よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話 作:サンディエゴ
ミスコン……っ! ミスコンとは――つまり、ミスコンと言うことなんですね! 龍園さん! いや、龍園様!
龍園の言葉に俺は目を輝かせて、尻尾もフリフリしていることだろう。
「ミスコンとはまた随分な……」
「馬鹿らしいイベントを考えたわね」
「はっ、わかってねーな。学生のイベントなんて馬鹿らしいぐらいがちょうど良いんだぜ? それにMs.高度育成高等学校――語呂が悪いな。Ms.高育を選ぶってのは面白いだろう。大学とかではあるみたいだし」
「あー、そういえば聞いたことはあるわね。高校でそういったイベントはあまり聞かないけど」
「だからこそ、やるんだろ。高育でなら別にやっていいだろ」
龍園はやる気だ。
ミスコンなんてイベント、別段好きというわけじゃないだろうにこのやる気……どうやら、真・体育祭で味を占めてしまったらしい。
「クリスマスに年末、色々と行事が迫っているというのに一緒に過ごすやつも居ない可哀想な生徒も多いだろう。そんな生徒のために彩りのあるイベントを用意してやろうってんだ」
「どう考えてもポイント目的でしょ」
「くくくっ、運営資金のために参加費を貰って、ちょっとトトカルチョもして、イベント中に出店を出すくらいだぜ?」
くそっ、龍園のくせに真っ当に稼ぐことを覚えやって!
「というかそもそもミスコンなんて可能なんですか?」
「可能か、不可能かと聞かれれば可能だな」
坂柳の言葉に南雲は答えた。
「別にイベント自体は変なイベントでもないから、場所とかの貸し出しとかは生徒会としては問題ない。申請は許可できるはずだ。問題はイベント自体の開催、これに関しては教員に申請して許可を貰う必要があるんだが……」
「くくくっ、今はどこぞの性悪のせいで教師共はてんやわんやの状態だからな」
「なるほど、そこにつけ込んで通してしまおうと? あとどこぞの性悪とはいったい誰のことなんでしょうか? 私には皆目見当もつきません」
あー、なるほどなー。さすがは龍園だ。何というか強かというか、よく状況を把握しているというか。
龍園の言ったとおり、現在高育の教員たちは混乱している。
理由は言わずもがな、理事長代行である月城のやらかしのせいである。
あの一件は教員達に少なく動揺を与えていた。
学校としてもそれなりの対応を強いられたし、そもそも着任したばかりでこんな問題を起こす上司で大丈夫なのか、という心配によるものが大きい。
大半の教員にとって坂柳理事長がなぜ急に学園を離れる事態になったのかもよくわかっていない状況なのだ。
いや、名目的にはこれまでの運営に関することで云々という話なのは知られているものの、タイミング的にどうにも急すぎると違和感を持っている教員は多い。
そこであの事件だ。
月城が坂柳を相手に脅迫している様子の動画がばら撒かれてしまった事件。
彼の狙いは綾小路だったのだが、教員からすれば坂柳理事長の娘である彼女を最近、急にやってきた理事長代行が脅しているという状況の方がヤバかった。
急に居なくなった坂柳理事長のことを考えると色々と疑ってしまうには状況証拠としては十分だ。
一応、あの動画はフェイク動画の一種だとなっているがその言葉を信じている教員は少ない。
要するに教員の大半は月城を信用していない、というわけだ。
まあ、来て早々やらかすし、なんかこう……変な陰謀の影がある上司とか嫌すぎるか。下手に逆らおうとしてもこの高育って理事長権限が強いから、人事権を盾にされたらどうしようもないし。
生徒に対する脅迫や暴行とか、普通に刑事事件を起こしそうな上司を持ってしまったことを察した教員達は現在、無茶苦茶困っているのだ。
中には求職雑誌やサイトを覗いている教員もいた。
判断が早い。
実際、月城の背後はホワイトルーム関係やらなにやら変に巻き込まれたら人生が狂いそうなものも多いため、関わろうとしないのが吉ではある。
とはいえ、高育なんて異常環境で仕事をしていた教員達が外で仕事が出来るのかと考えると難しそうな気もするが――まあ、そこら辺はともかく。
要するにとても教員達は今はとても混乱している状態なので、申請さえすれば簡単に通るだろうと龍園は見越しているわけだ。
職員室の様子を見る限り、たぶんその予測は正しい。
