よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話   作:サンディエゴ

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畜生系主人公と神室真澄が今年を終える話

 

 

 

「ど、どうでしたか……!?」

 

「どうも何も……びっくりしたわよ。でも、良かったの?」

 

「はい、これで良かったんだと思います」

 

「そう。愛里がそう決めたのなら……頑張りなさい」

 

「何か問題が起こりそうだったら言うんですよ? また変なストーカーとか発生しそうですし。その時は徹底的に社会的に抹殺してあげますから」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 

 ポヤポヤとした笑顔を見せる佐倉――いや、今は雫か。

 まあ、どっちでもいいか。

 

 

 どっちも彼女なのだから。

 

 

 結論から言えばミスコンは佐倉の蹂躙で終わった。

 

 

 大トリという出番にあの演出。

 そして、雫であることのカミングアウト。

 

 

 コツコツと動画を出して来ただけあって、雫の人気は元のグラビアアイドルとしての知名度よりも高くなっていた。

 

 

 グラビア系を知らない生徒でも名前は聞いたことがある――みたいな感じで。

 

 

 その状態でのカミングアウトの効果は抜群で、そして何よりも佐倉という女の子の魅力の暴力が加わった形だ。

 他の参加者も可愛いし、美人で決して魅力で劣っているわけじゃないが――何というかあれだ、魅せる技術とでも言うべきものが違った。

 

 

「元からグラビアアイドルとしての経験もあって下地は出来ていた。あとは自らの輝きを表現する手段を教え込んだだけに過ぎない」

 

「にゃー」

 

 

 単純に綺麗とか可愛いというだけではなく、それを更に魅力的に表現する技術。

 ステージ上での振る舞い、口や目の動き、仕草の一つ一つまで洗練し目を惹きつけるテクニックは今までの佐倉にはなかったもの。

 

 

 教え込んだのは天才である高円寺以外にあり得ない。

 

 

「全ては彼女自身の努力の賜物さ。自ら輝きたいというレディの美しい気持ちこそが、アイドルという偶像を宝石ではなくスターとして輝かせる。――磨くだけでは星にはなれないのだよ、キャスパリーグ」

 

「にゃふ……!」

 

「ふははっ、これで一つ勝ちを得たということにしておこう。今回の勝負の敗因――それはプロデュースを怠ったことさ」

 

 

 ぐふっ! た、確かに……! 俺は自らの欲望に負けて、ご主人を着飾ることに夢中になってしまってそこから先を意識していなかった……っ! なんてことだ、俺の失敗でご主人の魅力をみんなに伝えることが出来なかったなんて……!

 

 

「ふははは! いい気分だよ、キャスパリーグ!」

 

 

 よほど気分がいいのか楽しそうに笑い声を上げる高円寺。

 プロデュースしたアイドルが完全勝利をした達成感もあるのだろう、言葉通りにとても気分が良さそうだ。

 

 

「猫相手に勝ち誇ってる……」

 

「やめなよ」

 

 

 ご主人……ごめんっ! ごめんよぉ! 心を入れ替えて、来年こそはご主人をトップアイドルに……っ!!

 

 

「いや、いいから。別にアイドルとか目指してないし。どうも思ってないわよ。それに楽しかったしね」

 

 ご主人ーー!

 

 

 感極まってご主人の胸に飛び込みつつ、佐倉の話に戻った。

 

 

「それにしても驚いたわ。カミングアウトするなんて」

 

「前から考えていたんです。あれだけ真澄さんたちによくして貰って、活動も支えて貰って。だから……変わるんだって」

 

「綺麗でしたよ、愛里さん」

 

「ありがとうございます」

 

「でも、今後は色々と大変ね。特に男どもとか放ってはおかないでしょうし」

 

「カミングアウトしたときの反応、凄かったですからね」

 

 

 反応的に結構なファンがいたのは間違いない。

 Aクラスにもわりと居た感じだったし、恐らく上級生にもだ。

 

 こうしてご主人たちと話している間にも、色々ところから視線が飛んできている。

 主に野郎から。

 

 同じ学校にアイドルが居るというだけで年頃の男子からすると気になるところだろう、それも佐倉のようなおっぱいも大きく可愛い女の子だと尚更だ。

 

