普通に食べてましたし、チョコレートとかも……。ダメそうなら自分で言うでしょう」
「そうね、ホームズは賢いものね」
「本当にダメそうなのはきっちりと言ってくるだろう、という点については確信していますが……それはそれとして、やっぱりこいつ猫――猫? いえ、深く考えることは止めましょう」
そんなことを考えながらケヤキモールの中をああでもない、こうでもないと喋りながら回っていると不意に見覚えのある顔を見かけた。
龍園と南雲という単体でもアレなのに、セットとなるとどう考えても面倒な二人組。
波長が合うのか原作とは違い色々と交流があったせいなのか、妙に仲が良い二人だ。
「よし、ここは見なかったことにしましょう」
「にゃー」
ご主人の言葉に即座に同意を示した。
いや、何だかんだそれほど悪いやつらではないことは知っているのだが、二人で居る時点で嫌な予感しかしないというか、絶対に悪巧みしているだろうという確信しかないというか。
ともかく、そういった勘も働き、相手が気付いていないことを良いことに俺とご主人は見なかったフリをしようとして――
「さあ、行きますよ真澄さん! ホームズ!」
「知ってた」
「にゃーお」
目を輝かせながら突撃しようとする坂柳の様子にため息をついた。
平穏を愛するご主人や俺と違い面白そうなことに突撃するのが彼女だ、嫌そうな顔をしているご主人をグイグイと引っ張っている様子は見かけも相まって、まるでママにわがままを言っている子供のようだった。
「しょうがないわね」
「にゃー」
そして、二人のところに突撃した。
するとこちらに気付いた龍園たちはあくどい顔で笑った。
あー、ろくでもないことを考えている顔……。
「何を企んでいるの悪童三銃士」
「おい、いきなり失礼だな神室」
「先輩に対する礼儀がなってないな」
「三銃士って一人足りなくありません?」
「にゃー」
「なっ、私もですか!? 私は彼らと違って品性がありますので」
「「おい」」
こいつら仲いいな。
それはさておき、何を企んでいるのか吐かせることになった。
この二人の組み合わせで仲良く放課後を過ごしていることはあり得ないわけで……。
「酷いことを言うな。俺はただ生徒会の人間として後輩からイベントの相談を受けていただけだ」
「イベント?」
「そうだぜ、クリスマスに年末と帰ることも出来ない学生のために何かイベントをしたいと思ってな。その相談をしていたところだ。くくっ、ただそれだけだぜ」
うわっ、胡散臭い。龍園が学生のためとか……。
「お前らもどうだ? 参加しないか?」
「イベントですか……確かに面白そうではありますけど、内容はいったいどんな物を?」
「ああ、イベントの内容は極めてシンプル―――」
龍園は、Cクラスの王は自信満々に言った。
「――ミスコンをするぞ」
〈人物紹介〉
●ホームズ
→とりあえず、しばらく月城を監視して陰謀とかできる状態じゃないのを確認したのでご主人に全力で甘えることを決めた猫。相手が相手だったため、仕方なく離れて監視に労力を割いていたがマスミニウムが足りなくなって瀕死になっていた。
●坂柳有栖
→綺麗に嵌めてなおかつ月城が手が出しにくい状況を作って満足。クリスマスと年末も迫ってきているため、「お前はあと!」な心境。親友とついでにライバルの猫と一緒に過ごすのを楽しみにしている。――それはそれとして、なんか面白そうなことを企んでいそうな龍園たちを見つけて突撃した。面白そう、と思ったら全力で突っ込んでいくアグレッシブ邪悪ロり。
●南雲&龍園
→なんか仲がいい。悪だくみ仲間。月城がやらかして、教員たちが「急に来た代行なんかヤバそう。やべえよやべえよ」しているのを察して、今年最後の儲け話をしようと画策している。よっぽどアレなものじゃなきゃ、いちいち干渉してこないだろうと見透かしている。
視点での描写が欲しいキャラ
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葛城康平
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坂柳有栖
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神室真澄
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鬼頭隼
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山村美紀
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一之瀬帆波
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椎名ひより
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綾小路清隆
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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佐倉愛里
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南雲雅
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堀北学
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茶柱佐枝
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真嶋智也
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星之宮知恵