特に問題がありそうでもないイベントの許可なんて、特に問題もなくさっさと出すだろう。
そんなことより、自身の今後の身の振り方を考える方が大変そうだ。
「ミスコンの開催自体はまず問題はない。問題があるとすればやはり参加者だな。3年からは良い感じの返事が来た」
「2年の方はこっちから言っておく。自由参加にはなるが集まりはするはずだ」
「そこまで話が進んでいるんですね」
「3年はそんなのやってる暇ないんじゃ……」
「むしろ、だからこそだろう。息抜きは必要だ。堀北先輩からも色よい返事は貰っているぜ。楽しみにしているってな」
堀北兄、わりとはっちゃけてるな……。何というかストレスフリーになってる。やっぱアレかな? 3年生はもうクラス対抗戦が終わったからかな。
色々と原作と状況が違う今の高育、大きな変化と言えば3年生の状況にもかなりの変化が発生した。
簡単に言えばクラス間抗争が終結してしまったのだ。
ここら辺、原作と違って真・体育祭とかやって生徒間での親交が増えたのが原因なんじゃないかと思う。
要するにアレだ。
「さすがにもう特別試験云々を気にしてられる時期じゃないし、もうAクラスの勝ちでよくね? そんなの気にするより卒業に向けての準備に労力割きたいわ」という意見のもと、4クラスで合意が発生したとか何とか。
まあ、下位の2クラスはモチベーションなかったし、Bクラスも正直ポイントの差的にキツいものがあったからな。
特別試験の内容なんて生徒側からすれば運でしかない。
そんなのに期待して逆転してAクラスで卒業を目指すより、さっさと諦めた方が合理的というか賢い選択だろう。
今後の試験は談合して学年で最大利益を狙うつもりらしい。
完全に坂柳メソッドである。
何気にクラス抗争を強いる制度が完全に軋みを挙げている気がするな……、でもまあ仕方ないか。ぶっちゃけ、ポイントで競って卒業時にAクラスの人間だけが報酬ゲットってシステム自体に欠陥があるからなー。
欠陥とは具体的に何かと言えば要するに得点差が開きすぎたら、そもそも競争すること自体が無駄になってしまうという点だ。
基本的に試験でしか大きなCPの変化が起きず、試験のチャンスも限られているとなると点数差が開いてしまえば意欲を維持するのは難しい。
特に高育の試験は試験の内容によって、所謂CPを稼げる美味しい試験とたいして得られないしょっぱい試験とで差があるのでより意欲を維持するのは難しいだろう。
例えばトップとのCPが100ほど開いていたとして、最後の試験がそれをひっくり返せない内容の試験だったらやるだけ無駄という話だ。
クイズ番組とかでよくあるヤツだ、トップとの点数差が開きすぎて最終問題をやる意味がなくなるやつ。
テレビ番組ならエンタメとして、最終問題に勝ったら得点が10000ポイント――なんて出来るかもしれないが、この高育でやったら普通に暴動が発生するだろう。
要するにとてもシビアなのだ、この制度を維持するのは。
常に学年全体のCPのバランスを考えながら試験の内容や得られるCPの量を調整し、均衡状態を維持しないとこうして破綻してしまう。
これまではなんだかんだ、一年の時から特別試験の度に競い合って場合によっては悪辣な手も使い追い落としたり、嵌めたりした仲だったので学年全体で協力という発想自体がなかったんだろうが、一旦真・体育祭というイベントでみんなで協力したという事実が色々と変えてしまったのだと思う。
結果として3年生はさっさと特別試験やらクラス対抗戦やらから一抜けてしまったというわけだ。
恐らく、学園側のゴタゴタ――現理事長がいなくなったり、代行としてやってきた月城がやらかしたことも影響を与えたのだと思うが。
それにしても堀北兄がな……。まあ、試験云々に頭を悩ませる必要が無くなったら、イベント事とかうるさく言うこともないか。むしろ、いい思い出になるからもっとやれぐらいの感覚なのかもしれない。
ともかく、3年生はミスコンにノリ気のようだ。
2年に関しては南雲が動けば問題ない、というか内容的にそれほど大きな反発があるような類のものではない。
「優勝賞品がないのも寂しいからな。一応、ミス高育になったやつには100万プライベートポイントが授与されることになっている」
「誰が出すのよ、それ」
「くくっ、そこは主宰者である俺と南雲先輩らで折半して……なあ?」
「ああ、そうだ。学年ごとに決めるから300万プライベートポイントも用意したんだ。イベントを盛り上げるため、わざわざ身銭を切ってな」