 クリスマスに新年とイベントも控えているし、ワンチャンを賭けて特攻しようというやつが出てきてもおかしくはない。

 そんなやつらを牽制しているのが黙って少し離れた場所に立っている鬼頭の存在だ。

 

 黙ってても怖い顔をしているのに、明らかにメンチビームを放ってそういった輩に対して牽制をしている。

 

 佐倉がステージに立ってたときの穏やかな後方理解者面はどうした。

 まあ、セコムとしては十分に効果を発揮しているからいいけどさ。

 

 

 とはいえ、この様子なら大丈夫そうだな。

 高円寺とかも本当にピンチになりそうなら助けてくれそうだし、口では色々と言うかもしれないが基本真面目に頑張っている女の子は好きなやつだからな。

 

 

 変なちょっかいを出してきそうなやつが居たら対処はしてくれそう。

 当然、俺も協力するしな。

 

 

 最悪、呪うし

 佐倉は守ってやるぜ。

 

 

「優勝おめでとう。賞金ゲットね」

 

「えへへ、優勝は嬉しいですけどこんなにお金を貰っても……。あっ、高円寺くんに色々と助けてもらったし――」

 

「ふっ、気持ちは嬉しいが辞退をさせて貰うよ。自身の美学のために行動しただけ、つまりは自分のためさ。それなのにレディが努力した得た成果を、対価として受け取るのは美しくない」

 

 

 そう言いたいことだけを言って高円寺は去って行った。

 向かう先には上級生のお姉様方が居て、これから楽しく過ごすつもりなのだろう。

 

 

 こちらを振り向くこともなく高円寺はいつも通りのマイペースっぷりだったが、なんか輝いているような気がした。

 たぶん、きっと。

 

 

「変なやつだけど悪いやつじゃないのよね、高円寺って」

 

「高円寺くんはいい人ですよ」

 

「変人ではあると思いますよ?」

 

 まあ、それはそう。

 

 

「それよりもこれからどうする? イベント自体は終わったし、うちに集まる?」

 

「いいですね。さすがに冷えてきましたし、暖かいものを食べたいです」

 

「愛里も来るでしょ?」

 

「はい! あっ、でもこれから撮影会が……」

 

「撮影会?」

 

「えっと、ミスコン優勝者は写真を撮らないといけないっていう話で……」

 

 

 なんでも記念写真を撮ってそれを販売するのだとか。

 当然、販売利益はその人物に行くらしいが……まあ、手数料とか手間賃とかは多少はね?

 

 

 あの二人、あの手この手で稼ごうとするなホント。

 

 

 

「……知ってた?」

 

「いえ、聞いていませんね。こっそりルールをねじ込んだのでは?」

 

「あっ、もちろん嫌な人は嫌だって拒否してもいいらしいんだけど。私としてはファンは大事にしたいし」

 

 

 

 これ、佐倉がグラドルやっててそういったことにそれほど忌避感がないことを見抜いて、追加でルールを入れやがったな南雲と龍園のやつらめ。

 

 なんて抜け目のないやつらだ。

 

 

「むむむっ、愛里さんが別にそれほど嫌がっていないので今回は目を瞑りますが、機会を見つけてしばいた方がいいかもしれませんね」

 

「やるときには言いなさい。協力するわ」

 

 

 などと語り合う坂柳とご主人。

 二人にとってはなんというか佐倉は世話を焼く妹キャラ的なポジションだからなぁ。

 

 

 まあ、そこら辺のことはともかく。

 始まったミスコン優勝者――雫の記念撮影会はなかなかの盛況っぷりだった。

 

 

 写真の販売だけではなく、佐倉の許可もありツーショット写真もOKになったため、合法的に彼女は金を巻き上げていったのだった。

 

 

 因みに記念撮影には何故か俺も参加することになった。

 動画には一緒によく出ていたからセット扱いでの要望が多かったためだ。

 

 

「くくくっ、ツーショット写真は別料金だぜ」

 

「思い出はプライレスだ。こんな機会はまたとない。将来的にも価値が出るかもしれない」

 

「愛里が許してるから目を瞑ってるだけだから、阿漕なのはほどほどにしなさいよ?」

 