「感動的な話だろ?」
「いや、普通にイベントでそれ以上に稼ぐつもりだからでしょうが。押しつけがましいわね」
「ふっ」
ご主人の突っ込みをスルーする龍園、さすがにイイ性格をしている。
それにしても優勝賞金まで用意して大々的にやるとはな、本気だなコイツ……。というか事前の根回しの手際の良さといい、真・体育祭でのデスマーチを反省しているというか何というか。
変な方向……いや、この場合は真っ当な方向と言うべきだろうか。
成長している龍園に俺はちょっとだけ困惑した。
いや、よくよく考えれば別に変なことをはしてないんだけどね。龍園翔というキャラクターとして考えると変な方向過ぎるというか何というか。それを言えば南雲もそうだけど。
南雲ももっとアレなキャラだったはずだが、一応正々堂々と真・体育祭で堀北兄と戦えたのが良かったのか精神的には安定しているように思えるな。
「まっ、そんな感じでよ。1年には明日にでも話を持っていく予定だったんだが……どうだ?」
「中々面白いイベントですね、私はいいと思いますよ」
「そうかそうか。それでこういったイベントの場合、やっぱり重要になってくるのは参加者の存在だ。誰も参加しないんじゃ、つまらねーからな。できるだけ、人を集められるやつに参加して欲しい。つーわけで坂柳、お前もどうだ? 胸は無いし、身長も足りないが黙っていれば可愛げがあるから優勝も狙えるんじゃないか?」
確かに。
「喧嘩売ってます??」
褒めてるんだぞ。
黙っていれば天使のような可憐な容姿をしているからな、ミスコンで受けるタイプかと言われると疑問符が浮かぶがかなりいいところまでイケるんじゃないか――というのが俺の素直な評価だ。
容姿はいいよね、容姿は。
「とてつもなく失礼なことを考えていますね、このボケ猫……。まあ、いいです。それよりも参加者の存在は重要ですよね、参加者の質によってイベントの成功確率は大きく作用されるといってもいいでしょう」
「ああ、そうだ。Cクラスの女どもには出場するように命令を出したがな、Cクラスの女だけが出場しても盛り上がらねぇ」
「まあ、そういったものは対抗をする相手があってこそですからね」
「そういうわけでAクラスにも是非とも参加して貰いてぇ」
「なるほど、そういうことですか。ならば、私は推薦することにしましょう。注目を集められるような美人――それはつまり、真澄さんのことです!」
「なんでよ!?」
いきなり話を振られたご主人が抗議の声を上げた。
「ミスコンを盛り上げるにはやはり美人な女子生徒が参加するべきです! Aクラスを代表して私は真澄さんを推します!」
「いや、白石とかでいいでしょ!?」
「私の推しは大親友の真澄さんなんです」
「有栖……」
「真澄さん……」
「私がこういうの嫌がるというか、恥ずかしがる姿とかを期待しているんじゃないの? おい、目を逸らすな」
ご主人の指摘に坂柳はふいっと目を逸らした。
どうやら、図星らしい。
クールなご主人が恥ずかしがる様子は大変愛らしいので仕方ない。
それにしても。
なんてやつだ、坂柳……。ご主人がミスコンなんて……ミスコンなんて……けしからん、実に……いや、しかし!
「まあまあ、いいじゃないですか。学生の思い出になるはずですよ? 確かにこういうことが苦手な真澄さんに対し、もうプッシュすることで困った顔とか照れた顔を見たいという邪念はありますが」
「本当に坂柳してるわね、有栖」
「人の名字をまるで悪口のように言うのはやめましょう? それはそれとして、真澄さんが美人だと思っているのは本当ですからね? 真澄さんなら優勝を狙えるはずです」
「いや、私は……その、そういうのは……」
困った様子のご主人を口説き落とそうとする坂柳。
基本、目立つことが嫌いなご主人は乗り気ではないようで彼女は説得のための矛先を不意にこちらに向けてきた。
「ほら、ホームズの様子もみてくださいよ」
ふっ、甘いな坂柳。俺をお前と一緒にしてもらっては困る。
確かにご主人がミスコンに出ている姿は見たい! ミスコンというイベントに出ているご主人はいつもとは違う装い、雰囲気できっと美しく素晴らしい物になるはずだ! だが、ご主人はこういった催しが得意ではないことも知っている! 誇り高きペットとして、自らの欲に支配されてご主人が嫌がることを強いることなんてそんなことできるはずがない!