「ふっ、安心しな。もう十分に稼がせて貰った。これはただのボランティアというやつだ」

 

 

 ボランティアという言葉が世界一似合わない男――それが龍園です。

 一応、嘘ではないっぽいけど。

 

 

 下手にここで無理に利益を取るんじゃなく、中間に入ってサポートすることで雫ファン相手にいい印象を与える作戦か。

 

 

 なんて、たちの悪いやつなんだ。

 

 

「これからも応援をよろしくお願いします!」

 

 

 キラキラとした笑顔のままファンサする佐倉。

 スッカリと日が落ちる頃になり、ようやくイベントの全てが終わったのだった。

 

 

 

 ハラハラと白い雪が降り始める中、帰り道を歩いていく。

 

 

「ふー、冷えてきましたね」

 

「すいません、お待たせしてしまって」

 

「別にいいわよ。それにしても結構なお祭り騒ぎだったわね」

 

「皆さん、色々とストレスが溜っていたんでしょうね。こういう学園ですから……」

 

「アンタの立場で言うのか……。それにしてもこれからどうするつもり? 愛里はさ」

 

「色々と挑戦してみようかと考えています。もうちょっと積極的にアイドルのこととかも……。グラドルを始めたときも何かが変わるかもってやり始めたけど、結局は雫としての私と普段の私を切り分けて……上手くいかなかったけど。でも、今はこうして少しだけ前を向けて自信が持てたというか。これも真澄さんたちのお陰です」

 

「そう、少し羨ましいわね。将来の夢とか進路とか見つけているのって」

 

「そこまで大層なものじゃないですよ。ただ、もうちょっと頑張ってみようってなっただけで……それも皆さんの助けがあってのことですから。私だけだとこんな風に思い切った行動なんてきっと無理だったと思いますし。それにアイドルとしての活動もそんな将来の夢とか進路ってほど考えてのものじゃないんです。元から……何というか逃げ道としてやってただけ、みたいなところありますし」

 

「まあ、本当に芸能関係でやっていきたいのなら高育には来ないでしょうからね。卒業時の報酬を目当てだとしても、折角の大事な三年間分のキャリアを外部との接触がない学園に入るのは……」

 

 普通に考えて損の方が大きいわなー。どう考えても。

 

「そうですね。何も考えてなかったんだと思います。これからの人生を芸能でやっていこうなんて、今でもそれほど明確な目標にしているわけでもないですし。それでも、今はなんとなく挑戦してみたいなって。……改めて動画を作ったり、衣装とかどんな画を撮ろうかとあれこれ考えてやっていると思いのほか、私はそういうの好きなんだなってのも考えるようになって――」

 

 思い出すように目を瞑りながら喋る佐倉の姿はとてもキラキラと輝いているような気がした。

 

 

「――ちゃんとやってみたい。出来るところまでやってみたいって思えるようになったんです」

 

 

 高円寺の気持ちがよくわかる。

 こうやって悩みながらも前に進もうとしている女の子はとても魅力的だ。

 

 ご主人が羨ましそうに彼女を見つめている。

 夢や目標を持てるというのは眩しいものだ。

 

 

「だから……頑張ってみようかと! 心機一転にはちょうどいい機会かなって」

 

「そっ、頑張りなさい。手伝うわ」

 

「私もお手伝いしますよ」

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

「とはいえ、問題があるとすればやはりこの学園の閉鎖性ですね。外部との接触最低限、一応動画配信の許可は貰っていますが拡大するのは今の理事長代行では難しいでしょう。愛里さんの活動をどういった方向性で進めていくにしろ……」

 

「制限は多いわよね」

 

「グラドルとしての私だけではなく、もうちょっと色々なことに挑戦してみたいです。高円寺くんの指導もあって簡単なパフォーマンスも学びました。大変でしたけど、上手く出来たときは達成感も凄くて」

 

「スキルアップも学園内だと難しいですね。歌とかダンスとかそんな感じでしょうか? 学内だけでそれを賄って卒業までの時間を過ごすのはキャリアを潰すようなもの……」

 

「高円寺に頼めば? 色々と知ってる感じでしょう?」

 

「あまり高円寺くんを頼りすぎるのも……。あっ、でもホームズさんへって預かり物が」

 

 