故に不動……っ! 我が心は不動なのだ!
ブンブン!! ブンブン!!
「見てください、こんなに期待に尻尾が荒ぶっています。これを見てどう思いますか!?」
「かつて無いほどホームズの尻尾が荒ぶっているわね」
なん……だとっ!? バカな、必死に抑えていたというのに――身体が、尻尾が、勝手に! ご、ご主人ー!
「相変わらず個性が強い猫だな」
「凄い勢いで尻尾が動いているな。我が物顔で座っている坂柳の頭にべしべしと当たっている」
「いつの間にか慣れちまったがなんで当然のように頭に猫を乗せているんだ坂柳のやつ……いや、この場合は勝手に乗ってるのか?」
「真澄さん!」
ご主人……っ! ご主人が嫌なら俺は……俺は……っ!
「ネットの動画で見たことはあるが頭を抱える猫はリアルで初めて見た」
「くくっ、苦悩が伝わってくるようだぜ」
血反吐を吐きそうになるほど悔しいが諦めるしかない。
俺はできる猫なのだ。
なのだ……っ!!!
「あー、もうわかったわよ。出てあげるから……とりあえず、有栖は今目の前でポケットに戻した目薬を出しなさい」
「はーい」
「目の前で目薬差して泣き真似とかどんな度胸だ。さすがは坂柳というか……。つか、なんで目薬?」
「最近は乾燥してきたからか? まさか何時でも泣き真似をするためじゃないと思うが……」
なんか後ろの方で男二人が何か言っているがそんなことはどうでもいい。
それよりも重要なことがある!
マジですか!? マジですかご主人……っ!! ミスコンに!? ご主人が参加を……!?
やはり、気乗りはしないようだがそれでもちょっと恥ずかしそうに頷いたご主人の様子に、俺と坂柳は歓喜の声を上げた。
「やりましたね、ホームズ!」
「にゃーん!」
「いえーい!」
俺と坂柳はその喜びを分かち合うようにハイタッチをしたのだった。
「はあ、まったく……すぐに喧嘩する癖に仲いいんだから」
「よっしゃ、参加者が一人増えたぜ」
「神室ぐらいの容姿なら随分と集客が見込めそうだ。特に神室みたいなタイプは女子受けもいいからな……」
「くくっ、順調だぜ」
「こっちもこっちで……まったく――ここに来てから飽きないわね」
〈自己紹介〉
●ホームズ
→可愛い女の子は好き。なのでミスコンというだけでテンション上がったが、神室が出るならもはやテンションは天井知らずな猫。月城のことなんて忘れた。どうでもいいわ、あんなおっさん。
●神室真澄
→ホームズと坂柳の熱意に負けた。あまり乗り気じゃないのは事実だが、自分で言ったことをいつまでもグチグチとする性分ではないのでさっさと切り替える。まあ、なんか盛り上がっている一人と一匹に対してはちょっとした制裁を行った。
●坂柳有栖
→ほっぺをムニュムニュされたが問題ない。この後の買い物でミスコン出場の事実を盾に神室の着せ替えをする気満々。
●南雲&龍園
→頭を抱え苦悩するホームズを見ても「悩んでるなー」ぐらいで流せるくらいには汚染された。猫が両前足で頭を抱えて悩んでいるのが何だってんだ! そんなものは日常の風景だったはず。
視点での描写が欲しいキャラ
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葛城康平
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坂柳有栖
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神室真澄
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鬼頭隼
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山村美紀
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一之瀬帆波
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椎名ひより
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綾小路清隆
-
堀北鈴音
-
櫛田桔梗
-
佐倉愛里
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南雲雅
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堀北学
-
茶柱佐枝
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真嶋智也
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星之宮知恵