 俺に? どれどれ……。

 

 

 渡されたのは一つのUSBメモリと手紙だった。

 坂柳に拡げて貰ってその内容を読むとどうやらこのUSBメモリには佐倉――というか雫の練習している様子が映っているらしい。

 

 その他にも高円寺の評価やら何やらも。

 そして、手紙の末尾にはどこかの住所が書かれていた。

 

 ご主人が端末を使って軽く調べたところ、どうも結構大きな芸能関係の事務所っぽいことがわかった。

 

 俺はあまり詳しくないんだが、こんな手紙を渡すあたり、高円寺の伝手か何かだろう。

 そこにこれを持って行けということらしい。

 

 

 高円寺P……っ!

 

 

「とりあえず、ホームズに持って行って貰いましょう。悪い話ではないはずです」

 

「えっ、そんなこと……いいんですか?」

 

「今は郵便も学園の目が厳しいですからね」

 

 

 何の問題もないものなので調べられても問題ないが、変に郵便って手間が掛かるぐらいなら俺が直接行った方が早い。

 

 時間を見て持って行ってやるよ。

 

 

「そんな……ありがとうございます、ホームズさん」

 

 いいってことよ! 頑張る女の子を助けないのは美しくないからな!

 

 

 一先ず、向こうの反応次第。

 反応がなかったらそれはそれで別の策を練ればいい。

 

 

 雫アイドル化作戦は始まったばかりなのだから……!

 

 

「ふふん、同級生が有名人になったらどうしよう」

 

「今のうちにサインを貰っておきましょう。グラドルじゃなくてアイドル雫の初期サインという感じで。プレミアがつくかもしれません」

 

「も、もう! 恥ずかしいですよ!」

 

 

 ファンサ普通にしてたのに……。

 

 

「ファンサと親しい人にそういうのするのってなんか違うと言うか……」

 

「出会いの時に真澄さんがストーカーの股間に一撃決めた話はちゃんとテレビで言ってくださいね?」

 

「いや、言わなくていいから」

 

「話のネタとしては良さそうなんですけど」

 

「愛里??」

 

 

 

 そんなことを言い合いながら三人の女の子は家へと向かう。

 一つの部屋に集まって温かいシチューを食べ、ぐだぐだとした雑談を交えながら、クリスマスを過ごし、年越しを過ごす。

 

 

 

 中々に刺激的だった今年を終え、そして新年を迎える。

 そんな彼女たちを眺めながら、俺は除夜の鐘の代わりにニャアと鳴き――その一年を終えたのだった。

 

 

 

 




〈人物紹介〉
●ホームズ
→自分の欲を満たすことに意識を割きすぎていたことを指摘され敗北感に満ちた。だって、ご主人様の着せ替えが楽しかったんだもん。反省はしているが後悔はしていない。ご主人の魅力を世に知って欲しいが、あんまり知られるのも独占欲的にちょっとな……という思いもよく考えたらあったのでまあヨシとする。さっさと切り替えてクリスマスパーティーと年越しを楽しんだ。

●佐倉愛里
→美貌レベル的に一之瀬を上回る強き者。色々と前向きにチャレンジする精神になった結果、雫暴露を行う。1年生の界隈で色んな意味で地殻変動が起きた。Dクラス内での地位もだいぶ変化。黒櫛田辺りがキレそうな変動が起こったが、覚醒佐倉クラス相手になると変なちょっかいを出そうとは考えないのでセーフ。堀北と違って周囲への影響力(特に異性)がデカすぎるため。下手に敵に回したくねぇ……。あれは別ジャンルと言い聞かせて心の平静を保っている。

●高円寺六助
→黒猫に借りを返せたし、プロデュースも成功したので満足。色々と個人のプライベートポイントも使ったが野暮なことは言わない男。自分が価値があると思って投資したものを返せというのは美しくないからね。因みに綾小路相手に一勝したぜ、と自慢もした。

視点での描写が欲しいキャラ

  • 葛城康平
  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 鬼頭隼
  • 山村美紀
  • 一之瀬帆波
  • 椎名ひより
  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 佐倉愛里
  • 南雲雅
  • 堀北学
  • 茶柱佐枝
  • 真嶋智也
  • 星之宮知恵
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